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 この日トップバッターに登場したのはsui。そして、ライブ開幕を飾った楽曲は、ピアノ弾き語りによる「可愛い君が愛おしい!」だ。優しい旋律のピアノとsuiの甘い歌声が重なって美しいハーモニーが生まれていく。原曲のロックサウンドと打って変わったアレンジの余韻に浸る間もなく、「エピソード」を披露していく。そのまま「魔法の本より」、「絵本作家」とテンポよくパフォーマンスしたところで、suiの友人でもある、シンガーソングライター・水野あつが登場。「知りたい(水野あつ with sui)」、「ふたりなら (sui with 水野あつ)」では、始終、息の合った2人の歌声を堪能することができた。後半戦に入ると、suiは持参したアップライトベースを弾きながら「眠らぬ森のヴァイオリニスト」を披露。マーチングバンド風のリズムに乗せて弦を緩急激しく爪弾くsui。そして最後の楽曲となったのは、高校生の時に書き上げたポップな楽曲「君の映画のエンドロールに」だ。愉快なメロディに、バンジョーの音色というスパイスを加えていった。今回のライブでは、様々な楽器を弾きこなすマルチプレイヤーと知られているsuiの才能溢れる姿を見ることができた。

 ダイナミックなシンバルが鳴り響く中、勢い良く登場した変態紳士クラブ。1曲目「On My Way」では、WILYWNKA(Vo.)の歯切れの良い低音パートに乗せて、VIGORMAN(Vo.)が気持ちよく歌声を乗せていく。「準備はいいですか?」という掛け声から、2曲目も「GOOD and BAD」と、最新アルバム『ZURUMUKE』から新曲を続々投下。途切れることなく続く「すきにやる」、「ボロボロ」では、VIGORMANがエッジボイスを会場に轟かせる。会場のボルテージをどんどん上げていくトラックを作り上げる、プロデューサー&トラックメイカー・GeGのキャパシティーにも驚かされる。そして、「色んないい思い出を紹介していきますか」という振りから、WILYWNKA とVIGORMANのアカペラから始まる「Good Memories」へ。約1年ぶりとなるライブに感慨深くなる変態紳士クラブ。“不安や不満を飛ばすため 窓をあけたHigh way”、昨今の暗い状況に流れる冷たい風を「YOKAZE」に変えて、クールに締め括った。

 3組目は、MCのHinaも所属するFAKYが登場。メロディアスなベースラインが走る、キャッチーな新曲「99」でライブがスタートした。そのまま、5人の鮮やかな歌声と呼吸が輝く「half-moon」へ。自己紹介した後は、FAKYのパワフルで妖艶なダンスパフォーマンス「GIRLS GOTTA LIVE」、「NEW AGE」、「ANTIDOTE」の3部作が続く「GIRLS POWER MEDLEY」に突入。キレのあるパワフルなパフォーマンスに息を呑んだ。終盤、FAKYが兄さんと呼ぶほど親しい仲でもあり、「ダーリン (Prod. GeG)」のプロデュースを務めた変態紳士クラブのGeGがステージに登場。FAKYのメンバーもお気に入りという「ダーリン (Prod. GeG)」について、GeGも「FAKYにない、恋愛ソングでメロウな感じにしたいと思った」と語った。その後のパフォーマンスでは、「もう少しで届きそうで届かない」そんな愛しい人への思いをダンスで表現していった。最後は5人で感謝の言葉を述べてライブが終了。MCを務める修一朗も「惚れてしまいました」と一言添えた。

 バンドアンサンブルから始まった羊文学。ステージの色を羊文学の世界に塗り替えたところで、グランジなサウンドが響き渡る「ハイウェイ」でライブがスタートする。温かい照明、哀愁漂うベースラインを鳴らす河西ゆりか(Ba. /Cho.)、タイトなハイハットを刻むフクダヒロア(Dr. /Cho.)、そして透き通る歌声を放つ塩塚モエカ(Vo./Gt.)が織りなす空気感に吸い込まれていく。セットリストも綿密に組まれており、「ラッキー」、「砂漠のきみへ」と背中を押してくれるナンバーがテンポ良く続いていく。ゆったりとした雰囲気のMCの後は、疾走感溢れる「恋なんて」へ。羊文学は何と言っても「3人が生み出すバンドサウンド」。今度は歪みのあるアンサンブルやコーラスから自然に「1999」へと繋いでいった。気付けばあっという間にラストになり、「ありがとうございました、羊文学でした」というアナウンスから「あいまいでいいよ」が披露され、ライブが終了した。

 そして、海外からも豪華アーティストによるパフォーマンスが到着。まずは、ノルウェーのシンガーソングライター、オーロラが登場した。日本語で「こんにちは、私はオーロラです」とキュートな笑顔を見せると、2010年にリリースした自身初のラブソング「Exist For Love」、続けてTikTokをきっかけに再ブレイク中の「Runaway」で、透明感のある歌声を披露した。2組目にはデビュー・シングルを皮切りにチャートを軒並み席捲中の、2021年を代表する新人アーティスト、オリヴィア・ロドリゴからも本イベントのためにパフォーマンスが到着。ピアノの弾き語りによる「drivers license」、そしてギターとともに「enough for you」と、それぞれ異なる編成で一夜限りの演奏を届けてくれた。最後に登場したのは、イギリスの歌姫、アン・マリー。エド・シーランと共に楽曲を手掛けた「2002」と、ナイル・ホーランとコラボした新曲「Our Song」を続けて披露。リラックスした演奏で、ファンからも喜びのコメントが溢れた。

 再び、カメラがビルボードライブ横浜に戻ると、赤いライトに染まったステージにMomが登場。序盤、聴き心地の良い韻が踏まれている未発表の新曲「Momのデイキャッチ」で自己紹介する。今回、DJは田中光が務めた。クールなイントロアレンジから入った「あかるいみらい」では、体を揺らしながら熱唱。ダークなメロディラインの「食卓」では、途中感情を表現するかのようにエレキギターをかき鳴らす。「僕は土曜日が大好きです」という出だしから、日常生活で起きた“気付き”をMCで語るMom。その後に届けられた、“クラスメイトみたいに話を逸らし続ける日々”といった歌詞が考えさせられる「祝日」は、聴きごたえがあった。そして、不安への焦燥を歌っている新曲「心が壊れそう」やメロウな「タクシードライバー」を笑顔で届けていき、壮大なスケールの「卒業」でライブが終着した。現在楽曲を制作中というMom。今後の活動にも目が離せない。

 今回大トリを務めたのは、Awesome City Clubだ。1曲目は、モリシー(Gt.)のブルージーなギターに乗せて、atagi (Vo.)とPORIN(Vo.)が華麗な旋律を乗せていく「夜汽車は走る」。大人な雰囲気に包まれてライブがスタートした。その後のアップテンポなナンバー「ceremony」や、チェロから始まる「タイムスペース」では、会場の空気感に合わせたAwesome City Clubのアレンジ力と表現力の高さが伺える瞬間だった。途中MCでは、atagiが「特別な雰囲気でやれています」と感想を述べ、最近始めたTikTokやYouTubeについてなど、トークに興じる。最新曲「またたき」が披露されると、ピアノとチェロに伴奏を任せる中、モリシーのギターソロがいつも以上に際立っていた。そして、2021年上半期からヒットし続けている「勿忘」をしんみりと聴かせて、イベントに相応しい最後を飾った。



Text: Tatsuya Tanami
Photo: Masanori Naruse, Yuma Totsuka

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