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SOHN 初来日インタビュー~謎のヴェールに包まれたソンに迫る
UK出身でありながら、数年前よりウィーンを拠点とし活動するプロデューサー/シンガーソングライター、SOHN (ソン)。黒いフードを纏ったミステリアスな出で立ちに、その独創的でエモーショナルなファルセット・ヴォイスと緻密なサウンドスケープが織りなすエレクトロニカとR&Bを融合したサウンドメイクで2012年リリースのデビューEP『The Wheel』が注目を浴びる。米ビルボードに“2014年注目アーティストの一人”に選出され、今年4月に<4AD>からリリースされたデビュー作『トレマーズ』でも高評価を得た。さらには9月に待望のデビュー作をリリースするBANKSやKwabsを手掛けるなど、プロデューサーとしても腕を振るう彼。今年6月には【Hostess Club Weekender】で初来日し、アルバムとは一味も二味も違うライブで会場を沸かせたソンをライブ直後にキャッチ、その謎のヴェールに包まれたアーティスト像に迫った。
自分の強みを理解するために、引き算する必然性があった
??初来日となりますが、ライブを終えてみてどうですか?
ソン:グレイト!香港、台湾に次いで、今日がアジアでの3公演目だけど、どのショーもまったく違っていて…、今日は特に自分が思い描いていたものと異なっていたね。日本のオーディエンスはとても礼儀正しくて、拍手もピタっと止めるって聞いてて、多少はそんな感じだったけど、目を開けて演奏してた曲で会場を見回したら、音楽に合わせて体を動していて、盛り上がっていたね。
??ソン自身も座っていましたが、全身で音楽を表現していて。
ソン:自分でも、今日それをやってることに気づいて、驚いたんだ。「今日はどうしちゃったんだ?」って(笑)。
??普段にも増してってことですか?
ソン:どうかな?でもショーごとに進化し、自分がより自由になっている証拠だとは思うね。観客の気を緩めるためにやっていることでもあるんだ。こういう音楽だから「静かに聴かなきゃ」って感じる観客もいると思うけど、僕は別にそんな風に捉えてないから。
??アー写やアートワークから、物静かでちょっと物憂げな人物を想像していたのですが、ステージ上でも、今話してみてもイメージとまったく違くて…。
ソン:ソンのイメージを作り上げる上で、そういったことが構想にあったのは間違いないよ。でも実際の僕は、もっと表現豊かなんだ(笑)。
??アルバムに比べ、楽曲自体に広がりがあり、ビートも強調されていたのが印象的でしたが、生で演奏し始めてからどの様な過程を経て、現在の形に至るのですか?
ソン:まず第一に、すべての曲が演奏する度に違うものに成り得る可能性があるようにしたいと思ってた。ライブ・セットを構築していく上で、ドラムとかコンピューターから鳴っているサウンドも多少あるけれど、その場で僕が他のメンバーに合図してシークエンスを変えていったり、常にオープンに保っている。今では、その時の状態をキープするか、次へ進むか、判断を下すと、メンバーも的確に反応出来るようになっている。
▲ 「Lights」 (Live Tremors Tour Video)
??因みに、今のメンバーとはいつ頃から一緒に演奏を?
ソン:2013年の1月かな。クルーもずっと変わってない、照明の女の子も、サウンドも。
??照明は特に素晴らしかったですね、楽曲を効果的に引き立てていて。
ソン:そう、彼女はほんとクールだよね。しかもすべて手動で操作してるんだ!
??なるほど、だから音楽とピッタリだったんですね。では、ソンの“誕生”/“化身”について教えてください。ロンドンからウィーンへ拠点を移したことが、きっかけとなったのですか?
ソン:もちろんそれも大きな要因の一つではあるよ。引っ越したのは5年前で、ソンとして音楽を作り始めたのは2年前だから。とても鮮明に記憶に残っている出来事があるんだ―曲を書いていて、それがソンとしての初の曲になった時のこと。僕は4歳の頃から曲作りを行っていて、いつものように曲を書いていた時に、ふと自分がやっていることをすべて半分にしようと思った。メロディも詞もすべて半減し、空間を作る。その瞬間に、クリエイティヴ面だけではなく、人間として実生活でもそうしたいと悟ったんだ。
そこで自分の発言を半減することにした。ソンになる前は、かなりハイパーで…今とは全く違う性格で、つい2年半前ぐらいの話だけど、本当に別人だった。成長し、大人の男になったというのも半分あるけれど。もう半分は…、自分自身ととある会話をしたんだ―何人かで話をしてて、会話が止まって沈黙する瞬間があるでしょ?そんな時に変な空気にならないように、いつも進んで最初に発言してたのは、僕だった。でもソンとして、初めての曲を書いていた時に、そういうことはキッパリ止めようって。自分自身でいることに慣れるように、発言は減らすけど、言うことには100%真実味持たせて、意味のないことは一切言わない。
??それに現在ポピュラーなエレクトロニック・ミュージックは、とにかく色々な“音”を詰め込む傾向にありますしね。
ソン:本当にそうだよね。自分の強みを理解するために、引き算する必然性があったんだとも思う。これまでずっとメロディと詞を必要以上に重ねてばかりいて、自分が何が得意なのか、という根本的なところに辿り着いていなかった。でも引き算した時に自分の強みが理解できて、それを使うエキササイズとなったんだ。自身のミスや失敗に意識的になり、それを取り除くことで、違う人間になった、と言っても過言ではないね。
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