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しなまゆ 『ストロベリーフィールズ』インタビュー
哀川翔、小西真奈美、安倍なつみらといった面々と熱演した舞台『あの頃僕らはペニーレインで』でヒロイン級の役を演じ、その存在感ある歌唱力で観衆の度肝を抜いたモリユイ(vo)。そんな彼女がフロントマンを務めるバンド しなまゆが劇中歌「ストロベリーフィールズ」でメジャーデビューするということで、ビルボードジャパン.comではタクマ(g)、ウエノハラ(b)との3人揃い踏みでインタビューを敢行した。立川生まれの素人同然だったバンド(本人たちいわくズッコケ3人組)が如何にして今の状況を手に入れたのだろうか。
舞台『あの頃僕らはペニーレインで』抜擢
~安倍なつみとの交流
--僕がしなまゆの音楽に初めて触れたのは最近で、モリユイさんが哀川翔、小西真奈美、安倍なつみらといった面々と熱演した舞台『あの頃僕らはペニーレインで』だったんですが、まずあの舞台に立ってみてどんなことを感じていましたか?
モリユイ:皆さん、やっぱり良いものを作ろうとしているので、その足を引っ張っちゃいけないし、自分もより良いものを率先して作る気持ちにならなくちゃと思っていました。もちろん緊張しましたけど、一番はそれです。
--演劇のステージに立つのは初めてだったんですか?
モリユイ:小学生の頃に学芸会で台本開いて以来、初めて台本を見ました。
--その当時は何役を?
モリユイ:村娘B。セリフは「背中のあかちゃんが泣いてしまうわ」だけ。
一同:(笑)
--村娘Bの次の役がヒロイン扱い。大出世じゃないですか。
モリユイ:だからビックリしましたよ!
--タクマさんとウエノハラさんもご覧になられたと思うんですが、バンドメンバーがお芝居してるのってどんな気分だったの?
タクマ:スタッフとして全部観させて頂いたんですけど、最初はもう心配でしょうがなくて「ミスったりするんじゃないかなー?」って。でもしなまゆの曲を歌ってもらう場面のときは、初めて外からウチのボーカルが歌ってる姿を観れたので、「あ、こんな顔して歌うんだなー」と思いながら(笑)新鮮な発見がいくつかありました。
--近くで見ていて、本番を迎えるまでのモリユイさんはどんな感じだったんですか?
タクマ:それはもう半端なく情緒不安定でしたよ!
一同:(笑)
タクマ:気遣いまくりました。
--受験前の子供がいる家みたいな?
モリユイ:本当にそんな感じでした!
タクマ:「何、悩んでんだ?」みたいな。「飯、食ってるか?」とか。
--もうほとんど親ですね(笑)。
ウエノハラ:それでこっちまで緊張しちゃって「どうしよう?」みたいな。でもステージの裏では意外と普通の顔してて、「あーよかった」って。本当にお母さんみたいな気持ちでしたね。それで初日は大号泣しちゃって。舞台のストーリーにも感動するけど、それ以上にユイがやりきったことに大号泣みたいな。
--最後の命懸けで「ストロベリーフィールズ」を歌うシーンには、身内とは言えいろいろ感じる部分もあったと思うんですけど、いかがでした?
タクマ:しなまゆで「ストロベリーフィールズ」を合わせられたことがないまんま、舞台で、違う構成で出来上がったものを聴くっていう形だったんで、いろんな発見がありました。そこで昇華できた感じがしたので、しなまゆにいざ持ってかえってライブで披露するときも違和感なく出来た感じがして、すごく気持ち良かったです。
--あのシーン、実際に歌ってる本人はどんな感覚だったんでしょう?
モリユイ:私、後半しばらく出てこないじゃないですか。で、久々に出てきたと思ったらバタバタバタ!って話が展開していって「歌えー!!」って言われて歌い出す。だからもう緊張もしたんですけど、演技は初めてでも歌は続けてきていたことだから「やっと歌来たぞ!」みたいな感じで。で、そのとき初めてお客さんの顔を見ることが出来るんですよ。それまでは演技の中に集中したいからなるべく見ないんですけど、そのシーンで初めて私だけが唯一お客さんと繋がれるんです。
--ライブシーンですからね。
モリユイ:だからそのときは嬉しいというか……歓喜! やっぱり気持ちよかったです。
--ちなみに共演者の皆さんはモリユイさんをどう評価してくれてました?
モリユイ:皆さん、誰も私のことを知らないじゃないですか。だから本読みの段階からド素人で上手くも何ともないし「こいつはなんだ!?」と、多分思われていたと思うんですけど(笑)、でも安倍なつみさんのことは「なっちゃん、なっちゃん」って呼ばせてもらって、楽屋で一緒にお弁当食べたりとか、アドバイスもいっぱいもらったりして。「ユイちゃん!」って和気藹々と仲良くしてもらいつつも「ここは気持ちが先行して動けないとダメなんじゃない?」とか「ちゃんとやんなくちゃダメじゃん」って言って下さったりもするから、すごく心強くて。なっちゃんだけじゃなく、皆さん、そうやって支えてくれてましたね。
--ちょっと気になったんですけど、先輩である安倍なつみをいつ「なっちゃん」って初めて呼んだんでしょう?
モリユイ:ハハハ! 最初に「みんなってあだ名とかつけて呼んでないの?」ってなっちゃんが言い出したんですよ。その流れでみんなそれぞれ何て呼ぶか話し合ったんですけど、特に決まらなくて。でも忘れ物をなっちゃんがしちゃったときに、私、声掛けたかったんですけど、「安倍さん?なっち?どう呼ぼう?」って思ったときに「なっちゃん!」しか出てこなくって。そこからなっちゃん(笑)。
--最後の歌唱シーンは、大人から当たり障りのない曲をテレビで歌わされそうになって、でも命懸けのステージでそんなことをさせたくないと仲間たちが「ストロベリーフィールズ」を歌わせる為に奔走する。その結果として辿りつく訳ですが、あのストーリーを経て歌い出すのってかなりプレッシャーですよね。間違っても中途半端な歌は聴かせられない訳じゃないですか。
モリユイ:そうなんですよ。だからそれなりに覚悟はしていたつもりだったんですけど、2日目の公演。1日目がやっと終わって緊張の糸が解けちゃって、自分にとっては不甲斐ない演技というか、演奏をしてしまって。で、そのことを共演者の柏原収史さんに「全然ダメだったんですよね」みたいな風にお話したら、「いや、でもユイは舞台に立つことが決まってて、お客さんも待ってて、もう場所が用意されちゃってるんだからやるしかないんだよ。もうプロなんだもん」って言われて、そのときに恥ずかしくなっちゃって! それで「やるしかない。腹据えるしかない!」ってなって、その日からはどんな状態でも「やりきるぞ!」ってなりましたね。
--その経験はしなまゆのライブにも影響してる?
モリユイ:めちゃめちゃしてます。前までは「どこまでやっていいんだろう?」ってわりと考えながらやってしまうタイプだったんですけど、「いや、もうやるしかない」ってなってからは、例えばどんなに喉のコンディションが悪くなってしまってイベントに出たとしても、「やるぞ!」ってなると意外とついてきてくれるんですよ。振り切れたほうがいい。だから前よりずっと自由になれたし、そうすることでメンバーもついてきてくれる気がする。
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リリース情報
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄|Photo:佐藤恵
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