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SuG×BiS異端児対談インタビュー

SuG×BiS異端児対談インタビュー

 6月25日 東京キネマ倶楽部にて【異端児フェス】なるライブイベントの開催が決定。ヴィジュアル系シーンの常識を覆し続けるSuGと、アイドルシーンで衝撃的な活動を続けるBiSによる、驚愕のツーマンライブが実現する。

 1年間の活動休止を経て復活したばかりのSuGと、7月8日に横浜アリーナでのワンマンライブで解散するBiS。一見、真逆のベクトルへ進んでいるように見える2組だが、どちらもジャンルの枠を破壊しながら我が道をひた走り、飽和状態と化した音楽シーンでセンセーショナルなアクションを連発してきた。

 そんな2組が激突したら何が生まれてしまうのか。ツーマンライブ直前、邂逅を果たした2組の対談を公開。SuG武瑠(vo)×BiS渡辺淳之介(mg)対談、SuG×BiS全メンバー異端児会議の2本立てでお届けする。

SuG武瑠(vo)×BiS渡辺淳之介(mg)対談
BiSは解散しちゃんですけど、次はヴィジュアル系やってみたい

SuG×BiS異端児対談インタビュー
▲武瑠&渡辺淳之介

--この度は、私が企画/ブッキングを担当させて頂きました【異端児フェス】でツーマンライブを行うSuG×BiSの異端児対談ということで、まずは双方の頭脳である武瑠(vo)くんと渡辺淳之介(mg)の組み合わせでお話を聞いていきたいと思います。渡辺さん、どうですか? 武瑠くんを前にして。

渡辺淳之介:いや、本当に……今、写真撮られながら話してますけど、並びたくなかった。

--(笑)

渡辺淳之介:公表されている身長とかが僕と一緒だったりして、これは本当に勝ち目が全くないな、みたいな。

武瑠:いえいえ。プロのパワーをたくさん結集させてるんで……

渡辺淳之介:ツラいです!

--武瑠くんは、BiSを裏で操っている渡辺さんの存在は知ってました?

武瑠:多分、最初に平賀さんに取材してもらったときに言ってた気がするんですよ。解散が決まってるとか、ある程度の絵が見えた上で作っていってるって聞いて「面白いな」って思って。そのとき、ちょうど来年出そうと思ってるアルバムのことを考えているときで、今の世代のアイドルってこういう裏で操ってる人というか、後ろに悪の秘密結社があって(笑)それにアイドルが操られている印象があったんですよね。で、アルバム用にクローンの話とかを考えていたので、アイドルって全員クローンかもしれないなって。

--それをSuGの作品に反映させようと?

武瑠:そう。例えば、ファンがアイドルのひとりを好きすぎてさらっちゃって、クローンと入れ替えて、本当のアイドルは自分の家で飼うとか。そういう話を考えたりしてましたね。BiSの話を聞いたとき(笑)。

--実際、似たようなことはしてますよね?

一同:(爆笑)

--実はこのSuG×BiS対談&対バンのきっかけって『不完全Beautyfool Days』発売時のインタビューで。「V系にも異端児いた!フォーマット化されたV系はつまらない、銀杏BOYZが好きとか言ってるし、ちゃんと叩かれたいって言ってる人に会った」って、すぐに渡辺さんに連絡したんですよ。絶対共鳴してくれると思ったから。渡辺さん、覚えてます?

不完全Beautyfool Days/SuG(PV FULL)
▲不完全Beautyfool Days/SuG(PV FULL)

渡辺淳之介:覚えてます。すごく興奮気味に電話がかかってきて、そのあとに呑んだときに「SuGがヤバイんだ」って延々語ってて(笑)。インタビューのURLとかも送ってきて、読ませてもらったりしてたんですけど。

--で、すぐ対バン組みたかったんですけど、SuGはももクロとの対バンが決まってて。BiSはちょうどももクロ相手に問題起こしていた時期だったんで、とりあえず今はないだろうなって断念したんですよね。

武瑠:何か問題起こしたんですか?

渡辺淳之介:いや、あの……ももクロがアルバムのキャンペーンで選挙カーを走らせていたときがあって、新宿でゲリラライブをやったり、渋谷を回遊したりしてたんですけど、BiSがその選挙カーを目の前で停めたりして、ももクロに「かまってくださーい!」っていうやつをやったら、本気で怒られたっていう(笑)。

--あと、当時はBiS関連の情報をツイートするのに「#momoclo」って付けていたんですよ。

武瑠:アハハ! 酷いですね(笑)。

渡辺淳之介:流行っているものに寄り添っていくのが僕の信念なので……とりあえずあのときは一番ももクロが熱かったので、そこに寄り添っていこうと。

武瑠:今は何が熱いんですか?

渡辺淳之介:今はアイドルがちょっと分からなくなってきちゃって。でもやっぱり勢いのある人たちっているじゃないですか。「こいつら、ここからいきなり駆け上がりそうだな」みたいな。そういう意味では、昔からいろいろ一緒にやってきてはいたんですけど、でんぱ組.incさんが今一番寄り添うべき相手かなって。なので、でんぱ組.incさんが武道館でライブしたとき、九段下の地下鉄下りていったところに「でんぱ組.inc、おつかれさま。BiSは横浜アリーナです」みたいな広告を出したりして。

武瑠:へぇー!

渡辺淳之介:寄り添っていく信念は全然変えてない。解散手前にしても(笑)。その日はBiSもライブあったんですけど、僕は武道館前でビラ配りしてましたし。盛り上がってるシーンって単体ではひとつ頭抜けられないと思ってて、すごく強大なパワーを持っていない限りは、バンドとかも3組ぐらいで仲良くやってて一緒に上がっていったりしてるじゃないですか。だから僕も何かしらに寄り添いたいなっていうのはあるんですよね。

SuG×BiS異端児対談インタビュー
▲渡辺淳之介

--でもBiSの寄り添い方はえげつなく映ります。

渡辺淳之介:本当は仲良くしたいんですけどね! でも見え方的にはやっぱり。だからでんぱ組.incのメンバーの娘たちからは、多分僕は嫌われてると思う(笑)。メンバーは仲良いんですけど。それこそさっき仰っていた、悪の秘密結社のドンみたいな奴が嫌われてて、それでメンバーは結束を強めるみたいな感じが、今のアイドルにとっては良い構図になってるんだろうなって。

--大人 vs 子供みたいな。

渡辺淳之介:そうですね。大人と子供で言うなら、子供たちがめちゃくちゃ頑張ってて、大人たちがニヤニヤしてるっていう構図。それが今のアイドル界は見えやすくなってる。それこそももクロとかもそうだし、すごく分かりやすくて面白いのかなって。秋元康さんとAKB48もそうだし。

--武瑠くんは元々BiSに対してどんな印象を持っていたんですか?

My Ixxx / BiS 新生アイドル研究会
▲My Ixxx / BiS 新生アイドル研究会

武瑠:正直、全裸PVしか知らなかったです(笑)。でもよく話は聞いてて「変わったことしてんな」とは思ってて。あと、ヨネちゃん(※米原康正/写真集『月刊BiS× 米原康正+DVD』でおなじみのエディター&フォトグラファー。武瑠とも親交が深い)の事務所でPVを観せてもらったんですよ、ちゃんと。そしたら戸川純さんのカバーとかやってて「すげぇな」と思って(笑)。俺、狂ったように戸川純さんのPVを観ていたときがあって。5,6年前かな? SuGがインディーズ2年目ぐらいのときに病んでて、ずっとYouTubeで毎日毎日戸川純さんを聴いていたときがあって。だからBiSがあのカバーやってて「そんなところにも目をつけてるんだ?」ってビックリしました。

--最近のBiSはメインストリームじゃなく、サブカルチャーの神様的存在と次々仲良くなっていきましたからね。

武瑠:たしかにそこへ一番向かってる人たちのイメージ。

渡辺淳之介:そうして理解しがたい者へと……。戸川純さんとかってもちろん有名なんですけど、どちらかと言うとカルト的で、アングラの神様みたいな人たちじゃないですか。で、面白かったのが、アイドルのファンって知ったかぶりするんですよ。「やべぇ、戸川純のカバーやるんだ」って、前から知ってたみたいな感じなんですけど、おそらく知っておかないとヤバイと思ってウィキペディアで調べてて。最近も元ブラック・フラッグのOFF!っていうバンドと対バンしたんですけど、それも絶対知らなかったんですよ。僕も知らなかったんで。でもみんながみんなで「OFF!ヤバイ」って言ってて。いやいや、そんなに知らないでしょ!みたいな(笑)。

武瑠:あー、なんか分かる気がする。

BiS階段 /
▲BiS階段 / "好き好き大好き (Special Edit)" Music Video

渡辺淳之介:そこらへんは逆に面白いなと思って突き進んじゃったところはあります。知ったかぶりしてくれることでリバイバルができて、戸川純さんの曲とかをもう一回楽しんでくれるならいいじゃんって。非常階段とBiS階段というユニットをやらせて頂いたんですけど、ノイズがオリコンランキング30位以内に入るっていう奇跡を起こせて(笑)非常階段さんにも喜んでもらえたのは、すっごい良いなって感じました。

--音楽的に有意義なことをしましたよね。アンダーグラウンドの最高に面白いものをアイドル経由でオーバーへと届けていく作業。

武瑠:たしかにフレーズとして聴いたことがあっても、非常階段の曲をしっかり聴いたりする機会ってないですからね。高校生のときにヴィレッジヴァンガードで立ち読みした本に載ってた、みたいな(笑)。

渡辺淳之介:ハハハ! そこと組むのが楽しかったんですよね。SuGもヴィジュアル系シーンにいながらヴィジュアル系ではないところを意識してるじゃないですか。曲もいわゆるヴィジュアル系じゃないし、新しい価値を作ろうとしてる。ヴィジュアル系とアイドルって市場的にはすごく似てて、ファン層は違っても構図はすごく似てると思うんですけど、SuGはおそらくそこじゃないところを狙ってるんだろうなって。それを2008年ぐらいからずっと変わらずやってるイメージ。アイドルより壊しにくいシーンだと思うんですけど、それでも壊しにかかってる。

武瑠:ただ「壊そう、壊そう」って思ってても、もう何周もして分からなくなってて、正直。多分、今、どのヴィジュアル系バンドのインタビューを読んでも「ヴィジュアル系だけじゃない魅力があるんですよ、僕たちは」みたいなことをほぼ言ってると思うんですよ(笑)。もっと外と戦いたいし。でも実際に外と対バンしている人は一握りしかいないんで。まぁ正確にはしてもらえないんですけど。

渡辺淳之介:あ、してもらえないんですか?

武瑠:してもらえないです。その壁にはもう何度も何度もぶち当たりました、俺らも。今でもいろいろありますけど、ヴィジュアル系だったら出れない媒体があったりとか、対バンできない人たちがいたりとかする。でも逆にシステム化したらすごく簡単なんですよ。語弊があるかもしれないけど、みんなが喜ぶ曲って分かるんで。普通に理論的に音楽は作れたりするじゃないですか。このリズムが乗りやすくて、とか。そこを突き詰めていったらすげぇ売れるかもしれないけど、俺らはそうじゃないことをやりたい。だけど、外に対バンしてくれる人がいない。それはずーっと悩んでて、何年も。

SuG×BiS異端児対談インタビュー
▲武瑠

--ヴィジュアル系シーンからデビューしたバンドの難関ですよね。

武瑠:でも、平賀さんもそうですけど「もっともっといろんなところに行ける可能性はあるから手を貸すよ」って言ってくれる人がだんだん増えてきて、自分たちも手応えを感じて。でも今の地盤だと本腰入れて勝負をかけれないと思ったんで、一回活動休止をしたんです。それで準備を整えてから復活した。なので、ここに至るまで“仲良いバンドがいない問題”にずっと悩まされてるんですよ、SuGは。「これだ!」みたいなバンドがいないんですよね。「一緒にカップリングツアー廻ろう」ってなるバンドがいないから、本当に腹を決めないといけない、孤高の戦いみたいなところへ入っていくんだろうなと思って。

渡辺淳之介:今、話聞いてて思ったんですけど、やっぱりアイドルより窮屈なのかもしれないですよね。BiSも「アイドルだから対バンできない」みたいなことはあったんですよ。サマソニやロッキンからは門前払い以下の感じ。でもだんだん変わっていって、サマソニもロッキンも出れるようになった。「あれ、お客さんが集まるぞ」みたいな感じで。それはももクロが壊してくれたと思うんですけど、その一番最初のムーヴメントがヴィジュアル系はまだなのかもしれない。

武瑠:だと思います。正確には15年前ぐらいに一回あって、その後に来なくなっちゃった。

渡辺淳之介:でも、BiSは7/8に横浜アリーナで解散しちゃんですけど、次はヴィジュアル系やってみたいなって思いました。

武瑠:すごく特殊なんで面白いかもしれない。

渡辺淳之介:ただ、噂レベルですけど、めっちゃ上下関係が厳しいとか、規律があるとか、すごく聞くんですよね。

武瑠:そんなことないですけどね。むしろ、みんな、素直で優しいなっって思う。

--それって武瑠くんだからじゃない(笑)?

武瑠:いや、みんな、優しいんですよ。だから会いたくないですもん、先輩に。優しいから「ちょっと、自分なんかにそんな優しくしないでください」って思っちゃうんで。まぁ勘違いしたくないのが一番なんですけど。「こんな人と話してる」とか「こんな人に優しくされてる」って思って、1%でも2%でもどっか安心したり勘違いするのが嫌なんで。だから尊敬する先輩にはなるべく会わないようにしてるんです。ちょっと挨拶したらすぐ帰る。

--渡辺さんは全く逆ですよ。最近、NIGOさんと仲良くなって浮かれている自分を楽しんでる。

BiS / nerve directed by NIGO(2.5D × VICE)
▲BiS / nerve directed by NIGO(2.5D × VICE)

武瑠:(笑)。俺、素直に楽しめなくてダメなんですよ! 自分自身勘違いしたくないし、何にも成し遂げていないのに、調子乗っちゃってる人たちの輪とかがあるんで、そこに入りたくないって思っちゃうんですよね。「こんな先輩と知り合いの俺、すげぇだろ?」みたいな。マジどうでもいいんだけど!って思っちゃう。なんか嫌なんですよね、その感じになるのが。

渡辺淳之介:めっちゃストイックですね。

武瑠:ストイックじゃないんですよ。ただ素直に喜べない。子供のときからずっとそうで、みんながワーイ!ってなっているときにワーイ!ってなれないのがコンプレックスでもあって。まぁそれが原動力にもなってるから良いっちゃ良いんですけど。で、先輩と常に一緒にいることが原動力になる人もいるんで、それはそれでいいと思うんですけど、自分はそこに入るとマイナスになっちゃうなって。もっと自分が自信をもって、後輩だからっていう訳じゃなくて、普通に作品を認めてもらえるまで関わりたくない。年齢とか関係なく、先輩とか関係なく、ちゃんと「SuGの武瑠はこうだ」って少なくとも認識してもらった上じゃないと関われないなって思う。清春さんは「カバー、どう?」みたいなオファーを頂いたんで、「あ、やっと行けるぞ」と思ってお話させてもらいましたけど。そういう風にクリアーしていきたい。

--僕からすると【異端児フェス】に呼んでるぐらいなんで、SuG×BiSは業界屈指の異端児で、今の話を聞いてても武瑠くんは異端児になるべくしてなったと思うんですけど、2組ともそこに至る理由や道筋は似て非なるものなのかもしれませんね。

武瑠:でもBiSさんを見てると、異端児って言っていいのか?って思うぐらい異端過ぎて!

一同:(笑)

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