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Especia 『GUSTO』インタビュー
Especiaに1年ぶりのインタビューを敢行したところ、1年前とは全く質感の違う内容になったことを驚いている。冨永悠香(はるかちょ)はリーダーとしての自信を失い、それでも何とかEspeciaを成功させようと必死で、他のメンバーもそんな彼女とどう共に歩いていくべきなのか。6人で、グループで高みを目指していくのに何が必要なのか模索しながら、独自路線でアイドルブーム終焉/BiS先輩解散後の未来を生き抜こうとしている。Especiaはいつも温厚な表情で笑っている。その音楽やライブは常に観客に幸福感を与えるものだ。それを踏まえた上で今回のインタビューはご覧頂きたい。
冨永悠香(はるかちょ/リーダー)単独インタビュー
リーダーとしての苦悩と挫折「私は……引っ張るのはもうムリ」
--最近はどうですか? 楽しい?
冨永悠香:いやぁ~……楽しくないこともあったりしましたね。
--例えば?
冨永悠香:例えば、納得のいくパフォーマンスが出来なかったりとか、ライブのあとは常に悔しかったりとか。
--前回の、1年前のインタビューにはなかった類の話です。
冨永悠香:多分、1年前はただ楽しかっただけなので。でも今は楽しいだけじゃなくなりました。
--今のEspeciaはどんなグループだと感じていますか?
冨永悠香:それは1年前と変わってないかもしれないんですけど、他のグループがやってないことに自信をもってやり続けている感じ。面白いと思ったことを発信し続けてる、大人たちの作った道を歩んでいる感じです。
--デビュー当初はメンバー脱退劇もありましたが、今の6人に落ち着いてからは独自路線で着々とステップアップしている印象を受けます。
冨永悠香:着々と行ってるほうだと思います。やっぱりケンカとか……6人は全然個性が違うんで「あの娘のあそこが嫌だ」みたいなところもありますけど、それはグループをやっていく上で当たり前のことだと思うんで。私は着々と行ってるほうだと思います。あとは、すべて作ってもらった道を進んでる感じなので、それでどう自分らしさを発揮できるかの勝負かなって。
--ちなみにEspeciaの音楽やMVって80年代のオシャレ。それを今の時代に面白がってもらおうと思っている感じだけど、例えば「くるかな」のMVとかってメンバーはどんな風に受け止めてるんだろう?
冨永悠香:面白いです! 話題になりそうって思います。
--あのMV、本当のテレビで朝4:54~流してほしいですよね。制作者のホンマカズキさんもツイッターで熱望してましたけど。「4:54 World Weather New」って最高じゃないですか。
冨永悠香:たしかに。これだけ面白いことしてるから、そういうオファーも来てほしいです。「No1 Sweeper」だったら野菜のCMとか(笑)。
--Especiaが変なことをしてる自覚はあるんですね。
冨永悠香:周りと全然違いますからね(笑)。最初は観てくれるお客さんが少なかったり、「Especia? 知らない」って外に出られたりすることもあったんですけど……。だからステージに出ていくのが怖いんですよ。「絶対、棒立ちで見られるんだろうな」とか思って。でも今は「認められた」と感じることが多くあって。なので、ライブでも「Especiaの道を進もう!」っていう感じになってます。
--例えば、新木場STUDIO COASTでのアイドルイベントでは「海辺のサティ」のループに合わせたVJだけで約8分間。やっとメンバーが出てきたと思ったらファッションショーを始めるという、格好良すぎる演出がありました。ドキドキしたんじゃないですか?
冨永悠香:ドキドキしました。でもこれで印象を残せればと思っていたので。例えば、去年の【TOKYO IDOL FESTIVAL 2013】でも「海辺のサティ」を流してステージ上に全然立たなかったりとか、そういう経験を積み重ねてきているので、今回もファッションショーしたら「なんだ? このグループ!」ってなるだろうなと予想していて。そこの反応は私たちも楽しみにしていました。
--森絵莉加だけランウェイ歩く姿が完全にプロで笑いました。(※森絵莉加は元々モデル)
冨永悠香:そうですね(笑)。元モデルなだけありますよね!
--誰もやってないことをやっていくEspeciaスタイルは、今後も続けていきたいと思ってる?
冨永悠香:それしなかったら注目されないから。特別に歌が上手い訳でもないし、ダンスも上手くないんで。最初はそんなこと考えてなかったですけど、今は「注目されるにはどうしたらいいか」「話題になるにはどうしたらいいか」って考える。ま、私たちの意見が使われることはほとんどなくて、清水さん(マネージャー)が考えてるんですけど、そういう道で自分たちをどう発揮できるかだなって。
--同じ事務所(つばさレコーズ)の先輩アイドル(プー・ルイ/BiSリーダー)も全く同じことをよく言ってました。その席で。
冨永悠香:そうなんですか!? わぁ! 後輩だからかな(笑)。
--では、制作陣のアイデアや創ってくるものに対して信頼を置いている?
冨永悠香:はい!
--清水さんに対してもストレスはない?
冨永悠香:どうだろう? ないかな。でも前より全然喋らなくなりましたね。清水さん、忙しいんで。今はほとんどエランちゃんっていうスタッフの方に現場着いていってもらったりとか。まぁ当たり前のことなんですけどね。ちょっと距離は感じるようになりました(笑)。
--環境が変わったんですね。1年前はまだキャッキャしていたというか、部活っぽさがありましたけど。
冨永悠香:私、このインタビューの為に2年前とか1年前のブログを読んできたんですよ、自分の。「何これ?」って思いました。浮かれすぎてて、本当に部活みたいだって思ったし。でも忘れちゃいけないのは、その頃はひとつひとつのライブがすごく新鮮で、本当にライブの度に楽しんでいて、出れることが嬉しいっていう気持ちがブログを読んでて伝わってきたんですよ。それを今は結構忘れかけているので、初心を取り戻しつつ、今のスタイルのまま行きたいなって思う。
--なんで忘れていっちゃったんだと思います?
冨永悠香:やっぱりステージ上で「今日、ダメだな」って思う日とかも出てくるじゃないですか。それで毎回ライブが怖い時期もあったし、最近は純粋に楽しめていない自分もいるので。
--それはプロ意識が強くなったから? 自分でハードルを高く設定するようになった分、落ち込むことも多くなったりしてる。
冨永悠香:そうです。前はただ歌って踊るのが楽しかったから。でも今はライブの動画とかチェックしてても「あ、ここ、ダメだな」と思うし、現場の空気とかで「今日、ダメだ」って思うことも本当増えてて、そういう日はすごく悔しいし、次が怖くなる。「また次も失敗したらどうしよう?」って。
--なんでそこまで自分を追い込むようになったんですかね?
冨永悠香:常に自分に100点をあげたいじゃないですか、人間って。それが最近は全然できてなくて……これって自己満になるんですかね!? 納得できないライブがすごく多い。私はお客さんの顔色を伺っちゃうんで、本当に楽しそうにしていたら「これでいいんだ!」って思うときもあるし。
--リーダーとしての話も伺っていきたいんですが、この2年間で自分はどんなリーダーになれたと思う?
冨永悠香:私、いまだに自分がリーダーって思えない。
--それは自覚がないってこと?
冨永悠香:自覚はあるんですけど、出来てないなって思います。
--なんで?
冨永悠香:やっぱりメンバーからの信頼ですかね。私についていこうっていうのは、あんまり感じられない。
--「ついてこい!」っていう想いはあるんですか?
冨永悠香:私、普段は妹キャラなんですよ。だから親友とかと遊んでても、その親友が待ち合わせ場所を決めてくれたりするんですけど、Especiaではそんなこと言ってられないじゃないですか。リーダーが妹キャラとか有り得ないし。なので、自分の中でハードル上げて結構ムリしてるんで……自分から信頼できていないのもあるかもしれないですね。
--最近、枕を濡らすことが増えてる?
冨永悠香:結構(笑)。私、涙腺弱いんですぐ泣いちゃうんですよね。
--やっぱり大変?
冨永悠香:アハハ! 大変ですね(笑)。
--どんなところが大変なんですか? リーダーをやっていく上で。
冨永悠香:すべてにおいて「リーダーらしくいなきゃいけない」って思ってしまうんで。それと同時に「中心にいたい」って思ってしまう部分もあるので、そうじゃなかったときとかに「え、なんで?」ってすぐなってしまう。だからストレス感じやすいのかな? でもしょうがないんで。
--「なんでリーダーの私がメインじゃないの?」と思うことがある?
冨永悠香:最初からリーダーで歌割りも多かったんで、あとは下がっていくだけ……っていうか、下がる場合のほうが多いじゃないですか。なので、結構……それがツラいかも。
--今日ここまで話を聞いてみて思ったんですけど、折り合いのつかない悩みをたくさん蓄積してきちゃったんですね。
冨永悠香:自分の気の持ちようだと思うんですけど、自信が全面的にないんで。例えば、どんなリーダーであっても、下がっていくだけだとしても、努力すれば勝ち取れるし、リーダーっぽくもなれると思うので、努力しきれてない自分が一番ダメだなって思います。
--でも「こうしたらいい」って正解を見つけられないまま突っ走っても、それはいつまでも「ツラい、ツラい、ツラい」ってなりますよね?
冨永悠香:たしかにそうですよね。
--まぁ全くキャラの違う若い女の子6人。それをひとつに束ねるのはアイドルじゃなくても大変ですよ。みんな、エゴが強くなる年頃だし。それを踏まえた上でメンバー間の話し合いとかしたらいいんじゃないですか?
冨永悠香:メンバー間で「リーダーとしてどうなんだ?」みたいな話し合いになったことがあったんですけど、なんか、それは全部当たってるんで、やっぱり自分次第だなって思ったし。全員に確認取れてないのに話を進めていっちゃったりとか、全員を見きれてないこともあって、それはダメだったと思うし。……何だろう? 何言ってるか分からなくなってきた(笑)。
--その話し合いって「私がダメだった」ってとりあえず全部受け入れて終わってるんじゃないですか?
冨永悠香:はい、解決はしました!
--それ、解決じゃないですよ(笑)。リーダーが受け入れたフリをしただけじゃないですか。で、無茶して、上手くいかなくて、ゴールが見えず、苦しいだけの今に至る。
冨永悠香:……そうですね。
--自分が目指してるリーダー像ってどんなものなの?
冨永悠香:理想のリーダー像は、メンバーをちゃんと引っ張っていって、何をするにも頼られて、仕事以外、プライベートとかでも仲良くなれるリーダー。でも私は……引っ張るのはもうムリなんで。そういうリーダーとは違うリーダー像を見つけていきたいなって思ってます。
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リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:外林健太
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