Special
japan(finds) vol.6: RASMUS FABER x 高野修平
来日アーティストに様々なものを日本で探究、発見してもらう人気企画、japan(finds)第6弾は、アーティスト/プロデューサー/ソングライター/キーボーディスト/DJと幅広く活動するラスマス・フェイバーと、先日、『始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティング-戦略PRとソーシャルメディアでムーヴメントを生み出す新しい方法-』を出版するなど、音楽業界だけでなく、様々な業種業態のコミュニケーションデザインを手がけるコミュニケーションプランナーとして活躍する高野修平氏とで、音楽マーケティングの現状と課題についての対談を行った。
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高野修平:フィジカル、デジタル、ストリーミングって、それぞれ良さが違うと思います。ラスマスのマーケティング戦略としては、もちろん各国で施策は違うと思うのですが、何に比重を置いていますか? 例えば、既存ファンと新規ファンだとアプローチの仕方は変わってくると思いますが、そういったターゲティングの要素も踏まえてフィジカル、デジタル、ストリーミングを、どのように使い分けているんですか?
ラスマス・フェイバー:スポティファイがリリースされている国では、iTunesよりもスポティファイからのミュージシャンの収入が多い国もあるので、そういった地域では、今はデジタルを重視していてCDやレコードのリリースは、あまり考えていない。でも、日本はCDやアナログの市場が残っているので、全世界に向けての戦略と日本に向けての戦略は分けているんだ。あと、リリース前に少し音楽を聴かせるというプロモーションをとるアーティストもいるけど、今のソーシャルメディアの動きは、あまりにも速くトレンドが変わっていくから、リリースした時には既に飽きられてしまうことを防ぐために、僕は発売のタイミングに合わせて全部公開するようにしているよ。
高野修平:例えば、ソーシャルメディアを使ったマーケティングには、Talk-able、Shar-ble、Buzz-ableという3つの要素が必要だと言われています。それらは、楽曲やミュージックビデオを発信する際に、意識していますか?
ラスマス・フェイバー:トラックにもよるんだけど、僕には意見を聞かせてもらえるファンベースがあるから、そのトラックが昔ながらのファンに気に入ってもらえると思ったらまず彼らにアプローチするし、もしそうでなければSoundCloudのようなプラットフォームにアップロードして音楽をシェアし、アーティストの名前に関わらず、自分の気に入った曲を探すことを好む若いファン層の間で“浸透する”ように手法を変えている。という感じに楽曲によりけりな部分もあるけど、まずアーティストとして第一の目的は、“本物”のアーティストになることだと思う。自分自身に忠実であるトラックを作ること。それがあって初めて、曲をどう展開していけばいいかについて考えることが可能になる。それが、ヒップなサウンドであれば、そういった音を扱っているブログに持っていく、という戦略が選択肢として出てくる。曲を送ってみて向こうが気に入れば記事になるけれども、ならない時もあるし、どのステップにおいてもやはり“偶然”の要素が大きいよね。だからインプロヴィゼーションのようなものだよ。偶然の重なりばかりだから、まるでウォールストリートのようだよ。難しいよね。だから、たまに戦略を持つことと、無造作にことを進めることが紙一重に思えてくる。
高野修平:確かにそうですね。今、ラスマスがリリースされているアニメジャズは、新規ファンを獲得するためには、とても面白い試みだと思いました。アニメを好きだった人が、ラスマスのアニメジャズのアルバムを通じて、ラスマスと出会い、他の曲だと、ハウスもやってるんだ……というようにファンがラスマスの音楽を掘るようなきっかけづくりになる。これは1つの新規ファンを獲得するための方法だと思います。これをラスマスは偶然って言いますが、何にも考えない単なる偶然だとは思えないです。
ラスマス・フェイバー:実は、このプロジェクトがスタートした時、僕はジャズ/アニメ・ファンに、自分がもともと作っていたオリジナル曲を聴いてもらおうとは意図していなかったんだよ。「元々ハウスミュージックを作ってた奴が、なぜアニメジャズをやるんだ?すごく変わってるし、もうこいつの曲なんて聞かない」て思った人もいるかもしれない。でもシュウヘイが言うように両方聞くようになった人もいると思う。僕には見当もつかなかったけど嬉しいことだよね。このプロジェクトをやりたいと思ったのは、楽しそうだし、良い作品が生まれると思ったからなんだ。
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プロフィール
ラスマス・フェイバー スウェーデン生まれのアーティスト/プロデューサー/ソングライター/キーボーディスト/DJ。幼い頃からピアノを始め、10代の頃には地元ストックホルムにてジャズ・ピアニストとしてセッションするように。その後ハウス・ミュージックを制作するようになり、デビュー・シングル「Never Felt So Fly」はいきなり大ヒットを記録、ラスマス・フェイバーの名が世界各地のハウス・シーンに深く刻み込まれる。その後、未だ全く色あせないビッグ・アンセム「Ever After」をリリース。国内外問わず受け入れられ各地で大ヒットを記録し、ヨーロッパ/北米にて数多くのハウス・コンピに収録された。それらシングルを収録した日本編集企画盤『So Far』が04年に日本でハウス・シーンの枠を超えてヒットし話題を呼んだ。08年には1stアーティスト・アルバム『Where We Belong』をリリースし、シングル「Are You Ready」共に大ヒットを記録。その後も数多くのリミックスやプロデュースを手掛け、09年にはRaFa Orchestra名義でバンド・スタイルでの来日を果たした。09年から自身のルーツであるジャズと日本のアニメを融合させた『Rasmus Faber pres. Platina Jazz』企画をサウンド・プロデュース、そのPVがニコニコ動画で本格派のジャパニメーション・ファンを巻き込んで話題になったことから3作品共に大ヒットし、その後日本アニメのオープニング・テーマの作曲・プロデュースを手掛けるまでに。現在ハウス・ファンのみならずアニメ・ファン、ジャズ・ファンをも魅了する稀有なアイコンとなっている。
高野修平 1983年。東京都生まれ。インターネット広告代理店セプテーニ入社。web制作会社を経て、現在はデジタルマーケティング支援会社トライバルメディアハウスにてシニアプランナー/サブマネージャーとして所属。音楽業界ではレーベル、事務所、放送局、音響メーカーなどを支援。音楽業界以外にも様々な業種業態のコミュニケーションプランニングを行っている。書籍では日本初のソーシャルメディアと音楽ビジネスを掛けあわせた著書『音楽の明日を鳴らす―ソーシャルメディアが灯す音楽ビジネス新時代―』(エムオン・エンタテインメント刊)、『ソーシャル時代に音楽を”売る”7つの戦略 “音楽人”が切り拓く新世紀音楽ビジネス』を刊行。最新作は、『始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティング 戦略PRとソーシャルメディアでムーヴメントを生み出す新しい方法』(ともにリットーミュージック刊)を執筆。メディア出演、講演、寄稿など多数。また、THE NOVEMBERSのマーケティング、コミュニケーションデザインなども手がけている。
発売情報
ウィ・ラフ・ウィ・ダンス・ウィ・クライ
- ラスマス・フェイバー
- 2012/12/19 RELEASE
- ビクターエンタテインメント
- [VICP-65101 定価:¥2,376(tax in.)]
- 詳細・購入はこちらから>>
『始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティング
-戦略PRとソーシャルメディアでムーヴメントを生み出す新しい方法-』
高野修平
2014/04/18 RELEASE
リットーミュージック
[定価:¥1,944(tax in.)]
詳細・購入はこちらから>>
内容:
第一章 「世の中を動かすルール」の変化
第二章 戦略PRと音楽
第三章 ソーシャルメディアと音楽
第四章 音楽で世の中を動かす方法
第五章 音楽マーケティングのルールを超えていく先駆者たち
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