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【ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2014】総力レポート
ゴールデンウィークの風物詩 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン(LFJ)が5月3日から5日まで開催された。今回は、第10回目を記念し「祝祭の日」と題し、10人の作曲家が取り上げられた。メイン会場である東京国際フォーラム以外でも、大手町、丸の内、有楽町エリアで無料コンサートなど様々なイベントが催され、前夜祭も含めると、のべ61万人もの人々がクラシック音楽を楽しんだ。
【ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2014】
Photo:K.miura
石丸幹二とジャン・デュベが綴るリスト
今年から新たな会場として加わったよみうり大手町ホールでは、作曲家の想いに触れるコンサートシリーズが開かれた。LFJのアンバサダーでもある石丸幹二は、ピアニストのジャン・デュベと登場し、リストにインスピレーションを与えたというラマルティーニの詩を朗読。ジャン・デュベはリスト「詩的で宗教的な調べより」の中から数曲を演奏した。石丸の声とデュベのピアノが交互に響き、時を超えて2人の思いが交錯しあうような、ひとときが届けられた。
鈴木大介が贈るブーランジェへのオマージュ
マルタンによる今年の「隠れテーマ」は、フランスの偉大なる音楽教師「ナディア・ブーランジェ」。ギターの鈴木大介は、ブーランジェの弟子達の作品にスポットを当てたプログラムを開催。レノックス・バークリー「4つの小品」に続いて、「ソナチネ op.52」はまるで印象派絵画のように目前に立ち上がる演奏。フランセの軽妙洒脱な「セレナータ」の後、鈴木自ら編曲したガーシュイン「ス・ワンダフル」で超絶技巧を披露し、会場全体を圧倒した。アンコールはブーランジェと同時代を生きたアルベール・ルーセル「セゴビア」。これまでもブーランジェを意識したアルバムやコンサートプログラムを組んできた鈴木大介の面目躍如な、充実した時間となった。
※写真はリハーサル
小山実稚恵とベレゾフスキーによるピアノ協奏曲
LFJでは、初来日のアーティストと出会えるのも魅力の一つ。ルネ・マルタン一押しのタタルスタン交響楽団と、日本を代表するピアニスト小山実稚恵が、ラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲 op.43」で華麗な演奏を繰り広げた。続いて、同じくホールAでLFJの常連、ボリス・ベレゾフスキーとウラル・フィルハーモニー管弦楽団によるラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」。今年のソチ五輪で浅田真央選手がFP曲で使用したことで注目を浴びた作品だ。ベレゾフスキーの大きな身体から紡ぎ出される迫力のピアノと、魂を揺さぶられるようなウラル・フィルのハーモニーに5000人が酔いしれた。アンコールはリスト「愛の夢」。激しいピアノコンチェルトとは一転、甘い音色で締めくくられた。
ヴァネッサ・ワーグナーとMURCOFの異色コラボ
テリー・ライリー、スティーヴ・ライヒ、ジョン・ケージ、フィリップ・グラスなどに代表されるミニマル・ミュージック。ルネ・マルタンからのサプライズとして、ミニマルとテクノを融合させた公演が開催された。現代曲や新作初演を得意とし、古楽器から電子ピアノまでを自在に操るピアニスト、ヴァネッサ・ワーグナーと、希代のエレクトロニック・ミュージシャンMURCOFとのコラボレーションという日本初上陸企画だ。取り上げるのは、グラス、ケージ、アダムス、フェルドマンといった、20世紀アメリカを代表する作曲家達。ピアノ独奏とエレクトロニクスが即興的に創り上げる音響空間が、ピアノを拡張された別の楽器へ、コンサートホールをライブハウスへ、アナログからデジタルへ、あらゆる境界線をゆるやかに超えて飛翔させていく。瞬間ごとに変化し続ける音に、感覚がどんどん鋭敏になっていく公演だった。
アルゲリッチ&クレーメル夢の共演
夜22時過ぎ、片付け始める会場も出ている中、熱気に包まれていたホールA。追加公演決定のニュースで大きな話題を呼んだアルゲリッチのステージだ。開場準備が押したこともあり、ロビーはチケットを握りしめた人々の姿で溢れかえっていた。一曲目は、アルゲリッチと酒井茜の二台ピアノによるストラヴィンスキー「春の祭典」。ステージの両サイドに吊られたスクリーンで、どの席からも2人の表情と指さばきを見ることができ、客席にいても息をするのを忘れるほど緊張感が伝わってくる。2曲目は、ギドン・クレーメルも加わり豪華メンバーでサン=サーンス「動物の謝肉祭」。9曲目の「かっこう」でクラリネットのラファエル・セヴェールが、ピアノの後ろに隠れて演奏するというユニークな演出を挟みつつ、全編通じて“こんなに楽しい曲だったんだ”と再認識させてくれる生き生きとした演奏が繰り広げられた。終演予定時間を大幅に過ぎているにも関わらず拍手は鳴り止まず、アンコールとして「フィナーレ」が再度、演奏された。
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