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クリストファー・クロス 来日直前特集

クリストファー・クロス特集

 近年、再評価されることの多いAOR。その言葉を聞くと、ボズ・スキャッグス、ボビー・コールドウェル、ネッド・ドヒニー、マイケル・フランクスといった70年代後半にヒットを飛ばしたアーティストが真っ先に思い浮かぶかもしれない。しかし、80年代に入ってからも、重要なアーティストが登場している。その筆頭がクリストファー・クロスだ。彼のアイコンは、デビュー・アルバムとセカンド・アルバムのジャケットにあしらわれたピンク色のフラミンゴ。そこから想起されるソフトなサウンドや澄んだ歌声は、80年代を代表する音色といってもいいだろう。そして、デビューから35年たった今もその魅力は色褪せていない。恒例となった来日公演が目前となった今、あらためて彼の足跡を辿ってみたい。

80年代の幕開けにふさわしい記念すべきデビュー

 “Mr. フラミンゴ”ことクリストファー・クロスは、1951年生まれ。米国テキサス州サンアントニオ出身。地元では、フラッシュという名前のカヴァー・バンドで活動していたそうだ。そして、独特のハイトーン・ヴォイスが評判となったことを武器に、ワーナーミュージックとの接触に成功。ソロ・アーティストとなるべく、入念な準備を行うこととなる。

 1979年の12月に満を持してデビュー。記念すべきファースト・アルバム『Christopher Cross / 南から来た男』は、80年代の幕開けにふさわしい華やかな作品といえるだろう。参加ミュージシャンを見るだけでも、そのサウンドのクオリティが想像できるのではないだろうか。プロデュースは、ロギンス&メッシーナなどウェスト・コースト・サウンドに欠かせないキーボード奏者のマイケル・オマーティアン。ギターにはラリー・カールトン、ジェイ・グレイドン、エリック・ジョンソンといった名プレイヤーたちが肩を並べ、ヴァレリー・カーターやドン・ヘンリーなど豪華ヴォーカリストも集結。本作からは4曲がシングル・カットされ、いずれも大ヒット曲となっている。

「Ride Like The Wind」
▲ 「Ride Like The Wind」

 最初のシングル「Ride Like The Wind / 風立ちぬ」は、いきなりビルボードHot100で2位をマーク。ちょうど本作のレコーディング中に亡くなったリトル・フィートのローウェル・ジョージに捧げたこのロック・ナンバーには、マイケル・マクドナルドがバッキング・ヴォーカルで参加した。そして、続く「Sailing / セイリング」はビルボードHot100で1位を獲得。ロマンティックなミディアム・チューンは彼の代表曲となり、その後イン・シンクやアヴァーントといった多くのシンガーたちにカヴァーされている。爽快な声とサウンドが印象的な3枚目の「Never Be The Same / もう二度と」、ニコレット・ラーソンがバッキング・ヴォーカルに加わった4枚目「Say You'll Be Mine / セイ・ユール・ビー・マイン」もチャートの上位に食い込んだことに加えて、1980年のグラミー賞では、アルバム・オブ・ジ・イヤーやベスト・ニュー・アーティストなど主要5部門を制する快挙となった。

「Arthur's Theme」
▲ 「Arthur's Theme (Best That You Can Do)」

 この勢いに乗って、翌1981年にリリースされたのが、シングル「ニューヨーク・シティ・セレナーデ / Arthur's Theme (Best That You Can Do)」だ。映画『ミスター・アーサー』の主題歌として録音されたこの曲は、バート・バカラック、キャロル・ベイヤー・セイガー、ピーター・アレンという大御所たちとタッグを組んだ共作曲。ダドリー・ムーアが主演し、ライザ・ミネリやジョン・ギールグッドといった名優が脇を固めたコメディ映画自体の評価も高かったが、主題歌はそれを上回る大ヒットを記録。アカデミー賞とゴールデングローブ賞の両方で主題歌賞を獲得し、80年代の映画主題歌の代名詞となった。

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3曲のヒット・シングルを生んだ待望のセカンド・アルバム

 登場すると同時にスターとなったクリストファーは、3年近くかけて新作を準備。そして、1983年に待望のセカンド・アルバム『Another Page / アナザー・ページ』を発表する。サウンド・プロデュースは、前作に続きマイケル・オマーティアン。参加ミュージシャンもさらにアップグレードし、スティーヴ・ガッド、エイブラハム・ラボリエル、トム・スコット、アーニー・ワッツといった敏腕プレイヤーの他、カーラ・ボノフ、アート・ガーファンクル、J.D.サウザーといった錚々たるヴォーカリストがクレジットされている。ここからも「All Right / オール・ライト」、「No Time for Talk / 悲しきメモリー」、「Think Of Laura / 忘れじのローラ」という3曲のヒットを生み出している。とりわけ、「Think Of Laura / 忘れじのローラ」は、彼の美声を最大限に活かしたバラードで、ビルボード・チャートのアダルト・コンテンポラリー部門で1位に輝いた。

「I Will (Take You Forever)」
▲ 「I Will (Take You Forever)」

 頂点を極めたクリストファーは、その地位に甘んじることなく、新たなトライを続ける。1984年にはロサンゼルス・オリンピックの公式アルバムに「A Chance For Heaven / チャンス・フォー・ヘヴン」を書き下ろし、翌1985年にサード・アルバム『Every Turn Of The World / ターン・オブ・ザ・ワールド』を発表。エッジの効いたロック・ナンバーが中心の作風や、フラミンゴからイメチェンしたハードな印象のアートワークでファンを驚かせた。1988年には、4枚目のアルバム『Back Of My Mind / バック・オブ・マイ・マインド』をリリース。フリートウッド・マックのクリスティン・マクヴィーが参加した「Never Stop Believing / ネバー・ストップ・ビリービング」やミュージカル女優のフランシス・ラッフェルとのデュエット曲「I Will (Take You Forever) / アイ・ウィル」といった話題曲はあったものの、セールス的にはけっして成功とはいえない結果となってしまう。

今も健在な美しいハイトーン・ヴォイス

 90年代に入ると、それまでの10年間を過ごしたワーナーを離れたが、スケール感を増した『Rendezvous / ランデヴー』(1992年)、バンド・サウンドを押し出した『Window / ウインドウ』(1994年)、スタジオ録音とライヴ・レコーディングの変則的な2枚組作品『Walking In Avalon / ウォーキング・イン・アヴァロン』(1998年)とコンスタントにアルバムを発表。不遇の時代ともいえるが、この期間に残した作品は非常に充実しており、ファンには評価も高い。

「Sailing」
▲ 「Sailing」

 2000年代に入るとリリースはストップしてしまったが、その反面ライヴ活動は盛んに行うようになった。2004年頃からは毎年のように来日公演が実施され、そのライヴの良さで再び彼のファンは増えていく。2007年には、初めてのホリデイ・アルバム『A Christopher Cross Christmas』を発表し、9年ぶりのリリースとなった。続いて、2008年にはアンプラグド・スタイルでセルフ・カヴァーを行った『The Cafe Carlyle Sessions』、そして2011年には13年ぶりとなるオリジナル・アルバム『Doctor Faith』が発売されるなど、再び彼の活動が活性化されている。昨年には、パリでライヴ録音を行った『A Night in Paris』がリリースになり、ますますライヴ・アーティストとしての魅力に磨きがかかってきた。恒例のビルボードライブ公演でも、年輪を重ねてきたからこその表現で、往年のヒット曲を楽しめるはずだ。もちろん、当時のハイトーン・ヴォイスは今も健在。2014年ならではの表現力と、変わらぬ美しい歌声を楽しみつつ、精力的に動き始めた彼の今の姿を実際に確かめてもらいたい。

クリストファー・クロス「ベスト・オブ・クリストファー・クロス」

ベスト・オブ・クリストファー・クロス

2013/12/04 RELEASE
WPCR-15330 ¥ 1,257(税込)

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Disc01
  1. 01.風立ちぬ
  2. 02.オール・ライト
  3. 03.サムデイ
  4. 04.ラヴ・イズ・ラヴ
  5. 05.英知の言葉
  6. 06.セイ・ユール・ビー・マイン
  7. 07.セイリング
  8. 08.ニューヨーク・シティ・セレナーデ
  9. 09.エニー・オールド・タイム
  10. 10.チャーム・ザ・スネイク
  11. 11.ターン・オブ・ザ・ワールド
  12. 12.ザット・ガール

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