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アウスゲイル 初来日インタビュー

アウスゲイル 初来日インタビュー

 アイスランド・ロイガルバッキ出身の若干21歳のシンガー・ソングライター、Asgeir (アウスゲイル)。2012年9月にリリースされた全編アイスランド語のデビュー・アルバム『Dyrd idaudathogn』でアイスランド音楽賞主要2部門を含む全4部門受賞、アイスランドの国民10人に1人が彼のアルバムを所有するという驚異的な記録を叩きだす。その独特なファルセット・ヴォイス、温もりあるアコースティック・サウンドと細やかなエレクトロニック・レイヤーが絶妙に絡み合ったキャッチーなサウンドは、ここ日本でもファンを増やしており、2014年1月、デビュー作の英語ヴァージョン『イン・ザ・サイレンス』をリリース。リード・トラックの「キング・アンド・クロス」は、各地FM局にてパワープレイされ、Billboard JAPAN洋楽チャートでも堂々の1位を記録。2月に開催された【Hostess Club Weekender】で初来日を果たし、新人ながら堂々としたパフォーマンスで観客を虜にし、7月には【FUJI ROCK FESTIVAL】に出演するために再び日本にやってくる彼。アイスランドから名実とともに大雪まで連れて来た(?)アウスゲイルの初来日インタビューをお届け!

自発的に音楽学校に行くって言い出したのか、
正直なところよく憶えてないんだ(笑)

「King And Cross」
▲ 「King And Cross」 MV

――今回初来日となりますが、初めての日本はいかがですか?アイスランドから雪も一緒に連れてきちゃったみたいですが…。

アウスゲイル:(笑)。グレイトだよ。昨日着いたんだ。フライトが長かったから、着いたらすぐに何時間か昼寝しちゃったけど。まだあまり色々見て歩けてないけど、来れてとっても嬉しいよ。

――お母さまもお兄さんもミュージシャンとのことですが、小さい頃から多くの音楽に触れて育ったのですか?

アウスゲイル:うん、もちろんだよ。僕もそうだけど、家族もとても音楽が好きで、僕ら家族にとってとても大切なものなんだ。

――ギターは、かなり幼い頃に習い始めたんですよね。

アウスゲイル:そう、6歳の時。初めてのギターはお母さんが買ってくれたんだ。音楽学校に通って、クラシカル・ギターを習ってた。僕の母も同じようにクラシカル・トレーニングを受けて育って、今は先生をやっているよ。でも自発的に音楽学校に行くって言い出したのか、正直なところよく憶えてないんだ(笑)。まだ小さかったからね。でも19歳になるまで通い続けたよ。

「Dyrd i daudatogn」
▲ 「Dyrd i daudatogn」

――因みに、一番最初に書いた曲がどんな曲だったか憶えてますか?

アウスゲイル:実はまったくなんだ(笑)。忘れっぽいから。今でもそうだよ。たとえば昨日曲を書いたとして、それをレコーディングしなかったら今日はもう憶えてない。だから何かを書いたら、記憶に留めておく為にすぐにレコーディングしなきゃいけないんだ。前はわざと忘れるようにしていた。曲を書き始めて、入れ込んできたら、余計に忘れるように務めてた。何時間か、何日か後に聴いてみた時に、真っ新でフレッシュな気持ちで曲と向き合いたいから。だから何かを思いついても、すぐに忘れるようにしてるんだ。

――確かに、そのまま忘れてしまったらそれまでだし、なんらかの形で思い出したとしたら人の記憶に残るような曲の兆しなのかもしれないですし。

アウスゲイル:そう、そのとおりだよ。でも初めて書いた曲に関しては、まったく憶えていないな~。僕の親友たちの方が、よっぽどよく記憶してると思うよ(笑)。

――バンド・メンバーのユーリとか?

アウスゲイル:いや。地元の幼馴染たちで、幼い頃から一緒にプレイしていた仲間。彼らだったら多分憶えてるけど…。

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今僕はここにいないと思う

「Torrent」
▲ 「Torrent」 MV

――では学校卒業後に、ミュージシャンとしてのキャリアを歩もうという気持ちを後押ししたのは?

アウスゲイル:周りにいた人たちが、僕が作っていた音楽を信じてくれたことだね。家族や親友。もし彼らの支えがなかったら、今僕はここにいないと思う。一番の後押しとなったのは、6歳の僕にギターを教えてくれ、コーチでもあった人物。小さい頃はスポーツも大好きで、槍投げもやっていたんだ。僕はとても小さな村で育って、彼は尊敬できる兄のような存在だった。学ぶべきことは、すべて彼から教えてもらった。2012年の初頭に、それまでにレコーディングした曲をいくつか彼に聴いてもらったんだ。その時にもらった「もっと突き詰めてやってみた方がいい。」っていうアドヴァイスを信じて、その日のうちにアイスランドのとあるプロデューサーに電話した。そこからトントン拍子で、すぐにアルバムのレコーディングに取り掛かることになったんだ。

――プロのスタジオ環境は初めてだったと思うのですが、スタジオに入る段階でどの程度曲は出来上がっていたのですか?

アウスゲイル:ほぼ完成していた曲もあるし、また未完成のものもあった。スタジオで書かれたり、アレンジしたものもあるし。ドラム、ギター、ハーモニーは事前に出来上がっていたものが多いね。アレンジに関しては、色々なアイディアにオープンでいたい。大体の場合、何が欠けてるか…どんな楽器を必要としているか、曲をどんな風にビルドアップさせて行ったらいいか、っていうのは曲を書いている時点で自然とわかるんだ。それって僕だけなのかもしれないけど。そこから色々実験したりすることもある。決まったスタイルで曲作りはやってなくて、いつでもオープンな心持ちで挑んでいるよ。

――曲を生で演奏する時もそうですよね。たとえば、ソロでのアコースティック・セットやバンドとのライブ編成だとまた曲の印象が変わってくるのは、とても新鮮で面白いですよね。

アウスゲイル:うんうん。その部分はかなり重んじてるよ。最初からそういう風に曲を表現していきたいと思っていたわけではないけれど、色々なヴァージョンや解釈で演奏してみること…、1人でのアコースティック・セット、それが2人、3人、5人に増えていったらどうなるかって。特に僕のようなアーティストだと、ラジオ番組とかで演奏する時にも役立つからね。

写真
Asgeir 2014.02.15 @ Hostess Club Weekender / Photo: 古溪 一道

「Going Home」
▲ 「Going Home」 (The Toe Rag Acoustic Sessions)

――これまでジョン・グラント、同郷のオブ・モンスターズ・アンド・メンなどのツアー・サポートを務めていますが、この2組のアーティストはサウンドはもちろんですが、ファン層もかなり違うので興味深い経験だったと思います。彼らと演奏することから学ぶことはありましたか?

アウスゲイル:もちろん。個人的には、ジョン・グラントの観客の方に繋がりを感じたよ。音楽のスタイル、特に2ndアルバムは共通点が多いと思うし。オブ・モンスターズ・アンド・メンとのツアーは楽しかったよ。メンバーとは年齢も近いし、クールなキッズだよね。彼らとのツアーは、観客の数が圧倒的に多かったから、その点では有意義で、いい経験だったと思う。ライブをする環境において、僕にとって一番重要なのはサウンド。観客数は気にしないけど、どちらかと言うと中ぐらいのサイズの会場がいいね。それと、あまり大勢の人が集まった会場だと暑いから…(笑)。

――(笑)。アルバムのアイスランド語の詞を英訳するサポートをジョン・グラントがしてくれたそうですが、作業はどのように進めていったのですか?

アウスゲイル:ほぼ一緒に進めて行ったよ。やはりアイスランド語を英語に直訳すると無理があるから、彼に詞のニュアンスだったりを伝えて、話し合いながら訳をしてもらった。レイキャヴィークにあるスタジオに来てもらって、5日間ぐらいかけてやったんだ。バンドのギタリストで、何曲かアイスランド語の詞を手掛けたユーリやプロデューサーも一緒で、その場で英詞バージョンのレコーディングも行った。ジョンがすべて完璧にまとめてくれたから、彼にはとても感謝しているよ。

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父と一緒に何かを創ることができて嬉しく思ってる

「Sumargestur」
▲ 「Sumargestur」 (Live on KEXP)

――元々のアイスランド語の詞は、詩人でもあるアウスゲイルのお父さまが手掛けたそうですね。

アウスゲイル:時間が無かったのもあるけれど、スタジオに入る前に僕が書いた詞は、曲調に合わせて、言葉を適当に並べたりしたもので、深い意味がないものが多かった。ある日一度アイスランド語でレコーディングしてみようという話になったから、父に連絡してみたんだ。それがすごくいい感じに仕上がったから、その後も父に詞を書いてもらうことにしたんだ。もちろん親子だから、他の人に頼むよりスムーズでシンプルに作業が進んだし、一緒に何かを創ることができて嬉しく思ってる。父自身もとても楽しんで取り組んでいたし、献身的で、何か手伝えることがあれば、っていつも言ってくれてるから。

――アイスランドの国民の10人に1人が所有しているデビュー作ですが、様々なプロモーション・ツールが存在する中、アイスランド国内でどのように広がっていったのですか?

アウスゲイル:大きな要因はやっぱりラジオだと思う。きちんとしたマーケティング・プランはなかったけど、一番効果があったのは、アイスランド国内の有名な音楽番組に出演したこと。公の場で自分の曲を演奏するのは、その時が初めてだったんだ。兄や友人も参加してくれて、演奏した曲は「Sumargestur」。それの評判が良くて、口コミで広がっていった。その数週間後に同じ曲をシングルとしてラジオで解禁したら、色々なところでかかるようになって、もっと口コミで広がっていった。その次にリリースしたシングルが爆発的にヒットして、様々なラジオ局で1位になったんだ(照れ笑い)。その数週間後の9月に入った時に、アルバムがリリースされた。他の曲も聴いてみたいっていう興味が湧きはじめた時期だったから、タイミングがすごく良かったんだと思う。

写真
Asgeir 2014.02.15 @ Hostess Club Weekender / Photo: 古溪 一道

「Wrecking Ball」
▲ 「Wrecking Ball」 (Miley Cyrus cover)

――では最後に、今回のアルバム制作過程を経て、ソングライティング、パフォーマンス、プロダクションやアレンジ、どの部分に一番魅力を感じ、今後どの部分をより探究し、磨いていきたいですか?

アウスゲイル:やっぱりソングライティングの部分が一番楽しいし、やりがいがあるよね。無から何かを創り上げていく。僕はこれまで1人で音楽を作ってきたから、作業が自分の気分に左右されることが多かった。スタジオへアイディアを持っていって、プロデューサーやバンド・メンバーに聴いてもらって、その反響がいいと、すごく気分がいいしモチベーションも上がる。そういう部分も魅力的だと感じてるよ。でも考えてみると、どのプロセスにも他とは異なる面白さがあるから、音楽を作ることのすべてが好きだよ(笑)。

――新曲には取り掛かってるのですか?

アウスゲイル:うん。時間がある時にね。

――やはりツアー中だと難しいですよね。

アウスゲイル:今の段階では、ツアー中に書くのは難しいね。予算があって、ホテルが一人部屋だと書いたりするけど(笑)。やっぱり周りに人がいると集中できないから。絶対にっていうわけではないと思うけど…1人で作業する方が好きだね。それにツアーするだけでもちょっとしたストレスだから、2つを一緒にするのは嫌なんだ。でもアイスランドに戻ると、頻繁にスタジオに入って何かしらの作業はしてるんだ。今のところ、6~7曲ぐらい新曲が出来上がっているよ。

アウスゲイル「イン・ザ・サイレンス」

イン・ザ・サイレンス

2014/01/29 RELEASE
HSE-60172 ¥ 2,608(税込)

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Disc01
  1. 01.HIGHER
  2. 02.IN THE SILENCE
  3. 03.SUMMER GUEST
  4. 04.KING AND CROSS
  5. 05.WAS THERE NOTHING?
  6. 06.TORRENT
  7. 07.GOING HOME
  8. 08.HEAD IN THE SNOW
  9. 09.IN HARMONY
  10. 10.ON THAT DAY
  11. 11.LUPIN INTRIGUE (日本盤ボーナストラック)
  12. 12.SOOTHE THIS PAIN (日本盤ボーナストラック)
  13. 13.GOING HOME (ACOUSTIC VERSION) (日本盤ボーナストラック)
  14. 14.SUMMER GUEST (ACOUSTIC VERSION) (日本盤ボーナストラック)
  15. 15.ON THAT DAY (ACOUSTIC VERSION) (日本盤ボーナストラック)

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