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バート・バカラック 来日記念特集

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 「雨にぬれても」、「恋の面影」、「遙かなる影」、「アルフィー」、「世界は愛を求めてる」、etc。“珠玉の旋律”と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、バート・バカラックの音楽ではないだろうか。これらの名曲に、つい嬉しくなったり、心ときめいたり、せつなくなったりしてしまうという人も多いはず。高度な音楽理論に裏打ちされながらも、誰もが口ずさめるメロディは、音楽ファンでなくても絶対にどこかで聴いたことがある。ジョージ・ガーシュインやレノン=マッカートニー並んで、ポピュラー・ミュージックの頂点に君臨するソングライターであることは間違いない。

そんな偉大な作曲家であるバート・バカラックが、この春2年ぶりに来日する。今回は、バンド・スタイルとオーケストラ編成の二本立て。永遠に輝くグッド・ミュージックを作者自身の生演奏で体感できるパフォーマンスは、すべての音楽ファン必見。ここではその予習も兼ねて、彼の長い歴史を紐解いてみよう。

高橋 幸宏 バート・バカラックと僕の「映画音楽」>

初期:ディオンヌ・ワーウィックとの出会い

 バート・バカラックは、1928年5月12日にミズーリ州カンザスシティで生まれ、その後すぐにニューヨークのクイーンズへ移り住んだ。8歳から母親の影響でピアノのレッスンを始め、フランスの印象派からディジー・ガレスピーまで、様々な音楽から影響を受ける。ハイスクール卒業後は、ピアニストとして様々な歌手のサポートを務めていたが、最初に注目を集めたのはドイツの女優であるマレーネ・ディートリッヒの音楽監督として。ピアニストとしての仕事と並行しながら作曲活動を行ううちに作詞家のハル・デイヴィッドと出会い、それからはソングライターとして怒濤の活躍ぶりを見せることになる。ビートルズもカヴァーしたことで知られるシレルズの「ベイビー・イッツ・ユー / Baby It's You」(1961年)や、ジーン・ピットニーの「愛の痛手 / Only Love Can Break A Heart」(1962年)などが、バカラックの初期を代表するヒット曲だ。

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▲D.ワーウィックのデビューアルバム『Presenting』

しかし、彼の才能を決定付けたのは、なんといってもディオンヌ・ワーウィックとの出会いだろう。1962年のデビュー曲「ドント・メイク・ミー・オーヴァー / Don't Make Me Over」が、ビルボードのポップ・チャートで21位、R&Bチャートで5位を記録。以来、数々のヒットを生み出すこととなった。「恋するハート / Anyone Who Had A Heart」、「ウォーク・オン・バイ / Walk On By」、「リーチ・アウト / Reach Out For Me」、「マイケルへのメッセージ / Message To Michael」、「アルフィー / Alfie」、「世界の窓と窓 / The Windows Of The World」、「小さな願い / I Say A Little Prayer」、「ディス・ガール / This Girl's In Love With You」、「エイプリル・フールス / The April Fools」といったチャート1位を含むシングル曲を連発。また、「サン・ホセへの道 / Do You Know The Way To San Jose」と「恋よさようなら / I'll Never Fall In Love Again」では、彼女にグラミー賞をもたらした。1972年まで10年強タッグを組んだディオンヌとのヒット曲は、そのままバカラックの代表作といってもいいだろう。

音楽史に残る名曲ヒット曲を量産

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▲マンフレッド・マン
『マイ・リトル・レッド・ブック』

 もちろん、バカラックはディオンヌ以外にも名曲とヒット曲を量産した。ジャック・ジョーンズ「素晴らしき恋人たち / Wives And Lovers」(1963年)、ジャッキー・デシャノン「世界は愛を求めてる / What The World Needs Now Is Love」(1965年)、トム・ジョーンズ「何かいいことないか仔猫ちゃん / What's New, Pussycat?」(1965年)、マンフレッド・マン「マイ・リトル・レッド・ブック / My Little Red Book」(1965年)、ハーブ・アルパート&ザ・ティファナ・ブラス「ディス・ガイ / This Guy's In Love With You」(1968年)、カーペンターズ「遙かなる影 / (They Long To Be) Close To You」(1970年)、フィフス・ディメンション「悲しみは鐘の音と共に / One Less Bell To Answer」(1970年)、スタイリスティックス「遠い天国 / You'll Never Get to Heaven (If You Break My Heart)」(1972年)などが代表的なところだろうか。共作やカヴァーなどを含めると膨大な名曲名演が残されているのはご存じの通りだ。

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▲ソロとしては4作目となる
『バート・バカラック』

 自身でも、1965年にロンドンで録音したアルバム『ヒット・メイカー! / Hit Maker!』を皮切りに、定期的にリーダー作を発表。とくに、A&Mからリリースされた『リーチ・アウト / Reach Out』(1967年)、『メイク・イット・イージー・オン・ユアセルフ / Make it Easy On Yourself』(1969年)、『バート・バカラック / Burt Bacharach』(1971年)などは、彼のメロディとアレンジをたっぷり堪能できる好盤としてファンにも人気が高い。基本はインストゥルメンタルだが、「ハウス・イズ・ノット・ホーム / A House Is Not A Home」や「メイク・イット・イージー・オン・ユアセルフ / Make It Easy On Yourself」など、自らがヴォーカルを取る楽曲の味わい深さもまた格別だ。また、ニール・サイモンが脚本を書いたブロードウェイ・ミュージカル『プロミセス、プロミセス / Promises, Promises』(1968年)のような力作も残している。

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Writer:栗本 斉

(V.A.) ディオンヌ・ワーウィック コニー・スティーヴンス カテリーナ・ヴァレンテ シェルビー・フリント トリニ・ロペス ラヴ マーティ・ペイチ「バート・バカラック・ソングブック ワーナー・エディション」

バート・バカラック・ソングブック ワーナー・エディション

2013/09/25 RELEASE
WPCR-15100/1 ¥ 3,353(税込)

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Disc01
  1. 01.ドント・メイク・ミー・オーヴァー
  2. 02.アンド・ジス・イズ・マイン (MONO)
  3. 03.ユーアー・フォローウィング・ユー
  4. 04.フォーギヴ・ミー (MONO)
  5. 05.ホワッツ・ニュー・プッシーキャット (MONO)
  6. 06.愛の想い出(オールウェイズ・サムシング・ゼア・トゥ・リマインド・ミー)
  7. 07.メード・イン・パリ (MONO)
  8. 08.マイ・リトル・レッド・ブック (MONO)
  9. 09.プロミス・ハー・エニシング
  10. 10.クロス・タウン・バス
  11. 11.汽車とボートと飛行機と
  12. 12.恋の面影
  13. 13.世界は愛を求めてる
  14. 14.ウォーク・オン・バイ
  15. 15.ロング・アフター・トゥナイト・イズ・オール・オーヴァー
  16. 16.ジャパニーズ・ボーイ
  17. 17.ベイビー・イッツ・ユー (MONO)
  18. 18.ディス・ガイズ・イン・ラヴ・ウィズ・ユー
  19. 19.小さな願い
  20. 20.アイ・ウェイク・アップ・クライング
  21. 21.恋の面影
  22. 22.世界は愛を求めてる
  23. 23.恋よ、さようなら
  24. 24.恋よ、さようなら
  25. 25.雨にぬれても
  26. 26.恋するメキシカン

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