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映画『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』~ オスカー・アイザック インタビュー
巧みなストーリー構成と心理描写、独特なブラック・ユーモアが冴える唯一無二の世界観で、『ファーゴ』『ビッグ・リボウスキ』『ノーカントリー』をはじめ、数々の名作を生み出してきたジョエル&イーサン・コーエン兄弟。約2年ぶりの監督作となる最新作『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』では、60年代のNYフォーク・ミュージック・シーンを売れないシンガーソングライター、ルーウィン・デイヴィスの視点を通して描き、カンヌ国際映画祭にてグランプリを受賞。今作の主役ルーウィン・デイヴィスを演じたオスカー・アイザックのインタビューとともに作品の魅力を紹介。
▲ 「Inside Llewyn Davis」 Official Trailer
1961年ニューヨーク、グリニッジ・ヴィレッジ…ボブ・ディランを筆頭とするフォーク・ミュージック・シーンの幕開けを、とある売れないシンガーソングライターの日常を通して綴るコーエン兄弟監督による最新作『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』。ディランに影響を与えたことでも知られる実在のシンガーソングライター、デイヴ・ヴァン・ロンクの回想録『The Mayor of MacDougal Street』をベースに、音楽通のコーエン兄弟による長年の構想を経て、完成した約2年ぶりとなる監督作品だ。プレミア上映された2013年カンヌ国際映画祭では、見事グランプリを受賞、その後もニューヨーク映画祭、トリノ国際映画祭などで公開され、全米映画批評家協会賞では4冠を達成、各国主要メディアによる2013年の年間ベスト・フィルムにも軒並み名を連ねており、ここ日本でも、2014年初夏にロードショーされる予定だ。
ジャスティン・ティンバーレイクを筆頭とする若手キャスト
▲ "New York New York" from 『SHAME -シェイム-』
兄ジョエル・コーエンの実妻であるフランシス・マクドーマンドをはじめ、スティーヴ・ブシェミ、ジョン・グッドマンらのコーエン作品常連組、『ビッグ・リボウスキ』のジェフ・ブリッジスや『ノー・カントリー』のハビエル・バルデムなど、どこかオフビートでアクの強いキャストを起用することで知られる彼ら。今作のヒロイン役には、2009年公開の『17歳の肖像』でアカデミー賞最優秀女優賞にノミネートされ、一躍脚光を浴びた若手No.1女優キャリー・マリガン。2011年の『SHAME -シェイム-』ではマイケル・ファスベンダー演じる主人公が惹かれる歌手役としてフランク・シナトラの「ニューヨーク・ニューヨーク」を披露し、その儚くも麗しい美声で観客を魅了した。
さらに、昨年リリースされた『20/20エクスペリエンス』が、米ビルボード年間アルバム・チャートにて1位を記録するなど、世界的ポップスターとして知られるジャスティン・ティンバーレイクは、キャリー演じるジーンのシンガーソングライターの夫役を。【ゴールデン・グローブ賞】にて作品賞を受賞した『ソーシャル・ネットワーク』ではナップスターの創業者 / FacebookのCEO役を熱演するなど、俳優としても評価されており、従来のコーエン作品とは一味変わった“王道な”キャスティングも話題になっている。
作品の舞台がニューヨークということもあり、脇を固めるのはニューヨークを題材とした近年の作品に大きく貢献している新進気鋭の若手2人、アダム・ドライバーとアレックス・カルボウスキー。両者とも2010年代のニューヨークに暮らす20代のリアルな姿を描き、昨年【ゴールデン・グローブ賞】を受賞した米HBOにて放映中のTVドラマ・シリーズ『Girls 』に出演。前者のアダムは、2013年に全米で公開されたニューヨークを舞台とした作品では、今作に匹敵する高評価を得た、ノア・バームバック監督とグレタ・ガーウィッグが再タッグを組んだ『Frances Ha』にも起用、さらにマーティン・スコセッシ監督の最新作『Silence』に出演することが先日発表され、今最も注目される若手俳優の一人だ。
そんな若めの実力派、個性派キャストの中でも異彩を放つのは、(なんとなく風貌がドクター・ジョンを彷彿とさせる)ヤク中のジャズ・ミュージシャンを演じるジョン・グッドマン。劇中、ほぼ寝ている上に、発する言葉が理解不能なのにも関わらず、鮮烈なインパクトを残しているのは、さすがコーエン作品常連といえるだろう。
ボブ・ディランによる未発表曲収録のサウンドトラック
音楽映画ということなので、もう一つの注目点はもちろんその音楽だ。音楽プロデューサーには、コーエン兄弟に加え、監督作『オー・ブラザー!』のサウンドトラックを担当した巨匠Tボーン・バーネット、さらにグラミー賞受賞経験のあるマムフォード&サンズのヴォーカリストでキャリー・マリガンの夫でもあるマーカス・マムフォードがアソシエイト・プロデューサーに抜擢、編曲などを担当し、パンチ・ブラザーズとともにゲストとしても参加。
サウンドトラックには、【ゴールデン・グローブ賞】にて最優秀主題歌賞にもノミネートされた「Please Mr. Kennedy」など劇中にて出演者たちによって披露された楽曲、デイヴ・ヴァン・ロンクの「Green, Green Rocky Road」やナンシー・ブレイクによるカーター・ファミリーのメンバーとして知られるA.P.カーター作曲の「The Storms Are on the Ocean」が収録。そして映画のラストに演奏されるボブ・ディランの「Farewell」が収録。この曲は、1964年にリリースされたディランの3rdスタジオ・アルバム『時代は変る』のセッション中に書かれたものだが、オフィシャル音源として発表されるのは今回が初めて。これまでブートレグなどに収録されたことはあるが、数々のアーティストがカヴァーしてきた名曲ということもあり、ファンには嬉しい限りだ。
また2013年9月にはNYのタウン・ホールにて、映画のキャスト、音楽プロデューサー勢に加え、ジョーン・バエズ、パティ・スミス、ジャック・ホワイト、アヴェット・ブラザーズなど錚々たるアーティストが出演した一夜限りのコンサート【ANOTHER DAY / ANOTHER TIME: CELEBRATING INSIDE LLEWYN DAVIS】も開催され、この模様や作品の音楽に迫ったドキュメンタリー作品の制作も行われ、ライブの音源もNONESUCHより近日リリースされるとのことだ。
リリース情報
インサイド・ルーウィン・デイヴィス
- オリジナル・サウンドトラック
- 2014/01/15 RELEASE
- [WPCR-15439(CD)]
- 定価:¥2,580(tax in.)
- 詳細・購入はこちらから>>
関連リンク
ルーウィン・デイヴィス役のオスカー・アイザックとは?
そして主人公のルーウィン・デイヴィス役を務めたのは、今作が初主演作となる現在34歳のオスカー・アイザックだ。演技力はもちろん、説得力のある演奏と歌唱力が必要とされたこの役のキャスティングは困難を極め、俳優からミュージシャンに至るまで、様々な人材をオーディションするものの、中々目ぼしい人物が見つからず、一時期は暗雲が立ち込めたそう。最近ではブライト・アイズのコナー・オバーストもルーウィン役のオーディションを受けたこと告白している。だがオスカーは、この難しい役どころへ果敢に挑み、 【ゴールデン・グローブ賞】では、作品賞はもちろん、主演男優賞、そして最優秀主題歌賞にもノミネートされた。
▲ Oscar Isaac Performs a Folk Version of "Roar"
『ミラーズ・クロッシング』のポスターを自身の部屋に貼るほどコーエン兄弟の大ファンだったというオスカー。名門芸術校のジュリアード大学を卒業したのちに、人気刑事ドラマ『LAW & ORDER クリミナル・インテント』へのゲスト出演などを経て、2008年公開のレオナルド・ディカプリオ&ラッセル・クロウ主演の『ワールド・オブ・ライズ』やマドンナ監督作『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』に出演するなど、俳優としてのキャリアを着実に積んでいく。今作でヒロイン役を演じたキャリー・マリガンとは2011年公開のニコラス・ウィンディング・レフン監督の『ドライヴ』に続く、2度目の共演となる。
そんな彼だが、学生時代からパンク・バンドに所属するなど、演奏経験はあったものの今作の“コア”となるフォークにチャレンジするのは今回が初めてだったそう。でも役を通じ、すっかりその魅力になったようで、先日出演した米TV番組『Late Night with Jimmy Fallon』でケイティ・ペリーの大ヒット曲「ロアー~最強ガール宣言!」をフォーク調で演奏するお茶目な姿も披露している。
??これまで馴染みがなかったフォーク・ミュージックについて学ぶ上で、まずどこから始めたのですか?
オスカー・アイザック:初めてのオーディションでは、全員「Hang Me」を演奏しなくてはならなくて、デイヴ・ヴァン・ロンクのヴァージョンが送られてきた。役の手掛かりになるのが、それしかなかったから、彼がレコーディングした作品をすべて聴いて、それらを演奏することを努めた。彼の演奏スタイルや歌う曲にゾッコンになったね。彼は古い曲を見つけ、それを再アレンジするんだ。
??彼と同世代のミュージシャンは、ハリー・スミスの『Anthology of American Folk Music』などの1920年代や30年代の作品から学んだと思うのですが、ヴァン・ロンクに影響を与えた作品も聴きましたか?
オスカー:もちろんだよ。映画に使われていない曲も多く学んだんだ。「Green Rocky Road」は、自分で学んだけど、最終的に劇中でも演奏することになった。レヴァランド・ゲイリー・デイヴィスによる「Cocaine」もそうだね。それと(ミシシッピ・ジョン・ハートの)「Candy Man」、「St James Infirmary」のヴァン・ロンクによるヴァージョン。彼の「Mack the Knife」のアレンジも学んだな。かなりアグレッシヴで、クルト・ワイルによるオリジナルには入っているけど、滅多に使われないヴァースも組み込んでる。「Kentucky Moonshiner」もだね。
??今作は1年以上前に完成しましたが、作品のプロモーションの為に再び役を演じなければならないことがほとんどですよね。今現在、またこういった音楽に触れ、生で演奏することを撮影の時とは別物と感じていますか?
オスカー:(フォーク・ミュージックが)プロテスト・ミュージックであることには理由がある。率直に表現することが出来れば、とてもダイレクトなんだ。シンプルでありつつも効果的。それに歴史があるということ―絶望の地から生まれた音楽だからね。僕自身がこの映画の好きなところは、作品がひとつの“歌”だからだ。映画は、1961年のグリニッジ・ヴィレッジを表したものでもなければ、それを再現したものでもない。コーエン兄弟はフォーク・ミュージシャンがすることをやった―継承されてきた古いものに自分たちの想像力を加え、満たし、新たなものを創り上げた。
??ミュージシャンとともに、この役を演じるというのはいつ頃聞かされたのですか?
オスカー:最初の頃は、誰も知らなかったと思う。でも僕はクールだと思ったよ。音楽を演奏するのは大好きだし、Tボーンやコーエン兄弟が、そこら辺にいるような人を選ぶわけない―いつも素晴らしい人々と作品づくりしているから。でも、さすがだよね。プロモーションという行為からですら、美しいものを作り上げてしまったんだから。
▲ Another Day/Another Time: Celebrating The Music of "Inside Llewyn Davis"
??NYやLA、テルライド映画祭で行われた作品の音楽を中心としたイベントについてですね。中でも、個人的なハイライトは?
オスカー:NYのタウン・ホールでのバックステージだね。パティ・スミス、ジョーン・バエズ、それにジャック・ホワイト、そしてパンチ・ブラザーズ、ジリアン・ウェルチ、デイヴ・ローリングスが隣にて、自分たちだけの為に、これだけの人々が集って演奏をし、心を交わすことができたなんて。自分がその場にいて、貢献できたということは、僕にとってとても感概深い出来事だったね。
Q&A by Phil Gallo / 2014年1月7日 Billboard.com掲載
リリース情報
インサイド・ルーウィン・デイヴィス
- オリジナル・サウンドトラック
- 2014/01/15 RELEASE
- [WPCR-15439(CD)]
- 定価:¥2,580(tax in.)
- 詳細・購入はこちらから>>
関連リンク
インサイド・ルーウィン・デイヴィス~オリジナル・サウンドトラック~
2014/01/15 RELEASE
WPCR-15439 ¥ 2,703(税込)
Disc01
- 01.ハング・ミー、オー・ハング・ミー
- 02.フェア・ジー・ウェル(ディンクス・ソング)
- 03.ザ・ラスト・シング・オン・マイ・マインド
- 04.ファイヴ・ハンドレッド・マイルズ
- 05.プリーズ・ミスター・ケネディ
- 06.グリーン、グリーン・ロッキー・ロード
- 07.クイーン・ジェーンの死
- 08.ザ・ロヴィング・ギャンブラー
- 09.ザ・ショールズ・オブ・ヘリング
- 10.ジ・オールド・トライアングル
- 11.ザ・ストームズ・アー・オン・ジ・オーシャン
- 12.フェア・ジー・ウェル(ディンクス・ソング)
- 13.フェアウェル
- 14.グリーン、グリーン・ロッキー・ロード
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