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片平里菜 『女の子は泣かない』インタビュー
1月13日 TBSテレビ『Sound Room』にてMCの中居正広やリリー・フランキーも絶賛。15日にはニューシングル『女の子は泣かない』をリリースした片平里菜が、昨年夏にデビューしたばかりの新人に関わらず、早くも初の海外進出が決まった。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いの彼女が一体今何を考え、どんな野心を胸に秘めているのか。楽しげに語ってもらった。
初の海外進出~「外国人になりたかった」ってずっと思ってた
--新曲「女の子は泣かない」、めちゃくちゃ可愛いですね。ここまでポップに振り切れたら片平里菜は売れますよ。もうみんな応援したくなるもん。
片平里菜:私には思い付かないアレンジ(この曲の編曲は、aikoやいきものがかり等の楽曲を手掛ける島田昌典)というか、私はなるべくシンプルな洋楽を聴いてきたので、こんなにポップでキラキラしたものになるとは思わなくって。だからたくさんの人に聴いてもらえる曲だなって思ったし、ひとつこういう曲があってもいいのかなって。私も気に入ってます。
--新曲の話は後ほど詳しく聞かせて頂くとして、先日、山崎あおいさんにインタビューしてきたんですが、片平さんと「お友達になりたいです」という伝言を預かって参りました。直接伝える勇気がないらしいので。
片平里菜:(笑)。そのインタビュー読みましたよ。イベントとかで一緒になるんですけど、ゆったり過ごす時間がないので挨拶程度しかできてなくて、まだちゃんとお話ししたことがないんです。すごく清純な女の子、面白い女の子なんだろうって思いながらも。
--前回のインタビューで「同世代のアーティストさんと仲良くなりたい。でも自分が自分の殻を破けてないんです」と仰ってましたけど、少しは変われた?
片平里菜:たまに同世代のアーティストさんと会う機会があって、赤い公園さんとかご一緒させて頂いてるんですけど、でもなんか……その先には行けない。「プライベートで遊ぼうよ」みたいなことは言えてない(笑)。
--新山詩織さんとは写真撮ったりしてましたよね? あれはどういう流れで?
片平里菜:イベントで一緒になって、私もずっと新山詩織さんを気になっていたのでお話しさせてもらったら、結構心を開いてくれたというか、喋ってくれたんですよ。で、帰り際に詩織ちゃんの方から「写真いいですか?」って。それでSerenaさんと3人で撮らせてもらいました。やっぱり女性シンガーソングライター同士、似た部分はあるなって。同じ匂いはしましたね(笑)。気になるし、もっと深く接したいなっていつも思っています。
--そうやって繋がっていく中で、女性シンガーソングライターもロックやアイドルみたいにシーンごと盛り上がっちゃえばいいのにと思ったりしません?
片平里菜:あんまり考えたことなかったです(笑)。でもたしかにそうですね。女性シンガーソングライターがこれだけ増えてきてるんだから、もっと盛り上がってほしいですよね。何か企画的なことをやったらいいんですかね? そんなに大きなことをやらなくても、お互いのライブに呼び合ったりしたらいいのかなとは思うんですけど。
--その積み重ねでフェスとか出来たらいいですよね。海外では女性シンガーだけのフェスってあるんで。
片平里菜:え、あるんですか?
--全米やカナダで【リリス・フェア】というフェス(サラ・マクラクランが提唱し、フィオナ・アップル、シェリル・クロウ、スザンヌ・ヴェガ、ベス・オートン等々、錚々たる女性アーティストが賛同)が開催されてます。
片平里菜:凄いですね。
マネージャー:片平里菜、実は海外進出するんですよ。世界最大の楽器トレードショウ【the NAMM show 2014】に。このインタビュー掲載タイミングでは解禁されてる情報なんですけど。
--それも凄い話ですね。
片平里菜:ずっと洋楽ばかり聴いてきたので、淡々としたカントリーみたいな音楽が好きなんですね。その発祥地であるアメリカに行けるのはすごく嬉しい。「外国人になりたかった」ってずっと思ってたんで。そのわりに英語とか全然勉強してないんですけど(笑)。私がアメリカで通用するとは思っていないんですけど、気持ちを込めて歌えたらと思ってます。めちゃくちゃブーイング受けるかもしれないし……でもそれはそれで知りたいというか、自分の実力を知りたい。
--たくさんいる女性シンガーソングライターの枠から誰が最初に抜け出していくのか。唯一無二の存在になるのか。みたいな形で注目したら物凄く面白いんですけどね。今の若手女性シンガーソングライターのシーンって。
片平里菜:なるほど。
--でもいつまでも誰も抜きん出られないシーンでは、それは成立しません。その抜きん出る役目、海外からも呼ばれた片平里菜なら背負える可能性が十分にあると思うんですが、自分ではどう思います?
片平里菜:どうですかね? でも今は「誰々に似てる」って言われても気にしていなくて、おそらく続けていくうちに自分の色は濃くなっていく。だからそこは気にせず自然に音楽をやっていけば、その場所には立てるのかなと思ってます。ちょっと気を衒ったことをするとかじゃなくて。
リリース情報
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄
「本当にずっとついてきてくれるのかな?」
っていう不安もある
--新曲「女の子は泣かない」、めちゃくちゃ可愛いですね。ここまでポップに振り切れたら片平里菜は売れますよ。もうみんな応援したくなるもん。
--今、片平里菜がどの辺の位置にいるのか、2013年を振り返りながら確認できればと思うんですが、まず自分ではデビューイヤーとなった2013年は、どんな1年になったなと感じていますか?
片平里菜:デビューして応援してくれる人はさらに増えたし、デビューへの準備期間もいろんなジャンルのイベントなどに足跡をつけてきたので、ロック界隈もそうだし、女性シンガーソングライターのお客さんのところもそうだし、Goose houseっていう場所もそうだし、今までやってきたことがちゃんと実になって、結果として表れたなって思う。最初からドカン!とは行かなかったですけど、余裕を持って先を見据えられる感じはあります。
--夏にはいろんな大型ロックフェスにも出ていきましたよね。どんな気分でしたか?
片平里菜:サマソニとかは私が憧れるような海外アーティストもたくさん出ていたので、そこに自分も出れるのは本当に嬉しかったですし、意識も結構変わりましたね。それまで見上げていたものを「いつかは追い越したいな」みたいな気持ちになりました。
--あと、インストアイベント系も入れると、2013年って相当な数のライブ本数になってるんじゃないですか? 二日にいっぺんぐらいのペースでライブしていた印象なんですけど。
片平里菜:していたかもしれないですね。
--その怒濤のライブラッシュの中で何か掴めたものってありました?
片平里菜:明るくなったかもしれないですね。人と毎日いるので、どんなときでも接してなきゃいけないし(笑)。あと、リリースイベントとか、CD買ってくれたお客さんと握手して、話す機会がいっぱいあったので、とにかく聴いてくれる人との距離が縮まったというか。
--新シングルにも収録されている「Hey boy!」では、コール&レスポンスで大合唱を毎回生めるようになりました。あのお客さんに一緒に歌ってもらう為のアクションって何きっかけでやるようになったの?
片平里菜:やっぱりライブなので「一方的なのは嫌だな」って思うようになっていって、次のステージに行きたかったんですよね。そのときはお客さんと対話する力は全然なかったんですけど、一方的に淡々と歌っているだけだと「楽しんでるのかな?」って思うじゃないですか。反応が分からないし。ロックバンドが好きなので、もどかしさはありました。ライブ中にお客さんがただ立って観ているだけの形には。でもコール&レスポンスとかシンガロングとかをしてみると、お客さんの表情が見えるというか、「あ、ちゃんと楽しんでてくれてたんだ!」みたいな。
--そうしてライブに開放的な要素も加わったことで、片平里菜の明るい面というか、無邪気な面が表にどんどん出ていくようになりましたよね。自分ではどう思いますか?
片平里菜:いつもキャピキャピしているような性格ではないんですけど(笑)、でもひとつのライブで自分の多面性を見せられたらなと思うし、そういう明るい曲をやることでもっと深いところで鳴るようなバラードとかも映えるというか、響くと思って。だから欠かせなくなってきました。コール&レスポンスとか。
--そうしたライブを続けていく中で、今、確実に自分の歌を聴いてくれる人が増えていってる実感はある?
片平里菜:ありますね。1年ぐらい前までは、地元でライブしても「お客さん、10人来たかな?」みたいな感じだったんですけど、今は本当にたくさん来てくれるようになりましたし、全国どこへ行っても誰かが待っているのは不思議ですね。顔を覚えちゃうぐらい何回も来てくれる人がいたりして、それは嬉しい。
--今、片平里菜の音楽を聴いてくれるリスナーやファンって、自分にとってどんな存在になってるんですか?
片平里菜:どこか自分を投影してしまう部分はあるかもしれない。似ている人たちなんだろうなって。だからこそ一緒に成長していきたいと思うし。あと、自分の歌がどこかで生活の糧になってくれたらなって。だから最近は集まったファンレターを入れる箱を作りました(笑)。それで「里菜ちゃんの「始まりに」を聴いてから憧れて、最近ライブでカバーしたんだけど、スタッフさんにすごく褒められた!」みたいな手紙を読んで、気が沈んでるときとかは「こんなに愛されてたんだ」って泣いたりして。
--ライブをしたり、ファンと交流していく中で「この人たちと武道館で一緒に歌えたら」とか「あの人にも今回の曲を楽しんでもらえたらな」とか、そういうことを思う瞬間ってあります?
片平里菜:そこまでの欲はまだ持ってないかもしれない。この状況が続けばいいなとは思うんですけど。
--そういう想いが「売れないと意味がない」って覚悟を決めて戦っていく理由に加わったら、片平さんにとって力になるんだろうなと思って。みんなを仲間だと思うことができたら。
片平里菜:なるほど。いろんなアーティストさんの武道館ライブは観てきたので、そこに立つにはどうすればいいんだろう?とは思います。でもまだ「私の音楽を聴いてくれている人たちが本当にずっとついてきてくれるのかな?」っていう不安もあるんです。いつかは大きいステージでワンマンライブをしてみたいですけどね。
--そこで2ndシングル『女の子は泣かない』の話へ移行していきたいんですが、そもそもこの曲はどんな背景や想いから生まれたものなんですか?
▲Christina Aguilera - The Voice Within
片平里菜:タイトルが先にあって、クリスティーナ・アギレラの「The Voice Within」っていう曲の「Young girl,don't cry」っていうフレーズがずっと心に残っていて。それでとてもしんみりした曲を作ったんですけど、スタッフさんに聴かせたら「タイトルはすごく良いんだけれども、曲調がちょっと暗いかな? このタイトルで明るく軽快な曲を作ってほしい」みたいな。それで生まれたのがこの曲です。
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Interviewer:平賀哲雄
「男の子に可愛いって思われるんだろうな」って
--大人的な視点で見ちゃうと、勝負かけてきたなと思いまして。この曲を、この片平里菜を好きになる人はいっぱいいますよ。って、少なくとも片平里菜の周りにいる大人は思ったと思う(笑)。
片平里菜:ただ、私自身とこの曲に出てくる女の子は掛け離れているような気もしていて(笑)。この曲は友達の体験談を自分なりに解釈して作ったものなんですよ。それがスタッフさんの中で大ヒットしてくれて、どんどん曲だけが成長していった感じがすごくあって。だから私も「こういう女の子、良いな」って思います。自分と違うがゆえに。「男の子に可愛いって思われるんだろうな」って。
--僕は、この曲は、片平里菜がちょっと背伸びしてる印象を与えるところに最大の魅力はあると思っていて。タイトルからしてそうですけど、健気に強がっている訳ですよね、この曲のヒロインは。それがたまらなく愛おしく感じるんです。あれ、引いてます?
片平里菜:引いてないです(笑)。
--実際にはどんなヒロイン設定で書いた歌詞なの?
片平里菜:自分と同じ歳ぐらいで、大学生で、強がりで、でもちょっとおっちょこちょい。誰かにちょっと嫉妬されちゃいそうな可愛い女の子。で、最初は友達の体験談ベースの部分はワンコーラスだけだったんですけど、そこからどう展開していくかっていう部分が大変で。最終的には、今の女の子の悩みって恋愛だけじゃないと思ったんで、恋愛以外の私生活も織り込んだんです。
--片平里菜も恋をするとこうなる?
片平里菜:周りは見えなくなるかもしれないですね。私も高校生のときは「失恋して、バイトも上手くいかなくて……もう何もかも上手くいかない」みたいな時期はありました(笑)。
--こういう曲をシングルで切ると、インタビューで恋愛系の質問増えるでしょ? どう対応してるの?
片平里菜:こんな感じです。私に恋愛系の質問をしても解答が面白くならないんですよ(笑)。
--だって、日頃、ガールズトークとかしてないでしょ?
片平里菜:してないんですよ~。したとしても私に話すネタがないから、ひたすら聞いてます(笑)。
--2ndシングル『女の子は泣かない』、ここまで振り切ったからにはたくさんの人に聴いてほしいよね。
片平里菜:うん。メジャーデビュー曲「夏の夜」は“片平里菜の「夏の夜」”っていう曲でしたけど、今回は“「女の子は泣かない」を歌っている片平里菜”っていう感じなので。自分の名前よりインパクトが残せる曲なのかなって。「この曲って片平里菜が歌ってたんだ?」みたいなことになるのかなって思ってます。
--このシングルは片平里菜の懐の深さ、幅広い音楽性を体感させるシングルなので、いろんな意味で重要だと思いますよ。「ironic」や「ぺんぺん草」のファンになる人もいっぱいいると思うし。
片平里菜:そうですね。1曲だけじゃ自分を表現できないので。「女の子は泣かない」っていう可愛らしい曲もあれば、その真逆で気怠くヘヴィな「ironic」もあって、すごくあったかいフォーキーな「ぺんぺん草」もあって。それすべてで片平里菜なので、「女の子は泣かない」の印象だけで終わらせたくないんですよね。
--ちなみに僕は「ぺんぺん草」のファンです。片平里菜のフォークソング、いつどんなときに作った曲なの?
片平里菜:これは去年の4月。ツアーから帰ってきて実家で過ごしていたら、母親がぺんぺん草を外から摘んできて「ぺんぺん草が好きなんだよね。素朴で可愛いんだよね」みたいな話をしてたんです。それで「今度「ぺんぺん草」っていう曲を作ってよ」って言われて。
--お母ちゃんからのリクエストだったんだね。
片平里菜:そうなんです。「分かった。今度作ってみるよ」みたいな(笑)。それで作ろうと思ったときに母親のイメージが強すぎて、結局は母親の歌になってしまったんですけど。ウチの母親は献身的というか、自分のことより他人に尽くすタイプの人間なので、「あなたにすべてを捧げます」というのはぺんぺん草の花言葉なんですけど、そのぺんぺん草と母親の素朴さとかがすごくリンクして。笑顔が可愛らしいのも私は好きですし。で、曲にしてしまったんですけど、母親はすごく恥ずかしがってました。「誰にも聴かせないで」って(笑)。
--それを全国流通するっていう(笑)。そんなニューシングル『女の子は泣かない』から始まる片平里菜の2014年。どんな一年にしたいですか?
片平里菜:まずはワンマンツアーを成功させることで頭の中がいっぱい(笑)。バンドがまだ不慣れなので。でもそこで自分の歌が一番よく聴かせられるようにしたいとは思ってます。あとは……今年も忙しい一年になるとは思うんですけど、去年と比べて馴れてきたことも多いので、ちょっと余裕を持っていろんなことに目を向けて、もっといろんなことを吸収したい。もう100曲ぐらい曲は作ったんですけど、これからもっと新しいもの。映画なのか、本なのか、どんな経験なのか、とにかくたくさん吸収してまた曲に作りかえていきたいです。
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