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山崎あおい 『アオイロ』インタビュー
公私混同のAKB48「恋するフォーチュンクッキー」カバー、片平里菜や新山詩織といったライバル、“YUI以降”と呼ばれてしまう若手女性シンガーソングライターの現実、そして唯一無二の存在になる為の大きな一歩、1stアルバム『アオイロ』について語る。
片平里菜や新山詩織の存在 尊敬できるから張り合っていたい
--とうとう大好きなAKB48の曲を歌っちゃったそうで。公私混同の「恋するフォーチュンクッキー」カバー(笑)。
山崎あおい:リクエスト曲をライブで歌うこと自体初めてだったので、すごく新鮮な気持ちで楽しかったです。リクエストを受け付けている段階で、私の曲を聴いてくれる人が他にどんな音楽を聴いているのかも見えたし、その中には私が好きな曲を聴いている人もたくさんいて。で、東京ではAKB48を歌ったんですけど、それはもうひたすら楽しく(笑)。
--大ファンですからね。
山崎あおい:やっぱりこれだけ好き好き言ってるから、いつかは歌いたいなと思っていたんですけど、何曲かAKB48関連でリクエスト頂いた中で、今誰でも知ってるヒット曲と言えば「恋するフォーチュンクッキー」だろうということで、歌っちゃおうと。1回自分の中に吸収してから、メロディーの良さとか、歌詞の良さとかを味わいながら……って大丈夫ですか? なんか引いてません?
--そんなことないよ(笑)。ちなみに山崎あおいにとって2013年はどんな1年になりました?
山崎あおい:やっぱり『夏海』っていうシングルは自分の中で大きくて、それで初の全国フリーライブツアーを廻ったんですけど、本当にたくさんの人が来てくれて。『夏海』から『恋の予感』にかけてすごく人が増えたんですよ。その増えている状況を実感できた1年だったので、良い1年だったなって。
--その要因って何だと思う?
山崎あおい:年明けたぐらいですかね?『強くなる人』のキャンペーンが終わったぐらいのときに、自分の気持ち的にもいろいろ変化した部分があって。自分のやっていきたい方向性だったりとか、なんとなく輪郭が見えてきた感覚があったので、それも大きかったと思います。
--多くの新人女性シンガーソングライターが多数登場した1年でもありましたが、やはり1年先にデビューしてる先輩としては「負けてたまるか」感はありました?
山崎あおい:デビュー時期が私は2012年でしたけど、だからと言ってその間に私が大きくリードしている感覚もなかったですし、それこそ気持ちが変わったぐらいの時期に「戦っていくぞ」っていう気分になって、そこが私にとってスタートだった感覚なんですよ。
--特に片平里菜と新山詩織は同じイベントに出る機会が多かったですけど、どんな印象を持たれています?
山崎あおい:曲がすごく良いなって思います。女性シンガーソングライターって本当にたくさんいるじゃないですか。ここ最近出てきた人だけでも20人以上いると思うんですけど、その中でも片平さんと新山さんは個人的に「凄いな」と思う2人で……そんなにバチバチでライバル!って思っている訳じゃないですけど、でも張り合いたいなと思えるというか。だからすごく刺激になります。片平さんはギター一本で泣かせるし、新山さんはあんな可愛い見た目なのにガツンと来るライブするし、尊敬できるから張り合っていたいと思う。
--3人でスリーマンライブとか出来たら面白そうですよね。その2人以外にも2013年気になった女性シンガーソングライターっていましたか?
山崎あおい:私が誰かと括られるときって、片平さんと新山さんとの3人のパターンと、どさん子3人みたいな感じで、Rihwaさんと住岡梨奈さんと括られることも多くて。なので、その2人もよく観てますね。
--先日、ツイッターでも書いたんですが、女性シンガーソングライターってもうシーンごと盛り上げた方が絶対面白くなると思っているんですけど、山崎さん的にはいかがですか?
山崎あおい:私も思います。やっぱりミュージシャンとして「自分が良い曲を書きたい」っていう想いはあるんですけど、そこから一歩引いて全体を見たときにいろいろ考える部分もあったりして。今、アイドルブームが凄いじゃないですか。AKB48とももクロっていう二大巨頭があって、あとはシーンごとにワァーって盛り上がってる。それがひとりのアイドルファンとしてすごく楽しいというか、それごと楽しんでいる感覚があって。個々でスタイルがちゃんと違ったりするから「あれもいいよね、これもいいよね」みたいな感じになる。それってすごく理想的だと思うんですよね。
--今のアイドルってひとつを知ると、シーン全体に興味を持てるようになってますからね。
山崎あおい:まぁそれが5年後、10年後どうなってるかは分からないですけど、今は女性シンガーソングライターも物凄く数が多いし、やっぱりシーンごと盛り上がったらすごく楽しいだろうなって思いますね。
リリース情報
アオイロ
- 2014/01/08 RELEASE
- 初回限定盤[VIZL-615(CD+DVD)]
- 定価:¥3,570(tax in.)
- ≪試聴可能≫
- 詳細・購入はこちらから>>
- 通常盤の詳細・購入はこちらから>>
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄
“YUI以降”と呼ばれてしまうことについて
▲山崎あおい - ファーストアルバム『アオイロ』全曲ダイジェスト
--ただ、ロックもアイドルもシーンごと楽しむ文化を確立できたのに対し、何故にシンガーソングライターはそれを確立できなかったのか。基本的に女性シンガーソングライターって人見知りが多いし、ひとりの世界にどっぷり浸かってなんぼみたいなところがあるから、積極的に絡んでいく難しさもあるんだろうなと。
山崎あおい:それはあると思います。私もこういう風にインタビューとかブログでは「片平さん、よかった」「新山さん、可愛い」とか言えるんですけど、でもその2人とひとつの楽屋で揃ったとして、楽しくおしゃべりが出来るかと言うと……多分そうではないと思うので。「あ、ギター、何使ってるんですか?」ぐらいしか聞けない(笑)。「一緒にイベントやろうぜ。シーンごと盛り上げていこうぜ!」みたいな感じには、人間性的にならないんじゃないかなって。
--ですよね。
山崎あおい:でも心の中では「一緒に盛り上げていきたい」って本当に思っている。もちろんライバルでもあると思うんですけど、共に倒し合ってのし上がっていくのも違う気がしていて。だから破りたいですね、殻を。
--山崎さんもまだ破れてないと。
山崎あおい:まだシンガーソングライターの友達があんまりいないんです。バンドマンとかは「呑みに行こう!」みたいな感じであっちから来てくれるじゃないですか。でも女性シンガーソングライター同士って自分も人見知りだし、あっちも同じなんだろうなって感じるから「お酒とか呑むんですか?」って様子を伺うだけで終わっちゃったりする(笑)。
--でも女性シンガーソングライターとしては、山崎さんはオープンな方だと思いますけどね。
山崎あおい:そうでもないと思います。私の大学での様子を見てもらえたら、多分分かると思います。なので、片平さんと新山さんに「お友達になりたいです」とお伝えしておいてください。
--直接は言えないんですね(笑)。あと、今の若手女性シンガーソングライターの多くは、世間的には“YUI以降”っていう言葉でまとめられちゃうじゃないですか。そこはYUIを敬愛する山崎さんからすると、どう思います?
山崎あおい:それだけ凄い方なんだってことだと思います。私の世代で、女の子でギターを弾き始めた人の多くは、YUIさん主演の『タイヨウのうた』を観ていて。で、若手女性シンガーソングライターがたくさんデビューした時期も、YUIさんがFLOWER FLOWERに活動を移行した時期なので、もうそれを言われるのは仕方ないんじゃないかなと思っています。それに関しては「私はYUIとは関係ない」と言ってもしょうがないし、実際にYUIさんが好きで私のことを好きになってくれる人もたくさんいると思うんで。
--YUIの凄さってどんなところにあると思います?
山崎あおい:椎名林檎さんとかはカリスマ性ムンムンですけど、YUIさんはカリスマっぽくないカリスマ性があるっていうか。カリスマっぽいことを言う訳でも出す訳でもないのに、みんなを惹きつけるものがある。曲が良いとか、歌詞が良いとか、声が良いとか、そういうことだけでは説明できない凄いものを持っているんだと思います。
--で、そのYUIの領域。要するに唯一無二の存在として世間に評価されること。ここを誰もが目指していくしかないと思うんですけど、そこはどう思います?
山崎あおい:正にその通りだと思ってます。最終的には自分の楽曲やライブのクオリティで判断される訳だから、YUIさんと全く同じキャラクターになる必要もないと思うし、YUIさんのマネをしたいと思ってる訳でもないし、YUIさんになりたい訳でもないんで、そこは自分のやりたいことをしっかり持っていようと思う。でも最終的にどのポジションに行きたいかって言ったら、万人ウケを狙ってる感じじゃないのに万人ウケしてしまう。で、私みたいな信者もいるYUIさんみたいなポジションっていうのは、やっぱり女性シンガーソングライターじゃなくても誰もが目指したい場所なんじゃないかなって思います。
--そこに向けての大いなる第一歩が、今回のアルバム『アオイロ』になると思うんですけれども、自身では仕上がりにどんな印象を持たれていますか?
山崎あおい:本当に今しか書けない曲を詰め込んだというか、1stアルバムとしての自信作が出来たと思っています。山崎あおいのいろんな色が見えるんじゃないかと思ったのと、アルバム全体として爽やかな曲も暗めの曲も入ってるんですけど、どれも“青”をイメージさせる内容になっていたので、タイトルは『アオイロ』にしました。あと、いろんなことをやりたいと思う中で、ブレさせたくない軸として綺麗なメロディー、グッと来るサウンド、ちゃんと風景が浮かぶ歌詞。この3つを忘れなければ、どんなことにでも挑戦できると思って。
--熱くなりすぎない、でも胸に刺さる歌詞。これは山崎あおい最大の魅力だと思っているんですが、どうやって培ったスタイルなんですか?
山崎あおい:中2ぐらいから曲を書き続けてきて見えてきたものではあるんですけど、歌詞って感情でわーって書き殴るのも良いと思うんです。でもそういう曲って自分の中で完結してしまっていて、相手にどう届くとか考えられていないものが多くて、結局何が言いたいのか分からない。だったら一歩引いて、綺麗な言葉を探しながら丁寧に書いていく方が伝わりやすいし、情景が浮かびやすい歌詞になるなって実感して。
--そのスタイル故に6曲目「東京」が泣けて泣けて……。
山崎あおい:ありがとうございます(笑)。上京して半年ぐらい経って、なんで地元に残してきた人たちとの距離が離れていくんだろうと感じたときに、自分から突き放してるなって気付いて。やっぱり新しい環境に馴れるのはすごく大変なことで、早く馴染みたいって必死になればなるほど、今まで甘えてきた人に甘えちゃいけないっていう気持ちが強くなり過ぎて、あっちは「もっと頼っておいでよ」って思ってるのに「いや、まだそういう段階じゃないから」って突き放しちゃう部分があるなって。
リリース情報
アオイロ
- 2014/01/08 RELEASE
- 初回限定盤[VIZL-615(CD+DVD)]
- 定価:¥3,570(tax in.)
- ≪試聴可能≫
- 詳細・購入はこちらから>>
- 通常盤の詳細・購入はこちらから>>
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Interviewer:平賀哲雄
良い曲が出来たとき=今あるすべての幸せの中で最大の幸せ
--それは「辛いときに聞きたくなるのが もう君の声じゃないんだ」「心の中を君で満たすと 歩いてゆけない街にいるよ」っていうフレーズで表現されていますよね。よくこれを歌ったなって。
山崎あおい:でも全然それって間違ってないし、馴染むのは大事なことだし、前に進むっていうことでもあるので悪いことじゃないんだけど、でも「なんだろう? この気持ちは」っていう。
--それってどうしようもない切なさじゃないですか。
山崎あおい:そうですね。前までは何かあったときに電話する相手とかが決まっていたんですけど、今はもうその人がいなくても大丈夫だし。別にその人と何かがあった訳じゃないんですけど、だんだん頼る対象が東京の人になってきて。でも良いことだと思うんです。今まで甘えてきた人を支えにし過ぎていると、やっていけないから。でも何とも言えない気持ちになりました。
--あと、8曲目の「もっと」。序盤に「ステージの外で 冷たい風が 「このままでいいの?」と背中をつついた」とありますが、これは最近の心情を歌ったものなんですか?
山崎あおい:これはカーリング日本代表チームの公式応援ソングなんですけど、小笠原歩選手が一回現役を引退して、それから復帰してソチ五輪出場を目指していたんですよ。そのストーリーを聞いたときに、諦めたことや挫けたことにもう一度向かっていくって凄いエネルギーと勇気が要るんだろうなって感じて、世界的な選手と自分を比べるのは失礼かなと思いつつも、自分の心情とすごく被る部分もあったりしたので、応援歌として書いた曲なんですけど、結果的に自分の背中を押す曲にもなったかなって。
--ちなみに「このままでいいの?」という想いは、山崎あおいの場合、どんなときに出てくるものなんでしょう?
山崎あおい:自分の中で不完全燃焼のライブが続いたとき(笑)。常に頑張ってはいるんですけど、精神的に停滞する時期ってあるじゃないですか。なんとなく何をやっても楽しくないとか、パッとする出来事がないとか、良い方向にも悪い方向にも進まない時期が3,4日続くだけで「このままでいいの?」って思っちゃう。
--そこからどうやって立ち直るの?
山崎あおい:良い曲を書く。良い曲が出来たとき、それは今あるすべての幸せの中で最大の幸せなので。だから良い曲を書ければ、自分を許せるというか、「なんだ、私、曲書けるじゃん!」ってなれるので、そういうときはムリヤリにでもスタジオに篭もって曲書いています(笑)。何もしていないっていう状態が許せない人なので。動いてないと自分を嫌いになっちゃうんですよね。
--9曲目「Blue days」における「不安だけ吐き出した こんな歌が誰かに届く日を 夢見てるの」。このフレーズはどんな状況で生まれたものなの?
山崎あおい:実は中3のときに書いた曲なんですけど、アルバムの歌入れやレコーディングをしていく段階で「この曲はむしろ今の私が歌うべきだ」って感じたんです。当時の私って「大きい夢を見すぎているな」って感じていて、一生懸命勉強して、良い高校に行って、良い大学に行って、結婚して……っていう人生も幸せになれると思うのに、なぜか音楽への諦めがつかなくて。逆にそれが悔しくて。絶対に好きになっちゃいけない人を好きになっちゃったみたいな気持ちで(笑)「なんでこんなにやりたいと思っちゃうんだろ?」って。で、その頃は自己満足でしか歌詞を書いてなかったんですけど、この曲がいつか誰かに届くような日が来たらいいなって、それが自分の人生になればいいなって、本当に夢見ながら書いた曲。
--凄いことですよね。「不安だけ吐き出した こんな歌が誰かに届く日」がやってきましたからね。
山崎あおい:そうですよね。
▲山崎あおい - 強くなる人 Aoi Yamazaki "Tsuyoku naru hito" (Origami MV)
--そして「強くなる人」。既発曲ですけど、改めてアルバムの最後に聴いてみると、これも涙を誘います。この曲の持っている力って何だと思います?
山崎あおい:私が1対1で「友達に伝えたい」っていう必死な想いで書いたものなので、何の打算もないというか、こういう曲を書きたいと思って書いた訳でもないし、ただ「この想い残しておきたいんだ、私はこういうことを思っているんだ」っていう気持ちの整理の為に書いてる。結果、それが自分の中で大きい存在になっていって、常に私の大事な場面を支えてくれて。上京する前の最後の地元ライブでも、デビューするときもこの曲を歌うことで「私の背中を押してくれる曲」って感じることができたので。
--それって聴き手にとってもそうで「諦めちゃだめだからね 強くなきゃだめだからね」って歌われる度に、一歩前へ踏み出せる感覚になる人は多いと思います。この曲でアルバムを締め括るのは、以前から決めていたの?
山崎あおい:そうですね。ライブでも絶対最後に歌う曲ですし、次のアルバムとかシングルに向けて自分の背中を押すという意味でも、最後はこの曲で締め括りたいなと思ってました。
--そんな『アオイロ』から山崎あおいの2014年はスタートする訳ですが、今作はどんな風に世に響いてほしいですか?
山崎あおい:デビューしてからの1年ちょっと。その間に生まれたいろんな気持ちを切り取って書いた13曲なので、「今日は「カランコロン」が響く日だな」とか「今日は「強くなる人」に背中を押されたいな」とか、その日の気分によって響く曲が変わればいいなというか、全部の曲がそういう風に響けばいいなって思います。
Music Video
リリース情報
アオイロ
- 2014/01/08 RELEASE
- 初回限定盤[VIZL-615(CD+DVD)]
- 定価:¥3,570(tax in.)
- ≪試聴可能≫
- 詳細・購入はこちらから>>
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Interviewer:平賀哲雄
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