家入レオ/山崎あおい/片平里菜……女性SSW戦線と新山詩織。

－－先日、家入レオさんにインタビューしたら、新山詩織の名前が出ましたよ。フェスでお会いしたとかで？

新山詩織：バックヤードでご飯を食べていて、抹茶のジュースを取りに行くときにちょうど家入レオさんがいて…………、自分から行ってみよう！と思って。

－－人見知りの新山詩織がよく声を掛けましたね。

新山詩織：ライブも観させてもらっていたので、挨拶したいと思って。実際にお会いしたら、すごくしっかりした大人の雰囲気を持っている方で、オーラからして「すごく良い人なんだろうな」って感じました。曲はもちろん聴いたことはあったんですけど、歌っている人がどんな人なのかずっと気になっていたんです。

－－家入レオも閉塞的な学校生活に苦しんでいて、音楽に希望を見出したアーティストですけど、彼女の歌にシンパシーを感じることはある？（※新山詩織も本音で話せない、苦しい学校生活を送っていた。）

新山詩織：自分が書く歌詞と比べると、自分はすごくモヤモヤしたものをそのまま書いて、ハッキリそれを示している感じなんですけど、家入レオさんの歌詞はまた違う強さというか、自分の中ではすごく強い人っていう印象があって。同じような学校生活を送っていたとしても「私はこうなんだから、こう言うんだ」っていう意思がハッキリと出てる。

－－勝手ながら、僕の中には新山詩織と対談させてみたいアーティストが何組かいて、家入レオさんはその中の一人なんですよ。話してみたい？

新山詩織：ちゃんと話せるかな……

－－（笑）

新山詩織：でも対談できるのならしてみたいです。

－－他にも、新山さんが話してみたい人、会ってみたい人がいたら教えてもらいたいんですけど。

新山詩織：家入レオさんもそうなんですけど、ジャンルとか問わず、自分と同じ年代のアーティストさんとたくさん会ってみたいなぁ、っていう想いはあります。

－－最近は、女性シンガーソングライターがたくさんデビューしてますけど、やはり気になるもの？

新山詩織：山崎あおいさんや片平里菜さんとは、同じライブイベントに出ることが多くて、この前の【MINAMI WHEEL 2013】もそうだったんですけど、やっぱりすれ違ったりするだけで「どんな風に曲を作って歌っているのかな？」って気になったりはします。

－－きっと山崎あおいさんと片平里菜さんも気になってると思いますよ。新山詩織のことはマークしてると思います。

新山詩織：そっか……。

スタッフ：片平里菜さんのこと「大好きだ」って言ってるんですよ。

新山詩織：声がすごく好きです。あと、可愛い……

－－ファンじゃん（笑）。

新山詩織：【MINAMI WHEEL 2013】で声を掛けさせて頂きました。

－－どんな風に？

新山詩織：「あ、おつかれさまです」って言っただけなんですけど。

－－（笑）。自分が新山詩織のライブを初めて観たとき、頭に浮かんだ人がいるんですけど、新山さんって峯田和伸さんとか好きじゃないの？ 銀杏BOYZの。

新山詩織：好きです。

「死にたいな」というのは、一度も思ったことはなかった。

－－新山さんにも似たような繊細さや危うさを感じたんですよ。あと、剥き出しな感じ。自分では、自分の音楽は、歌っている内容は剥き出しだなって感じる？

新山詩織：歌詞は吐き出したものをそのまま使っているし、ライブもいつも隠れている自分をそのまま表現できる場所だと思っているので、剥き出しである自覚はあります。

－－音楽をやる上で「剥き出しでありたい」という気持ちはある？

新山詩織：……剥き出しにしたいって言いながら剥き出しにしようとしても、そこには作られた感が出ちゃうと思うので、そのときそのときで自然に出てくるもの、そのときにしか出ない自分で勝負してると思います。

－－新山詩織が最初に作った曲は「だからさ」で、そのときの気持ちをそのときの音で一気に書いて歌ったら出来たんですよね。基本的には衝動なんですか。新山さんにとって創作って。

新山詩織：「だからさ」と「ゆれるユレル」は正にそうです。

－－新山さんって音楽によって自分を出せるようになった人ですけど、音楽にハマらなかったら今頃どうなっていたと思います？

新山詩織：きっと普通の日常を送っているとは思うんですけど……。普通に学校に行って、普通に大学へ向けて受験を受けて、でも気持ちの面では何も変わらないままで、ただ真っ直ぐ流れていくだけの日常を送っていたんじゃないかな。端から見たらそれが普通だと思うんですけど。

－－でもその生き方には苦しさを感じていた訳ですよね。

新山詩織：そうです。

－－その苦しい状態がずっと続いてたら……と考えたら怖くないですか？

新山詩織：…………怖いです。さらに自分を上手く取り繕いながら生きていたんじゃないかなって思います。

－－ちょっと踏み込んだこと聞きますけど、新山さんぐらいの年齢だと「なんで生きてるんだろう？」とか考えると思うんですよ。もっと言えば、死にたいと思うことも少なくないと思うんですけど、そこはどうだったんだろう？

新山詩織：「死にたいな」というのは、一度も思ったことはなかった。けど、「早くここから居なくなりたい」と思うことは、しょっちゅうありました。周りに対して自分がすごく深く考えていることって、周りには絶対分からないし、これっぽっちも悩んでいるように見えなかったりもするから、それは苦しかったし。「そんなの、勝手に考え過ぎちゃってる自分が悪いんじゃないのか？」って思ったりもするけど、どうにも出来なかったから。学校を休んじゃえば、ずっと行かないようにしちゃえば、そんな気持ちになることはないって分かっていたけど、でも自分の中では「行かないと」っていう気持ちがすごくあって。すごく休みたくなるときもあったけど、でも休んだら負けだって強がっていた自分もいて。そんなのを繰り返しながら、中3のときにはかなり溜まってて…………どうなってもいいから、自分の今思っていることとか、周りのこととか、仲良い子たちも含めて、全部、自分から一切無くなってほしいと思うようにもなったけど、「死にたい」とは思わなかった。

－－新山詩織は人間の弱さを歌うけど、一度も逃げてない。学校行かなくなって引きこもりになった訳でもないし、何があっても学校に行ったし、何があっても死のうとは思わなかった。それってなんでだと思います？

新山詩織：反抗心はかなりあった気がします。すごく苦手な子も嫌いな子もたくさんいたけど、そういう子たちに対しても「負けたくない」って勝手に思っていたり……。あと単純に、大事な、大切な、好きな友達もたくさんいたから。そういう子たちと繋がりが切れるのは嫌だなと思ったし。

－－今話してくれたことって、新山詩織がこれまでリリースしてきた楽曲にも反映されてますよね。特に今回の「ひとりごと」はダイレクト。新山詩織が生きる理由そのものにも感じられるんですけど、自分ではどう思います？

新山詩織：今まで以上に奥深く内面的なものが書けたと思っていて。「だからさ」を書いたときの衝動的な感じと、今回の歌詞を書いたときの気持ちが結構似ていて。もうすぐ高校を卒業するんですけど、遂に社会の中に出ていくときが来て、自分はこれからどうやって周りの人に向かって歌っていきたいんだろう？ これからはどんな自分でいたいんだろう？ というのをすごく考えながら今回は書いていきました。

－－なんでこういうことを歌いたいと思ったんだろう？

新山詩織：「今まで以上に自分に対して強くありたい」っていう気持ちをハッキリ示したかった。

－－この曲にある、取り除けない“不安の種”って新山さんの中ではどんなものなんだろう？

新山詩織：不安は…………いつも不安で。人と話すときも「本当はこういう風に伝えたいんだけど、なかなか上手く言えない。どうしよう？」って不安になったりとか、「明日はどうなるんだろう？ 何か嫌なことあるかな？」とか、本当に些細なことなんですけど、誰もが持つ不安です。

早くみんなでお酒を飲み交わしながら語り合いたい

－－そういうネガティブな要素を歌わずにいられないのは何でだと思います？

新山詩織：自分自身がそういう気持ちを持っているから、その気持ちがそのまま素直に出てくる。どんなに明るく書こうとしても、明るそうな言葉を綴ったとしても、やっぱりどこかに不安が入り交じっていたりするので、それが本音なんだと思います。自分自身に対しても、聴いてくれる人に対しても、嘘は言いたくないから。それもあって出てくるんだと思うんですけど。

－－やたら明るい歌詞とかも書いてみることはあるんですか？

新山詩織：あります。でも口に出して歌ってみると、妙な違和感がある。なので、これから明るい曲も作っていくとは思うんですけど、やっぱり嘘は歌えないと思います。

－－新山さんがカバーする曲って、シアターブルック「ありったけの愛」だったり、今回は奥田民生「イージュー★ライダー」だったり、自分のオリジナル曲と真逆のタイプのものじゃないですか。これはなんでだと思う？

新山詩織：単純に「歌ってみたい」というのが一番。誰でも聴けば明るくなれる曲を自分が歌ったら、どんな風になって、どんな人たちに届くんだろうな？って思うんです。

－－憧れでもある？ 明るい世界や大人に対しての。

新山詩織：それもあります。早く大人になりたい。

－－新山さんには「イージュー★ライダー」の歌詞ってどんな風に映ってるんですか？

新山詩織：良い意味で脳天気。自分が憧れる性格でもあるし、雰囲気でもあったから惹かれて。自分と対照的な感じだから好きになったっていう。この曲を奥田民生さんがどんな気持ちで書いたのかは分からないんですけど、こんな風に自然に明るい人でいれたらなぁって。

－－新山さんもそんな大人になれそう？

新山詩織：根っこの部分は変わらないと思うんですけど……………きっとお酒には強い……

－－（笑）

新山詩織：早くみんなでお酒を飲み交わしながら、いろんなことを深く語り合いたくって。それはずっと憧れで。

－－今、新山詩織とお酒を飲み交わしてる姿をイメージしましたけど、ちょっと泣けます。

一同：（笑）

－－いつか新山詩織と酒飲みながらインタビューしたいです。

新山詩織：雑誌とか読んでると、チバユウスケさんとかやってますよね。「いいなぁ」って思う（笑）。

－－お酒を飲める大人になったら、新山詩織の描く世界も変わってくるかもしれないですね。

新山詩織：まだ自分がどんな大人になるのかは分からないんですけど、でも………自分は変わりたくないですね。良い意味でこのままいられたらなと思います。

－－新山さんは今、何の為に歌ってるんだと思いますか？

新山詩織：今までは完全に自分自身に向かって叫んで歌ってたんですけど、今はお手紙とかメッセージとかたくさん貰うようになって、学校でも声を掛けられることが多くなったり、雰囲気も変わったりして。自分の歌う姿勢はずっと変わらないけど、自分の音楽を通して、同じ気持ちの人とか、知らない人とか、たくさん繋がっていけるように、その為に今は歌ってるんじゃないかな。今回「ひとりごと」を書きながら、そう思いました。初めて歌詞で「誰も知らない 笑顔の花」って、自分の曲を聴いてくれた人たちのことを書いたんですけど、そういう人たちに向かって自分は…………誰かの側、隣で、すぐ横で歌ってる。

－－聞いたことがなかったので聞きたいんですけど、新山詩織の夢って何なんですか？

新山詩織：夢？ ……………………あんまり考えたことが（笑）。ただ、今はたくさんのアーティストがいる中のひとりとして出ていって歌ってるけど、今度の新潟県 三条市中央公民館大ホール（12月14日開催）でのライブは初めてのワンマンなんです。そういうワンマンライブをたくさんやりたい。たくさん曲も作って、どんどんステージを重ねていって………もしかしたら夢としては小さいかもしれないんだけど、いろんな人と長い時間、音楽通して、ライブを一緒に楽しみたい。だからワンマンライブツアーが早くできるようになりたいです。

－－新山詩織って一生歌い続けると思いますか？

新山詩織：はい。歌ってない自分が想像つかない。歌うのをやめるとしたら、音楽と自分が途切れるような気がするので、きっと歌ってるとは思います。