後藤まりこの衝撃「ダイブしたい」って言ったら……

▲家入レオ - 太陽の女神

－－先日【GirlsAward 2013 AUTUMN / WINTER】へ出演されていましたが、いわゆるオシャレ女子だらけの空間で歌うのはどんな気分でした？

家入レオ：ロックフェスとは、ジャンルも雰囲気も違うんですけど、例えば「本当の愛が欲しい」っていう葛藤とかは、どんなジャンルの人にも共通するものだと思いますし、それまで私のことを全然知らなかった人が「興味を持った」と言って下さっていたときは、すごく良い場を用意して頂いたなって思いました。あと【GirlsAward】に限らず、いろんな人が集まるフェスやイベントに出るのは楽しい。私みたいな若手は、夏フェスとか出ると少し斜めに見られるというか、「家入レオってどういう奴なんだ？」みたいな威圧感を感じるんですけど、それを跳ね返していくのがすごく楽しいんです。

－－逆に燃えると？

家入レオ：斜めから見られているところで、どれだけ自分の感情を爆発させられるか。だから【GirlsAward】は本当にアウェーだったけど、だからこそすごく楽しかったですね。そこで「レオちゃん！」って名前を呼んでもらえると、やっぱり嬉しいし。

－－以前のインタビューで「さすがに破れてる服を着ていたときは「買いに行きなさい」って怒られました」と仰っていた家入さんにとっては、なかなか構えるところもあったイベントだったのかなと。

家入レオ：そうですよね（笑）。ただ、そんな私を呼んで頂いたということは、「会場の皆さんに音楽を真っ直ぐ届けてください」っていうことだと思って、変に意識することなく、シンプルにTシャツと普通のスキニー姿で歌わせてもらいました。そこでスタイルを崩しちゃうと……まぁそもそも変えられないっていうのもあるんですけど。

－－では、いわゆる自身のワンマンなどのホームと、自分のファン以外の人が大勢いるアウェー。気持ち的な変化はない？

家入レオ：アウェーな環境でもしっかりお客さんの心を掴めばいい訳で、それはどこでも自分次第。逆に私のことが好きで来てくれたとしても、私がなあなあに音楽をやっていたら離れられてしまうだろうし……そっちの方が怖いかも。そういうことを気にしながら歌っている訳じゃないけど、アウェーは「自分にこれから興味を持ってもらえるかも」っていう場所。でもホームは少なからず自分に好意を持っている人が来てくれる訳だから、そこで「もう行かなくてもいいや」って思われるのは怖いし、そっちの方が緊張感はあるかもしれないです。

－－家入さんは、ロックフェスはもちろん、多種多様なイベントに参加してきましたけど、いつか出てみたいイベントとか、憧れてるステージとかってあったりするの？

家入レオ：特にないですね。歌えれば、どこにでも出ていきたい。そういうのを求めてなかったからこそ、逆にこうやっていろんなイベントに出させて頂いているかなって思います。

－－では、対バン、共演してみたい人っていますか？

家入レオ：えー!? 妄想がすごい膨らむなー（笑）。

－－以前は「松任谷由実さんと『卒業写真』を歌わせて頂きたいです。ほかには斉藤和義さん、平井堅さんとも共演してみたいです」と仰っていました。

家入レオ：それは今も変わらないですね。斉藤和義さんの「歌うたいのバラッド」を歌いたいです。一緒にじゃなくても、カバーしてみたいです！

－－また、デビューしてから様々なアーティストやバンドを知っていく中で「これは衝撃だった」と思う人っていましたか？

家入レオ：後藤まりこさん！

－－おぉ～！

家入レオ：以前【GIRLS FACTORY】に出演させて頂いて、そこで初めて後藤まりこさんを見たんですけど、それまではあのキャラクターを作られているのかなって思っていたんです。それもまた音楽だし、素敵だなと思っていたんですけど、リハからあの感じで！ ご挨拶に行ったときもそのままだったので、「あ、すべて本物なんだ！」って思って。

－－演出とか、キャラじゃないんだと。

家入レオ：そう！ それがすごく格好良いなと思って。客席にダイブしちゃったりとか。それで私も後藤まりこさんのライブを観た後に「ダイブしたい」って言ったら、スタッフにすっごい怒られたんですけど！

－－突然変異すぎますもん（笑）。「家入レオが客席でもみくちゃになってる！」って。

家入レオ：引かれそうですよね（笑）。

－－では、自分に近しいなと感じるアーティストっていたりします？

家入レオ：いない。まだ高校卒業して半年ぐらいしか経ってなくて、他のアーティストさんと交流できてないっていうのもあるんですけど……、もしいたら怖いですよね。2人ってなかなか要らないと思うので。と言っても、私は私でしかいられないと思うんですけど。

なんで自分がここにいるのか未だに分からない

－－家入レオって、たしかに他のアーティストと交流を図ったりするイメージがないんですけど、これは単純に人見知りだったり？

家入レオ：単純にそうだと思う。コミュニケーションは取れるんですけど、あんまり自分のテリトリーに入ってきてもらう、っていうのは得意じゃない。音楽の部分では新しいことに挑戦していきたいので、舞台監督さんとか、いろんな人とご一緒したいんです。でも音楽以外のところから入ってこられるのはすごく苦手ですね。今はいろんなアーティストさんと音楽の話をするよりも、自分のことを知らなきゃいけない時期なので。1年半しか活動してない私が「私ってこうなんですよね」って語っても説得力がない気がします。まだそこまで行ってない。

－－じゃあ、ウチで誰かと対談を組むとか、ちょっと嫌な感じ？

家入レオ：いや、そういう対談は好きです。この前、栗原類さんと対談したんですけど、面白かったですよ。ネガティブ同士だったので凄かった！ お互い“無”でした（笑）。

－－“無”で対談成立したんですか？

家入レオ：周りの大人はヒヤヒヤしていたみたいです。

－－成立してないじゃん（笑）！

家入レオ：お互いに言いたいことをバンバン言ってた感じ（笑）。人間的にすごく興味を持ちました。

－－例えば、ウチで対談を組むとしたら、話してみたい人って誰かいますか？

家入レオ：えー、誰だろうなぁ？

－－ナタリー・ポートマン？

家入レオ：実現したら凄いですけど（笑）！
※家入レオは、大の映画『レオン』ファン。

－－尾崎豊の息子さんとか？ 尾崎裕哉（ひろや）。

家入レオ：うわぁ～、凄いですね。
※家入レオは、尾崎豊との出逢いで音楽に目覚めた。

－－もしくは、家入さんと同じように行き場のない学校生活を送って、音楽によって未来を切り開いたアーティスト。

家入レオ：新山（詩織）さんとか？

－－よくご存知で。

家入レオ：今年【ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013】に新山さんも出演していらっしゃったので、ご挨拶させて頂いたんですよ。あの方は、会った瞬間に感じるものがありました。素敵だなって思いました。

－－そんな家入さんのデビュー以降も様々なアーティストが生まれている音楽シーン。家入レオさんから見てどんな風に映っていますか？

家入レオ：それこそ1年半の私が語るのはどうなんだ？って言われるかもしれないですけど、1年半なりに感じたことは、そこで歌ってはいるんだけど、そこのことを考えちゃいけない。デビューしたときからアーティストが一番伝えていきたいことってあると思うんですよ。でも環境とか状況とかでいきなりブレちゃって、1回ブレると全部ブレて「結局、何が伝えたかったんですか？」ってなる可能性もあるから。私もそのレールに乗っちゃうかもしれないから何とも言えないけど……、だから音楽業界で歌っていくってことは覚悟しなきゃいけないんだけど、音楽業界を意識し過ぎちゃダメなんだと思う。今、自分がやりたい音楽を直向きにやっていって、それがいつか光に当たったりするべきであって、いきなり光を求めちゃいけない。

－－ただ、環境の変化に上手く合わせていく人。それを楽しんで音楽活動している人もいますよね。

家入レオ：それも素敵だと思います。ただ、私はそれと対極で、流れじゃない音楽っていうのを常に作っていきたいと思っているから。

－－元々、流行りの音楽とかにはあまり興味がない？

家入レオ：うーん……あまりなかったですね。ファッションとかも流行りがあると思うんですけど、全然疎かったんで。

－－いろんな音楽や情報が流れてくる中で、尾崎豊だけが引っ掛かった訳ですもんね。そもそも流行に惑わされるタイプじゃなかった。

家入レオ：そうですね。流行ほど移り変わりが早いものもないと思うんで。なんで尾崎さんが今も影響を与えているかって言うと、変わらない音楽をずっとやっていたからだと思うんですよ。もちろんスポットが当たりやすいのは流行かもしれないけど、でもいつの時代も良い意味でそこに染まっていない音楽があって、そっちを私はやっていきたい。流行を否定している訳ではなくて、それは私にはできないから。やっぱりポップだったり、非の打ち所がない方が流行を作っていくんじゃないかな。私は劣等感しか抱えてないし、なんで自分がここにいるのか未だに分からないような人間だから、そっちに行きたくても行けない。だからこそ変わらない音楽をやっていくんだと思う。

「分かってほしい」からちょっと卒業できた自分がいる

－－そんな家入レオが“今、鳴らしたい音楽”ってどんなもの？

家入レオ：自我じゃない音楽。「分かってほしい」からちょっと卒業できた自分がいるので。それは「分かってほしい」をちゃんとリリースできたからこそ、だと思うんですけど。「私はこんな辛かった」とか「私は苦しい」とか、それをちゃんと見せたからこそ、これからは自我より音楽が前に出るようにしたくて。だから今回の新曲「太陽の女神」は、今までにない作り方になってて。

－－具体的には？

家入レオ：月9ドラマ『海の上の診療所』主題歌の話を頂いて、これまでも書き下ろしはしたことあったんですけど、台本を読んだらテーマが“出逢いと成長”だったんで、社会人になって初めての書き下ろしということもあって、今までとはひと味違う自分を表現することが“成長”に繋がって、その“成長”がまた新たな出逢いを呼び寄せてくれる。そういう前向きな意識で作っていったんですよね。前は経験とか自分が感じたことじゃないと歌にしちゃいけない気がして、すごく真実に拘っていた。「なんで経験したこともないのに、そんなこと書けるの？」って言われるのが怖かったんですよね。でも高校卒業してから考え方が変わってきて、たとえ自分が経験したことじゃなくても、ちゃんと信じて、ちゃんと歩み寄って歌うことができたら、それは嘘ではないんじゃないかなって思えて。

－－以前は自分の内側からテーマを見つけ、今回はドラマという外側から提示されたテーマで制作したと。その今までと勝手が違うところでの難しさはなかったんですか？

家入レオ：過去の書き下ろしは、頂いたテーマに対して自分と重なるところを探していたんですけど、今回はその行為をしなかった。「私が作ってる時点で私なんだからいいんじゃないかな、何を言われても自分が信じていればいい」と思えたんですよね。で、それを“新しい自分に出逢えるきっかけ”っていう風に捉えられたことで、すごく創作意欲が湧いたというか。

－－では、内側テーマから外側テーマに変わったことへの葛藤とかはなかった訳ですね。

家入レオ：それはなかったですね。だって、去年“私”っていうものをブレずに届けられたと思うし。あと、本当に伝えたいことって伝え過ぎちゃいけないんだなって、今年の夏フェスで学んで。悲しい歌をうたうときは悲しい顔をしちゃいけないと言うように、伝えたいところって一歩引くくらいの方が相手に伝わると思うんですよ。そういう意味で今回は比喩表現が多くて。かなりストレートだった「Shine」の頃から成長できたんじゃないかな。

－－その「太陽の女神」がどう今までのリスナーに受け止められるのか、気になるところですよね。

家入レオ：ですね。アレンジも結構変えたし。ただ、怖さは全くなくて、すごく楽しみ。軸がブレている訳ではないので、やっぱり私が書くとマイナーだったりとか……

－－どうやっても家入レオ。

家入レオ：そこがちゃんと自分で認められたのかもしれない。どんなテーマを頂いても……もちろん悩むことはあるし、それこそ曲も西尾（芳彦）先生と「うーん……。あーでもない、こうでもない」って作っていって、歌詞も自分なりにいろいろ向き合って作ったんですけど、歌で「私が！私が！」って主張しなくても、私が作っているんだからいいんじゃないかって。私、8歳と30歳の家入レオがいるねってよく言われるんですけど（笑）、その8歳の方をポンポンってできたかなと。

－－30歳の家入レオがなだめたと。

家入レオ：そうですね。ときどき、まだ8歳の家入レオが出てくるので。

－－それもまた面白さじゃないですか。

家入レオ：いや、多分、8歳は本当にビックリすると思う！

－－（笑）。ちなみにそうやって捉え方が変わった今、家入レオが歌っていく理由ってどんなものになってるんですか？

家入レオ：……歌っていく理由か。

－－少なくとも「私を知ってよ！」ではなくなっている訳ですよね？

家入レオ：「私を知ってよ！」というより、私が私になっていく為に歌っていく。これからのシングルとかアルバムでも私は作られ続けていくと思うし、もっともっと私のいろんな部分を知りたいから歌っていくんだと思う。あと、単純に音楽しかないっていうことですよね。うん。本当、音楽しかないと思う。

－－あと、今作「太陽の女神」の中に「自分以上になること 急ぎ過ぎてしまったのかな？」とありますが、これは俯瞰で自分を捉えたフレーズでもあるんじゃないですか？

家入レオ：やっぱり早くちゃんと家入レオになりたくて。「もっともっともっともっともっと頑張りたい、もっと頑張りたい」って思う中で挫けちゃうことも日々あるし、そういう部分は出てると思う。「速度が早すぎる日々 追いつけなくて」とか。

－－さて、今年も着々と新曲を発表していますが、そろそろ気になってくるのが2ndアルバムの存在なんですけど。

家入レオ：普段から曲は作っていってるので、もちろん出せたらいいなとは思っているんですけど。どんなアルバムになりそうか？ う～ん。まだどの曲をどんな形でとかもまだ全然決まってないので……ただ、すごく面白いものにはなると思います。「そう来たか！」って思わせるような。印象を変えずに変えることって一番難しいと思うんですけど、それがちゃんと出来ればなと思っています。