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テキーラと音楽のおいしい関係
近年、ブルー・アガヴェ100%の上質なプレミアム・テキーラがハリウッドを中心に大ブームとなり、そのイメージはすっかり変貌を遂げているのをご存知だろうか?俳優やミュージシャンにもテキーラ・ファンは多く、自身のオリジナル・テキーラをプロデュースするなど、北米では15年以上前からテキーラ熱が高まっている。全世界、特にハリウッドで愛されるテキーラと音楽の意外な繋がりを紹介したい。
取材協力:日本テキーラ協会
まずは、テキーラの基本。そして、チャンプスの合いの手「テキーーーラッ!」
テキーラは、ブルー・アガヴェ(リュウゼツランの一種)から造られる蒸留酒。メキシコ・ハリスコ州を中心とした5州で生産されたものに限られ、それ以外を広くメスカルと呼ぶ。これは簡単に例えると、シャンパンとスパークリングワインのような関係で、1972年から原産地呼称制度が導入されている。
歴史的には、日本にテキーラが輸入されたのが1950年代と言われ、1958年には西海岸で結成されたセッション・バンド、チャンプスによる「テキーラ」がリリースされた。軽快なラテンのリズムに乗るサックスの主旋律が気持ちよく、ライムと塩でショットしたくなるオールドスクールなテキーラ・アンセムとして今も愛されている。ちなみに、チャンプスはインストバンドのため、歌詞は演奏と演奏の合間に入る「テキーーーラッ!」という合いの手のみ。
プレミアム・テキーラの金字塔、パトロン
▲「パトロン」で作ったマルガリータは「パーフェクト・マルガリータ」と呼ばれる
1960年代~70年代には、メキシコ五輪の影響もありテキーラは全世界に広がった。ワイルドなショット飲みが流行したことで、テキーラ=強い、または悪酔いするというイメージが付いた所以かもしれない。最近は、オン・ザ・ロックやストレートなどでゆっくり味わうのが主流で、マルガリータなどのカクテルも人気が高い。テキーラ好きでなくても、一度は名前を聞いた事あるだろう高級テキーラ『パトロン』は、ファッションショーや映画祭などで振る舞われる華やかなテキーラとして愛されている。
▲「Marry You (Live at MTV EMA 2011)」Bruno Mars
パトロンの設立者の一人、ジョン・ポール・ディジョリアは、米国で年間200億円以上の売上を誇る美容サロングループ、ジョン・ポール・ミチェル・システムの社長。サロンのお客さんであったクリント・イーストウッドやピーター・フォンダなどを通じ有名人のお気に入りとなったパトロンは、TV番組や映画などで取り上げられ人気に火が付いた。”悪酔いするお酒”から”優雅に飲むお酒”へ変わった瞬間こそプレミアム・テキーラの誕生であった。最近では、ブルーノ・マーズ「Marry You」やLMFAO「Shots」などで、歌詞にパトロンが引用されている。
ブームの立役者 こだわりの男ドン・フリオの偉大な功績
70年代は、ロックがテキーラ・ブームを牽引したと言われている。1972年のメキシコ公演で、ミック・ジャガーのお気に入りとなった「テキーラ・サンライズ」。その後もツアーで愛飲する姿がキャッチされ、ローリング・ストーンズの人気と共に世界中でテキーラの知名度が上がった。1980年代後半には、ハリウッドのレッドカーペットでもテキーラが目立ち始め、流行に敏感な層を中心に大ブームが起きた。
パトロンと同じくプレミアム・テキーラの二大金字塔として知られる『ドン・フリオ』は、長い歴史の中で伝統的職人芸により完成されたプレミアム・テキーラ。ドン・フリオは、長い”樽熟成”がもたらすコクとまろやかさが特徴で、ナシ、リンゴ、バニラやチョコレートなどの芳香をゆっくりと味わうが醍醐味。通常、テキーラは、蒸留後すぐボトル詰めをするシルバー(無色透明なもの)、樽で2か月間熟成をしたレポサド、1年寝かせたアネホ、さらには3年以上寝かせたエクストラ・アネホ等と熟成度の違いを楽しむ事ができるが、2年から2年半熟成させた「ドン・フリオ1942」は格別で、Facebookのサクセスストーリーを映画化した「ソーシャルネットワーク」では、契約成立の場面でシャンパンの代わりに「ドン・フリオ1942」を注文するなど、特別な乾杯に用いられるお酒となっている。
セレブ・テキーラの1番乗りは、サミー・ヘイガー
原材料にブルー・アガヴェを51%以上使っていることがテキーラの条件の1つであるが、1994年にテキーラ規制委員会により、これまで区別されてなかった純度の表記がされるようになった。これを期に人々は好んで100%アガヴェ・テキーラを求めるようになり、プレミアム・テキーラのマーケティング活動も盛んになった。ヴァン・ヘイレンの黄金期を支えたフロントマン、サミー・ヘイガーは、メキシコの避暑地カボ・サン・ルーカスで経営するライブレストラン『カボワボ・キャンティーナ』で提供するハウステキーラ『カボ・ワボ』をプロデュース、1996年に商品化を行った。前述の法整備がされた90年代にいち早くトレンドに乗ったことで、ピーク時に年間350万本を売り、6,000万ドル(約70億円)の年商を誇る一大ブランドに成長した。
ちなみに、サミーが経営する『カボワボ・キャンティーナ』は、灯台と『カボ・ワボ』のボトルを彷彿とさせる建物が解放感抜群なリゾートレストランで、ハウスバンドのロックミュージックと共にテキーラカクテルを飲めば、避暑地に相応しい雰囲気が味わえる。左胸にカボ、右胸にワボと書かれたビキニトップのカボアボガールが迎えてくれる。そして、テキーラを愛する彼はこんな一曲も。
輸入元:田地商店
販売元:信濃屋食品
意外な商才?企業家精神が爆発したヴィンス・ニールのテキーラ
モトリー・クルーのヴィンス・ニールがプロデュースしている『トレス・リオス』も、ミュージシャンのオリジナル・テキーラとして評価が高い。何かとトラブルの多いヴィンス・ニールだが、テキーラ造りに加え、クラブからタトゥー・ショップを経営、さらには航空会社まで立ちあげるビジネスマンの一面を見せている。ヴィンスは2010年に副業と本業の集大成のような『タトゥーズ・アンド・テキーラ』というアルバムを発表。
▲「Tattoos & Tequila」Vince Neil
同名のシングルのプロモーションビデオでは、「Show me all your tattoos and drink my tequila」と歌いながら、自身のブランド「トレス・リオス」をプレイスメントし、宣伝も済ませるとは敏腕!?
ついに、あのジャスティン・ティンバーレイクも!
『20/20 エクスペリエンス 2/2』
ジャスティン・ティンバーレイク
テキーラ・ブームに決定打を放ったと言われるのが、やはりテキーラ好きが高じてオリジナルブランドを手掛けたジャスティン・ティンバーレイク。イン・シンクからソロに転向後、本格アーティストとしてのみならず俳優としても見事なキャリアを築き、今では米国のエンタメ界には欠かすことが出来ない存在。ステージドリンクがテキーラという程テキーラ好きで知られるジャスティンは、熟成をしないシルバー(ブルー・アガヴェの青々とした風味が強い)が、お好み。開業時はシルバー1本で勝負し、本人が手掛けたボトルデザインも革新的な『901』ブランドを発表した。
ニューヨークのアーヴィング・プラザでもナショナル901デーと銘打ったコンサートを行なうなど、ブランド大使として積極的である。最近では、デザインもマイナーチェンジされて新たに熟成タイプのレポサド、アネホも発売開始。ついに、日本でも2013年11月1日に上陸した。ちなみに、ブランド名『901』はジャスティンの故郷メンフィスの市外局番である。
輸入元:田地商店
販売元:信濃屋食品
ライブも熟成も長い!?カルロス・サンタナ
もう一人の大スターが、カルロス・サンタナ。テキーラの聖地メキシコ出身の彼が手掛けるのが、納得の『カサノブレ』ブランド。最大の売りは、1700年代以来の伝統的な製法で生産されるオーガニックテキーラという点である。通常は7年~10年掛けて育てるブルー・アガヴェを10~14年掛けて育て、3回も蒸留を行うなど、手間と時間を掛けたプレミアム・テキーラで、日本ではまだ珍しいプレミアム・オーガニックテキーラの代名詞である。
アメリカで開かれるワールドスピリッツコンテストのサンフランシスコ大会で、カサノブレ アニェホ、カサノブレ レポサード、カサノブレ クリスタルはそれぞれ、金賞、銀賞、ダブルゴールドメダルを受賞しました。3時間超のライブを行うサンタナスピリットは、テキーラ造りに受け継がれている。
また、日本でも「カサノブレ・カクテル・コンペティション」などを開催し、日本のテキーラ・マエストロ達を喜ばせている。優勝者には、なんと直筆サイン入りギターが送られた。
番外編①ビリー・ギボンズも参戦!
ZZ Topのビリー・ギボンズもテキーラ・ラヴァーからオーナーとなった一人。丸みを帯びたガラスボトルとカラフルなラベルが可愛い『プーラ・ヴィーダ』を手掛けている。2011年の発売後1年間は、メキシコのみで流通していたが、現在はアメリカ国内でも流通していて、CMではビリー・ギボンズが快活なセリフ回しで挑んでいる。日本未発売。
番外編②モーツアルトでおいしくなーれ
テキーラはボトルに厳しい規制がない故に、独創的なボトルデザインも魅力の一つとされている。カザドレスは、鹿をモチーフにしたデザインがユニークなテキーラで、モーツァルトを流しながら1週間発酵するという優雅な行程を経ていることで有名。さらにユニークなのは、創立者であるある農夫の妻が「月明かりに照らされながらアガヴェ畑を走る鹿」の夢を見たことで、テキーラ造りを決意したという逸話。商品化されたのは1973年だが、最初に作られたのは1922年という歴史の長いテキーラ。なるほど。あの鹿は夢からインスピレーションを得ていると思うと非常にスピリチャルなボトルに見えてくるのが不思議で、マイルドな口当たりが病みつきになる“何か持っている”テキーラである。
関連リンク
100種類以上のテキーラと音楽が楽しめる日本最大級のテキーラフェスタが11月17日に、ビルボードライブ東京で開催される。全国から集まったテキーラ・マエストロのバーテンダーチームが作るカクテルの他、日本初上陸の希少なテキーラを楽しむ見本市のような第1部に対し、第2部はアレクサンダー.LP&プーロス・アバーノスを迎え、ラテン音楽とテキーラを味わうラウンジスタイルでお届けする。
【テキーラフェスタ2013】
<開催日>
2013年11月17日(日)
第1部:テキーラフェスタ 12:00~16:00
第2部:テキーララウンジ by Billboard Live 18:45~22:30 More Info
<開催場所>
ビルボードライブ東京
<入場料金>チケット発売中
第1部:5,000円(前売) 6,000円(当日)
第2部:1,500円 1テキーラ付(前売) 2,000円 1テキーラ付(当日)
オールスタンディング ※一部ラウンジスペースあり
http://www.billboard-live.com/membersarea/tequilalounge.html
<オフィシャルサイト>
http://www.tequilafesta.com/