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ラスマス・フェイバー 来日インタビュー
プロデューサー、コンポーザー、ソングライター、アレンジャー、プログラマー、キーボーディスト、DJ…マルチな才能で、ハウス、ジャズ、アニメ・ミュージックまで自在に操るスウェーデン生まれの才人、ラスマス・フェイバー。
2009年には、10代の頃に地元ストックホルムにてジャズ・ピアニストとしてセッションし、「19歳までは一日中ピアノの練習をしていた」という彼ならではのジャズ・ルーツにアニメ・ミュージックを融合させた斬新なアニメ・ジャズ・カバー・アルバム『プラチナ・ジャズ~アニメ・スタンダード』をプロデュース。誰しも一度は聴いたことのある名曲からファンも唸るマニアックな曲までバラエティに富んだラインナップ、そして本格派志向のアレンジで大きな反響を呼ぶ。今年6月にシリーズ第4弾となる『ラスマス・フェイバー・プレゼンツ・プラチナ・ジャズ ~アニメ・スタンダード Vol.4~』をリリースし、9月にアルバムを引っさげ来日した彼に“プラチナ・ジャズ”はもちろん、スペシャル・ゲストに中島愛を迎えた来日公演、そして今後のプロジェクトについてじっくりと話を訊いた。
僕たちは、自分たちの手でアニソンを
新しいジャズのスタンダードにしようとしている
??あなたが「Ever After」で一躍“時の人”となってからすでに10年が経過していますが、改めてご自身の10年以上の活動をどのように振り返っていますか?
ラスマス・フェイバー:なんというか……もう10年も経っているだなんて、信じられないよね(笑)。だって、まるであの頃がつい最近のことのようで、そんな昔のことだとは到底思えないからさ。「Ever After」よりも前、つまり10年と少し前の自分は、ごく普通の青年であり、どこにでもいるミュージシャンの1人だったと思うけど、「Ever After」以降は色々なことが一気に軌道に乗ったんだ。だから、あれから今までの間に経験したことはあまりにも多くて……やっぱり、一息では語りきれないな(苦笑)。本当にたくさんの経験をさせてもらったよ。海外進出をして世界中を忙しく飛び回ることもできているし。そしていろいろな音楽に携わることで、音楽家としてはとてもリッチな時間を過ごせたと思っているよ。
??あなたはDJとして、クリエイターとして、プロデューサーとして、ピアニストとして、常にシーンをリードし続けてきましたが、4年前から画期的な音楽プロジェクトを立ち上げました。それが“プラチナ・ジャズ”です。ラスマス・フェイバーの活動にとって、日本のアニソンをジャズでカバーするこのプロジェクトの位置づけは?
ラスマス:そもそも、僕はジャズ・ミュージシャンとして音楽キャリアをスタートさせているから、改めて“プラチナ・ジャズ”は、僕のルーツと向き合うことができる、とても大切なプロジェクトなんだ。そしてプラチナ・ジャズ・オーケストラに参加してくれているミュージシャンのみんなは昔からの知り合いで、本当に腕利きの素晴らしいジャズマンばかり。彼らと思いっきり楽しく仕事をする機会を与えてもらったことは、本当に嬉しく思っているよ。だから“プラチナ・ジャズ”は、僕にとってとても意味のあるものだね。
▲ 「Hajimete No Chuu (My First Kiss)」 / Platina Jazz
??アニソンをカバーしたコンピレーション作品というものは“プラチナ・ジャズ”以前から存在はしていたけれど、ここまで真正面から真剣にアニソンと向き合い、ジャズと向き合い、双方にとって新しい価値観を生み出していくようなプロジェクトはなかったと思います。
ラスマス:そう言ってもらえるのは嬉しいな。そもそも、僕以外のバンド・メンバーはいわゆる日本の“アニソン”をまったく知らない連中だから、セッションの中でアレンジを進めていくうちに、アニソンがどんどんとオリジナルのジャズに変わっていくんだ。でもそれって、ジャズのスタンダードが生まれる過程に似ていると思うんだよ。スタンダードと呼ばれる曲にもいろいろなバック・グラウンドがあって、ミュージカル・ソングやポップ・ソングを通して、ジャズ・ミュージシャンがその曲をスタンダードに変えてきた。それと同じように、僕たちは、自分たちの手でアニソンを新しいジャズのスタンダードにしようとしている。そんな感じなんだ。でも、はじめた当初はこんなに長く取り組むプロジェクトになるなんて思ってもみなかったよ(笑)。取り組んでいくうちに、自然とこのスタイルが固まってきて、僕にとってはトラディション(慣習)の1つになっていったんだ。
??やっぱり、多くのファンから寄せられている反響も活動の後押しになった?
ラスマス:もちろん! ただ、まさかここまで大きな反響を貰えるとは思っていなかったから、最初は驚いたよ。結果的に、アニソン・ファンとジャズ・ファン双方がこの活動をフォローしてくれたんだ。そして昨年(2012年)くらいから、より国際的な活動へと発展していく可能性が見えたから、今後もっと活発な活動にしていきたいと今は考えているよ。
リリース情報
ラスマス・フェイバー・プレゼンツ
プラチナ・ジャズ ~アニメ・スタンダード Vol.4~
- ラスマス・フェイバー presents プラチナ・ジャズ
- 2013/6/19 RELEASE
- ビクターエンタテインメント
- [VICP-65155 定価:¥2,500(tax in.)]
- 詳細・購入はこちらから>>
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Interviewer: 冨田明宏
常にお客さんとの駆け引きや、
全体の大きな流れを意識してしまうところは
自分でもDJ的だなと思うな
??さて、改めて先日行われたプラチナ・ジャズ・オーケストラの来日公演についてお伺いしたいのですが、どのように振り返っていますか?
ラスマス:Amazing! 本当に最高の夜だったよ! 僕たちの演奏もとてもパワフルだったと思うけど、今回はセットリストがとてもエネルギッシュで、勢いのある選曲で臨んだんだ。結果、お客さんの反応もとてもパワフルで、好評だったと受け止めているよ。
??今回のセットリストは本当に完璧で、ベスト・セレクションと言っても過言ではなかったと思います。最新アルバムだけではなく、過去のアルバムからも名曲を満遍なく披露されていて。
ラスマス:ありがとう。セットリストについては、きっと僕のDJとしての感覚がすごく影響している気がしてるんだ。DJって持ち時間の間で何をするかというと、選曲でテンションの押し引きを演出して、波を作りながら一つのステージを完成させるよね。それと同じで、この前のセットリストは過去から現在までに手がけてきた『プラチナ・ジャズ・シリーズ』の中でも〈これは外せない〉という曲を、メドレーなどでアレンジを変えたりしながら散りばめていった。常にお客さんとの駆け引きや、全体の大きな流れを意識してしまうところは自分でもDJ的だなと思うな。
??今回の公演で、あなたが音楽的にもっとも尊重したかったことは?
ラスマス:1つ挙げるなら、アルバムの中では三重奏などいろいろな形で演奏する曲があるけど、今回の公演ではバンドとして全員がステージ上に上がり、それぞれが活躍する演奏に挑戦したかった。〈これがプラチナ・ジャズ・オーケストラだ!〉と感じるようにね。
??確かに、メンバーそれぞれが必ず光り輝くパートが用意されていて、そこも意識した選曲、そしてアレンジだったのかな? と。
ラスマス:そう、そこは意識したんだ。せっかく素晴らしいジャズ・ミュージシャンたちを連れて行っているんだから、メンバーの魅力がちゃんと伝わるような見せ場は用意したいと思ってね。
リリース情報
ラスマス・フェイバー・プレゼンツ
プラチナ・ジャズ ~アニメ・スタンダード Vol.4~
- ラスマス・フェイバー presents プラチナ・ジャズ
- 2013/6/19 RELEASE
- ビクターエンタテインメント
- [VICP-65155 定価:¥2,500(tax in.)]
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Interviewer: 冨田明宏 / Live Photo: Masanori Naruse
僕が感動したのは、まだ若い、国籍も違う彼女が
物怖じせずに堂々と自分の歌で世界観を作り上げたこと
??今回の公演では、アンコールで披露されていた『美少女戦士セーラームーン』の主題歌「ムーンライト伝説」がとても印象的だったのですが、この曲にはどのような思い入れが?
ラスマス:「ムーンライト伝説」は、僕の中ではレコーディングでもライブ・ステージでも、今までよりもさらに一歩踏み込んだジャズ・アレンジに挑戦したいと思って取り組んだ曲だったんだ。ダグラス(・アンガー)もすごくエモーショナルに、この歌をベストな形で表現してくれた。だからこの曲が今回高く評価されていることがすごく嬉しいよ。どのアニソンをジャズ・アレンジするかについては、いつも日本のスタッフと話し合いながら決めているんだけど、このアレンジの仕上がりには感動してくれていたね。
??ラストに披露された劇場版『カウボーイビバップ 天国への階段』のEDテーマ「Gotta knock a little harder」ですが、Twitterなどでもとても大きな反響がありました。
ラスマス:はじめは、この曲をラストにするつもりはなかったんだ。だけど、ショウを重ねていく内に、自然と〈ラストはこの曲しかない〉と思うようになっていたね。この曲はとても巨大なエネルギーを引き出してくれる曲で、とても感動的なんだ。4年間活動してきたプラチナ・ジャズ・オーケストラだからこそ生み出すことができたグルーヴだったと思っているよ。
??そして東京公演では、プラチナ・ジャズ・オーケストラでは2度目の共演となったスペシャル・ゲスト中島愛さんがご出演されました。今回は彼女が大人っぽく、ちょっぴりセクシーに歌い上げていたのが印象的でした。
ラスマス:確かに、今回のショウでは彼女から放出される新しい魅力を感じたんだよ。そして僕が感動したのは、僕とすでに10年、15年来の友人達であるミュージシャンの輪に混ざって、まだ若い、国籍も違う彼女が物怖じせずに堂々と自分の歌で世界観を作り上げたこと。しかも、彼女は声優で、ポップス・シンガーで、ジャズ・バンドの中に混ざって歌うのは不慣れなはずなのに……本当に、驚かされたね。以前に共演したときよりも、格段にレベルアップしていることがよくわかったよ。
??東京公演では、「READY!!」や「motto派手にね!」を作曲した神前暁さん、「Hello!」を作曲した北川勝利さんもショウをご覧になっていましたね。お2人とも、とても興奮していましたよ。
ラスマス:彼らに観てもらえたことは最高の出来事だった。すごくハッピーだったよ。例えば僕が作った曲がカバーされたり、ジャズ・アレンジされるとすごく嬉しい気持ちになるんだけど、神前さんも北川さんも、同じ気持を味わってくれていたら嬉しいな。
リリース情報
ラスマス・フェイバー・プレゼンツ
プラチナ・ジャズ ~アニメ・スタンダード Vol.4~
- ラスマス・フェイバー presents プラチナ・ジャズ
- 2013/6/19 RELEASE
- ビクターエンタテインメント
- [VICP-65155 定価:¥2,500(tax in.)]
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Interviewer: 冨田明宏 / Live Photo: Masanori Naruse
ずっと音楽に追われているくらいが丁度いいというか……
ワーカホリックなのかな(笑)
▲ 「Indian Summer」 / Rasmus Faber feat. Frida Sundemo
??改めて、あなたは現在ソロでも活発に活動しつつ、クリエイターとして楽曲提供も行いながら、プロデューサーとして“プラチナ・ジャズ”、そしてThe RaFa Orchestraも手がけています。本当に、信じられないくらい大忙しですよね?
ラスマス:でも、もうひとつくらい新しいプロジェクトを立ち上げてもいいかなって。
??えっ!? それは本気で言っているの?
ラスマス:なんというか、僕は“自由な時間”が好きじゃないんだよね。ずっと音楽に追われているくらいが丁度いいというか……ワーカホリックなのかな(笑)。ただ、いくつもの顔があることに自分でも混乱してしまうときは確かにあるんだ。でも、今年の夏は2週間くらい、いろいろと今後のことを整理して考える時間があったんだよ。近い将来のこと、遠い未来のこと、いろいろとね。その近い将来の方で、すぐに実現させたいアイデアがいくつかあるんだけど……。
??それはまだ秘密?
ラスマス:ううん、秘密ではないよ。The RaFa Orchestraとして、新しくオリジナル作品を作ろうと思っているんだ。次にThe RaFa Orchestraとしてビルボードライブに来るときは、きっとすべてオリジナル・ソングでライブをやることになるんじゃないかな? 今伝えられるヴィジョンは、それだけかな。他にもいろいろあるけどね。
▲ 「The Galaxy Express 999」 / Platina Jazz
??それはビルボード・ライブのファンにとっては吉報です! “プラチナ・ジャズ”の新作も、来年待っているのかな?
ラスマス:うーーん……まだ次のヴィジョンがハッキリと見えているわけではないんだけど、ぜひ作りたいとは思っているよ。でも次回は、今までの“プラチナ・ジャズ”とは違う表現やアプローチを、次の『vol.5』では挑戦してみたいと思っているんだ。それがどういう形に落ち着くかは、これからしっかりと練っていかないといけないね。
??それは楽しみです! ちなみに、今回の日本滞在はエンジョイできた?
ラスマス:仕事では最高にエンジョイできたんだけど、プライベートな時間になったら突然風邪気味になっちゃって(苦笑)。今回のツアーでは行けなかったんだけど、実は来日する度に温泉には行くようにしているんだ。
??それはどこの温泉?
ラスマス:関東近郊だと箱根とか、九州の方にも行ったことがあるし、本当にいろいろだよ。温泉が大好きなんだ。今回は忙しくて無理だったから、すごく残念! その代わりに、日本食の食材を買って帰ろうと思っているよ。友達から頼まれているものがあってね。“カツカレー・ソース”って知ってる?
??なんだろう、カツカレー専用のソースなのかな(笑)
ラスマス:僕もちょっとわからないんだけど、これから探しに行こうと思って。次回また日本に来るときは、もっとゆっくりできるといいね。
リリース情報
ラスマス・フェイバー・プレゼンツ
プラチナ・ジャズ ~アニメ・スタンダード Vol.4~
- ラスマス・フェイバー presents プラチナ・ジャズ
- 2013/6/19 RELEASE
- ビクターエンタテインメント
- [VICP-65155 定価:¥2,500(tax in.)]
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Interviewer: 冨田明宏 / Live Photo: Masanori Naruse
ラスマス・フェイバー・プレゼンツ プラチナ・ジャズ ~アニメ・スタンダード Vol.4~
2013/06/19 RELEASE
VICP-65155 ¥ 2,619(税込)
Disc01
- 01.CHA-LA HEAD-CHA-LA (『ドラゴンボールZ』より)
- 02.MOTTO☆派手にね! (『かんなぎ』より)
- 03.ミラクル・ガール (『YAWARA!』より)
- 04.妖怪人間ベム (『妖怪人間ベム』より)
- 05.Eternal Blaze (『魔法少女リリカルなのはA’s』より)
- 06.ラムのラブソング (『うる星やつら』より)
- 07.太陽曰く燃えよカオス (『這いよれ!ニャル子さん』より)
- 08.オリオンをなぞる (『TIGER & BUNNY』より)
- 09.ムーンライト伝説 (『美少女戦士セーラームーン』より)
- 10.Eternal Wind ~ほほえみは光る風の中~ (『機動戦士ガンダムF91』より)
- 11.GO! GO! MANIAC (『けいおん!!』より)
- 12.I Do (『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX』より)
- 13.READY!! (『THE IDOLM@STER』より)
- 14.ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C (『日常』より)
- 15.ブルーウォーター (『ふしぎの海のナディア』より)
- 16.月の繭 (『∀ GUNDAM』より)
- 17.空からこぼれたSTORY (『名探偵ホームズ』より)
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