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スパークス 【FUJI ROCK FESTIVAL '13】インタビュー

スパークス 【FUJI ROCK FESTIVAL '13】インタビュー

 1971年のデビュー作から40年間に及ぶ音楽活動で、20枚以上の作品をリリースしてきた、兄ロン・メイルと弟ラッセル・メイルによるスパークス。その長いキャリアの間で、ポップ・ミュージックを根幹とし、常に自らのスタイルを再構築するユニークな音楽性で唯一無二のアイデンティティを築き、モリッシー、ビョーク、ジム・オルークやフランツ・フェルディナンドなどのミュージシャンからも絶大な支持を得ている。近年では、ツアー以外にも1年に1度は必ず日本を訪れるほどの親日家でもある彼ら。今年1月に行われた【Two Hands, One Mouth】ツアーに引き続き、【FUJI ROCK FESTIVAL '13】に出演する為に7月に再来日を果たした2人にインタビューを決行した!

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自分たちがやっていることを、出来る限り純粋な形で表現したい

――今回2度目のフジロック出演ですね。今年の4月には、お二人の地元でもあるカリフォルニアの音楽フェスティヴァル【コーチェラ】にも出演されていましたが、フェスでのライブと通常の公演では、心掛けていることなどに変化はありますか?

ラッセル・メイル:やはりフェスだと普段のライブを観に来る観客と違って、僕らの音楽を知らない人も多い。その部分では未知な領域ではあるけれど、その為に自分たちのショーを変えるということはしていないんだ。通常のライブで行うようなステージングでフェスでも演奏している。それは自分たちがやっていることを、出来る限り純粋な形で表現したいから。観客の数が変わろうと関係ない。それにみんながジャンプしたり、叫んだりするのを目的にライブをしているわけではないからね(笑)。あくまでもスパークスという一つのバンドが、ライブではどのような表現ができるか、ということにこだわっているんだ。

ロン・メイル:もちろんフェスティヴァルでは、時間の都合で通常のライブよりも短くはなってしまう。【コーチェラ】でのセットは短かったけれど、今日のライブは通常のライブと長さはそこまで変わらない。これは主催者のSMASHが、それを理解して調整してくれたからなんだ。ありがたいことだよ。【コーチェラ】で演奏したのは、私たちにとっていい経験となった。ほぼ2タイプのバンド…インディー・ギター・バンドとダンス・アクトしかいなくて、私たちを観に来た観客はまるで催眠術にかかっていたようだった(笑)。だが私たちとしては、いい反応だったと感じている。音楽を知っていて観に来てくれる人達はもちろん盛り上がるけれど、何も知らない人も惹きつけることができたのでね。

――もしスパークスがフェスのキュレーターになったら、どのようなラインナップにしますか?

ロン:私が選ぶアーティストは、もうすべて亡くなっているよ(笑)!マイルス・デイヴィス…

ラッセル:マイルス・デイヴィスに続いて、ビートルズ。

ロン:そしてグレン・グールド。

ラッセル:3アーティストしか出演しないフェス!

――まさに最強のフェスですね!

ロン:でも誰がヘッドライナーを務めるか喧嘩になりそうだね。

ラッセル:そう、3アクトだから1日しかないからね(笑)。

「The Number One Song In Heaven」
▲ 「The Number One Song In Heaven」 (Official Video)

――私がスパークスを知ったきっかけは10年前ぐらいで、フランツ・フェルディナンドのメンバーがDJでかけた「The Number One Song In Heaven」にとても衝撃を受けたからなんです。若手ミュージシャンもそうですが、スパークスのことを慕う若い世代のオーディエンスが増えていることについては?

ロン:おぉ、そうなんだね。彼らとは仲良くしているよ。今フェスティヴァルの話が挙がったが、あのような場で演奏するのは、若いオーディエンスへ向けて私たちの音楽を発信するいい機会でもある。もちろん長年連れ添ってきてくれたファンも大事だが、心の底では若いオーディエンスのことも気に留めている。私たちの作る音楽が、自分らの年の半分ほどのオーディエンスから慕われていることは、照れくさいがもちろん喜ばしいことだ。レジェンドとして扱われたいという気はまったくないが、やはり18歳ぐらいの若いバンドのイメージと私たちを比べてしまうと大御所感が出てしまうかもしれないね(笑)。

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あくまでスパークスらしく、新たな道を
切り開いていくことを意欲的に行っている

――では現在行っている【Two Hands, One Mouth】ツアーについて少しお話を聞かせて下さい。

ラッセル:まさにそのまま、ロンの2つの手と私の声のみで構成されたライブなんだ。今までやったことがないような形で、自分たちをライブで表現したかった。これまで2人だけでツアーをしたことはなかったし、スパークスは過去に様々なミュージシャンと一緒に活動してきたけれど、僕とロンの2人がコア・メンバーだ。それをライブでも音楽的にうまく見せれればと思ったんだ。だからと言って繊細なシンガーソングライターとのアコーステック・ナイト~(笑)のような軟な感じにするのは嫌で、今までのパワーやスパークスの“即時性”を持たせることは重要だった。それを2人だけで可能にする為に、曲のアレンジに多くの時間を費やした。特にロンのパートをね。でも評論家、そしてファンからの反応もいいんだ。いつもとまったく違うライブをしたら自分達のファンにでさえ嫌煙されるのでは、という懸念もあった。でもヨーロッパやアメリカの大部分をツアーしたし、10月から第2弾として再びヨーロッパとアメリカをツアーをするんだ。【The Revenge of Two Hands, One Mouth】っていうツアー・タイトルで、今回のツアーで演奏しなかった曲もセットリストに加えるつもりだよ。

――このツアーの為に曲をアレンジする際に、特に難しかった、と感じたものはありますか?たとえば「The Number One Song In Heaven」のようなダンス・トラックだったり…あの曲は半分インストゥルメンタルですし。

ラッセル:そうだね。アルバムでは、ドラムやキックドラムがダンスっぽい要素を加えているけれど、それはすべて省かなければならなかった。でもまた違う意味で、いい感じに仕上がったと思うよ。

ロン:演奏したくても、このコンセプト用に上手くアレンジできなかった曲も多くあるんだ。だから演奏したかった曲とこのコンセプトにあった曲と半々ぐらいでセットリストが構成されている。多くの場合、2人で演奏するには原曲とまったく正反対なアプローチをとらなければならないかった。ほぼすべての曲がオリジナルに忠実な形で再現されていないのは、それが理由なんだ。

インタビュー写真


――先ほども話にあがりましたが、長年活動しているとバンド自身が変化を恐れたり、マンネリ化することが多いと感じるのですが、40年以上の活動期間があるにも関わらず常に変化しよう、というチャレンジ精神の原動力となっているものは?

ラッセル:そこがスパークスというバンドの一部になってしまっているからかな。詞と曲のバランス、ソングライティング、歌声、パーソナリティなどスパークスのエッセンスとなる部分を保ちながら、それを色々な環境で試してみたいんだ。それは長いキャリアがあるゆえのことでもある。バンドとしてそこを常に再構築していかないと、自分たちにとってもそうだけど、ファンにとっても新鮮味がないし、つまらない。なので、あくまでスパークスらしく、新たな道を切り開いていくことを意欲的に行っているんだ。

「The Number One Song In Heaven」
▲ 「The Seduction Of Ingmar Bergman」 (Trailer)

――最近では『The Seduction Of Ingmar Bergman』というミュージカルも上演し、そのアルバムもリリースしていますよね。作品ごとのコンセプトは、どのようなところから生まれたり、ひらめいたりするのですか?

ラッセル:『The Seduction Of Ingmar Bergman』は、普通のアルバムとはまったく違う、大がかりなものにも見えるけど、やはりあれも最終的にはスパークスのアルバムなんだ。たとえ物語を中心としたミュージカルであっても、それはスパークスがやりそうなことで、3分間のポップ・ソングを作ることと隔てて考えることはない。「次の“本当”のスパークスのアルバムはいつ出るの?」なんてよく訊かれるけれど、あれもれっきとしたスパークスのアルバムだよ!初期の頃から僕らのことが好きで、バンドを理解してくれているファンは、その部分もわかってくれているんだ。今回のツアーや『The Seduction Of Ingmar Bergman』を比べただけでもまったく違うけれど、僕らにとって「毎回違うことをやっている」という意味では、一貫した表現方法だと感じている。

ロン:そうだね。やはり今まで試みたことがないことをやる、ということが大きく関係している。不安な部分もあるけれど。単に10曲入りのアルバムを作るのは簡単だ。作品のクオリティについては聴き手が判断するものだが、そのフォーマットというのはもう何度もやってきたことだから、ポップ・ミュージックの範囲内でまったく違うことがしたかった。2人ともただ単にやっているという感覚に敏感で、レコーデイングにしろ、ライブにしろ、その悪循環に陥るのは嫌なんだ。今回のライブも、安全網がないところで綱渡りをしているような気分だけど、だからこそ「やってみよう!」という感じだった。

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現在のポピュラー・ミュージックにどれだけ価値があるのか

――40年にも及ぶ活動期間で、音楽業界の様々な変化を体感してきたと思いますが、その変化がバンドに及ぼした有益な影響は?

ラッセル:テクノロジーが進歩したことによって、デジタル・レコーディングが及ぼした影響はやはり大きいよね。よりレコーディングが安易に、低価格、そして個人でも行えるようになった。近年作られたスパークスのアルバムは…何枚か正確な数は忘れたけど、すべて僕のスタジオでレコーディングされたものだ。でもプロ仕様のスタジオでレコーディングした作品に劣らないクオリティが維持できている。だがそれはある意味、表面的な事実で、作品自体を作るという行為は変わっていない。ただ様々なことが身近になったことで、そのプロセスをシンプルにしてくれたというだけなんだ。最終的に作品づくりにおいての一番重要なプロセスは、今も昔も変わっていないからね。

――SNSなどを通じてバンドとファンの距離が縮まったことについてはいかがですか?スパークスはファンをとても大事にしているという印象を受けますし。

ラッセル:僕らは特別ネットに長けてはいないけれど、ファンと繋がれることは…これは他のバンドも同じ風に感じていると思うけど、特にスパークスにとって有益だと感じている。たとえばFacebookなんかは、即時に反応が分かるところがいいよね。「今日は、フジロックに出演にするよ!」と投稿したら、会場にいる人はもちろん、海外からも反応がある。ある種のコミュニティみたいで、それは過去には存在しなかったものだからね。

――それにスパークスは、ツアーで行った場所などの写真を頻繁に自身のFacebookページに投稿してますよね。特に日本で撮られたものは面白いものばかりで。

ロン:(笑)。そうそう、日本では特にね。日本は私たちの魅力を最大限に引き出してくれる!

――2年前ぐらいでしたっけ、ロンとEXILEの写真は特にお気に入りです(笑)。

ラッセル:アハハ。古いけど、あれはいい写真だよね。クラシックだ!

インタビュー写真


――では最後に、現在の音楽シーンはお二人の目にどのように映っていますか?

ロン:移り変わりの時期である、ということを願いたいね。

――いい方向に向っている…それともその反対という意味で?

ロン:私が悲観的なだけかもしれないが、今音楽を作っている人々からは野心が感じとれない。なので野心的なアーティストが出てくることを願っている。インタビューの冒頭で君がフランツ・フェルディナンドの名前を挙げていたけれど、彼らがやっていることは揺るぎないと感じている。でもポップ・ミュージックの域を広げ、その可能性を追求するには至っていないと思う。そこが私たちがポップ・ミュージックを批評する際に重要な要素なんだ。その部分を追求しているバンドはとても少ないという印象だね。

――全てが派生的で、たとえばパンクやヒップホップなんかの新しいムーヴメントが生まれていた時のような活気や勢いはないな、という印象は受けますね。

ロン:そう、ジャンルというものがほぼ無く、すべてが一つになってしまっている。たとえば、ヒップホップの要素があるポップ・ミュージックのように。

――ラッセルはいかがですか?

ラッセル:ロンと同じく、現状で満足しているようなアーティストが多いような気がする。耳に入ってくるもので、僕らの感性からして、いい意味で「ワオ!この曲何なんだ?こんなの今まで聴いたことがないよ!」と思えるようなものはない。今の音楽は、「あぁ、これは前に聴いたことがある。」と感じるものばかりで。それは悲しい事でもあるよね。驚かさせられるようなことをやっている人が全然いない。

――それに音楽だけではなく、とにかく情報量が莫大に増え、一日にプロセスする量が多くなったというもの、音楽との付き合い方を変えてきているような気がしますね。

ロン:ポップ・ミュージック以外にも、日々様々な“モノ”が覆いかぶさってくる。その結果、一つのアルバムを聴くだけの集中力にも欠けるようになってしまった。アルバムは元より、iTunesで1曲の曲でさえ買うこともせず、違法にダウンロードしてしまう人も増えている。だとすると現在のポピュラー・ミュージックにどれだけ価値があるのか、ということも疑問に思ってしまう。昔はこうだった、あ~だったとグダグダ不満を言うのは嫌なんだ…。

――「昔の方が良かったよ~。」という風にもとられてしまいますしね。

ロン:そう、シンセサイザーを馬車で引いていた時代ね(笑)。

スパークス「キモノ・マイ・ハウス +3」

キモノ・マイ・ハウス +3

2009/06/10 RELEASE
UICY-94098 ¥ 2,880(税込)

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Disc01
  1. 01.ディス・タウン
  2. 02.アマチュア・アワー
  3. 03.自分に恋して
  4. 04.ヒア・イン・ヘヴン
  5. 05.イッツ・ノット・クリスマス
  6. 06.アスタ・マニャーナ・ムッシュ
  7. 07.タレント・イズ・アン・アセット
  8. 08.コンプレインツ
  9. 09.イン・マイ・ファミリー
  10. 10.赤道
  11. 11.バーベキューティー <Bonus Tracks>
  12. 12.ロスト・アンド・ファウンド <Bonus Tracks>
  13. 13.アマチュア・アワー (ライヴ) <Bonus Tracks>

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