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シェーン・ガラス 『Ascend』インタビュー
B'zのツアードラマーを11年間も務め、彼らのファンを幾度となく熱狂させてきたシェーン・ガラス。グレン・ヒューズ、ジョー・リン・ターナー、ビリー・シーン、イングヴェイ・マルムスティーンと、錚々たるロックスターと共演し、自身の作品も次々と創作。今回のインタビューでは、そんなシェーンの歴史とキャラクターについてはもちろん、B'zに対する印象や想い、B'z「Brotherhood」英語詞カバーも収録された最新作『Ascend』について話を訊いた。
B'zの音楽がすごく幅広い人に聴かれているのは凄い
--ご自身ではシェーン・ガラスをどんな音楽家であると感じていますか?
シェーン:B'zのツアードラマーとしての活動は11年間やってきているんだけど、B'zでの活動がないときはロサンゼルスに在住しているので、自分のスタジオでいろんなアーティストとセッションしたり、自分の曲を書いたりしていて、今回『Ascend』というニューアルバムを完成させるに至った。なので、B'zと個人の音楽活動、ふたつの局面を持ってるミュージシャンと言えるんじゃないかな。あと、ミックスやプロデュースもしているので、ロックやポップス、いろんなタイプの音楽に接しているよ。
--そんなシェーンのルーツを辿りたいんですが、まず音楽に目覚めたきっかけを教えてもらえますか?
シェーン:両親が50年代のロックンロールを好きでよく聴いていて、それが「音楽って楽しいな」って思い始めた一番最初のもの。それからKISSの『ハンドレッドサウザンド・イヤーズ』を聴いて「なんだこれ!?」と思い、自分も音楽がやりたいと思ったんだ。大きいアイスクリームが入ったバケツみたいな容れ物をひっくり返して、それでドラムセットを組んで、KISSのマネをして叩いて(笑)。9才のときに父がアコースティックギターを買ってくれたんだけど、両親に頼んでKISSのコンサートへ連れて行ってもらったら、やっぱりドラムセットが欲しくなってしまって。そしたら10才のときに両親がドラムセットも買ってくれたんだ。
--シェーンは、グレン・ヒューズ、ジョー・リン・ターナー、ビリー・シーン、イングヴェイ・マルムスティーンと、錚々たるロックスターと共演してきましたけど、そうした面々と仕事が出来るようになったストーリーを教えてください。
シェーン:ラヴァーボーイのポール・ディーン(g)がカナダでショーをやることになって、ドラムを叩くことになったんだけど、それが自分にとって初めてのインターナショナルなアクトで。その後、ロスに移ってMIで一年間ぐらい勉強をしていて、その頃にいろんなオーディションを受けたんだけど、イングヴェイ・マルムスティーンのオーディションに受かって、彼のバンドでプレイしたことによってマイケル・シェンカーやグレン・ヒューズ、その時代に活躍していたいろんな人たちから声を掛けてもらえるようになったんだよね。
--そうやって様々なミュージシャンと共演してきた中で、最もシェーンがリスペクトしている人って誰だったりするんですか?
シェーン:難しい質問だね。どのミュージシャンも素晴らしいものを持っているからね。お好み焼きもすごく好きだけど、鍋もすごく好きだし、どっちの方が好きかと聞かれても困るのと一緒(笑)。
--なるほど。
シェーン:ただ、いろんな人と仕事をしてきた中で、B'zは最も長く一緒にやっているので、自分にとってすごく身近な存在になっていて。彼らが発展していく姿も見てきたし、あれだけ何曲も素晴らしいヒット曲を書けるのは凄いと思うし、彼らが音楽の世界で到達したものも凄い。そういう意味では、彼らに対しては大きなリスペクトを持っている。リスナーが特定のジャンル好きに絞られるアーティストも多い中で、B'zの音楽がすごく幅広い人に聴かれているのは凄いよ。
--シェーンがB'zのドラマーを務めることになった経緯を教えて下さい。
シェーン:それもオーディションだったんだけど、90年代に自分がマイケル・シェンカーとやっていたとき、TAK(松本孝弘/g)がロサンゼルス公演に来て、自分のプレイを観ていてくれたんだ。
--それもあってB'zと仕事することになったと。B'zと最初に会ったときの印象を教えてもらえますか? まずは稲葉浩志(vo)さんから。
シェーン:ロックシンガーによくありがちな「俺はスターだぜ」みたいな感じじゃなくて、すごく純粋で素直そうな人だと思った。ステージ上であれだけ凄いオーラを出しているのに、ステージ下りた後の彼はとても親切で優しい。「この人に近付いちゃいけない!」みたいな感じは全くない。大きいバンドのリードシンガーはオーラもあるけど、それと同じぐらいエゴも強いイメージがあるので、すごく意外だったよ。それはTAKも一緒。
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Interviewer:平賀哲雄
僕たちのショーは、みんなの人生のサウンドトラックだから
--では、松本さんのギターを最初に聴いたときの印象を聞かせて下さい。
シェーン:オーディション用の資料として曲が送られてきたときに、彼のプレイがロックだけじゃなく様々な要素を含んでいて、ブルースもあれば、ファンクもあるし、その多様性にすごく驚いた。あと、巧いギタープレイヤーはたくさんいるけれど、TAKはポール・マッカートニーのような素晴らしいメロディーも持ったギタープレイヤーだから、それはすごく稀有な存在だと思う。
--世界中で活躍してきたシェーンだからこそ聞きたいんですが、B'zの音楽は日本以外でも評価されると思いますか?
シェーン:思う。時代や国を超えて愛される曲ってメロディーが素晴らしい。そういう意味では、B'zの曲もまた時代や国を超えて愛されるんじゃないかと思う。
--シェーンは、最新作『Ascend』でB'z「Brotherhood」を英語詞カバーしていますけど、何故この曲をカバーしようと思ったんでしょう?
シェーン:2011年の東日本大震災で悲劇的なことがたくさん続いて。第二次世界大戦のあとは、日本だけでいろんなものを築いてリカバリー(回復)してきたけど、震災のときは世界中のいろんな国から救済援助があって。もし自分が日本人だったら「世界中の人たちが助けようとしてくれている」って感じたんじゃないかと思ったんだ。名前も顔も知らない人たちから手を差し伸べられた。その素晴らしさにインスパイアされてカバーしようと思ったんだよね。
--そんな「Brotherhood」のカバーも収録された『Ascend』。このアルバム自体はどんな作品を目指して創ったものなんでしょう?
シェーン:最初に「こういうアルバムにしよう」というテーマを掲げた訳ではなかったんだけど、前アルバム『HINGE』に比べるとアップリフティングというか、気持ちが高揚する前向きな曲がわりと多くなったと思う。前作はいきなり堕ちていく感じの曲から始まるんだけど(笑)、今回は1曲目から上昇していく感じになっていて、それは自分の今の状態の表れでもあるのかなって思う。ただ、気付いてくれているか分からないんだけど、今作のジャケットに描かれたバルーンの中にはガイコツが乗っていて。
--本当だ!
シェーン:だから陰と陽の陽だけじゃなく、陰の要素もちょっぴり入ってるんだよね。
--大きい話になっちゃうんですけど、シェーンが音楽を続ける理由ってどんなところにあったりしますか?
シェーン:すごく音楽を愛しているし、いろんなものにインスパイアを受けて「もっと良いものを創りたい」っていう気持ちが常にあるから。
--そうした姿勢で音楽を続けてきたシェーンは、今、世界で何番目に優れたドラマーだと思いますか?
シェーン:(笑)。音楽はスポーツと違って競争するものじゃないからね。アートにランクを付けるのは難しいと思うし、自分では分からない。ちゃんこ鍋、きりたんぽ鍋……
一同:(爆笑)
シェーン:どっちがいいかって言われてもね。
--鍋、好きなんですか(笑)?
シェーン:はい!
--(笑)。そんなシェーンのプレイが、8/24~スタートするB'zのスタジアムツアーで体感できます。
シェーン:すごく楽しみにしてます。先日までホールツアーを廻っていて、それもすごく良かったし、これ以上ないっていうぐらいの内容だったと思うんだけど、次はスタジアムツアーということで、もう一段階高いバーに向かって進んでいく。それがすごく楽しみでワクワクしている。これまでの活動がすべて集約されたショーになると思うので、みんなも一瞬一瞬を楽しんでほしいね。僕たちのショーは、みんなの人生のサウンドトラックだから。
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