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高田漣 フォーカデリック・アンサンブル インタビュー

高田漣

 スティール・ギターをはじめとするマルチ弦楽器奏者として、YMO、くるり、斉藤和義などの数多くのレコーディングやライブで活躍しながら、近年は高橋幸宏や原田知世らと結成したpupaでも多彩な才能を発揮してきた高田漣。ソロとしては6年ぶりとなった最新作『アンサンブル』で、上記の親交が深いミュージシャンたちをゲストに迎えながら、父親の高田渡が70年代に発表した日本語フォーク/ロックの傑作群を今に継承したような世界をストレートに聴かせている。9月末にはビルボードライブでのツアーを控える彼に“うた”の魅力に溢れたルーツ回帰な新境地について語ってもらった。

今回のアルバムでは、初めて自分のルーツというか“お里”を出した

??最新作の『アンサンブル』は、これまでのソロ作と比べるとかなり高田さんのシンガー/ソングライターとしての個性が現れた作品になりましたね。

高田漣:今回のアルバムで新たにリスタートできたというか。自分の中でもう一度やるべきことが見つかったような感じがありますね。そこにはやっぱり震災があって、直後にチャリティの形でウチの父親の楽曲から一曲歌ったことが、最初の大きなスタートになったというか。今までも日本語で歌う場面は何度かあったんですけど、今まで以上に日本語で歌うことがメッセージも含めて急に大事な要素になってきて。だから、これまでのアルバムとは意識が違う方向に向かっていったことは確かですね。

??サウンドのタッチも、父親の渡さんが70年代に発表した日本語フォーク/ロックの傑作群を思わせるルーツ色の強い仕上がりとなっているのも驚きました。

高田漣:そうですね。自分のアルバムでは、あまり自分が子供の頃から馴れ親しんできた70年代の音楽の要素をストレートに出すことはなかったので、今回は初めて自分のルーツというか“お里”を出したというか(笑)。そういう意味ではすごく素直に作れた感じもありました。やっぱり父親がああいう存在だから、今までは同じフィールドに入ることへの不安や躊躇があったし、自分はそうじゃないフィールドでやるんだという意識が強かったんですけど、震災以降はガラッと変わったというか。自分でも驚きますね。“こんなことするんだ”って(笑)

??でも、漣さんのこういう作品を待ってました!という音楽ファンはとても多かったと思います。

高田漣:あとは、父親だけじゃなくて、はっぴいえんどや小坂忠さん、ガロといった先輩方がやってきたことの凄さを再認識したところもありましたね。洋楽をいかに日本語化するかという点とともに、僕らはそれを聴いてバッファロー・スプリングフィールドやモビー・グレイプってバンドがいるんだ、ということも知ったので。そういう意味では、今度は僕がもっと若い聴き手に対してそういうことをする順番なのかなと作りながら思うところもあったので、今回は今まで以上にわかりやすくそういう古い音楽のアイコンを提示するようにしましたね。

??そうですね。サウンドも言葉も1970年前後の日本のロック黎明期へのオマージュに溢れています。

高田漣:特に、今作で4篇を取り上げたウチの父親の詩集『個人的理由』は1969年に刊行されたものなので、当時に曲になっていればどんな曲調だっただろうか、とか。詩に入り込むと同時にその時代に入り込んでいくという作業も楽しかったですね。例えば、アルバムの最後に収録されている「オール・ナイト」は、ちょうどビートルズが解散する間際の時代だからビートルズ的な曲調を目指して曲を書いたりしました。

??父親の渡さんのみならず、祖父で詩人の高田豊さんや金子光晴、菅原克己といった昭和の大詩人の詩を取り上げた曲も収録されていて。いい意味でいつの時代に録音されたアルバムなのかわからなってくるような、日本語の美しさと鋭さも魅力的です。

高田漣:昔からあったもののような作品にしたいな、というのはありましたね。特に、金子光晴さんや菅原克己さんといった大詩人の方の詩を取り上げるというのは、こちらも身が引き締まる思いで。以前からその詩に親しんできた方々もスッと聴いていただけるような作品にできるかという不安もありました。だから、今回ひとつ言えるのは、もちろんメロディも大事なんですけど、言葉がキチッと伝わるかどうかをすごく意識して作品を作っていたということで。なので、言葉のリズムとか日本語的な言い回しを意識してメロディを付けるようにしていましたね。それはもう10年ほどソロ活動をやっていても初めての経験や発見ばかりで、楽しかったですね。日本語を歌うってこんなに楽しいことなんだなぁ、と改めて知ったような…初心者ですね(笑)

??今までも作ろうと思えば作れる方だったんじゃないかなと、勝手に思ってしまいますが(笑)。

高田漣:なんで今までこういうことをしなかったんだろう?と自分でも不思議なところはあるんですが(笑)。でも、金子さんや菅原さんの詩を読み返してみると、若い頃には見えなかった景色や想いが伝わるし、今だからこそ歌いたくなったことにもなんとなく意味があったのかなと思っていますね。年相応のものというか、僕も今作でようやくその門を叩けた感じがしています。

??アルバムにゲスト参加している面々も、高田さんならではの世代を超えた多彩さですよね。YMOの3人や鈴木茂から、原田知世、コーネリアス、斉藤和義、くるりの岸田繁にキセルの辻村豪文まで。

高田漣:そうですね。しかも、斉藤和義さんやくるりの岸田くんをあえてギタリストで呼んでみたりとか、すごく贅沢に配置していたりして。でも、アルバムに参加していただいた方は普段から波長の合う方が多くて、みなさんそんなにオレが!オレが!という感じではなくて作品至上主義というか。作品を良くするために必要なことをしてくれる、という方ばかりでしたね。その最たる例が坂本龍一さんだと思うんですけど、ホントにシンプルの極みみたいな演奏なんですが、出来上がってみるとあのピアノがなくてはアンサンブルが完成しないんですよね。

??そして、9月25日にはビルボードライブ東京にて細野晴臣を、27日にはビルボードライブ大阪にて原田知世をそれぞれゲストに迎えてライブが行われます。

高田漣:今回はせっかくビルボードで出来るからビルボードならではのアレンジも少し考えつつ、レコーディングの最中から録音用とは別のライブ用のアレンジがなんとなく浮かんでいたので、アルバムの再現とはまた違った感じで楽しんでもらえると思っています。“フォーカデリック・アンサンブル”というタイトル通りにアコースティックな編成と、そこにアルバムの少しサイケデリックな要素などがうまく混じったものにできればいいなと。あとは、細野さん(東京)と知世さん(大阪)がせっかくゲストで来ていただけるから、アルバムの曲に加えてサプライズ的な曲もできたらと思っています。

高田漣「アンサンブル」

アンサンブル

2013/06/19 RELEASE
VICL-64037 ¥ 3,190(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.個人的理由
  2. 02.絵空事
  3. 03.七月
  4. 04.鯵
  5. 05.古靴店
  6. 06.まちぼうけ
  7. 07.野バラ
  8. 08.砂漠の泥酔
  9. 09.Glass
  10. 10.Sheebeg and Sheemore
  11. 11.熱の中
  12. 12.火吹竹
  13. 13.オール・ナイト

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