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セルジオ・メンデス 来日インタビュー ~1963年を振り返って~
1963年6月15日に坂本九の「上を向いて歩こう」が、英語タイトル「SUKIYAKI」として、米ビルボードHot100で1位を獲得。その後3週間首位を守り続け、年間チャートでは13位を記録した。その60年代にボサ・ノヴァ・ブームの旗手となり、代表曲「マシュ・ケ・ナダ」はもちろん、「イパネマの娘」など数々のヒット曲を生み出してきたセルジオ・メンデス。
2006年にはウィル・アイ・アムがプロデュース、豪華アーティストをゲストに迎えたアルバム『タイムレス』で新世代にもその存在感を見せつけ、2010年の『ボン・テンポ』では、ブラジル'66のレパートリーのリメイクに挑戦するなど、ポップなブラジリアン・ミュージックで世界を魅了し続けてきた。
2013年4月に再び日本の地に戻ってきた彼に60年代当時の音楽シーンや初来日から50年を記念して実現したスペシャル・アルバム『ランデヴー』などについて話を訊いた。
ザ・ビーチ・ボーイズ マイク・ラヴ 来日インタビュー ~1963年を振り返って~
ボサノヴァは、その当時、
そして現代のブラジル音楽にとって重要なムーヴメントだ
??まず今から50年前の1963年にスポットライトをあててお話をお聞きしたいのですが、当時の音楽シーンについて教えてください。
セルジオ・メンデス:当時はブラジルのナイトクラブでトリオとして演奏していて、その頃からボサノヴァ・ブームに火が付いたんだ。ボサノヴァは、その当時、そして現代のブラジル音楽にとって重要なムーヴメントだ。それに色々な素晴らしい曲もこの時期に生まれたからね。そして日本に初めて来た年でもあるから、私にとっては重要な時期だね。
??セルジオさんが取り上げて大ヒットとなったジョルジ・ベンジョールによる「マシュ・ケ・ナダ」も1963年にリリースされましたが、初めて曲を聴いた時のことは憶えていますか?
セルジオ:彼は仲間のミュージシャンとともによく私が演奏していたクラブにやってきて、私の為に曲を披露してくれたんだ。「マシュ・ケ・ナダ」を初めて聞いたのもその時だった。曲を聴いた瞬間に虜になったよ。
??具体的には、どの部分に惹かれたのですか?
セルジオ:メロディとリズムだね。シンプルだけど、とてもキャッチーで、その当時書かれていた曲とは全く違ったんだ。とてもユニークで面白い曲だと思ったから、1966年にブラジル'66とともにレコーデイングした。そして2006年にも再びレコーデイングしたよ。私にとって特別な曲なんだ。
??そしてこの年は、坂本九の「上を向いて歩こう」が、米ビルボード・チャートにて日本人として初の1位に輝いた年でもあります。
セルジオ:そうだよね。あの曲のメロディは素晴らしくて、日本の“香り”や情緒が表現されていると思う。そして最新作『ランデヴー』でもこの曲を取り上げているんだ。オリジナル楽曲とはまた違うアレンジに…ボサノヴァやブラジルのエッセンスを加えたら面白いのではないのかなと感じた。
??女性ヴォーカルは、日本人アーティストのBENIが担当してますよね。
セルジオ:そうなんだ。彼女はグレイト!2013年版の「上を向いて歩こう」をレコーデイングすることが出来て、とても嬉しく思っているよ(笑)。
??近年の作品では、多くの若手アーティストと積極的にコラボレーションを行っていますが、これは意識的に行っていることなのですか?
セルジオ:最新作に関しては、日本が大好きで、若い日本のシンガーたちと作品づくりをするのが面白いのではないかと考えたからだ。昨年このアイディアをユニバーサルに打診したら、彼らも気に入ってくれた。そこから曲を選んでいって、「上を向いて歩こう」はもちろん、他にも「黄昏のビギン」など素晴らしい日本の曲とブラジルの曲をあくまで私のスタイルで取り上げている。昨年の12月と今年の1月にリオデジャネイロにてレコーディングして、LAにてオーバーダブを行い、ヴォーカルの収録を行うために3月の下旬に日本にやってきたんだ。彼女たちは素晴らしいよね。歌詞はポルトガル語、日本語、英語…様々な言語が織り交ざってる。
??全て女性ヴォーカルを起用したというこだわりに理由はあったのでしょうか?
セルジオ:女性ヴォーカルは、ひとつの楽器としてとても美しいし、気に入っている。特にブラジル'66の作品はそれがトレードマークとなっているんだ。その部分を生かしながら、今回日本のヴォーカリストを起用することによってフレッシュな作品が仕上がった。
音楽への情熱…初めて演奏し始めてから
ずっと変わっていないこと
??では話は戻って、「マシュ・ケ・ナダ」と「上を向いて歩こう」は、50年経った今でも音楽ファンに愛されている名曲であるという理由についてどうお考えですか?
セルジオ:私はメロディを重視していて、やはり忘れられないようなメロディの曲だということが重要だと思う。それによって曲が一生心に残り、特別なものになると思うんだ。
??1963年の米ビルボード年間チャートで、何か好きな曲はありますか?
セルジオ:ピーター・ポール&マリーの「パフ」や「風に吹かれて」はいい曲だよね。
??ブラジルでも人気があったのですか?
セルジオ:チャートや売り上げに関しては、よくわからないが、ラジオではよくかかっていたよ。後は「ブルー・ヴェルヴェット」も頻繁に耳にしたね。そして坂本九の「上を向いて歩こう」もここに載っているね。
??先ほど、初来日から50周年とおっしゃっていましたが、来日当時のことは憶えていますか?
セルジオ:実はこの場所にいたんだ。ここは昔ヒルトンホテルだった。その頃は、ナラ・レオンという名のシンガーとピアノ、ベース、ドラムのトリオ編成で活動していて、ブラジル音楽とファッションの融合をコンセプトにしたファッション・ブランドと仕事をしていた。パリ、フィレンツェ、ローマ、ベイルートなど世界中を旅していた。その一環として東京と京都にもやってきたんだ。スターヒル・クラブというナイトクラブがあって、そこで夜はトリオと一緒に演奏したよ。そして昼間は、洋服のモデルたちの為に演奏したんだ。
??初めてのアジアということもあって、驚いたことやショッキングだったことはありましたか?
セルジオ:まったく新しい経験だったよね。でもショッキングではなかったな(笑)。今までそう感じたことはない。魅了された、と言ったほうが正しいのかも。14、15歳ぐらいの頃から日本の映画、特に黒澤明の作品は観ていた。『七人の侍』や『用心棒』…。だから日本のことは映画を通じて知っていた。でも実際に日本を訪れ、その文化を体験し、人々と触れ合うことはエモーショナルで、素晴らしい出来事だった。まさにワンダフルだったよ。
??50年前の自分と今の自分を比較するといかがですか?
セルジオ:当たり前だけど、若かった。音楽に関していうと…音楽というのはファッションと同じで移り変わりがある。でもさっき名前があがった「上を向いて歩こう」や「黄昏のビギン」のように多くの“タイムレス”な素晴らしい曲が生まれた。「イパネマの娘」や「マシュ・ケ・ナダ」もそうだよね。時間が経つとともに円熟し、“クラシック”となる。
??では50年前から変わっていないことは?
セルジオ:音楽への情熱だね。それは初めて音楽を演奏し始めてからずっと変わっていないことだよ。
??ちなみに音楽に目覚めたのは何歳ぐらいの時だったのですか?
セルジオ:7歳の時にクラシック音楽を学び始めて、音楽という職業についたのは15、16歳の時で、リオのクラブで演奏し始めたんだ。
??最後に50年前の自分にミュージシャンとしてアドバイスを送るとしたら?
セルジオ:夢をあきらめず、追い続けることだね。よく働き、人生を楽しむ。これに限るね。
ランデヴー
2013/07/24 RELEASE
UCCU-1388 ¥ 3,300(税込)
Disc01
- 01.サマーチャンピオン feat.GILLE
- 02.ウルチマ・バトゥカーダ feat.中納良恵(EGO-WRAPPIN’)
- 03.黄昏のビギン feat.Sumire
- 04.上を向いて歩こう feat.BENI
- 05.カーニヴァルの朝 feat.畠山美由紀
- 06.シンバライエー feat.沖樹莉亜
- 07.星のラブレター feat.MINMI
- 08.愛は愛するためのもの feat.夏川りみ
- 09.やさしく歌って feat.カレン・モク
- 10.リアル・イン・リオ feat.マルシア
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