Special
JASMINE 『HERO』インタビュー
JASMINE、革命宣言。音楽シーンにおける“HERO”になり得るか。
前回のインタビューでは「アルバム『GOLD』までの勢い「減速した感じはあります」」「やっぱり世界を見てます。「こっちにもいるぞ!」って言いたい」等、衝撃発言を連発していたJASMINEだが、今回は新シングル『HERO』の話を通じ、自分の音楽で命を救いたい、自殺を減らしたいと云う切なる想いを語った。また、終盤には、アイドルやK-POPに占拠されている音楽シーンへの本音も。やっぱりJASMINEは格好良い。
私の作る音楽が誰かにとってのパワーになってほしい
--新曲「HERO」のMV(女子高生の光と闇をシリアスに描いた映像(女子高生が降り注ぐ机に押し潰されたり、屋上から飛び降りを図るシーンも)が話題に)、僕の周囲ではブレイクしてますよ。
JASMINE:本当ですか!? やったー! ジャンジャン見てYouTubeをぐるぐる回してください!
--それはこれを読んでる人たちにお願いしましょう(笑)。今年の夏は忙しい?
JASMINE:レコーディングをいっぱいしてます。
--JASMINE、海とか行くんですか?
JASMINE:今年はまだ行ってないですけど、絶対行きたい。泳げないので、お酒呑みに(笑)。ただ、今年はリリース連発で遊べる時間が少ないから、水着買ったのにどうしよう?みたいな。まぁでも無理やりねじ込みます。
--そんな2013年夏にドロップされる、☆Taku Takahashi(m-flo)プロデュースのシングル『HERO』。自身ではこの曲にどんな印象を?
JASMINE:Takuさんが作ってくれた曲に対して、リリックを書くのがすごく難しかったです。フックまでがすごく短いので、入れられる言葉数が少なくて。でもサビでどーん!みたいな感じなので、どうしようかと。結構いろんなテーマで……もう何曲分書いたんだろう?って思うぐらい書いたんですけど、最終的に「HERO」に落ち着きました。
--「HERO」以外にはどんなものがあったの?
JASMINE:「Twitter」とか。
--(笑)
JASMINE:最近の若い人たちのムーヴメントに乗っかる感じかなって思ってたんですよ。でもいろいろ考えた結果、情熱的なものだなって感じたので。どんなテーマで書いても「まぁ良いんじゃん」みたいなものにはなるんですけど、「HERO」っていう言葉を見つけてからは「これしかない」って思えるようになった。
--JASMINEらしいテーマですよね。あと、Takuさんにプロデュースしてもらうことになった経緯を教えてもらえますか?
JASMINE:EDMの世界でTakuさんががっつり盛り上げていらっしゃるので、TakuさんがDJやってるイベントにも行ったりして。で、私はEDM初心者というか、「これからやっていきます」っていう感じなので、力を貸してもらえたらなと。
--JASMINEってm-floに対してはどんな印象を持ってたの?
JASMINE:m-floはたくさん聴いてきました。カラオケでも歌ってて。すごいメジャーのデカい人たちってイメージ。
--実際、そのm-floのTakuさんと会ってみていかがでした?
JASMINE:めちゃくちゃ物腰の柔らかい人で、初めてTakuさんのイベント行ったときも「何飲む?何飲む?」って、気を遣って下さって。すごく優しい人でビックリしました。あと、一緒に制作していく中で「やっぱり分かってらっしゃるんだな」と。「EDMの元はバラードだ」「バラードバージョンになるものが、ピアノとかで歌えるものが、EDMの大きい曲」みたいなことをサラッと仰っていて、研究に研究をしまくってるんだろうなって思いました。
--その「HERO」の歌詞は、どんな想いや背景があって生まれたものなの?
JASMINE:まず大きい曲って思ったときに、地球規模のことがすごく浮かんできて。ちょっとゴスペルっぽさもあって、R・ケリーのバラードのような包み込む大きさみたいなものが欲しいなと思ってて、なんとなくYouTubeでR・ケリーのPVを観ていたら“HERO”を掲げていたんです。それでピンと来て。
--どうして“HERO”というものに今ピンと来て、メッセージにしたいと思ったんでしょうね?
JASMINE:そもそも私の作る音楽が誰かにとってのパワーになってほしいとは思っていて。どんな曲でも前向きな力を持っていてほしくて。聴いてくれた人のことを癒そうとは考えていないんですけど、力になったり、踊れて楽しめたり、すごく落ち込んでたけどまた頑張ろうって思えたり、マイナスからプラスへ変える力でありたい。
リリース情報
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄
自殺しようとする人を救うのは、音楽だと思っている
--この曲を歌ってるときは、誰か特定の人が浮かんでいたりするんですか?
JASMINE:浮かんでなくて、すごくざっくりなんですよね。誰かがいて曲を書いたんじゃなくて、想いが先にあって書いたので。でも私は人を応援するのが好きみたいで。スポーツ観ててもそうだし、ダンスのショーとか観ててもそうだし、応援するのにアガるタイプ。だから今までも応援歌みたいな曲は作ってはいたんですけど、ようやく今回リリースできることになって。“HERO”って呼んで讃える応援の歌、リスペクトを詰め込んだ曲を。
--この「HERO」のMVが衝撃的であると話題になってます。JASMINEはこのMVにどんな印象、感想を?
JASMINE:出来上がる前から涙です。未完成の状態のものを観たとき、身震いっていうか、涙出るし、脳味噌の回転止まっちゃうし。ライブのリハ中だったんですけど、動けなくなってきちゃって。「これはヤバイ。すごいものが出来る気がする」って思ってました。実際、完成したものをデカい画面で観たんですけど、一番最後のシーン。あそこでもう……涙が出ます。
--あれはJASMINEがこの曲で伝えたかったことにリンクしてる?
JASMINE:うん。この曲だけに込めてる想いでもないんですけど、日本って自殺大国じゃないですか。それが一番の問題で、だから音楽が必要だと思うんですよ。自殺しようとする人を救うのは、音楽だと思っているので。だからライブ中も「生きていてくれてありがとう」って伝えたいし、「自分で死ぬなんてことを考えないでほしい」って伝えたい。
--なるほど。
JASMINE:「自分なりに人の命を救えないか?」「音楽をやっている自分に何が出来るのか?」っていう想いは、3.11以降強くなっていて。それを監督にスタッフが話してくれたんです。そしたらあのPVが出来て。敏感な中高生の頃っていろいろあるじゃないですか。一番センシティブだから起伏も激しくて、勝ち残っていく人、挫折していく人がいるけど、本当は誰でも“HERO”になれる。どんなに挫折したって立ち上がれば“HERO”になるチャンスはいくらでも待ってるっていう。そんなPVを作ってくれたと感じてます。
--自殺しようと思っている人を音楽で救いたい。そう思った最初のきっかけって何だったんですか?
JASMINE:私が中学生の頃から自殺って周りにもあったことで。しかもずっと身近にあり続けることで、二十歳を超えた今でもある。「え、あの人が? めっちゃ楽しそうにしてたじゃん」みたいな。誰もが「なんでこんなに近くにいたのに助けてあげられなかったんだろう?」って言うし、自分もそう感じるんですけど、要するに気付けないんですよね。まさか自殺するなんて思えない、普通に過ごしている人だったりするんで。あからさまにイジメを受けている人だけじゃなく、むしろ「イジメていた側でしょ?」みたいな人も自殺する。彼氏のことだったり、友達のことだったり、自分の夢のことだったり、それぞれの理由で。自分がどんなに歌っていても、自殺は起きてしまう。
--現実は甘くないですよね。
JASMINE:でも人が生きる/死ぬの問題に対しては…………一番、何かしたいって思う。だって、昨日思い付いたことかもしれないじゃないですか?
--自殺した理由が?
JASMINE:うん。それまでは全然そんなつもりなかった人かもしれないし。だから何かしたい。中学時代、凄い変顔のプリクラを配りまくっている友達がいて「なんなの?」って聞いたら、「自殺したいほど悩んだりしているとき、絶対に近くにいてあげられる自信ないから、これ見てフフって思ってくれたら」って。「あー!それはいいね」って思った。そうやって誰かの為になろうとする人はいるし、そうじゃなきゃいけないと思うし。戦争もないのに、銃も刀もないのに、これだけ人が死んでる日本で、人に幸せを運べるものなんて娯楽しかないから。だったら、その娯楽はもっと力強いものじゃなきゃいけないし、人の命を救いたいですよね。やるからには、何でも。人の命に触れたい。
--それはJASMINEにとっての命題でもある?
JASMINE:この先もそれはどうしてもテーマになっていくものだし、そこにどういう気持ちが加わっていくのかは分からないですけど、命は私のテーマです。
--ちなみにJASMINEって女子中高生時代はどんな女の子だったんですか?
JASMINE:私……どんなだったんだろう?
--以前、やんちゃだったという話は伺ってます。
JASMINE:やんちゃは上っ面っていうか、表向きの自分ですね。すっごい音楽が好きだったことは間違いないです。ずっと心の中に「私は歌手になりたいんだよな」っていう気持ちがあったり、ヤバイ音楽を見つけたときが一番楽しかったりして。まぁ夜中遊んだり、みんなでやんちゃしてゲラゲラ笑ってるのも楽しいっちゃ楽しいけど、本当に腹抱えては笑えない。そういう子たちと一緒にいたのは、みんな似たような家庭環境だったりして、解ってくれるからラクで。学校に行っても解ってくれない子がほとんどだったから。だから気持ちを共有できる同士で夜な夜な集まっては、鬱憤晴らし。でも私は音楽が何より好きだったから、あの頃、本当に楽しかったのは、ゴスペルに通っていたこと。給食の時間に放送室で好きな曲をかけまくったこと。そういう娘でした。外からはどう映っていたかは分からないけど……まぁイタイ娘だったと思います(笑)。
--その時期に「私、死んじゃおうかな」「もう無理」って思うことはなかったの?
JASMINE:すごくありました。そのとき、私は家族のことで一番悩んでいたので、一番愛している家族が幸せな顔してない……っていう。それによって全部が狂ってた。だから“生きる”っていうことが何なのかもよく分かってなかったですね。だから簡単に「死のうかな~」みたいな。“生きる”ってすごくパワーを要するじゃないですか。生き続けることだったり、瞬間瞬間に命を投下することだったり、すごく力を込めなきゃいけない。それすら知らないぐらいポケーッとしていたので、ふっと死んじゃうんじゃないかなって。あたりまえに死ぬことばかり考えてました。学校行っても面白くないし、家居ても面白くないし……だから本当に音楽っていう楽しみがあったことだけが、私を生き延びさせてくれた。週に一度、水曜日のゴスペルの為に時間をやり過ごしていました。
リリース情報
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄
その子の気を引きたいが為にCDをたくさん買う人たち
--水曜日があったから生きていた?
JASMINE:うん。音楽だけ。私が唯一アガる瞬間というか。毎週「音楽って素晴らしいね!」みたいな。飛び抜けて素晴らしかったんですよ! 本当に音楽に助けられたから、音楽っていうものを通して、私も闇の中にいる子たちを救いたいと思うし、その自信はある。それはベーシックというか、私にとってあたりまえのことでありたいと思ってます。
--その役目を担う新曲「HERO」、どんな風に響いていってほしい?
JASMINE:PVが想像以上にパンチあったので、やっぱり学生に聴いてほしい。あと、どんな人でも絶対に後ろ見ちゃう瞬間ってあると思うんですよ。すごく前向きになってる、すごく力強く生きている状態でも、なんかふとした瞬間に「あれ? これでいいのかな?」「今、突っ走っちゃっていただけ?」みたいになることって絶対にあって。私もよく分かんなくなるときがあって、「あれ、私ってバカなだけ?」って迷っちゃうことがあるんですけど、そういう人にも聴いてほしいです。自分を主役にできていない瞬間が人って苦しいと思うんで。「主役は君だ!」ってガツン!と言われたいときに聴く曲として存在してほしいです。
--また、今作のc/wには、R&BシーンにおけるJASMINEのルーツを辿るというテーマのもと、1986年にリリースされた久保田利伸の名曲「Missing」のカバーを収録。こちらを今歌おうと思ったのは?
JASMINE:EDMとか新しいことをやっていく裏で、ルーツ。スタンダードのR&Bをカバーしたくて。
--JASMINEにとって久保田利伸ってどんな存在なの? 日本のブラックミュージックシーンのパイオニアですけれども。
JASMINE:憧れの人です。歴史上人物みたいな。
一同:(笑)
--織田信長、坂本龍馬、久保田利伸みたいな?
JASMINE:はい! 偉大ですね! 素敵な男性ボーカリストですけど、男性か?って言われたら男性ではないし、人か?って言われたら人ではない。もう歴史。久保田利伸なくして日本のR&Bはあり得ない。憧れですね。
--会ったことはあるんですか?
JASMINE:見かけたことはあります。Billboard Live TOKYOでのジョーのライブへ行ったら久保田さんも観てらして。「うわ! いるぅ! 意外と普通にいるぅ!」みたいな。「ごちそうさまでーす」みたいな。
--(笑)。前作におけるDOUBLEのカバーもそうですけど、JASMINEって意外と日本の音楽もよく聴いていたんですね。
JASMINE:曲としてヤバイと感じたものは聴いてました。
--そうした日本の名曲もたくさん聴いてきたJASMINEから見て、今の日本の音楽シーンってどんな風に映っていますか?
JASMINE:もっと「音楽」に夢中になってもらえるようにしたい。ヤバいアーティストに持っていかれちゃうんだったら「間違いない、音楽業界」って感じですけど、その子の気を引きたいが為にCDをたくさん買う人たちがいて、それが音楽ランキングを制覇しちゃうんだったら、もはや音楽ランキングではないじゃん。で、そういう内情を誰もが分かっていれば問題ないですけど、子供たちには分からないから、純粋にその音楽が一番だとなすりつけられて生きていく…………それは可哀想。もっと根本的にいろいろ変えていかなきゃいけない。音楽って人の心にタッチするものだから、その人間が発する言葉、考え方、行動、愛し方、将来の仕事とか夢とかも全部変えちゃうポジションにあるものだから。私自身ももっとがんばらなきゃって思います。
--では、JASMINEは、今のシーンに苛立ってる?
JASMINE:うん。悔しいです。K-POPにやられまくっちゃってるのも悔しいです。本当に格好良いから。
--あらゆる才能がズバ抜けたグループだらけですからね。
JASMINE:そうですね。しかも人種は私たちと一緒っていう。見た目も全然一緒なのに、日本はやられまくっちゃってる。でもいつか絶対「そんなときもあったね~」「流行ったよね~、アレ」みたいな感じに…なると…いう…ことです!
--ことです(笑)。そんな今のシーンにおいて、JASMINE自身はどうなっていきたい?
JASMINE:日本のシーン自体を力強い存在にしていきたいので、ジャンルとかも拘らないで、小さい拘りとか捨てて、音楽シーンを自分が「こうあるべきだ」って思う方へ持っていけたらなって。
--革命?
JASMINE:革命起こしたいですね。
Music Video
リリース情報
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄
関連商品