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家入レオ 『君に届け』インタビュー
生まれたときからそれがあたりまえのようにインターネット社会に身を置いていた世代。その中のひとりである家入レオが、学生時代に感じていたネットによる余計な不安、拡声器を向けられる側にもなって知ったネットの怖さ、ツイッターのエゴサーチで知った現実など、今の時代ならではの葛藤に触れつつ、「リアルな世界で 笑って見せて」と歌い放つ配信限定シングル『君に届け』について語った。
家入レオが変われた理由“信じたいなってちゃんと思えた”
--最近はどんなモードで日々を送っている感じですか?
家入レオ:シングル『Message』のキャンペーンが一区切りついて、6月からは制作メインで活動していて、たくさん発見がありましたし、今まで溜まっていた自分の感情を音楽にぶつけられる機会がすごく多かったです。
--なるほど。
家入レオ:ただ、制作していると音楽が一番近くにある生活になるので、上手くメロディーや歌詞が出てくるときは「やっぱり音楽っていいな」って幸せな気分になるんですけど、音楽ってときどき上手く掴めないときがあるじゃないですか。そういうときはどーんって落ち込んだりもするんですけど、1曲出来上がったものを聴いたらそんなの全部吹き飛ぶんですよね。
--その中で新しいものが生まれてきている?
家入レオ:その感覚はあります。1stワンマンツアーとかを終えて、高校卒業したこともあって、こんなに時間を取って制作するのは久しぶりだったんですけど、ライブを意識した曲が多くなってきてる。自分の気持ちを飛び越えられるようなクレイジーな曲とかが。早く歌いたいです。
--また、先日、家入レオの新境地『Message』をリリースしたばかりですが、どんな反響を耳にしましたか?
家入レオ:「一緒に進んでいきたい」とか「この曲を聴いて前に進めました」とか「半歩進めた気がします」とか「なかなか自分の心に綺麗すぎる言葉って落ちてこないんだけど、この『Message』は受け止められた気がします」とか。改めてそういう声を頂くことで、私自身も作ってよかったなって思いましたし、やっぱり叫ぶことって本当に大切なんだなと思いました。
--今までとは反響の内容が多少違ってきた?
家入レオ:そうですね。社会人への一歩として、自分の中でもどこか新しさを感じていたんですけど、「これからも応援し続けるからね」っていう声を頂いたりして、本当にひとりじゃないんだなって思えた。この方たちと一緒に、私の歌を聴いてくださっている人たちと一緒に、明日を、大きなものを目指していきたいなって。
--『Message』を世に発表できたことで、心境的な変化ってありました?
家入レオ:楽しくなりました。自分が思っていた感情を曲にぶつけて、それを世に出したときに「あ、こういう受け取り方もあるんだ」って感じて。聴く人が300人いたとしたら300通りの受け取り方があるんだなって思ったし、それぞれの環境とかストーリーで聴いて頂けるんだと思って、それがすごく嬉しかったです。前までは自分が曲に込めた想いを100%相手に受け取ってもらわなきゃイヤだと思っていたんですけど、そういうのがなくなりましたね。どう思われても、どう受け取られても大丈夫になってきました。私の手元から違う方の手元へ行くときに、違った解釈をされたとしても、それはきっと幸せなことなんだなって。
--なんでそんな風に変われたんだと思います?
家入レオ:なんでだろう?………………ちゃんと信じたいからかもしれないですね。「信じられる」って言い切るのはまだちょっと怖いけど、「信じたいな」ってちゃんと思えたから。
--で、その『Message』から僅か2ヶ月のインターバルで、今作「君に届け」のリリースですよ。忙しくて倒れたりしてない?
家入レオ:それはないです(笑)。楽しみながら活動させて頂いてます。
--前回の『Message』インタビューで「「独りで歌ってる」っていう感覚が無くなった」と言っていましたが、今回は「君に届け」。明らかに目線が外を向き続けてますね。
家入レオ:向ききってはないと思います。自分のずっと伝えたかったことを今回は形にできたんですけど、ちょっと難しい内容だったりすると思うんですよ。だから誤解されやすいかもしれないと思って、自分のことをある程度いろんな方に知ってもらってから形にした方が、より伝わるんじゃないかなっていう想いもあって。だから1stアルバムを出して、ツアーも終わって、高校も卒業して落ち着いて制作時間を取れるようになってから、じっくり作り込んで発表したかったんです。やっと形になった嬉しさがありました。
生まれたときからネットがあった世代のリアル
--歌っているのは自分のことですよね。おそらくはちょっと前までの自分。
家入レオ:うん。もちろん今も含まれてはいるんですけど。
--それを歌にしようと思ったのは?
家入レオ:言葉にできない想いを音楽にするのは、私の中では自然な流れなので。
--どんな心境や背景があって生まれた曲なんですか?
家入レオ:デビューする前っていうのは、ブログやホームページがすごく救われる場所になっていて、学校では表に出して言えないことがあれば、ブログで「実はこういう想いを抱えていて……」って書いて、すぐにレスポンスがあったりして。自分に求められてるキャラクターじゃない、本当の自分というのをネットだったらさらけ出しても誰にも迷惑はかからないし、嫌われたりもしないし、何かあればすぐに辞められるし、IDとパスワードも変更できる。ある意味、自分がすごく自分らしくいられる場所。
--演じる必要がないと言えばないと。
家入レオ:ただ、友達とかが「あいつ、ちょっとあり得ない」みたいなことを書いていると、そんなことはないのに「あれ? これって私のことなのかな?」って思ったり、パスワードが必要な鍵をかけていたりすると、「この先にはどんなことが綴られているんだろう?」って不安になったりする。あと、デビューしてからは、顔とか声とか露出されるようになって、自分がしてもいないことがネットで取り上げられたりして、ネットってすぐいろんな情報が知れる素敵な場所でもあるけど、拡声器を向けられる側にもなったときに本当にすごく怖くなっちゃって。
--有名になると、ネタにされてしまいますからね。
家入レオ:それまではテレビの感想とか、普通に何も考えずに書いていたけど、実はそれって無意識に誰かを傷付けていたんじゃないかなと思ったし。そういう怖さがあるんだなって。でもデビュー当時とか、初めてのPV撮影やジャケット撮影のときに「笑って」と言われても上手く笑えなかったり、取材とか受けてても大人をすごく怖く感じていたり、言葉にできないから音楽にしてるのにって思ったり、いろんな葛藤があったんですけど、ブログにすごく助けられていたんですよね。散らばっている感情を、時間をかけて、言葉を選びながら綴っていけて、それに対してファンの方からレスポンスを頂いて。
--ネットの良さと悪さを同時に感じていた。
家入レオ:だから染まりすぎちゃダメなんだなと思って。自分の肌とか、五感で感じることってすごく大事なんだなと思うようになった。ソーシャルネットワークがあることで繋がる喜びもあるけど、なくてもいい怖さみたいなものは、みんな経験してると思うから、そういうことをリアルに伝えられたらいいなと思って「君に届け」は作ってみました。
--故に「ログアウトした世界は 上手く呼吸も出来なくて」「増え続けるフォロワー」「IDとパスで守られたエリア それは何も感じられない」といった、今の時代ならではのフレーズが満載ですけれど、そうした歌詞に振り切ったと?
家入レオ:そうですね。自分の中では嘘偽りなく綴るっていうのが音楽なので、かなりリアルな内容になってます。何事も肌で感じることって大切だと思うんですけど、今って例えば目の前で事件が起きても、それの写真や動画を撮る人がたくさんいるじゃないですか。自分の目じゃなくて、わざわざ。後から見返せる素敵な機能かもしれないけど、自分の五感で世界を感じることを忘れないでほしいなって思いますね。
--家入レオさんから観た、インターネットが普及された今の世界ってどんな風に映っているんですか?
家入レオ:みんな、誰かと繋がってないと怖いんだなって。きっとホームページとかが最初から無かったら、それでも生きていけたと思うんですけど、あまりにも関係を強く結びつけたいって人間が思って、きっとそれでいろんな便利なものが生まれていって。ただ、私たちの世代って生まれたときからそれがあたりまえのようにあったので、ネットはなくてはならない存在になってる。
--例えば、家入さん世代の学校生活では、ネットをどのように活用してたの?
家入レオ:リアルタイムっていうのをみんなそれぞれに持っていて、自分が今感じていることを書き込んでいく。ツイッターみたいなものなんですけど、観覧数とかコメント数が分かるんですよ。それがちょっとでも少ないときはすごく不安になったし、さっきも言いましたけど、とにかくパスワードは怖かった。パスワードを知らないとそこに何が書いてあるか分からないんですけど、翌朝、私以外の子が「あれ、見たよ」って話していたりすると、「自分のことかな?」って思っちゃうんですよね。実際には全然関係ないことが書いてあったりするんですけど、そういう余計な不安がいつもあって。
荒削りのまま。媚びずにやっていきたいです。
--そうした状況下で、家入さんは「リアルな世界で 笑って見せて」と歌わなきゃいけないと思った訳ですよね?
家入レオ:伝えたいと思ったし、自分自身にもそれを忘れないでいてほしいと思うし。だって、コンビニでお弁当買って公園で食べているのに、ツイッターでは「今、三つ星レストランでご飯食べてる」って書く人が増えていたりするんですよ! 実際、周りにもいたんですよ。一緒に過ごしていた日のブログの内容が、いろいろと事実と違ってて。プレゼントしたのが花束だけなのに、無かったはずのケーキも添えられてたり。
--(笑)
家入レオ:きっとそういう見せ方しか出来なくなってる日常があって、他の人が見てるからってちょっとよく書こうと思う気持ちは分からなくもないんですけど、虚しいですよね。
--あと、家入さんは「ツイッターでエゴサーチして落ち込んだりしていた」と、以前仰ってましたよね?
家入レオ:テレビに出させて頂いたとき、ツイッターを覗いてみたら注目ランキングみたいなものが20位ぐらいまで表示されてて。そこに自分の名前を見つけたのでクリックしてみたら……。
--傷付いた訳ですよね。
家入レオ:なので、それからは良いことも悪いことも全部言葉を半分に聞くようにしてて。結局、18歳の私が辿り着いた結論は、100人の方に歌を届けるとして100人に好かれるって難しいんですよね。ただ、そのうち50人に嫌だと言われたとしても、私は歌いたい訳で。歌しかない訳で。だったら、わざわざ自分のことを悪く言っている人たちのところへ行かなくていいんじゃないかなと思って。自分の価値観で生きていく。もちろんいろんな人のアドバイスは聞きますけど、わざわざエゴサーチすることはなくなりました。
--今作「君に届け」は、かつての自分のようにインターネットの世界で辟易としている人たちへのメッセージでもある?
家入レオ:そうですね。ネットショッピングとか便利だし、例えば腰を悪くしているご高齢の方にとっては素敵なものだと思うんですけど、お店に行って実際触れてみることも大切だと思うんですよ。そういうことを知ってほしいですし、考えることを放棄してほしくないので、いろんな方に聴いて頂けたらなと思います。
--あと、こうした楽曲こそ野外フェスとかで歌い放ちたいですよね。
家入レオ:この曲に限ったことじゃないですけど、一緒に叫びたいです。ライブ終わった後に「「サブリナ」盛り上がってたね」とか言って頂くとすごく嬉しいんですけど、実際には“盛り上がってる”とはちょっと違ってて。みんな心の奥底にしまっている想いをワァー!って叫んでるんです。奥底にしまっている苦しみとかを解き放てるからこそ、ひとつになれる。だから今年の夏フェスも、ただただ「楽しいね」だけじゃないライブができたらなって思ってます。
--「Message」や「君に届け」といった開放的な楽曲も増えてきているので、海辺でライブとかもアリですよね。今の家入レオだったら。
家入レオ:やりたいですね! いつかやりたい。
--で、夏の終わりと共にまた一気にヘヴィな方向へ振り切る。
家入レオ:(笑)
--実際、そうした曲を待っている人もいますよね。
家入レオ:自分をありのまま出せる人って少なくなってきてるんじゃないかなと思っていて。私もそうだし、音楽がなかったらきっと……本当に何もなかったと思うので、一緒に音楽で叫べたらなと思ってます。荒削りのまま。飾らないことが音楽だと思うし、そのままの私をこれからも届けていきたいなって。媚びずにやっていきたいです。
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