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シャカタク 来日記念特集

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 ドライヴ感溢れるリズム・セクション、シンセとピアノが奏でるポップなリフレイン、華やかな女声コーラス。シャカタクの「Night Birds」を聴けば、あの頃を思い出すという方はたくさんいることだろう。80年代初頭に、DCブランドに身を包みカフェ・バーでカクテルを楽しんでいた世代なら、部屋のオーディオセットやカーステレオからあのサウンドが聞こえていたはずだ。

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80'Sブリティッシュ・ジャズ・ファンク・ムーヴメントの旗手

アーティスト写真

 シャカタクは、UKを代表するフュージョン・グループ。彼らが登場した80年代初頭のフュージョンといえば、クロスオーヴァーといわれたジャズ・マナーを継承するムーヴメントが一段落し、アドリブなどのテクニックよりもポップでメロディアスな世界観を打ち出すアーティストが増えてきた時期だ。

 米国では、ジョージ・ベンソン、チャック・マンジョーネ、ボブ・ジェームス、グローヴァー・ワシントンJr.といったミュージシャンたちがポップスやR&B寄りのヒットを連発していた。また、アイスランドのメゾフォルテ、オランダのフルーツケーキといったヨーロッパのグループも注目を集め、日本でもカシオペア、ザ・スクエア(現・T-SQUARE)などがヒットし、渡辺貞夫や日野皓正といったベテランたちもフュージョンの世界に足を踏み入れていた。そして、UKではブリティッシュ・ジャズ・ファンクのムーヴメントが起こり、シャカタクはレベル42と並んでシーンを牽引するグループへと成長していく。

1982年「ナイト・バーズ」が大ヒットを記録

シャカタク
『ナイト・バーズ』
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 キーボード奏者のビル・シャープを中心として結成されたシャカタクは、1981年にアルバム『ドライヴィン・ハード』でデビュー。その後、シングル曲の「イージアー・セッド・ザン・ダン」が、チャートのベスト20に食い込んだ。そして、「ナイト・バーズ」がフュージョンとしては異例のヒットを記録。1982年にセカンド・アルバム『ナイト・バーズ』を発表し、その地位を確立した。

 その後、「ナイト・バーズ」と並ぶ代表曲「インヴィテイションズ」を収めた『インヴィテイションズ』(1982年)、ヴォーカル曲の充実度を図ったAOR]路線の『アウト・オブ・ティス・ワールド』(1983年)、ファンク色を強めた『ダウン・オン・ザ・ストリート』(1984年)、アル・ジャロウを迎えてヒットした「デイ・バイ・デイ」を含む『シティ・リズム』(1985年)と立て続けにアルバムをリリースし、初期のシャカタク・サウンドが完成する。

 彼らの特徴は、イージー・リスニング化していった当時のフュージョン・グループとは一線を画し、R&BやAOR、ブラジル音楽といったアーバンなサウンドを巧妙に取り入れ、高度な音楽性を保ちながらもポップに聴かせるスタイルで唯一無二の存在となった。

日本での根強い人気

2012年来日公演の模様
▲来日公演の模様(2012年)

 また、日本での人気が突出していたことも、彼らの特徴のひとつといえるだろう。そのために、日本独自のアルバムもいくつか残している。“ナイトバーズ・ツアー'83”と銘打った来日公演の実況盤『ライヴ・イン・ジャパン』 (1984年)、テレビドラマ「男女7人」シリーズのサウンドトラックとして使用された『イントゥ・ザ・ブルー』(1986年)と『ゴールデン・ウィングス』(1987年)、ハワイで行われたヨットレースのイメージアルバム『ダ・マカニ~潮風のストーリー』(1988年)など、当時のファンにとってはたまらない日本限定盤を立て続けにリリースした。

ビル・シャープ
▲ビル・シャープ(2012年)

 いわゆるフュージョン・ブームが一段落してしまった90年代以降も、シャカタクはコンスタントにリリースとライヴを重ねていく。また、リーダーであるキーボード奏者のビル・シャープは、ソロ活動も精力的に行い、ドン・グルーシンとのデュオ・ユニットでもアルバムを発表。同時に、シャカタクは例年のように来日公演を行い、ジャズ・フュージョン・グループのなかでは突出した人気を保ち続けている。

最新アルバムはセルフ・カヴァー作品

シャカタク
『ワンス・アポン・ア・タイム』
~アコースティック・セッションズ
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 2013年に入ってもその勢いはとどまることを知らない。今年の最新作『Once Upon A Time』は、「Night Birds」や「Invitations」といった代表作をアコースティック・ヴァージョンでセルフ・カヴァーするという企画。我が国が誇るギタリストの渡辺香津美が参加していることも、親日家であるシャカタクならではの話題だ。

 シャカタクのサウンドは、確かに80年代を思い出させるかもしれない。しかし、彼らの音楽自体は、今なお変わらず、その上でまったく古くなっていない。流行を追いかけるのではなく、彼らにしか作り得ないサウンドを確立したシャカタクは、これからも心地良いサウンドを届けてくれることだろう。



text:栗本 斉

シャカタク KAZUMI WATANABE ビル・シャープ ジル・セイワード ロジャー・オデル ジョージ・アンダーソン デレク・ナッシュ「ワンス・アポン・ア・タイム~アコースティック・セッションズ」

ワンス・アポン・ア・タイム~アコースティック・セッションズ

2013/02/20 RELEASE
VICP-75105 ¥ 2,934(税込)

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Disc01
  1. 01.インヴィテイションズ
  2. 02.イージアー・セッド・ザン・ダン
  3. 03.ナイト・バーズ
  4. 04.ブルーノート
  5. 05.ワンス・アポン・ア・タイム
  6. 06.リオ・ナイツ
  7. 07.ダウン・オン・ザ・ストリート
  8. 08.ロンリー・アフタヌーン
  9. 09.ダーク・イズ・ザ・ナイト
  10. 10.ストリートウォーキン
  11. 11.デイ・バイ・デイ
  12. 12.ミスター・マニック&シスター・クール
  13. 13.ルミエール

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