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家入レオ 『Message』インタビュー
かつて大人が大嫌いだった家入レオも、今年3月に高校を卒業。着々と大人への階段を登っていかなくてはならない日々の中、様々な想いを新たに芽生えさせている。「「独りで歌ってる」っていう感覚が無くなった」「弱さを絆にするんじゃなく一緒に明日へ走っていきたい」「大人って本当は存在しないんじゃないか」。今回のインタビューでは、彼女の音楽に画期的変化をもたらしたニューシングル『Message』の話を通して、誰のようでもあり、誰のようでもない、家入レオ18歳の人間像に迫った。
高校卒業「大人にならなくちゃ」~かしわ餅の食べ納め
--今年3月に高校を卒業し、心境的に変化した部分ってありますか?
家入レオ:「いつまでも子供でいられないんだな」って。より大人について考えるようになりました。高校卒業すると大学へ進学される方がほとんどだと思うんですけど、大学1年生ってやっぱり「ちょっと幼いね」って言われたりする。実際、大学に行っている友人の話を聞いても「人生の夏休み」って言うぐらい、いろんなことを楽しみたいし、遊びたい。でも私の場合は大学行かずに音楽で生きていくって決めていて。やっと音楽に集中できる嬉しさはあるんですけど、社会人としての一歩を踏み出した訳で、大人にならなくちゃいけない。
--課せられる責任が違いますよね。ちなみに家入さんにとって高校生活ってどんなものでした?
家入レオ:今振り返ると、素敵なものだったんだなって思います。特に上京して音楽を始めてからは、ある意味、すごく救われていた場所だったなって、卒業してから分かりました。デビューしてからの1年は有り難いことにいろんな方から支えてもらっていたんですけど、その中で「大人に追いつかなくちゃ」って頑張っている自分がいて。ピーンって張りつめていた糸が切れたこともあったんですよね。そしたら凄いことになっちゃって……。元から浮き沈みが激しいんですけど、いきなり泣き出したりとか、しょっちゅうあって。さっきまでケラケラ笑ってたのに号泣してたり。
--理由は?
家入レオ:わざとやっている訳ではないので、自分でもなんでそういう風になるのか分からなかった。でもそんなときに高校へ行くと「あ、無理して大人にならなくてもいいんだな」って、10代の自分をちゃんと取り戻せていたんですよね。でもこれからはそういう場所がないので、今振り返ると「学校ではすごく守られてたなぁ」って思う。
--ベタな質問ですが、高校生活で一番キツかったことは?
家入レオ:勉強です!
--即答(笑)。
家入レオ:テスト週が発売日に近かったりしていたので。有り難いことに夏フェスとかもたくさん出して頂いたので、夏休みの宿題をやる時間もなくて。スタッフさんに「ここはこうでしょ」って手伝ってもらいながら(笑)何とかやってたんです。
--レコード会社で学校の勉強も教わるっていう。
家入レオ:そうなんです(笑)。あと、学校生活って言ったら、やっぱり大変だったのは人間関係ですよね。そこは私の音楽の基盤になったぐらいなので。
--以前話して頂いた、東京に来る前の話ですよね。地獄のような日々。
家入レオ:そうです。でも東京来てからは偽る必要が全くなくなったので。自分の気持ちは歌にしてリリースしてるし。そういう意味では、すごくラクでしたね。自分の気分でいろんな人と話してもいいし、逆に教室でひとり小説を読んでいてもいいし。
--では、高校生活で一番良かったことは?
家入レオ:一番良かったこと…………なんだろう?
--キツかったことはすぐ出てきたのに。
家入レオ:(笑)。やっぱりリフレッシュできたことですかね。卒業してからはどの時間でも取材とかラジオとか入れてOKになったので、常にバタバタしてる。「これが本当の音楽の世界なんだ」って思いました。でもそれが今は楽しい。
--音楽活動だけになったことで甘えを無くせた?
家入レオ:いや~、甘えはまだ全然無くせてなくて。「だって、普通の人はまだ大学生だもん」って思っちゃったりするし。でもこの前のゴールデンウィーク、こどもの日にかしわ餅の食べ納めをしまして。
--(笑)
家入レオ:スタッフさんに「こどもの日ですね。かしわ餅、売ってますよね?」みたいな。そしたら「じゃあ、こどもの食べ納めということで」って買ってもらって(笑)。そういう部分では、自分でも甘えてるなって思うんですけど……大人になるってどういうことなのか全然分からなくて。
リリース情報
Message
- 2013/05/22 RELEASE
- 初回限定盤B[VIZL-542(CD+DVD)]
- 定価:¥1,800(tax in.)
- ≪試聴可能≫
- 詳細・購入はこちらから>>
- 初回限定盤Aの詳細・購入はこちらから>>
- 通常盤の詳細・購入はこちらから>>
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄
そもそも音楽以外のことに興味がない~破れた服
--また、高校卒業直後、初のワンマンツアーも無事終了しました。自分の中ではどんなツアーになったと感じていますか?
家入レオ:音楽の価値観が変わりました。今までは「武道館でライブしたい」って言ってて、今でもそれは変わってはいないんですけど、目の前で涙して下さったりとか、拳を突き上げている方たちを見たときに「あ、会場の大きさとかじゃないんだな」って思えて。今一緒に感じている雰囲気が大事なんだって思えたので、そこはすごく変わりました。今、音楽的にも便利な世の中になってきていて、いろんな変化があるけど、ライブって絶対守り抜いていけるところなんですよね。ライブは自分の足で会場まで行かないと体験できないものがたくさんあるから。リリースももちろん大事ですけど、ライブってこういう時代だからこそ特に大切なものになっていく。それもツアーを廻りながら感じたことですね。
--では、家入レオの音楽を、メッセージを生で聴きに来てくれたファン自体にはどんなことを感じました?
家入レオ:とにかく「ありがとう」ですよね。今日ここに来る為にお仕事や学校、いろんな都合をつけて来て下さって。そこで私が闇も含めてさらけ出すことによって、皆さんもさらけ出してくれていたような。ある意味、すごくダークな空間だったと思うんですけど、それがすごく気持ち良かったし、「独りじゃないな」ってちゃんと思えた。だから「Message」の歌い出し(明日の為に 歩き続けよう 夢の向こう 君がいるから)を作れたんですけど。
--今、家入さんが曲を作って、歌い届けていく理由ってどんなものになってるんですか?
家入レオ:私の曲を聴いて下さる方とか、ファンの方の顔がちゃんと見えたことによって、その人たちと「一緒に進んでいきたいな」っていう想いがすごく強くなったんですよね。それまではCDが何枚売れてるって聞いて「これだけの人に届いてるんだ」とは思うんですけど、顔が見えないからちゃんとは実感できてなかったんですよ。でもライブでその人たち一人一人の顔を見させてもらったことで、すごく実感が湧いて。「独りで歌ってる」っていう感覚が無くなった。
--なるほど。
家入レオ:去年出したシングル3枚は、自分の為に歌っていた部分が多かったんですけど、それなのにファンの方が「私も実はこういう悩みを抱えてるんです」って悩みを打ち明けて下さって。だから私も高校を卒業して不安もあるけど、私だけが不安を抱えてるんじゃないと思える。そこで傷の舐め合いをするのはすごく簡単なんですけど、弱さを絆にするんじゃなくて、一緒に明日へ向かって走っていきたいなって。それを「独りじゃない」と感じたことによってちゃんと思えたので、今回はこういうポジティブな曲が出来たんだと思う。今までは6マイナーとか4から始まってたんですけど、今回初めて1から始まるんです。1って安定感のコードだったりするから、それも心境の変化によってなんだろうなって。
--その新曲「Message」については、後ほど掘り下げたいんですが、家入さんは2012年、各アワードで最優秀新人賞を受賞。昨年最も活躍した新人と評された訳ですけど、それを経ての2年目に対するプレッシャーはないんですか?
家入レオ:ないです。
--なんとなくそう答える気がしてました。
家入レオ:(笑)。すごく有り難いんですけど、それは私が決めることではないですし、私の音楽を受け取って下さった皆さんが、去年はそう言って下さったっていうことだと思うし。今年はどうなるか分からないですけど。でも私がやっていくことは変わらないので。自分がやりたい音楽を一枚ずつ形にして聴いてもらう。そこに尽きます。
--感覚として「ヒット曲を作らなきゃ」というものではないと。
家入レオ:ないです。メジャーだからどうしてもそこは無視できないと思われるのかもしれないけど、やっぱり音楽は好きだからやってるし。
--「ヒット曲を作らなきゃ」に捕らわれず、自分が叫びたい想いから生まれた曲で「聴きたい」と思ってもらえて、その輪が広がっていく。今、それが出来ている、家入さんみたいなアーティストって稀有だと思います。
家入レオ:……。
--みたいな話にも翻弄されないようにしてますよね?
家入レオ:良いことも悪いこともすべて半分で聞くようにしてます。やっぱり自分というものを忘れたくないし、そういうのに踊らされていたらキリがないじゃないですか。デビュー当時は気にして悩んでたんです。「あ、こうやって言われてる」とか、自分の知らないところで、自分の名前と顔が露出されていくことに恐怖を覚えたこともあったし。要するに拡声器を向けられちゃう側になった訳じゃないですか。でもそういう気持ちも音楽に昇華できたので、その曲もいつかお届けできたらなって思うんですけど。
--家入さんって音楽と向き合う上で、それ以外のことは極力排除したい感覚ってありますか?
家入レオ:排除したいとは思わないですけど、そもそも音楽以外のことに興味がないので。すごく疎いんです。さすがに破れてる服を着ていたときは「買いに行きなさい」って怒られましたけど。
--自分の恰好にも興味ない(笑)。
家入レオ:そうなんです。映画観たり、本読んだりはもちろんしますけど、キラキラ感みたいなものには……あんまりない。オシャレな服見て「可愛いなぁ」とは思いますけど、自分がそれを着ようとは思わなかったり。買い物に行く暇があったらギターの練習したいです。
--根っから音楽人じゃないですか。
家入レオ:でもそろそろ買い物行かないと、また言われちゃうんで!
一同:(笑)
リリース情報
Message
- 2013/05/22 RELEASE
- 初回限定盤B[VIZL-542(CD+DVD)]
- 定価:¥1,800(tax in.)
- ≪試聴可能≫
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- 初回限定盤Aの詳細・購入はこちらから>>
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Interviewer:平賀哲雄
普通に社会人になってたらヤバかったと思います(笑)
--話を戻します。家入さんにとって2012年はどんな年だったという印象なんでしょう?
家入レオ:出逢いの多い1年。まだ18年しか生きてないですけど、その中で一番出逢いが多くて、いろいろ変わりましたね。良い意味でも悪い意味でも。
--良い意味では?
家入レオ:大人に対する価値観だったり。もちろん、それだけいろいろな経験をさせて頂いたので、泣いたり躓いたりすることも一番多かったと思うんですけど……長い目で見たとき、それは絶対プラスになっていくんですよね。そう考えると、悪いことはなかった。あったとしても、それはいつか絶対光に変わっていくし。なので、どの出逢いも有り難いものだったんですけど、私は本当に出逢いの運があるなって感じていて。今も本当に素敵な人たちに囲まれてるし。だって、私って曲を歌うことと作ることしか出来なくて、それをリスナーの皆さんに届けてくれる人がいないと、成立しない訳なんですよね。歌い続けることもできない。だからすごく感謝してるし……上手く言えないけど、初めて「自分が自分でよかったな」ってちゃんと思えた。
--そう思わせてくれたこの環境。「失っちゃったらどうしよう」的な怖さを感じることってある?
家入レオ:何事も始まった瞬間から終わりに近付いている訳だから、それって「怖い」って思っても仕方ないです。今、一緒にこうやって活動できていることが嬉しいし。だって、今しかないじゃないですか。私たちが手に入れられるものって、いつも。未来は確かなものじゃないし、今とても素晴らしい環境にいさせて頂いてますけど、それでも躓きますからね。躓いてばっかり。普通に社会人になってたらヤバかったと思いますよ、私(笑)。
--2013年はどんな年にしようと思って走っている感じですか?
家入レオ:今年は音楽を真っ直ぐやっていきたい。もっといろんなインスピレーションを受けたいし、10代のうちにいろんなことやっておきたい。良い意味で目標を決めずに。
--とは言え、今年は武道館も夢ではないと思うんですが。
家入レオ:いや、まだまだだと思いますね。ちゃんと一歩ずつ進むことが大事なんだと思っていて。飛び越えていくんじゃなくて。ちゃんと武道館に見合うだけの力を付けていかないとダメだと思うし、ライブに来てくれる方はお金を払う訳ですから。まだ力が足りてないのに「自分がやりたいから」ってやるのは、やっぱり違うと思う。武道館でやるのが目的じゃないですからね。そこで会場の皆さんといろんなことを対話したり、感じ合うことが大事なんであって。力不足で武道館立ってもライブすることだけに集中しちゃうから、感じることができないと思う。だからまだまだ。
--では、そろそろ2013年第1弾シングルについて掘り下げていきたいんですが、タイトルを『Message』にしたのは?
家入レオ:先程お話したようにファンの皆さんが悩みを打ち明けてくれて、本当はひとつひとつ丁寧にお返事が書けたらと思うんですけど、なかなか難しかったりするので、音楽でお返事できたらなと思ったんです。それで『Message』というストレートなタイトルにしました。あと、Aメロの歌詞「君の溜息 I know… 錆びついた過去 I know…」には、「君が学校でイジメられていること。君が会社を辞めてしまったこと。知ってるよ。だって、手紙読んだもん。錆びついた過去やいろんな葛藤を抱えてたんだよね。知ってるよ。だって、私もそうだったし、今もやっぱり不安があるもん」という想いが集約されていたりして。
--今作は、対誰かに届けようとしている要素が圧倒的に大きいですよね。これまで発表した作品に比べても。自分ではどう思いますか?
家入レオ:ちょっと世界が開けた感じ。それはやっぱりツアーで皆さんの顔をちゃんと見れたことが大きいんですけど、今までのシングルは北風だったんです。「私、こういう弱さがあるんだよ! だから見せなさいよ、そっちも!」みたいな。でも今回は太陽。「別に見せなくてもいいんだよ。でも私はいつもここにいるから。だから一緒に歩いていこうよ」って発信することで、「あ、家入には弱さを見せていいかも」って思ってもらえるような。そういう感じになったのは、私の中では初なんじゃないかな。
--そういう曲を作れたこと自体には、どんな感慨を持たれていますか?
家入レオ:ビックリしましたね。作っているのは、私とプロデューサーの西尾(芳彦)先生なんですけど、この曲が生まれるきっかけを下さったのはファンの方、聴いて下さってる方なので。これはきっとデビューしてなかったら作れていない楽曲だったと思います。
--この「Message」の内容に絡めて聞きたいんですが、家入レオ、ここからどんな未来を掴んでいきたいですか?
家入レオ:ずっとブレずに自分でいたい。難しいことだとは思うんですけど。自分でいたくてもいれない部分というのは、やっぱり出てくると思うし。でも今のところブレてないので。自分の叫びたい音楽をやってきてるし、それをこれからもやっていきたいです。
--では、これからどんな大人になっていきたい?
家入レオ:素敵な人はたくさんいるし、尊敬できる人もいますけど、皆さん、親がいる訳じゃないですか。誰かの子供じゃないですか。だから大人って本当は存在しないんじゃないかって思うときがあって(笑)。
--家入さん、かつて大人が大嫌いだった訳じゃないですか。(参考『Shine』インタビュー、『LEO』インタビュー)そんな自分が今話したようなことに気付けてる。どんな気分?
家入レオ:ビックリ。過去の自分じゃ気付けないですよ。だから本当に凄いと思います。そう思わせてくれた人たち。今、周りにいる人たちが。自分でも操れないもうひとりの自分……まぁ危害加えたりする訳じゃないんですけど、黙り込んだりとか、自分の殻に閉じ篭もっちゃう。それでも私が音楽できる環境を作ってくれているので。やっぱり出逢いによって変わったんでしょうね。
Music Video
リリース情報
Message
- 2013/05/22 RELEASE
- 初回限定盤B[VIZL-542(CD+DVD)]
- 定価:¥1,800(tax in.)
- ≪試聴可能≫
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Interviewer:平賀哲雄
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