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ボビー・ウーマック 来日直前インタビュー
昨年約18年ぶりとなるオリジナル・アルバム『ザ・ブレイベスト・マン・イン・ザ・ユニバース』をリリースし、見事復活を果たしたラスト・ソウルマン=ボビー・ウーマック。1960年代にサム・クックのレーベルからグループとしてデビュー、「ルッキン・フォー・ア・ラヴ」やローリング・ストーンズがカヴァーしたことで有名な「イッツ・オール・オーヴァー・ナウ」がヒットを記録。その後、ソロのヴォーカリスト、ギタリスト、さらにソングライターとしても才能を発揮、「ウーマンズ・ガッタ・ハヴ・イット」「イフ・ユー・シンク・ユー・アー・ロンリー・ナウ」、さらには映画『110番街交差点』サウンドトラックのリード・トラックなど多彩な名曲を放ってきた。だが今年1月に初期のアルツハイマー病にかかっていることを告白。今後の活動への支障が心配されたが、そんな素振りを見せない程元気そうに「ウーマックだぜ。」と電話に出た彼に近況や5月に控える来日ツアーについて訊いた。
国境を超え、人々に音楽を届ける…それが私の使命なんだ
――調子はいかがですか?
ボビー・ウーマック:今日は調子がいいよ。でもいい日もあれば、悪い日もある。以前と比べると完璧な日というのは少なくなってしまったけれど、今度日本へ行くことはとても楽しみにしている。きっとその時は完璧な日になるに違いない。というか、完璧な1週間だな(笑)。
――ファンの皆さんも再びボビーの生の歌声が聴けるのを楽しみにしていますよ。
ボビー:前回パフォーマンスをした時も最高だったし、いい経験だった。この前誰かに「ライブ内容は今でも工夫しているの?」と訊かれたが、「信じられないかもしれないが、私が同じショーをすることはない。」と即答したよ。私はスピリチュアル・ゴスペル・シンガーで、パフォーマーだからね。どうなるかは、その時次第だ。これが私の天職だということは、身に染みて感じている。
――やはりステージを観ていると天性のパフォーマーなんだというが、ひしひしと伝わってきます。
ボビー:音楽を作ること、ライブをすること。それがいつでも私にとって唯一の安らぎだった。皆に自分の一番の姿を観てもらいたい。だから私はいつも200%でステージに挑んでいる。国境を超え、人々に音楽を届ける…それが私の使命なんだ。バンドに関しても、メンバーが多くなってしまって、私の取り分が少なくなってしまっても構わない。そもそも私は金持ちではないし、金儲けをすることにも興味はない。ステージに上がって、自分を待ち望んでくれている嬉しそうな観客の顔を見ることほど価値があることは他にない。それだけで億万長者の気分だよ。
――そして今回のライブでは昨年リリースされた最新作『ザ・ブレイベスト・マン・イン・ザ・ユニバース』からの楽曲も聴けるということですよね。
ボビー:もちろん、最新作からの曲はやるよ。「デーモン(・アルバーン)とどうしてレコーディングしたんだ?」という質問はよく訊かれるけれど、20年近くのブランクがあったから、自分のためにやった部分が大きいんだ。人間と同じで、長年音楽と付き合っていくと愛憎関係に陥ってしまうのは否めない。20年間を経て、やっとまたアルバムを作ることに対する愛が芽生えてきた。
――若い世代とコラボレーションすることで、制作活動に対する新鮮味も新たに感じられたのでは?
ボビー:そうだね。若い世代のアーティストが次々出てくるから、我々みたいな昔のアーティストはどんどん忘れ去られていく。私にとって興味深かったのは、自分のことを全然知らない若い世代にもこのアルバムを通じて名前を知ってもらえたこと。とても刺激的で、同時に私の音楽を聴きたいと思ってくれる人がまだいるとうことを再確認させてくれたので、ありがたい事だった。
3か月ほど前に、ウーマック&ウーマックとして活動していた弟のセシルが他界してしまった。アルバムの中から、特に「ディープ・リヴァ―」を歌うのが好きなのは、ゴスペルを歌い始め、彼と一緒に歌った時のことを想い起こさせてくれるからだ。この曲は私のルーツであるとともに、とても特別な曲なんだ。そしてもちろん昔の曲もやるよ。50年近くアーティストとして活動してきているから、すべてのアルバムから2曲ずつやっても4時間ぐらいのショーになるんじゃないかな(笑)。
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