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ジョルジオ・モロダー 来日記念特集
もし仮にジョルジオ・モロダーという名前は知らなくても、彼が携わった音楽は無意識に聴いているのではないだろうか。とくに、70年代後半から80年代にかけてヒットチャートを追いかけていた音楽ファンなら、間違いなく彼の作る独特のサウンドは体内に刷り込まれているはずだ。
『恋の玉手箱』
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1940年にイタリア北部に生まれたモロダーは、60年代末からドイツのベルリンにおいてジョルジオ名義でアーティスト活動をスタート。69年にリリースしたバブルガム・ポップ風のシングル「Looky Looky」がヒット。72年にはUKのポップ・グループ、チッコリーに書き下ろした「恋の玉手箱(Son Of My Father)」が全英No.1を獲得し、一躍ソングライターとしての評価を得た。
『愛の軌跡 ドナ・サマー・
グレイテスト・ヒッツ』
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その後、シンセサイザーにのめり込むと同時に、ドナ・サマーとの出会いが彼のキャリアを大きくステップアップした。オランダのみでリリースされたデビュー作『Lady Of The Night』(1974年)に続き、ワールド・デビューとなったセカンド・アルバム『愛の誘惑』(1975年)で大胆にディスコ・サウンドを導入。アルバム・タイトル曲がビルボード・ホット100で第2位まで上昇する大ヒット。その後も、「恋はマジック」(1976年)、「アイ・フィール・ラヴ」(1977年)、「アイ・ラヴ・ユー」(1977年)、「ホット・スタッフ」(1979年)、「バッド・ガール」(1979年)、「オン・ザ・レイディオ」(1980年)といった大ヒットを生み出し、彼女をスターダムにのし上げた。
『ハイダウェイ』
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また、モロダー自身も1976年にはソロ・アルバム『Knights In White Satin』で、ムーディー・ブルースの楽曲をディスコ・カヴァーし話題を呼び、翌1977年に発表した『From Here To Eternity』で、モロダー特有の“ミュンヘン・サウンド”と呼ばれるエレクトロ・ディスコ・サウンドを確立。『E=MC²』(1980年)、『Innovisions』(1985年)、『To Be Number One』(1990年)といったソロ作品を定期的に発表している。
ヒット・メイカーとしての地位を得たモロダーは、数々のアーティストをプロデュースしていった。スリー・ディグリーズ『恋にギヴ・アップ』(1978年)、スパークス『ターミナル・ジャイヴ』(1979年)、ジャニス・イアン『ナイト・レイン』(1979年)、デイヴィッド・サンボーン『ハイダウェイ』(1980年)、ユーリズミックス『スイート・ドリームス』(1983年)、ニナ・ハーゲン『フィアレス』(1983年)、ジャネット・ジャクソン『ドリーム・ストリート』(1984年)、ジグ・ジグ・スパトニック『ラヴ・ミサイル』(1986年)、ビッグ・トラブル『ビッグ・トラブル』(1988年)などジャンルも様々だが、どの作品にもモロダーならではの個性が刻み込まれている。
『トップガン』
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ポップ・ソングとは別に、モロダーのキャリアで非常に大事なのが映画音楽だ。1978年にアラン・パーカー監督の社会派映画『ミッドナイト・エクスプレス』で、初めてサウンドトラックを手がけ、アカデミー作曲賞を受賞。以来、映画音楽作家として数々のヒットを生み、80年代以降のサントラ・ブームの火付け役となった。『フラッシュダンス』(1983年)の主題歌「フラッシュダンス…ホワット・ア・フィーリング」(アイリーン・キャラ)、『トップガン』(1986年)の主題歌「愛は吐息のように」(ベルリン)で、アカデミー主題歌賞を獲得している。
他に手がけた主な映画音楽は、1980年の『アメリカン・ジゴロ』(主題歌はブロンディ「コール・ミー」)、1982年の『キャット・ピープル』(主題歌はデヴィッド・ボウイ「キャット・ピープル」)、1984年の『メトロポリス』(主題歌はフレディ・マーキュリー「メトロポリス」)と『ネバーエンディング・ストーリー』(主題歌はリマール「ネバーエンディング・ストーリーのテーマ」)、1987年の『オーバー・ザ・トップ』(主題歌はサミー・ヘイガー「オーバー・ザ・トップ」、ケニー・ロギンス「心の夜明け」)など。いずれもシングル、アルバムともに大ヒットした作品ばかりだ。
▲Daft Punk | Random Access Memories | The Collaborators: Giorgio Moroder [MOVIE]
他にも、オリンピックやワールドカップのテーマソングを手がけたり、スーパーカーの開発に手を出したり、多くのヒップ・ホップ・アーティストからサンプリングされまくったり、ダフト・パンクとコラボレートしてみたりと、常に話題を振りまく存在でもある。
シンセサイザーという“時代の徒花”的な楽器をメインにサウンドを作り上げただけに、彼の音楽は発表した数年後に時代遅れの烙印を押されることもしばしばあった。しかし、何度も再評価され、その後のテクノやハウス、R&Bのクリエイターたちからリスペクトされることも多い。その理由は、楽器やサウンドがどうあれ、ベースとなる音楽センスが確固たる世界観を持っているからだろう。ジョルジオ・モロダーが残した音楽は、永遠に忘れ去られることはないのだ。
来日公演情報
ジョルジオ・モロダー featuring DJ クリス・コックスtext:栗本 斉
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