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柴田淳 『あなたと見た夢 君のいない朝』インタビュー

柴田淳 『あなたと見た夢 君のいない朝』 インタビュー

 カバーアルバム『COVER 70's』のヒット。デビュー当時の丸裸感を取り戻した新オリジナルアルバム『あなたと見た夢 君のいない朝』の完成。“プライベートがなければ、私って超幸せなんですよ”と語るほど、音楽家として充実した人生を送る柴田淳が、ホワイトデーから被災地で歌いたい楽曲の話、人生の分岐点についてまで赤裸々トークを繰り広げてくれた。

今回のアルバムは奇跡としか思えなくて。次が不安

--昨日はホワイトデーでしたが、いっぱいお返しもらいました?(※この取材は、3/15に行われた)

柴田淳:誰からも何ももらえませんでした!

--(笑)

柴田淳:バレンタインのとき、レコーディングに差し入れを持っていったぐらいなので、全然見返りは期待してなかったんですけど……そう言えば、ホワイトデーだったなって。一応、ツイッターでは「今日はホワイトデーです」って書いておいたんですけど。

--「今日はホワイトデー。好きな人に、ぼくも好き!って言うんだよ」って書かれていましたよね。

柴田淳:はい、誰からも言われませんでした! ハハハ!

--ホワイトデーには何もなくとも、先日は【第5回 CDショップ大賞2013】特別賞に『COVER 70's』が選出されました。カバーの多い年の中で、特に“オリジナリティー”のある作品として選ばれたそうで。

柴田淳:すごく嬉しかったんですけど、私も私の周りのスタッフも受賞馴れしてないので、どれぐらい喜んでいいものなのかも、あんまり分かんなくて。「この後、僕たち、どうなるのかなぁ?」みたいな(笑)。でもそれだけカバーがやや受けした訳ですよね、世の中的に。今まではいつも固定枚数は売れてて、だからこそ墜落せず低空飛行でやってこれたんですけど、いつも同じ人が聴いてくれているということだから、「売れてる」って言われても身内の中で活動してる感覚があって。でも今回のカバーはその状況を超えて、キャンペーン終わってもずっと流れていたりとか、地方ではループで流れていたりとか、ツイッターで私のことをフォローしていないような人たちも騒いでくれたりして。これがいわゆるヒットっていうことなのかな?と思って。11年目にしてようやくメジャーになれたというか、ようやく「これでいいと思う」じゃなく「これでいいんだ」と思えた。

--大きい変化ですね。

柴田淳:これまでは「私は自信持ってるつもりなんだけど……」で終わっていたんだけど、ちゃんと評価してもらえて「あ、これでいいんだ」って。だから今回のカバー集のややヒットと、賞を頂いたことで、CDで言うところのファイナライズができた。認めてくれる人はやっぱりいるんだって、自信になった。で、それを経ての今回のオリジナルアルバムなので。

--自信を持って作れたと。

柴田淳:いや、正直、カバーを出すまでの自分がどういう自分だったか思い出せなくなってしまって。身内だけのリアクションでやってきたから、どういう見せ方をしていたのか分からなくなって。でも制作には入らなきゃいけなかったので、自分の中に溜まっていたものをそのまま出したら……ここ数年、変にこなれてきて、客観的に柴田淳を描くようになってきちゃって、毒が無くなってきたなと思っていたんですけど、今回、目の前にあるものを選んだら、聴いてくれる人が「よくここまでさらけ出せるね?」って思っちゃうようなものが出来たんです。その手応えが「あ、懐かしい」と思って。

--デビュー当時の丸裸感を取り戻せたということですか?

柴田淳:デビュー当時は、人が見て見ぬフリしているところとか、人が隠している部分を言い当てちゃう、みたいな歌を書くことに快感を覚えていたり。性格、悪い感じなんですけど(笑)、そうやってさらけ出すことに充実感や面白みを見出していたんだなって。それをようやく思い出したんですよね。毎回毎回それが出来ていたような気がしていたんだけど、今回は「これだった!」って。ある種、ちょっとリスタートというか、初心に戻れたというか、柴田淳の本当のスタイルを思い出したというか。ここまでズバっと言うのが柴田淳だったのに、最近は全然ズバっと言ってなかったな……って分かったぐらい、今回はかなりリアルに書けたアルバムになっています。

--そうなれたのは、自分の中で嬉しいこと?

柴田淳:嬉しいことです。邪念が無くピュアなまま出せているので。でもそれは後悔でもあります。

--(笑)

柴田淳:後悔って言うんですかね? 作品って何を思って良しとするのかにもよるんですけど、どこまでさらけ出せるか? っていうことも、私の中では手応えの一部だったりするので。ただ、それで「女って怖いな」「超キツイ、これ」って言われたりすると、「私、そんな人だったんだ……。とんでもない歌、書いちゃったんだ」ってなるんですよ(笑)。でもそこに嘘はないし、狙って書いたりはしていないし、「すごくよく分かる」って感じてわんわん泣いている人がいたとしたら、そこにすごい達成感を得たりはするので。恥知らずかもしれないけど、私は如何にさらけ出せるかがテーマだから。……ということに、ようやく気付けた気がします。

--カバーで注目を集めた後に、丸裸の柴田淳を出せるって良いストーリーですね。しかも11年目にして。

柴田淳:極限状態のときの方が、満たされていない環境の方が、人はもしかしたら凄いエネルギーを発揮するのかもしれない。凄いプレッシャーと、凄いスケジュールと、自分に起きたいろんな物語と……積もり積もったものをバァーって出して。二度とこんなことは出来ないんじゃないかなと思うぐらい、極限の中で作り出した感じがします。なので、「カバーの後が勝負ですね」ってよく言われていたんですけど、私にとってはこれの次が勝負かなって。今回のアルバムは奇跡としか思えなくて。だから次のアルバムが不安で仕方ない。

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柴田淳「あなたと見た夢 君のいない朝」

あなたと見た夢 君のいない朝

2013/03/27 RELEASE
VIZL-525 ¥ 3,960(税込)

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Disc01
  1. 01.ノマド
  2. 02.あなたの手
  3. 03.雲海
  4. 04.恋人よ
  5. 05.冷めたスープ
  6. 06.嘘
  7. 07.朝靄
  8. 08.魔女の話
  9. 09.道
  10. 10.キャッチボール

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