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ビーチ・ハウス 『ブルーム』インタビュー

ビーチ・ハウス『ブルーム』 インタビュー

 昨年リリースされた通算4作目となる最新作『Bloom』が、米ビルボード・アルバム・チャートで初登場7位を記録、2012年の年間ベスト・アルバムの上位にも軒並みランクインしたヴィクトリア・ルグランとアレックス・スカリーによるボルチモア出身のデュオ、ビーチ・ハウス。2011年の【FUJI ROCK FESTIVAL】出演以来、約1年半ぶり、初となるジャパン・ツアーの為に来日した彼らの1月20日の行われた東京公演前に『ブルーム』、楽曲提供、音楽業界の現状などについてギタリストのアレックスが、音楽に対するストイックな想いと今後のバンドの方向性を交えて答えてくれた。

日常とは違う"別世界"に浸る

−−初となる日本単独ツアーですが、大阪公演はどうでしたか?

アレックス・スカリー:とてもクールだったよ。でもあの静かな感じは、日本特有だよね。サウンドも素晴らしくて、会場も良かったと思う。あ、最前列におばあさんみたいな人がいたんだ!多分70歳ぐらいかな?

−−おそらく彼女は、大阪のライブ・シーンでは結構有名な人だと思いますよ(笑)。

アレックス:そうなんだ。すっごく派手な花柄の服を着ていたから、ついつい目に付いちゃって。

−−案外、観客のこともよく見ているんですね。

アレックス:意外とね(笑)。

−−では、本題に。作品ごとに、"若さ"や"ユーフォリア"など、特定のテーマや方向性が、あると思うのですが、ニュー・アルバムの制作を開始して、この作品はこうしたいという明確なヴィジョンが現れるタイミングというのは?

アレックス:いい質問だね。今まで作ってきた4枚のアルバムにおいて、もちろんタイミングは違うけれど、まず4~5曲書き上げて、その次にまた4~5曲を書き上げると、形而上的な中心点が自然と見えてくる。僕達がこうしようと決めるわけではなくて、音楽がそこまで導いてくれるんだ。

New Year
▲「New Year」

−−最新作『Bloom』は、人里離れたテキサスのスタジオ“Sonic Ranch Studios”にてレコーディングを行ったそうですね。年始に公開された「New Year」のミュージック・ビデオには、制作中のスタジオの様子が捉えられていますが、本当に何もないような場所ですね。なぜかネコはたくさんいたみたいですが…。

アレックス:そうそう。ネコたちは、クールだったよ(笑)。過去2作では、金銭的にきちんとしたスタジオ環境でレコーディングが行えた。前作もそうだけど、人があまりいない場所の方が作品に没頭できるし、音楽を作るという行為を仕事にはしたくない…その日のレコーディングを終えたら、家に帰って、また翌日スタジオに向かう、と言う具合にね。作品をレコーディングする際の環境づくりは、僕たちにとって大切なんだ。日常とは違う"別世界"にどっぷり浸る。西テキサスは、まさにピッタリだったよ。

−−アメリカ・ツアーをすると、必ずといってもいいほど通る場所でもあるんですよね。

アレックス:その通り。ほんとうに何にもないから、「何なんだここは?」って、あそこを通る多くのバンドが感じていると思うよ。でも僕たちは、逆にその何もない、“無”の雰囲気に惹かれたね。

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常に完璧になるまで曲を磨かなければならないという固定概念

「Wild」MV
▲「Wild」MV

−−スタジオに入る前に、細部にまで及ぶデモを制作するそうですが、この制作方法に辿り着いた経緯は?

アレックス:まずこの方法には、利点と不利点が両方あって、利点は、自分が感動した瞬間を捉えることによって、その瞬間がその後もずっと生き続けることになる。でも悪い点は、スタジオ内で起こる即興性を邪魔してしまう。実はこれは今後はあまりしないようにしたいと思っている事のひとつなんだ。最初の頃は金銭的な問題で、スタジオにいる時間を短縮する為にこの方法でしか出来なかった。新たな日というのは、何か新しい事が起きるという可能性を秘めている。色々なことをもっと柔軟に、オープンに捉えることで、さらにクリエイティヴな作品作りが出来るということに歳を重ねることによって気付いたんだ。昔はその瞬間を捉えて、スタジオで再現することばかりに力を注いでいた。でも今後それも変わっていくことの一つだと思っている。

−−制作活動する上で、そこから生まれるものは無限大ですが、逆にその中から削って行く作業の方が困難なような気がします。

アレックス:過去の作品はかなりシビアに削る作業をしたね。常に完璧になるまで、曲を磨かなければならないという固定概念が2人の頭の中に出来てしまっていて、中々そこから抜け出すのが難しくなってきている。だから、今後はそこまで極端にすることはしない。僕的には、どのアルバムもサウンド面において類似しているものはないと思っている。このプロセスを落ち着かせることで、次のアルバムには特に大きな変化をもたらすと思ってるんだ。曲を完成させたいという、欲望が強すぎるのが問題なのかもしれない。必要以上にいじらないで、そのままにすることも大切なんだ、というのは今回のアルバムのレコーディングから学んだ教訓でもあるね。

−−では曲が、到達点に達したと感じる瞬間は?

アレックス:長年に渡ってヴィクトリアと僕が一緒に活動を続けて来れたのは、考え方は全く違うけれど、面白い事に感性がとても似ているから。ある曲があるとすると大体2人とも気に入るか、気に入らないかどちらかだ。基本的に曲が完成したかどうかが判断されるのは、何かを足しても、引いても仕上がりが悪くなる時だと思っている。その判断は、2人の合意にかかっていて、大体の場合僕らの意見は一致するね。

−−前作『Teen Dream』も手掛けたクリス・コーディ―を再びプロデューサーに起用していますが、既にしっかりとした基盤がある中、彼が作品へ及ぼす影響を教えてください。

アレックス:クリスは、素晴らしいプロデューサーだよ。僕たちとレコーディングする時は、むしろコラボレターという感じだね。近年限りなくゼロに近づいてしまったと感じるのが、バンドの一番のパフォーマンスを引き出してくれるプロデューサー。僕がテイクを終えて、「これで上出来じゃない?」と思っていても、彼にまだダメだと言われることが、レコーディング中に何度もあって…その時は何故だろうと考えるけれど、きちんとしたテイクが録れると、「あぁ、このことを言ってたんだ。」と気づかさせられることが多かった。フィーリング、サウンド、エネルギー、すべての面において到達点に着地した瞬間というのを彼ほどわきまえているプロデューサーはいないね。そこに辿り着くまで、後押ししてくれたり、時間を惜しまず待ってくれる。それは、ある種の才能でもあるよね。

−−直感的な部分も大きいけれど、経験も豊富ですしね。

アレックス:ひょっとしたら彼は12年ぐらいスタジオを出ていないんじゃないか、と思う時もあるよ(笑)。まるでスタジオに住みついてるネズミみたいなんだ。

−−ライブ・テイクされた曲の中では、やはりアルバムのラスト・トラック「Irene」が印象的でした。今回のアルバムは、すべてテープでレコーディングしたそうですが、この伝統的な方法で行った理由は?

アレックス:いくつかあって、まず音が素晴らしい。今色々なテイクの話をしたけれど、その一つ一つにより目をむけることが出来る。たとえば、ProToolsでレコーディングした場合、途中で間違えてしまっても、またその部分からやり直して曲をつなぐことが出来る。でもそうすると、その1曲を通してレコーデイングするという"行為"とその"体験"というものが薄れてしまうと感じるんだ。断片的にしてしまうと、一つの曲として持つフィーリングも変わってきてしまうし。

現代の音楽業界

「Lazuli」MV
▲「Lazuli」MV

−−今作は期待度が高かったこともあり、リリースよりかなり前にアルバムの音源が、ネット上にリークしてしまいましたよね…。尽力と時間をかけて作ったものが意図も簡単にネット上に出回ってしまうことに苛立ちは?

アレックス:もちろん感じるよ。自分たちの意に反した形で世に出てしまうんだから。でも僕が一番悲観視しているのは、そういうことに対する判断能力やクオリティが落ちているのが当たり前になっていること。世界には、美しいものがたくさんある。でもそのせいで正当に評価されなくなることは、悲しいね。アルバムを通して聴くというのは本来美しい行為なんだ。でも最近みんな忙しさのあまり、iPhoneや色々なデヴァイスでシングル1曲、ひどい時は30秒しかないクリップをクオリティの悪い音源のまま平気で聴いている。一人、友達、家族、愛する人、誰でもいいけど、ちゃんと座って、その作品の世界観やフィーリングに浸るという行為が、過去のものになってしまうのはあまりにももったいなさすぎる。

−−テクノロジーの進歩によりネットが普及し、10年前と比較すると世界的に情報のアクセシビリティが高まっていますが、このような悪い点もあれば良い点もありますよね。

アレックス:もちろん。美しくてレアな音楽は、ネット上に多く存在するし、もしその環境がなかったら誰も聴くことが出来ないようなものが大半だと思う。色々な情報が早く手に入るのは、素晴らしい反面、僕達のことを変えていっているのは間違いないね。

−−それに伴ったYouTubeなどの画像共有サイトやSNSの普及には、音楽業界も大きな影響を受けていると思います。でもそういうツールを使うことによって作品自体より、話題性や"ギミック"的要素が先行してしまうのも難点ですよね。

アレックス:『Bloom』のリリース後、自分たちが露出する"コンテンツ"を意図的に制限した。ミュージック・ビデオはいくつか作っているけれど、単に僕たちのことを撮影するだけのラジオのセッションやリミックスとかはやっていない。話題作りをすることには興味がないし、自分たちが本当に誇りをもてる作品しか作らないと決めたから。もし多くのバンドが、僕たちと同じ考えをもってくれたら、ユーザー側も大量にあるクズみたいな作品の半分も見ないで、もっと素晴らしい作品に出会える可能性が高まるはずだよ。

−−そんな中、アナログ・レコードの売り上げが年々増加している現状は興味深いな、と感じます。ほとんど何でもmp3で買える時代ですもんね。

アレックス:その点は、本当に素晴らしいよね。12インチのアナログ・レコードは、音はもちろん、視覚的にも美しいし、レコードを集めるという行為にも美学がある。それが若い子たちにも浸透していっているのは嬉しいよね。ライブを見に来てくれたファンの子にレコード・プレーヤーは、持ってないけど、ビーチ・ハウスのレコードは全部買ったよって言われることが増えた。それってすごくクールなことだよ。僕は、21歳の時に初めてレコード・プレーヤーを買った。理由は、アナログを売っている店に行けば、ほとんど1ドルでレコードを買うことが出来たから。ビートルズから初め、色々なバンドのレコードを全部揃えていったんだ。それまで、ずっとCDで聴いていたものをアナログで聴いた時の驚きは大きかったね。「Let It Be」のドラムとか、それまでに聴いていたCDとは全く違って、「本来はこういう音なんだ!」って。なんだか音オタクみたいな感じになっちゃってゴメンね(笑)。自分でもそんな風にはなりたくないけど、やはり比べてみると明確な違いがあるんだ。

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『ザ・フューチャー』への楽曲提供

New Year
▲『ザ・フューチャー』トレイラー

−−では、話は変わってデビュー作『Beach House』に収録されていた「Master of None」は、ミランダ・ジュライ監督の最新作『The Future』に挿入歌として使われていますが、起用された経緯を教えてください。偶然にも今週末から日本で公開なんですよ。

アレックス:あ、そうなんだね!従来、映画だとその音楽監修している人から連絡が来るんだけど、ある日ミランダから直々に、今制作している映画にこの曲を是非使いたいとメールを貰って。でも映像に合わせる為に、1点編集してほしい部分があると具体的な指示をしてきたんだ。

−−確かに映画バージョンは、アルバムと違うな、と思ってました。

アレックス:普段だったら絶対そんなことしないけど、そういう細かい部分においても明確なヴィジョンがあるんだと、この時ばかりはヴィクトリアと感心したよ。だから彼女の作品の為ならと了承し、古いマスターを掘り起こしてきて彼女の指示通りに編集したんだ。

−−セリフなども印象に残るものが多いですが、あのシーンは一番強烈ですよね。彼女はパフォーマンス・アートのバックグラウンドがあるので、音楽と演技の相乗効果みたいなものに人一倍理解があるんだと感じます。

アレックス:そうそう。後から作品を観て、「あぁ、こういうことだったのか」と納得したよ。

−−元々この曲をイメージしながら、彼女がこのシーンを書き上げていったか、知っていますか?

アレックス:いや、多分違うと思うけど、かなり何度も聴いてくれたみたいで、そのプロセスを重ねていくごとにあのシーンにピッタリだと気付いたんと思うよ。

−−映像作家を始め、作家、ミュージシャンなど様々な顔を持つ彼女が、「Master of None」というタイトルの曲をセレクトしたのも面白いですよね。とても彼女らしいと思いました。

アレックス:たしかに。彼女はとてもアイロニーに満ちた人物だからね。

ショート・フィルム『Forever Still』

New Year
▲「GUINNESS TV AD 2011」

−−ヴィクトリアは、グリズリー・ベアや最近ではエールが手掛けた『月面旅行』のサウンドトラックなどに参加していますが、ビーチ・ハウスとして曲を提供しているものは少ないのかな、と思います。確か以前ギネスのコマーシャルには「10 Mile Stereo」が使われてましたよね。

アレックス:今まで映画やCMのオファーは色々来てるけど、やはり自分たちの音楽のイメージからかけ離れていたり、芸術性を損なうものに楽曲を提供するのは無理だよね。あまり難しくは考えていなくて、大半は直感的なんだ。あのギネスのCMは、とても変わってて、芸術的でもある。不吉な黒い雲が街を覆っていく…使われている曲「10 Mile Stereo」も不穏な雰囲気があるし。最近のCMはクールなものが色々あるから、そのアートフォームに曲を提供すること自体に抵抗はないけれど、今まで打診されてきたものは、正直陳腐でクソみたいなものばかりなんだ。

−−今後、映画音楽を作ってみたいとは思いますか?

アレックス:もちろん。ヴィクトリアも僕も映画は大好きで、よく見ているから、やってみたいという気持ちは大きい。ただ、残念ながらまだ誰にもオファーされていない…。

−−もし選べるのであれば、どの監督の作品を手掛けたいですか?

アレックス:大勢いすぎて選べないよ(笑)。デヴィッド・リンチ、ヴィム・ヴェンダーズ、ウェス・アンダーソン、絶対オファーは来ないと思うけど…宮崎駿、ジム・ジャームッシュ。とにかく大勢いる中の一人からでもオファーが来たら、それだけで嬉しいね。今日はコーヒーの飲み過ぎで、喋りすぎてたら途中で止めてね(笑)。バンドにいるとどうしても曲が主体となってしまう。だから一貫したテーマやフィーリングに合わせて作品を作ってみるのも面白そうだよね。

New Year
▲「Forever Still」

−−もうすぐショート・フィルム『Forever Still』が公開されるとのことですが、撮影はレコーディングを行ったスタジオで行われたそうですね。

アレックス:あの場所にいた時に感じたフィーリングへのオマージュとして制作されたんだ。ピンク・フロイドの『ライヴ・アット・ポンペイ』から影響を受けていて、あの作品はライブ・レコーディングの模様を録ったものだけど、場所が連想させるフィーリングが音楽の世界観と絶妙にマッチしている。『Bloom』から4曲をスタジオ付近の砂漠などで、日暮れにから夜明けまで撮影した。リハーサルを含めて、3晩徹夜で作られたから、最後はすごく不思議なテンションだった(笑)。明確なストーリーはないけれど、自然の力、夜に伴う恐れ、日暮れの美しさ、1日が始まる時に感じる歓喜を捉えたもので、とてもシンプルだけど、色々感じるものが多くあると思う。レコーデイングを続けていくと共に気づいたんだけど、やはりこのアルバムの中核にあるのは自然の力なんだ。

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商業的には今がピークだと思ってる

New Year
▲「Zebra」MV

−−初めてビーチ・ハウスを観たのが、『Teen Dream』リリース直後の海外フェスだったのですが、観客の女の子たちが俗に言う“ヒット曲”「Zebra」や「Norway」をシングアロングしていたのが、とても不思議でした。現在活動をスタートして8年目ですが、開始直後に比べて自身の音楽や業界全体の流行や移り変わりみたいなものに変化を感じますか?

アレックス:未だに僕には理解できないけれど、『Teen Dream』にはなぜか一緒にシンガロングできるという要素があったみたいで…フェスという環境も普通のライブに比べて特殊なのは間違いない。僕たちはあくまで自分たちが好きな音楽を演奏しているだけだからね。昔ニール・ヤングが、「バンドにとって一番最悪なのはヒット曲だ。」と言っていたことがあるけど、それには同感。ヒット曲で、バンドを判断するなんてバカげてる。たとえば、自分がもしゴティエだとして「Somebody That I Used To Know」以外の時は、みんな知らんぷりしているけど、あの曲を演奏し始めた途端、大盛り上がりになったら複雑だよね。彼は長い間アーティストとして活動しているから、あの1曲で自分のキャリアを集約されてしまうのは特に残念なことだと思うね。不思議だったって、言っていたけれど具体的には?

−−大げさに言うと、テイラー・スウィフトのようなアイドルのライブ会場にいるような雰囲気は少しありました(笑)。昔、インタビューで自分たちの音楽はあまり一般受けはしないと思うと言っていたのを思い出して、ちょっと気になって。現在とデビュー当時を比べると観客に変化は見られますか?

アレックス:この時代特有なんだと思うけど、見た目でどのような音楽を聞いているかが判断できなくなったというのは大きいんじゃないかな。たとえば90年代初頭だったら、あいつはヘアメタル、あの子はトップ40…

−−あの人はグランジ。

アレックス:そう、色々な人のiPodの中身をみると驚く事が多々ある。放送文化が細分化していった結果だよね。より自分が好きなものを細かく選べる事が出来るようになった。それにみんなが聴いている音楽の半分は、YouTubeで見つけたものだったりする。これは今の時代の特質的で興味深い部分でもあるね。ライブをしている時、観客を見てこの人たちはどこで自分達の音楽を知ったのか不思議に思った事は何度もあるよ。全然悪い意味ではなくてね。

−−いわゆるインディーでもメインストリームの中に存在しているものが近年増えてきていますし。

アレックス:すべてがクロスオーヴァーしてしまって、ジャンル分けすること自体に意味がなくなってきているからね。

−−もうすぐ活動10周年を迎え、アルバムごとにゆっくりではありますが、確実に成長を遂げ、独自の作風を確立してきていると思うのですが、今後はどのような活動を目指していきたいですか?

アレックス:今確実に言えるのは、次回作は絶対にアメリカのビルボード・チャートで7位にはランクインしないということ。今でもどうやって7位になったのか不思議でしょうがない。売れ線のポップ・アルバムを作って、アルバム・セールスを伸ばす気は全くないし、ポスター・チャイルドになる気もさらさらない。ここからは落ちる一方で、商業的には今がピークだと思ってる。もちろん芸術面においては、色々エキサイティングなアイディアが、既にあるからアルバムは作り続けると思う。でも"ヒット曲"は、今後も決して作る予定はないね。自分達が美しいと思える音楽を作り続けていくことが重要で、それが出来れば僕はハッピーだね。いいアーティストかどうかとアルバム・セールスは、多くの場合比例しないから。

−−周りに流されず、持っている信念を貫くのも大事だと思います。その揺るぎない部分がビーチ・ハウスというバンドの良さでもあると思うので。

アレックス:もちろんアルバムが沢山売れて、チャートで好記録を残せた事で嫌な気持ちはしない。でも個人的には、そういう余計なことによって音楽の魅力が損なわれると思うんだ。実際その作品や音楽の本質には関係のないことだからね。

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