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ロリーン 『ヒール』特集〜スウェーデンの歌姫が放つ新世界

ロリーン『ヒール』特集〜スウェーデンの歌姫が放つ新世界

 欧州最大の音楽コンテスト「ユーロビジョン・ソング・コンテスト2012」に出場、「ユーフォリア」で過去最高の得票率で優勝し、スウェーデンを代表する歌姫となったロリーン。ヨーロッパでは彼女の存在を知らない人はいないと言われるほどだ。その彼女がいよいよ日本でもデビュー・アルバム『ヒール』をリリース。ヨーロッパ中が惹き込まれ た、彼女の世界観は一体どのようなものなのか。

"歌を分かち合う"それがロリーンの一歩

 1983年にストックホルムに生まれたロリーン。父親が音楽プロデューサーということもあり、歌手になるという思いは必然と幼いころからあるものだと思っていたが、意外にもそうではなかったようだ。
 「子供のころから歌うのが大好きだったけど、すごくシャイだったから人前で歌いたいと は思わなくて、だから歌手になろうと思ったきっかけは…なんだろう、周りの人たちから やってみたらどうかと説得されたというか、分け合うべきだと言われて。だって、何事においても分け合うことが大事よね。私自身歌うことが大好きだったということと、周りにいい人たちがいてくれて、ステージで歌って、分かち合うことをやってみようと思わせてくれたから。でも子供のころは自分がアーティストになるなんて思いもしなかったわ。」

 "歌を分かち合う"その言葉が、音楽の先進国とも言われるここスウェーデンで、アーティストの一歩を踏み出すことになったのだ。

大舞台でこそ型にはまらない創造性

 ユーロビジョンは、大会の模様が全欧州に生中継され平均視聴率が37%、視聴者数は1億人以上とも言われるヨーロッパ中が最注目する音楽コンテスト。その歴史は1956年から始まり、過去優勝者でアバやセリーヌ・ディオンを世界へと輩出した。その長い歴史の中で、彼女はアバと並んで最高得票を獲得したのだ。
  「最高得点が"私とアバ"っていうのかっこよくない?(笑)」 そう言ってお茶目な部分も見せる彼女だが、ユーロビジョンで「ユーフォリア」を披露する彼女の中には、歴史ある大会だからこそ、型破りなパフォーマンスをすることに恐れる気持ちはなかった。しかしそれは"優勝する"という意図とは少し違う思いが彼女の中であったようだ。「自分が優勝できるなんて思わなかったわ。だって、はじめにプロデューサーに言ってしまったの。私は完全に違ったことをやりたい、私はコンペティションが好きじゃないって。実際 好きじゃないし、でもこの場を使って完全に新しいものを提示したかった。それで何をしたい のかと聞かれて、あなたたちが作ったステージや照明は使いたくない、ゼロから作り直したいって言ったのよ。そうやって完全に新しいものを作りだしたから、私は勝てたんだと思う。」 彼女はアーティストとしてのクリエイティブな部分をいかに表現するか、ユーロビジョンはロリーンが自分自身へ向けた挑戦状だったのかもしれない。

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インスピレーションのカギは"日本"

「ユーフォリア」@ ユーロビジョン
▲「ユーフォリア」@ ユーロビジョン

  ロリーンの世界観でインスパイアされているのが、実は日本の文化だという。
 「日本の文化にはインスピレーションになるものがたくさんある。特に古いものにはもっと規律があって、そこが好き。そしてリスペクトがあるでしょ。みんながみんなそうだとは言わな いけど、みんな人間だから(笑)、でも文化として、伝統として、日本の文化や伝統には周りの環境や人々に対するリスペクトがあって、規律がある。そういう行動がインスピレーション を与えてくれるの。」
  その言葉の通り、ユーロビジョンで披露された「ユーフォリア」のパフォーマンスの中で、東洋をイメージする動きやテンポ、彼女がインスパイアされたものを象徴する表現にな っている。ロリーンがイメージする"日本"というものが、私たちにとってはどう映るのか。そ れは日本人の私達にしか感じる事の出来ない何かがあるはずだ。是非そのパフォーマンスを一 度はチェックしていただきたい。

ファースト・アルバムは"ロリーン"を提示すること

 ファースト・アルバムはアーティストにとってやはり特別な思いが込められるアルバムで はないだろうか。アーティストとしての存在感を大いにアピールするタイミングでもある。
 彼女はどうか。 ユーロビジョンで「ユーフォリア」の評価がいかに高かったか、それはほぼ満場一致で得票を受けたことで証明されたのだが、それはおのずとファースト・アルバムへの期待度も上がったに違いない。その期待をアルバム全体で表現するというのは、プレッシャーも大きくのしかかるはずだ。 そんな中でもロリーンは、ファースト・アルバムを制作するにあたり、あえて有名な作家やアーティストをゲストに迎えることを選ばなかった。
 「ファースト・アルバムでは、まず自分自身をきちんと提示する必要があるから。ほかの人と何かをやる前に、そうすることがすごく大事だと思う。だからファーストではゲストを入れないことにしたのよ。それってすごくエゴイスティックなことだけど(笑)」
 それがロリーンの"ファースト"に選んだ一筋の思いだった。 そして完成したアルバム『ヒール』は、ポップスというジャンルだけでは表現しきれない、壮大なスケールとなっていた。
 彼女自身、「すごくダイナミックなアルバムになるわ。ふたつの世界を合わせた感じというか、エレクトロニックの世界と、アコースティック/クラシックの世界がひとつになっている感じ」とコメントしているように、アルバムの中では様々な世界が混在している。

「マイ・ハート・イズ・リフュージング・ミー」リリック・ビデオ
▲「マイ・ハート・イズ・リフュージング・ミー」リリック・ビデオ

 収録曲の「ユーフォリア」を始め、昨年スウェーデンの音楽コンテストに出場した際に披露した「マイ・ハート・イズ・リフュージング・ミー」にも注目してほしい。このコンテストでは優勝を逃すものの、スウェーデン・チャートで9位となったヒット曲だ。この楽曲もEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)とオペラ・シンガーでもある彼女の包 まれる歌声がクロスした時、まさに"ロリーン"を感じる。そして今作は殆どを共作し、自らプロデュースにも参加している為、ロリーンが思う"自分自身を提示する"アルバムになった。
 また、日本ボーナス・トラックとして「ユーフォリア」のシングル、アコースティック ・ギター、アコースティック・ストリングスの3バージョンが収録されているので、こちらも是非聴き比べてほしい。 エキゾチックな歌姫"ロリーン"は今後どのような自分を提示していくのか、その世界観は ∞である。

ロリーン「ヒール」

ヒール

2012/11/21 RELEASE
WPCR-14683 ¥ 2,075(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.イン・マイ・ヘッド
  2. 02.マイ・ハート・イズ・リフュージング・ミー
  3. 03.エヴリタイム
  4. 04.ユーフォリア
  5. 05.クライング・アウト・ユア・ネーム
  6. 06.ドゥ・ウィ・イーヴン・マター
  7. 07.サイドウォーク
  8. 08.ソバー
  9. 09.イフ・シーズ・ザ・ワン
  10. 10.ブレイキング・ロボット
  11. 11.シー・ユー・アゲイン
  12. 12.ヒール (フィーチャリング・ブランクス)
  13. 13.ユーフォリア (シングル・ヴァージョン) (日本盤のみボーナス・トラック)
  14. 14.ユーフォリア (アコースティック・ギター・ヴァージョン) (日本盤のみボーナス・トラック)
  15. 15.ユーフォリア (アコースティック・ストリングス・ヴァージョン) (日本盤のみボーナス・トラック)

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