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冨田勲新制作「イーハトーヴ」交響曲世界初演公演ライブ・レポート
冨田勲と初音ミクのこれまでの概念を吹き飛ばす驚愕の世界
2012.11.23(金・祝) at 【東京オペラシティコンサートホール】|ライブ写真&セットリスト
冨田楽曲の壮大なスケールに圧倒
まずは陳謝。「初音ミク、ごめん!」。俺は初音ミクをはじめとしたヴォーカロイドというものにある程度の認識はあるつもりだったが、今回のオーケストラとの共演を見聴きして、これまでの概念が吹き飛んだ。まず驚愕したのは、その人間っぽさだ。こんなにリアルに繊細に歌うものだとは…。スクリーンに投影された映像でしかない初音ミクが放つリアルな感触は一体何だろう? 終演後の囲み取材でも語られていたように現場は極めてアナログで大変なものだったという。デジタルなのに限りなくアナログな感触、そこに初音ミクの核心があると感じた。
さて、今回の共演劇は演目に少し変更があり、大友直人指揮の日本フィルハーモニー交響楽団がまず演奏したのは、「たそがれ清兵衛」や「武士の一分」をはじめとした冨田勲が担当した山田洋次の近作映画音楽メドレー。内心、「初音ミクはまだですか?」と思ったが、これは軽いジャブ。そして客席の冨田勲を招いて、大友直人と軽妙なトークが始まる。冨田勲は矍鑠としたとしたもので「80歳はまだ70代ですから」発言に客席が沸く。続いて男女混声のコーラス隊がステージ背後に並ぶ。総勢100名余。交響詩、「ジャングル大帝」より「ジャングルの朝」、そしてNHKの大河ドラマだった「勝海舟」のテーマが演奏される。冨田楽曲の壮大なスケールに圧倒されるうちに20分のインターミッション。
そして、ついに世界初演となる「イーハトーヴ」交響曲の演奏が始まった。ステージ上段には、いつの間にか総勢50名余の少年少女コーラス隊が並んでいる。2曲目の「剣舞(けんばい)/星めぐりの歌」でスクリーンに突然、初音ミクが登場。思わず身を乗り出してしまった。ステージ中央上部の小さめのスクリーンに投影された初音ミクの歌声は可憐で繊細。ダンスも華麗だ。「銀河鉄道の夜」ではステージ背後に満天の星。降り注ぐ星の数が半端なく、確かにあの瞬間、俺は別の世界(イーハトーヴ)に連れて行かれた。初音ミクと宮沢賢治、冨田勲、そしてフルオーケストラとのコラボレーションが大成功に終わったことは、終演後いつまでも鳴り止まない拍手が証明していた。アンコールは「リボンの騎士」。サファイア姫を模した帽子をかぶり、歌い踊るミクがキュート! ダブルアンコールは「青い地球は誰のもの」。70年代初頭にNHKで放映されたドキュメンタリーの主題歌だが、児童合唱団が「♪青い地球は誰のもの」と雄大なメロディーで繰り返し歌う。最後にこの曲が歌われた意味に激しく胸を打たれた。いや、凄いもの見せてもらいました。
ライブ写真
セットリスト
冨田勲新制作「イーハトーヴ」交響曲世界初演公演
2012.11.23
- 01. 交響詩ジャングル大帝より「ジャングルの朝」
- 02. 山田洋次監督映画メドレー
(たそがれ清兵衛~隠し剣鬼の爪
~武士の一分~おとうと) - 03. NHK大河ドラマ「勝海舟」テーマ
- 04. 「イーハトーヴ」交響曲
①岩手山の大鷲<種山ヶ原の牧歌>
②剣舞(けんまい)/星めぐりの歌
③注文の多い料理店
④風の叉三郎
⑤銀河鉄道の夜
⑥雨にも負けず
⑦岩手山の大鷲<種山ヶ原の牧歌> - En1. 「リボンの騎士」
- En2. 「青い地球は誰のもの」
冨田勲:イーハトーヴ交響曲
2013/01/23 RELEASE
COGQ-62 ¥ 3,080(税込)
Disc01
- 01.岩手山の大鷲<種山ヶ原の牧歌>
- 02.剣舞/星めぐりの歌
- 03.注文の多い料理店
- 04.風の又三郎
- 05.銀河鉄道の夜
- 06.雨にもまけず
- 07.岩手山の大鷲<種山ヶ原の牧歌>
- 08.リボンの騎士 (Encore)
- 09.青い地球は誰のもの (Encore)
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