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SHAKALABBITS 『SHAKALABBITS』 インタビュー
自分たちが守りたいもののために一度はどのレーベルにも属さない状態に陥ったSHAKALABBITS。しかし彼らはそこで、自分たちのやりたいことだけを純粋につき詰めた結果、凄まじい熱量と爽快さを内包した「もうひとつのファーストアルバム」と言えちゃうぐらいのアルバムを創り上げてみせた。その経緯と想いを、UKI(vo)、TAKE-C(g)、KING(b)、MAH(dr)が熱く語ってくれた。
自分たちが音楽に救われたことに対する恩返し
--昨年の夏の横浜BLITZでのライブを観て以来、ちょっと遅いんですけど、シャカラビッツが持つ熱量のヤバさを知りまして。SHAKALABBITSのライブってちょっと他では感じられないエネルギーが充満してますよね?
MAH:僕らは一生懸命やるだけなんですけどね、そうやって感想を頂けるのはすごく嬉しいです。
--知ってる人も知らない人も手を繋いで大きな輪を組んで、とんでもないデカい声でみんな歌ってるっていう光景をあの日初めて見まして。あれだけの一体感って何をどうしたら生まれるものなんですかね?
UKI:昔から「こうした方が楽しいよ」みたいな、押しつけじゃない提案はいろいろしていて。それが今でも受け継がれてる。あと、ライブはみんな思いやりをもって一緒に作っていくものだと思うんですけど、そういう心掛けがみんなの中にあるんだと思います。みんな応援してくれる気持ちは半端ないから。それが私たちにダイレクトに届くから、毎回感動してますよ。
--あのファンからの熱い愛情って、例えばバンドが10年やってこれた一番の要因だったりするんじゃないですか?
MAH:すごく力になってます。
UKI:原動力ですね。お手紙やメールをくれたりもするんですよ。そこには「シャカラビッツの音楽が私の人生にとって」「僕の人生にとって」っていうのがよく書いてあって、それを読むと、私たちの音楽が彼ら、彼女らの力になってるって気付くわけじゃないですか。それはすごく嬉しいし、嬉しいという言葉だけでは収められないぐらいの喜びがあります。私たちを進めさせてくれる。
MAH:元々この4人は音楽を始めたことによって救われてるんだと思うんです。で、もし自分たちが作る音楽が、今悩んでる子だとか、何かを始めようとしている子たちが殻を破るキッカケになったなら、自分たちが音楽に救われたことに対する恩返しができるなと思っていて。だからそこは一生懸命やりたい。
--変な質問ですけど、あれだけの愛情を感じられるライブは一生やめられないんじゃないですか?
KING:やめられないですね。
MAH:出来る限りやりたいよね。
--故に立ち止まることなくSHAKALABBITSは10年間突っ走ってきたと思うんですけど、このタイミングでのレーベル移籍というのは、バンドにとってどんな理由や事情があったんでしょうか?
UKI:3,4年ぐらい前から前のレーベルと私たちのやりたいことが合わなかったり、それで居心地が悪かったり、まぁ様々な理由で「ここには居られないな」っていうのがあり。でも契約というものがあるので、お互いに話をたくさんして、双方が良いように離れられる形を取って。
MAH:拾ってもらった恩というか、育ててもらった部分もあって。そこは「ありがとう」という想いがあるので、最後にベストアルバムを出して。それでシェイクハンドしてバイバイ。
--そのバイバイする段階で移籍は決まってたんですか?
MAH:決まってない。
TAKE-C:行く先は決まらず。でもサヨナラは決まっていたっていう。今回のアルバムはそういう無所属状態で作ってたんです。
MAH:今思えば無謀ですよね。次決まってないのにバイバイしちゃった。それでも音楽はやりたいようにやりたかったんで。で、なかなか次が決まらずモヤモヤもしましたけど、そのモヤモヤもこのアルバムに繋がってるのかなと思えば、良かったなって。
--もし今の時点でレーベルが決まってなかったらどうしていたと思います?
TAKE-C:もう自分たちでやってましたよ。このアルバムの歌入れが終わった時点で全然決まってなかったんで、「この日までに決まってなかったら自分たちでやろうよ」って言ってましたし。そのアルバムのツアーはすでに決まっていたので、リリースしないわけにはいかないから、じゃあもう全部自分たちでやって、手売りしてもいいし、ラジオ局まわってもいいしって。
MAH:それぞれの役割分担を決め始めてたからね。
UKI:でもそれは昔もやっていたことだし。チラシを撒いたりとか。
MAH:それこそ、ちょっとワクワクしていたところもあった(笑)。
UKI:SHAKALABBITS4人と近々のスタッフ3人の7人で、いろいろ役割分担をして。私たちも搬出やってとか。それを「楽しみだね」なんて、忘れもしないベストアルバムのマスタリングをしていたときに言ってました。輪っかになって、「もういいっしょ!」「すごく楽しそうだね!ワクワクするね!」みたいな感じで。で、そんなことを言ってた数日後にコロムビアさんとの契約の話がまとまり。
MAH:「マジで!?」みたいな。「じゃあ、そうしようか」って(笑)。
KING:それならそれで、そこで全力でやればいいだけだからね。
Interviewer:平賀哲雄
これ出せなかったら、マジでつれぇな
--ちなみにSHAKALABBITSがそんなリスクを負う道を選んでまで守りたかったものって何だったの?
MAH:好きなものを作りたかった。例えば、アルバムをこの曲順でこの分数で入れたいんだと思っても、タイアップ取りたいからシングル切ろうよっていう話になる。それでカップリングも作ってシングルを作るんだけど、結局タイアップが付かない。じゃあ、このカップリングはどうするんだ?と。じゃあ、アルバムに入れるのか、それも違うなっていう。大人の事情だかなんだか知らないけど、自分たちだけで回してたら理想的なものが作れるところを、そういうことで何度も邪魔されてしまう。
UKI:そういうことから自分たちの音楽を守りたかったんです。
--じゃあ、今回のレコード会社と契約する際にも、そこを守れるかどうかの確認はしっかりして?
MAH:もちろん。で、そこは自由にやらせてくれるって言ってくれて。
UKI:曲作りに関してね、自由にやらせてくれるっていうか、そこから生まれてくるモノを信じてるって。
MAH:「もらった音楽で精一杯やるから、精一杯作ってくれ」って言ってくれたんです。そう言ってもらえると、楽だし、やる気になる。
--今の話を聞いてると、移籍第一弾のシングル『Walk Over the Rainbow』があそこまで開放に満ちた詞と曲になっていたのも納得です。
TAKE-C:だからすげぇリアルなんですよ、あの曲は。モヤモヤしてるんだけど、ずっとモヤモヤしてるわけじゃないから。その感じがすごく詰まってる曲ではありますね。
UKI:モヤモヤして落ちていくみたいな性格じゃないから、みんな。「悔しい」とか「苦しい」とか、そういう想いをした分、光を浴びないと気が済まない。だから希望の話が増えるし、開放的な気持ちになれる曲が生まれるんだと思います。
--「戦場で生き延びたバニーカタクス くたびれて笑うよ」とか「まとわりついた足かせを今 蹴り上げて遠くまで飛ばすから」とか、完全にその状況あって出てきてる言葉ですよね?
TAKE-C:身をもって出てきてるフレーズですよね。
--苦しい状況がありはしたけど、いつも本音でやってきたバンドがキャリア10年目にして改めて『Walk Over the Rainbow』みたいなメッセージを打ち出せるっていうのは、素晴らしいことですよね。
TAKE-C:だから結果として良かったんだよね。
MAH:マスター・オブ・パペッツなんじゃねぇかな。誰か上に居るんじゃねぇかな(笑)。って思うぐらい。10年目にして、カナダでのライブで搬入搬出とか全部自分たちでやったことだったり、曲を作るときも複雑なコード進行とか使わないような、自分が昔から好きだったスタイルのものが出てきたり。別にそれを意識的にやろうとしてるわけじゃないのに、なんでかそうなっていってる。スタジオとかでも「懐かしいね」っていう言葉が増えていったりとか。戻ってくんだなって。
--そうして生まれた、今回のアルバム『SHAKALABBITS』。まだ移籍先も決まってない状態のときに作られたわけですが、特にコンセプトみたいなものはなかったの?
MAH:どっちかって言うと、グッドソング集。「良いもの作ろうよ、これが最後の音源になるかもしれないし」っていう気持ちもあったし。自分らが納得すればいいんじゃね?って。俺らしかいないし、判断する人も意見を聞く人もいないし。寄り添ってくれてる3人のスタッフもほとんどメンバーみたいなもんだからね。だからもう「俺らが良いと思えるものを作ればいい」と思って。「UKIも正直に書け」って言って。そういう意味では、さらけ出した感じはあります。
UKI:残しておかなきゃいけないと思ったしね。忘れちゃいけないよね、あそこにあった気持ちは。だから言いたいことは言おうって。自分たちの自己満足ソングを作ろうとは決してしてないんだけど、でもみんなさっき話したような足枷、手枷はあると思うし。で、みんなそれを振り払いたいと思うし。「光が見たい」と思うし。それは人間だったらみんな同じだと思うし、やっぱり前に進みたいんじゃないかなと。だから誰かの背中をドン!じゃなくてグーンと押せるような曲たちになってると思います。なんか引っ掛かると思うんですよね。私自身、聴いてて元気が出るし。
--ちなみにこのアルバムが完成したときはどんな気持ちになりましたか?
UKI:嬉しかったよね~。いっぱい聴いたし、今も聴いてる。
MAH:なんか、半々の気持ちになんなかった?「やることやった」っていう気持ちと「これ出せなかったら、マジでつれぇな」っていう。
KING:そういう気持ちもあったね。
TAKE-C:こんなに良いの出来たんだから、なんか上手いようになんないかなって。
MAH:ちょっと祈ったもんね。
一同:(笑)
MAH:こんなに旨い飯が出来たのに一人で食うのかよ?って。でも結局はみんな集まってくれて、みんなで食べることになったので。本当嬉しかった。
KING:ファンの子が手にしてるのを見て「あ~、届いて良かった」って思いましたね。
Interviewer:平賀哲雄
「集大成」って言ってやろうと思って。
--あと、僕は今回のアルバムに対して、10年間で開拓・構築してきた様々な音楽性を10年前と変わらない情熱で作り上げた、そんな印象を僕は受けているんですけど、自分たちではどう思いますか?
UKI:情熱は10年前以上ですね。SHAKALABBITSのことを10年前より好きだし、熱量は1枚目を出したときより遥かに今回のアルバムの方が大きい。
--そんなアルバムのタイトルを『SHAKALABBITS』にしようと思ったのは?
UKI:今話してきたことを総合的に見たら、これしか相応しくないと思ったんですよね。もう1回ファーストアルバムを作ったような気持ちでいるので。
TAKE-C:タイミング的にもアルバムの内容的にも「今付けなかったらいつ付けんだ!?」って思うぐらい、これしかないと思いましたね。
MAH:今までずっと否定してきたんですけど、これはもう「集大成」と言ってやろうと。
UKI:あんまり好きな言葉じゃなかったんだよね、集大成って。だからベストアルバムを出したときに「集大成」って言われたんですけど、速攻で否定しました。全然集大成なんかじゃないと思ってたので。
MAH:アルバム出す度に「集大成ですか?」って聞かれてましたからね。それこそ1枚目から(笑)。それで毎回「いやいやいや」ってなってたんですけど、今回は「集大成」って言ってやろうと思って。もうやりたいことはやったので。
--だから、これはファンが喜ぶアルバムだと思いました。自分が大好きなバンドが10年目にして自信を持ってこのメッセージ、音楽を届けてくれるのは絶対嬉しいですからね。それこそ「信じてきて良かった」的な喜びがあると思います。
MAH:お!やったね。
UKI:今までどう思われるかとか気にならなかったんだけど、このアルバムはどう感じてもらえるのか気になる。気に入ってもらえたらいいなって思います。
TAKE-C:だから今までの中で一番アルバムのツアーが楽しみなんですよ。「この曲たちをやったらどうなるんだ!?」っていうのが、すっごい楽しみ。
UKI:ボロボロに泣いたりしてね。絶対に泣いちゃうと思う。
MAH:予想では、これから長く付き合っていく曲ばっかりじゃないかなって。
UKI:そんな気がする。
--また、制作時には意識してなかったと思うんですけど、移籍っていう世に注目されやすいトピックスがある中でこれを出せるっていうのは、今一度SHAKALABBITSの本質や「こんなに面白いバンドになってる」っていうのをアピールできる絶好のチャンスなのかなって。
KING:だったら良いね。
TAKE-C:「SHAKALABBITSってあんまり聴いたことなかったんだよね」みたいな人にも聴いてほしい。
UKI:あと『ROLLIE』とか『Pivot』とか『MONSTER TREE』あたりで止まってる人っていっぱいいると思うんですけど、でもそれ以降も自分たちで結構「愉快だ!」って思う曲たちを入れてきてるから、今回のアルバムを聴いて過去の作品に戻ってもらえたら最高ですね。なんか、とにかく触れてほしい。本当にこのアルバムは自分たちがすごく気に入ってるから、オススメしたい!
--なんで、個人的には、ファンと共にこのアルバムでSHAKALABBITSの魅力っていうのをね、更に多くの人に知ってもらって「良いだろ?」ってニヤついてもらいたいですね。
一同:(笑)
--で、俺たちは間違ってなかったと泣いてもらいたいです(笑)。
TAKE-C:良いストーリーだ(笑)。
--故にこのアルバムを引っ提げたツアーが楽しみなんですけど、11月から始まる【SHAKALABBITS "Riddle Glide Soundsystem" 2008-2009】はどんなツアーにしたいと思ってますか?
UKI:ツアーをやると各地の“らしさ”みたいなものが見えてくるんですよ。好みとか。ぐるぐる廻ってると、この土地の人はこんな曲が好きとか、なんとくなく分かるようになって。なので、今回はその各地の味を味わいたい。で、もっともっと知りたい。みんなよく叫んでるじゃん?食べ物の名前とか、デートスポットの名所とか。
KING:街自慢コンテストみたいな(笑)。
UKI:そうそう(笑)。聞いても分からない名前がいっぱい飛び交ってるから、そういうのももっともっと知りたい。
MAH:あと、バンドならではのライブがしたい。曲が短くなっちゃうかもしれないし、長くなっちゃうかもしれないしっていう、その場で実際に演奏するっていうことのエキサイティングさを楽しみたい。それと、自分たちは昔から曲のことを子供って言ってるんですけど、今回のアルバムの子供たちがお兄ちゃんお姉ちゃんと共演する際の混ざり具合も楽しみたい。それをみんな気に入ってくれたらいいなと思う。人懐っこい子供たちだから(笑)。
Interviewer:平賀哲雄
シャカラビッツ
2008/10/22 RELEASE
COZA-327/8 ¥ 3,300(税込)
Disc01
- 01.sheep glide carnival
- 02.Walk Over the Rainbow
- 03.クランベリーハウス
- 04.Synchrotron Rec Machine
- 05.時空マスター
- 06.モンゴルフィエの手紙
- 07.グルーチョマルクス公園
- 08.Circadian Bird
- 09.JAILHOUSE inn
- 10.COLONY DINNER
- 11.The Pitchfork Diaries
- 12.ハブランサス
- 13.My Planet
- 14.Tweak
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