シドニー・オペラハウスでのライブ・デビュー

▲Efterklang & Sydney Symphony / 『The Ghost』
??アルバムのライブ・デビューは、シドニー・オペラハウスで行われましたよね。あのコンサートは、どのように実現したのですか?
ラスマス:素晴らしい経験だった。まさに感無量だよ。アルバムを作り始めた当初、期限は決めずに、出来上がるまで、実験を繰り返して、とことんやろうと決めていたんだ。人生は不思議なもので、その1か月後ぐらいに、確か2011年9月頃かな…シドニー・オペラハウスから連絡があって、うちのオーケストラと何か企画をやらないかと打診を受けた。会場を手掛けた建築家は、デンマーク人のヨーン・ウツソンという人で、僕たちデンマーク人は、あのオペラハウスのことをとても誇りに思っているんだ(笑)。だからオファーをされた時は、本当に信じられなかったよ。2012年の5月には、アルバム作りに忙しいはずだし、とてもじゃないけどライブをするようなメンタリティーではないと考えて、最初は断ろうと思っていたんだ。でもこんな凄いチャンス、そうないと思って最終的には引き受けた。アルバムも完成させて、同時にオーケストラのアレンジも考えないといけないし、無謀だと言うことはわかっていたけどね。2月の時点では、既にどの曲を演奏するかを決めて、アレンジを始めないといけなかった。最終的にアルバムが完成したのは、コンサートが終わった後の5月半ばだよ。面白いのは『ピラミダ』コンサートで演奏されている曲で、アルバムに入ってない曲があって、アルバムの中にもコンサートでは演奏されていない曲が入っているんだ。
--日本公演の前まで行われていたUKツアーでは、再びオーケストラと共演していましたが、今日のショーは、それに比べるとかなり少ない編成ですね。柔軟性があるところもバンドの魅力の一つだと思うのですが、実際に演奏する身としてはどうですか?
ラスマス:かなり混乱するよ(笑)!でもこのバンドをやっていて良かった点でもあるよね。常に変化するラインアップやセッティングに柔軟に対応出来ることは、ミュージシャンとして刺激的で重要なことだ。ライブをすることをルーチン化せず、変化に伴わず自分の役割をちゃんと認識していないといけない。UKツアーで演奏したことは忘れて、今日のショーは全く新しい気持ちで挑むよ。この6人編成では、まだオーストリアで1回演奏したのみだけど、とても楽しかったから個人的に気に入っている。今日はちょっと緊張しているけど(笑)。
??今回は日本での初パフォーマンスなので、観客の期待も高いはずですよ(笑)。
ラスマス:今日はほとんど新曲を演奏するから、みんながそこまでガッカリしないといいな(笑)。『ピラミダ』は、まだ日本では、リリースされていないんだよね?
--来月リリース予定ですよ。
ラスマス:じゃあ新曲ばかり演奏するのは、ちょっと傲慢だけど許してくれるかな。ゴメンね!
??アートワークやヴィジュアル面においては、アルバムごとにその世界観にピッタリな作風が印象的ですが、手掛けている2人組Hvass&Hanibalについて教えてください。
ラスマス:片割れのナンナ・ヴァースは、僕の妻なんだ。彼女に出会ったのは、8年前。エフタークラングを結成して、数年後にリリースした『Under Giant Trees』EPのアートワークを担当してもらったら、凄くいい作品が出来上がったから、その後も彼女達をずっと起用している。彼女は、僕の妻だからもちろん長く一緒に仕事が出来て嬉しい。仮にキャスパーやマッツが違うことをしたくても「ラスマス、君の奥さんはもう使いたくない」って言うのは気が引けるだろうしね(笑)。幸いにも彼女たちが作った作品は、メンバー全員気に入ってくれているから問題ないけどね。僕達が作品にかける情熱と時間を同じように、アートワークの為にかけてくれる。アートワーク以外にも、ライブのプロジェクションやミュージック・ヴィデオなど総合的に手掛けてくれているんだ。
??そう言えば、初期の頃は、よくライブでのプロジェクションを使った演出を行っていましたが、一時期からあまりやっていないですよね。
ラスマス:単に飽きちゃったって言うのもあるし、観客にパフォーマンスに集中してほしかったからね。あの頃のプロジェクションは、音楽にピッタリ合うように緻密に作られていて…。みんなヘッドフォンを付けて映像に合わせて完璧に演奏しないといけなかったから、次第に堅苦しくなってきてね。もっと柔軟に楽しく演奏して、生で演奏する時に生み出されるエネルギーやダイナミズムを感じたかった。今回のアルバムに伴い、再びプロジェクションを使っているけど、以前よりは負担がかからないようになっているね。
??結成から10年以上経ちますが、自分たちのバンドとしてのアイデンティティを確立できたと思いますか?
ラスマス:う?ん、難しい質問だね。
??今回の作品は特にそうですが、一般的な音楽に比べて実験的な要素やあまり人が考えないようなが革新的な部分も多いじゃないですか。
ラスマス:新作をリリースする前やライブ前など、不意に不安になることはある。でも心の奥底から自分たちがやっていることを楽しんでいるし、愛している。それはもちろん始めたばかりの時には、無い気持ちだよね。特に僕たちは、他の国より母国で評価されるまでに、長く時間がかかった。自分たちがやっていることが、ユニークで芯があるものか自信がなかったから、色々悩んだりもした。でも時と共に様々な経験を積んで、徐々にバンドとして自信が持てるようになった。それによって他の人がどう思うと考えなくてよくなったから、作品に集中して、楽しみながら自由に制作出来るようになった。君が言ったように人が考えないような、新しいことをする勇気を与えてくれる。映画を作ったりね。音楽を通じて、他のアートフォームと繋がっていけることは、個人的にとてもやりがいあると感じているんだ。
??そしてメインである音楽にさらに奥深さを与えてくれますしね。
ラスマス:まったくその通りだよ。音楽に限らず、人に聴いてもらったり、観てもらったりするのは難しい。さらに世界中をツアーする為には、自分達の音楽を聴いてくれる人が、ある程度必要だからね。色々なプロジェクトが出来ることを誇りに思っている。それが僕達が他のバンドと違う点でもあるからね。
??では、最後にエフタークラングというバンドのエトスを教えてください。
ラスマス:好奇心を忘れず、音楽の方向性にオープンでいること。常にいい作品を作れるように野心をもつこと、さらにその中でも明るさと遊びの要素を忘れないことかな。あまりうまく答えられなかった(笑)。エトスってもっと短くてダイレクトなものだよね。今度会う時までには、ばっちり答えられるように考えておくね(笑)。
リリース情報
ピラミダ

- 2012/12/05 RELEASE
- [BGJ-11157(CD)]
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- 定価:¥2,100(tax in.)
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