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柴田淳 『僕たちの未来』インタビュー
10周年でまさかの変化を迎えた恋愛観や人生観、3.11以降、歌える曲を見つけられなかったという告白。そして生まれた新作『僕たちの未来』、自身の未来について。今回も隠し事ゼロで語ってくれました。
外界との繋がりがツイッターしかなかったの!
--今年でデビュー10周年。と聞いて、どんな気分ですか?
柴田淳:最初の何年かは右も左も分からないので、そんなのは“プロ”って言えないし。ここ1,2年でようやく自分のペースを掴み出したような感じなので、やっとスタート地点に立ったのかなって。何十年もやっている先輩と比べたらたかが10年ですし、重みを全然感じないんです。「これで粋がってちゃダメだよ」みたいな。ただ“今年こそ売れるんじゃない?”って言われて10年経っちゃった。新人だと思っていたら、いつの間にか新人じゃなくなってるし。
--柴田淳のデビュー当時に存在しなかった人が、今のヒットチャートを賑わしていますからね。その逆も然り。
柴田淳:そうそうそうそう! でもその中で不動の人たちがいる訳じゃないですか。凄いなと思う。
--10年間、ここまで切ないラブソングを歌い続けていくとは思っていました?
柴田淳:よく「時代に流されないね」って言ってもらえるんですけど、流れたくても流れ方を知らないんです。ついて行けない!みたいなところがあって、自分の出来ることしか出来てないから。でもこんなに恋愛方面へ向かうとは思っていなかったかも。自分のことを“失恋の女王”とか書いてある新聞とか見て、そっち系になっていったんだなって。昼ドラとかで使って頂いていた曲がドロドロ系だったんで、それをメインとして受け取られるようになったんでしょうね。
--どの楽曲にも自分の恋愛観、人生観が反映されていたと思うんですけど、いわゆる「あの頃は幸せな恋愛をしていたなぁ」って思える期間はなかったんでしょうか?
柴田淳:この数年はちょっと幸せかも。いわゆる“幸せな恋愛”はしていないんですけど“幸せな片想い”をしているかなって。辛くない。それは大人になったのが一番の理由かな。まだ仕事でもプライベートでも大人になれない部分はあるんですけど。自分の妄想が膨らみ過ぎちゃって「これで嫌われちゃったような気がする」「遊びなんじゃないかな」って決めつけることも多いし。でもそれが今は昔よりマシになってきたかなって。前は恋愛偏差値が本当に低かったし、相手が理想の愛情を返してくれないと不満が出てきたけど、今は「相手がどうであれ、自分が好きならそれでいいじゃん」って思えるようになってきたんですよね。
--なるほど。
柴田淳:片想いは片想いだし、それが成就できていなくても「悲しい」と思わなくて。想っているだけで幸せ。その先は求めていない訳じゃないんですけど、がっついてない。昔は「どうしてもこの人を手に入れたい!」「この恋を絶対に成就させたい!」みたいな必死感があったのに、今は「成就しなくても好きでいるのは自由だし」って思える。相手の想いに自分の想いが足りないくらいなら、自分の想いが大きい方がマシ。これはスタッフが言ってて、目から鱗だったんですよ。よく女性は「愛するより愛される方が幸せ」みたいなことを言うんだけど、それで好きでもない人とお付き合いしてみようと思ったら、痛い目に遭ったことがあって!
--そりゃそうですよ(笑)。
柴田淳:やっぱり恋に落ちてないと。徐々に好きになっていこうと思っても、その途中で何かあったらすぐ終わりなんですよ。だから相手の気持ちがそんなに自分に向いていなくても、やっぱり愛している人と一緒にいる方が幸せ。求めずに「私が好きだから、それでいい」みたいになってきた。大人じゃないっ!?
--恋愛面以外で、柴田淳がこの10年間で「変化したな」と思う部分はどんなところですか?
柴田淳:最初は「自分はこうしたいんだ」という部分を突き詰めるのがシンガーソングライターの仕事だと思っていたし、人の言うことを聞いて作るのは違うと思っていて。その人の感性による作品になってしまうから。でも私の「こうしたい」を理解してくれるように働きかける力と感性を信じてもらう力が必要だった。ただ単にそういう風に言っているだけでは人は付いてこないので、まず私に魅力がないといけなかった。デビュー当時はそれを成立させるのが難しかったんです。音楽に悩むというより人間関係に悩むことばかりが主な仕事になってしまっていました。でも長年やっていくと見ている人は見てくれていて、立ち去らない人は本当にいつもそばにいてくれて、自分が選ぶ立場じゃなかったのが、キャリアを積んでいくことで私の感性に説得力が生まれ、徐々に自分で環境が整えられるようになってきた。
--ファンという存在の感じ方とかはどうですか?
柴田淳:ブログという言葉がない頃から日記を書いていたんですけど、その感想を書く欄は作っていなかったから、ファンの声は自分でインターネットで探すしかなかったんですよ。でもモバゲーやツイッターなど、コミュニケーションする場が広まってきて。それは良い部分もあるんですけど、私なんかはスルーする才能がないから、鎧をつけられない環境では、とても難しいことでした。(笑)。
--(笑)。あのー、柴田さんの場合は……、やりすぎだったんじゃないですかね? 一時期、完全にツイッターが生活の一部になっていましたよね。というか、大部分を占めてました(笑)。
柴田淳:創作のとき、外界との繋がりがツイッターしかなかったの! だからその通りだったと思う。それは全部私の教訓なので「同じことは二度とするもんか」っていう風に思うし、そうじゃないと学びがないから。だから私はオフィシャルのブログだけでいいと思っているんです。こういう時代だから難しいんだけど。
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Interviewer:平賀哲雄
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