Special
ATLANTIC R&B BEST COLLECTION 1000
2012年に創立65周年を迎えた名門アトランティック・レコード。アトコ、コティリオン、スタックス/ヴォルト、アルストンなどの系列レーベルを含む、その膨大なカタログの中から、同レーベルを象徴するリズム&ブルース、ソウルの名盤を中心に、100タイトルを最新リマスター、特別価格¥1,000(税込)で提供する、〈ATLANTIC R&B BEST COLLECTION 1000〉シリーズがワーナーミュージックから発売中だ。国内初CD化作品を多く含み、おなじみの定番から一歩奥に踏み出したい熱心な音楽ファンにもアピールするラインナップとなっている。
1947年に誕生した同レコードは、アメリカの黒人音楽(ブラック・ミュージック)がアメリカ全土や海を越えて親しまれていく中で、中心的役割を果たしたレーベルで、アトランティックの作品に触れずに、20世紀アメリカのポピュラー・ミュージックを語ることは不可能と言える。同年、ビルボードでは、これを"リズム&ブルース"と初めて名付け、黒人音楽が人種の壁を乗り越え、一般性を獲得する一助となった。
このシリーズには、1940年代後半から70年代後半までの、約30年間に生まれた作品が選ばれていて、古いものは60年以上も前で、「古くても良い」というだけでなく、「今もって新鮮」と感じる作品、まさにエヴァーグリーンと呼ばれる作品がずらりと並んでいる。
本特集では、このシリーズからレーベル毎に、なかでも名盤と言われるタイトルを選び、ワーナー制作のパンフレットからコメントを抜粋してご紹介します。アトランティックという世界的音楽遺産に触れるこのチャンス、少しでも多くの音楽ファンの耳目に留まることを願って止みません。
ATLANTIC
第二次世界大戦後、アメリカに数多く登場したインディペンデント・レーベルの中で、最も影響力をもったレーベルのひとつ。アメリカ黒人音楽に夢中だったアーメット・アーティガンが、業界の先輩であり名プロデューサーでもあったハーブ・エイブラムスンとともに1947年にニューヨークで設立。大衆の望むものを敏感にとらえ、50年代に入ると、ルース・ブラウン、レイ・チャールズ、ドリフターズら、流行の最先端を行くリズム&ブルースで次々とヒット・レコードを発表する。1953年にはビルボード誌の記者であったジェリー・ウェクスラーが社に加わり、60年代にはアレサ・フランクリン、ウィルソン・ピケットら、ソウル・ミュージックをリードするアーティストを数多く抱えた。67年にワーナー・グループに売却され、レッド・ツェッペリンとの契約、ローリング・ストーンズの配給を手掛けるなど、より巨大な音楽マーケットの中での活動を進める一方で、原点となる黒人音楽の重要作も発表し続けた。
「モダン・ブルース・ギターの父」が最上のもてなしを受け、アトランティックに残した瀟洒で粋なブルース・アルバム
『T・ボーン・ブルース』/T・ボーン・ウォーカー
1989年作品(オリジナルLP1959年)
ギターがアンプを通して奏でられるようになった1940年代後半に、革新的な奏法と粋な歌声、アクロバティックなパフォーマンスで大スターとなったT・ボーン・ウォーカー。アトランティックがこの最高のブルースマンを見逃すはずがなかった。1955〜57年にかけて、一級のミュージシャンを用意し録音された本作は、T・ボーンのアルバム用セッションでは群を抜いて質が高い。ジャジーで、ダンディで、男も惚れるブルースである。
メンフィス・ソウル・サウンドは彼らが作った!名門スタックスを陰で支えたバンドのデビュー・アルバム
『ラスト・ナイト』/マーキーズ
1961年作品 日本初CD化
「メンフィス・サウンド」の土台を築いたのが、このマーキーズ。R&Bチャート2位を記録した1961年の大ヒット「ラスト・ナイト」を筆頭に、まだソウル・ミュージックが市民権を得る前の、サザン・リズム&ブルース・サウンドのジューシーな旨味が全編でにじみでる。ホーンとオルガン、そしてリズム・セクションによって奏でられる、を揺さぶるビート、これぞメンフィス・サウンドなのだ。
ソウルの巨人が圧倒的な歌唱力で、ロックもソウルもカントリーもフォークもねじふせた意欲的傑作
『ロックン・ソウル』/ソロモン・バーク
1961年作品 日本初CD化
"ロックン・ソウル"を標榜し、名プロデューサー、バート・バーンズの指揮の下で制作された意欲作。女性コーラスが分厚く寄り添うニューヨーク・ディープ・ソウル流傑作バラード「グッバイ・ベイビー」にはじまり、ウディ・ガスリーの曲をアコースティック・ギターを取り入れた伴奏で歌うなど、大胆なチャレンジも圧倒的な声量と歌唱力でねじふせる。「クライ・トゥ・ミー」「イフ・ユー・ニード・ミー」他、初期のヒットも収録。
アレサがカヴァーした「シー・ソー」や「スーキー・スーキー」など、人気のダンス・ナンバーを収録した代表作
『シー・ソー』/ドン・コヴェイ
1966年作品
後にアレサ・フランクリンが取り上げヒットさせた「シー・ソー」、ステッペン・ウルフやジャズ・ギタリストのグラント・グリーンまでカヴァーした「スーキー・スーキー」など、非凡なソングライターであるコヴェイの代表作を収録したセカンド・アルバム。先の2曲を含む、計4曲がメンフィスのスタックス・レコードで制作され、器用ではないがディープな歌い手であるコヴェイをブッカー・T.&MG'sの重厚なバックが支えている。
ファンキーでディープなヘヴィ級ソウルの連続にノックアウト!フェイム・スタジオで制作された最高傑作
『サウンド・オブ・ウィルソン・ピケット』/ウィルソン・ピケット
1961年作品 日本初CD化
大迫力のシャウトはサザン・ソウルの聖地フェイムでも全力で繰り出された。R&Bチャート1位のヘヴィ級ファンキー・ソウル「ファンキー・ブロードウェイ」、チャート6位を記録したセルフ・リメイクの傑作バラード「アイ・ファウンド・ア・ラヴ」、そしてサザン・ソウル最高のバラードとも評される「アイム・ソーリー・アバウト・ザット」。曲を提供し、ギターでも参加したボビー・ウーマックの貢献も忘れられない、歴史的名盤。
「ソウル界のソロモン王」がアメリカ南部のサウンドをバックに、縦横無尽に貫禄の歌声を轟かせる人気盤
『アイ・ウィッシュ・アイ・ニュー』/ソロモン・バーク
1968年作品
アトランティックのソウルを象徴する大シンガー、ソロモン・バークが、アメリカ南部のサウンドとがっぷり四つに組んだ人気盤。R&Bチャートにも上がったタイトル曲は公民権運動を反映した社会派ソングで、ニーナ・シモーンも取り上げた名曲だ。サンプリング・ソースとして人気の「ゲット・アウト・オブ・マイ・ライフ・ウーマン」、一級のサザン・ソウル・バラードに仕上がった「ミート・ミー・イン・チャーチ」など、カヴァーも光る。
軽快なダンス・ナンバーから、しっとり歌い込まれるバラードまで、都会派ポップ・ソウルの隠れた傑作
『ワーキン・オン・ア・グルーヴィー・シング』/バーバラ・ルイス
1968年作品 日本初CD化
弱冠二十歳で放ったR&Bチャート・ナンバーワン・ヒット「ハロー・ストレンジャー」で知られるバーバラ・ルイスが、大人の色気をにじませるシンガーになって発表したアトランティックでの5作目。R&Bチャート9位の「メイク・ミー・ユア・ベイビー」でのしっとりとした歌い口、モータウンを思わせる弾けるダンス・ナンバー「アイル・キープ・ビリーヴィン」でのしなやかな歌声、都会派ポップ・ソウルの忘れられない傑作である。
アメリカン・スタジオへと移り、ボビー・ウーマックが全面参加して作られたサザン・ソウル名盤
『アイム・イン・ラヴ』/ウィルソン・ピケット
1968年作品
メンフィスのアメリカン・スタジオに乗り込み、またしても名盤を生み出したピケット。よき理解者であるボビー・ウーマックが作った、最も美しいサザン・ソウル・バラードに数えられるタイトル曲は、R&Bチャート4位の大ヒットとなった。サム・クック、ボビー・ブランドらのカヴァーも全てピケットの色に染め上げ、スピード感満点に仕上げたロジャー・コリンズの「シーズ・ルッキン・グッド」はチャート7位を記録している。
ヒット曲が次々と! ユーモアあふれる庶民派サザン・ソウル・シンガーの最高傑作とも言われる3作目
『テスティファイン』/クラレンス・カーター
1969年作品 日本初CD化
飛ぶ鳥を落とす勢いとはこのことだ。クラレンス・カーターとフェイム・スタジオの充実ぶりが伝わる3作目は、「スナッチング・イット・バック」「ザ・フィーリング・イズ・ライト」「ドゥーイン・アワ・シング」と、3曲のR&Bチャート・トップ10入りソングを収録した傑作。他にも、人気の間男ソング「バック・ドア・サンタ」など、カーターの代表作に上げられる下世話な大衆派サザン・ソウルの名曲がたっぷりと味わえる。
15歳でR&Bチャート1位のヒット曲を飛ばした天才女性シンガーの成熟したブルース&ジャズ・ライヴ名盤
『バーニン〜ライヴ・アット・フレディ・ジェッツ・パイド・ピアーL.A』/エスター・フィリップス
1970年作品 日本初CD化
R&Bのゴッドファーザー、ジョニー・オーティスに見出され、10代から活躍するシンガー、エスター・フィリップス。本作は、1962年にR&Bチャート1位になった「リリース・ミー」、ビートルズの「アンド・アイ・ラヴ・ヒム」などのヒット曲を交えながら、ジャズやブルースの名曲を歌い上げる傑作ライヴ盤だ。プロデューサー兼サックスで参加したキング・カーティス、ギターのコーネル・デュプリーら、名手たちの演奏にも注目。
ハイトーン・ヴォイスを巧みに操るディープ・ソウル・シンガーが名セッションマンたちと生んだ名盤
『ハワード・テイト』/ハワード・テイト
1972年作品 日本初CD化
目の覚めるハイトーン・ヴォイスで魅了するソウル・シンガー、ハワード・テイトが、名プロデューサー、ジェリー・ラゴヴォイと生み出した知られざるソウル名盤。エリック・ゲイル、リチャード・ティー、ジェリー・ジェモット、バーナード・パーディら凄腕セッションマンによる、ぜい肉を削ぎ落としたシャープでスマートな演奏は、これぞ一流のソウル・グルーヴだと感服すること請け合い。ファンキーでメロウなサウンドに酔う。
モータウンを離れ、フィラデルフィアへ赴き、ヒットを連発したソウル・ヴォーカル・グループの代表作
『マイティ・ラヴ』/スピナーズ
1970年作品 日本初CD化
1970年代前半にR&Bチャートでナンバーワン・ヒットを連発したスピナーズのアトランティック第2弾。彼らにとって4度目の1位となった、軽快なミディアム・テンポの「マイティ・ラヴ」の他、「アイム・カミング・ホーム」が3位、抑揚を利かせ静かな感動を呼ぶバラード「ラヴ・ドント・ラヴ・ノーバディ」が4位と、怒濤の勢いを見せる。リード・シンガー、フィリップ・ウィンの伸びやかな歌とフィリー・サウンドの相性も抜群。
女性の悩ましい声入りエロティック・バラードでR&Bチャート1位を奪取した、フィリー・ソウル名盤
『マイ・ウェイ』/メイジャー・ハリス
1974年作品
R&Bチャート1位を記録した、女性のあえぎ声入りエロティック・バラード「ラヴ・ウォント・レット・ミー・ウェイト」収録のフィリー・ソウル名盤。本作がデビュー・アルバムとなるメイジャー・ハリスは、デルフォニックスに在籍したこともある実力派シンガーだ。プロデューサー、ボビー・イーライの腕が冴えるミディアム・アップ「ラヴィング・ユー・イズ・メロウ」の心地よいテンポ! 最後はあの「マイ・ウェイ」で締める。
怒濤のファンクの嵐! タイトル曲がヒットした、ワシントンDC出身のファンク・バンドのセカンド・アルバム
『ノー・タイム・トゥ・バーン』/ブラック・ヒート
1974年作品 日本初CD化
アルバム冒頭から怒濤のファンクで攻め立てる、ワシントンDC出身のバンド、ブラック・ヒートのセカンド・アルバム。彼ら唯一の全国ヒットで、R&Bチャート46位を記録した「ノー・タイム・トゥ・バーン」、クール&ザ・ギャングのカヴァー「ラヴ・ザ・ライフ・ユー・リヴ」など、緩急織り交ぜたファンクの嵐の中、力のある歌い手ネイモン・ジョーンズがヴォーカルをとるスロー・ナンバー「シングズ・チェンジ」が異彩を放つ。
超豪華凄腕ミュージシャンたちが集い、女流詩人のポエトリー・リーディングをグルーヴィに支えた隠れ名盤
『ザ・ウェイ・アイ・フィール』/ニッキ・ジョヴァンニ
1975年作品 日本初CD化
社会派としても知られる女流詩人であり、活動家でもあるニッキ・ジョヴァンニのポエトリー作品に参加したのは、後にスタッフを結成する凄腕ミュージシャンたちだった。コーネル・デュプリー、リチャード・ティー、ゴードン・エドワーズ、スティーヴ・ガッドに加え、バーナード・パーディ、デイヴィッド・ニューマンらも参加した超豪華ジャズ・ファンク/フュージョン作品として、ファンの間で静かに愛されてきた隠れ名盤である。
VOLT
スタックスの系列レーベルとして1961年に設立。当時ラジオDJは、番組内で同一レーベルの曲を複数かけることを嫌ったため、こうした系列レーベルが作られたとも言われている。オーティス・レディングの作品はこのヴォルトから発表された。アトランティックと取引のあった1961年から68年にかけて発表されたLPは、オーティスの7枚に、バーケイズとマッド・ラッズを加えた9枚、シングル盤は約60枚。ブッカー・T.&MG'sの62年の大ヒット『グリーン・オニオン』は当初ヴォルトから発売されたが、すぐにスタックス・レーベルで全国配給されることになったという話も残す。アトランティックとの契約が終わった後も1974年頃まで、ソウル/ファンクの重要作品を発表し続けた。
「ミスター・ピティフル」を筆頭に、オーティスの独創的で真摯なソウル・シンギングが溢れ出た2作目
『ソウル・バラードを歌う』/オーティス・レディング
1965年作品
独自のソウル表現に磨きをかけ、スタックスのハウス・バンド、ブッカー・T.&MG'sとの息もあった本作は、「ソウル・バラードを歌う」とのタイトル通り、実直で真摯に歌われたスロー・バラードが多くを占める名盤だ。初めてR&Bチャートのトップ10に入り、オーティス生涯の代表作となるリズム・ナンバー「ミスター・ピティフル」など自作曲の他、名曲のカヴァーもオーティスの手中に。
ソウルを代表する存在となったオーティスがさらに深みを増し自信を持って送り出した、渋みの利いた4作目
『ザ・ソウル・アルバム』/オーティス・レディング
1966年作品
ヒット曲はR&Bチャート15位を記録した、ホーン・アレンジがダイナミックに迫る渾身のメンフィス・ソウル・バラード「ジャスト・ワン・モア・デイ」のみだが、揺るぎないソウル表現者としての自信が「ザ・ソウル・アルバム」というタイトルからも伝わる傑作である。テンプテーションズの「イッツ・グロウイング」、サム・クックの「チェイン・ギャング」など、カヴァー曲も完全にオーティスのスタイルで再生してみせた。
代表曲「ファ・ファ・ファ」「トライ・ア・リトル・テンダネス」を含む、オーティス絶頂期を記録した5作目
『ソウル辞典』/オーティス・レディング
1966年作品
こんなにも悲しみと喜びに満ちた「ソウル辞典」を作れるのはオーティスだけ。劇的なアレンジでポップスの古典を自らの代表作にした「トライ・ア・リトル・テンダネス」、誰もが口ずさみたくなる「ファ・ファ・ファ」、泣き崩れんばかりの熱唱バラード「マイ・ラヴァーズ・プレイヤー」、ビートルズ「デイ・トリッパー」のカヴァーや重厚なブルースまで、ブッカー・T.&MG'sらと作り出した最高のメンフィス・ソウルがここに。
メンフィスで結成された、不思議な魅力を発する"脱力系"ヴォーカル・グループのデビュー・アルバム
『イン・アクション』/マッド・ラッズ
1966年作品 日本初CD化
ハイスクールの学生がメンフィスで結成したヴォーカル・グループ、マッド・ラッズのデビュー・アルバム。まだ青臭さも残る歌声を長所に転じ、リード・シンガーのジョン・ゲイリー・ウィリアムスの頼りなげで泣き出しそうな歌が強く印象に残るバラード「アイ・ウォント・サムワン」はR&Bチャート10位まで上がるヒットになった。脱力系とも言えるスタイルは、「ダンス天国」のカヴァーでも変わらず、不思議な魅力を発している。
大ヒット「ソウル・フィンガー」はインスト・ソウル殿堂入り確実!メンフィス・ソウルが輝くデビュー・アルバム
『ソウル・フィンガー』/バーケイズ
1967年作品
オーティス・レディングとともに飛行機事故でメンバーのほとんどを失った悲劇のメンフィス・ソウル・バンド、バーケイズがオリジナル・メンバーで唯一残したアルバム。R&Bチャート3位となったソウル・インストの金字塔「ソウル・フィンガー」を筆頭に、オーティスが自らのバック・バンドに招いたのも納得の、グルーヴィで歌心ある演奏が全編で聴かれる。ハーモニカが吹き荒れる「ナックルヘッド」もスマッシュ・ヒットした
ATCO
アトランティック・レコードの共同設立者であるハーブ・エイブラムスンのために設立された傘下レーベル。しかし、思うようにヒットを飛ばせなかったエイブラムスンは1958年にレーベルを去る。エイブラムスンが去った後もレーベルは存続し、初期にはポップ・シンガー、ボビー・ダーリンやヴォーカル・グループ、コースターズがヒットを飛ばした。57年からLPを発売し、ベン・E.キングやオーティス・レディング、アーサー・コンレイといったリズム&ブルース、ソウルの重要作の他、バッファロー・スプリングフィールド、クリーム、ドクター・ジョンなどロック・アーティストの作品も発表した。80年代前半までレーベルは続いている。
ベン・E.キングの代表曲にしてポップスの永遠の名曲となる「スタンド・バイ・ミー」を収録した初期の傑作
『ドント・プレイ・ザット・ソング』/ベン・E.キング
1962年作品
人気ヴォーカル・グループ、ドリフターズを脱退したベン・E.キングが、ソロ・シンガーとしての地位を決定的にした記念すべきアルバム。80年代に映画の主題歌として採用されリバイバル・ヒットした「スタンド・バイ・ミー」、アレサ・フランクリンがカヴァーしたことでも知られるタイトル曲の2大ヒットに加え、情緒あふれる歌声が涙を誘う「ヤング・ボーイ・ブルース」など、ベン・E.の魅力が詰め込まれたソウル初期の名盤。
唯一無二の個性を放ったブルース&ブギ巨人、ジョン・リー・フッカーの魅力が炸裂する1953年/61年録音集
『ドント・ターン・ミー・フロム・ユア・ドア』/ジョン・リー・フッカー
1992年作品(オリジナルLP1963年)
濃厚すぎるスロー・ブルースと激しくビートを刻むブギの二刀流で圧倒的な存在感を放ったブルースマン、ジョン・リー・フッカー。1950年代前半のジョン・リーにハズレなし、と言われるように、1953年にオハイオ州シンシナティで録音された作品が多くを占める本作は、ジョン・リーの深い闇を思わせる歌声と荒れ狂うギターが堪能できるファン必聴のアルバム。4曲収録された1961年のマイアミ録音も優るとも劣らぬ名演だ。
オーティス・レディングが見出したシンガー、アーサー・コンレイの若きソウルが躍動したデビュー・アルバム
『スウィート・ソウル・ミュージック』/アーサー・コンレイ
1967年作品
タイトル曲は、ソウルのパイオニアとなる名シンガー、サム・クックの作品を下敷きに、当時の人気ソウル・シンガーの名前を織り込んだ、若さ溢れるアップ・テンポのソウル賛歌。1967年に全米2位を記録し、オーティス・レディングの期待通りに"ソウルの新星"としてロケット・スタートを果たした名曲だ。スタックスとフェイム、アメリカ南部に居を構えた2つの名門スタジオのサウンドが楽しめる、サザン・ソウルの名盤である。
憧れのサム・クック、師となるオーティス・レディングの楽曲もとりあげた、若きシンガーの情熱が溢れる2作目
『シェイク、ラトル&ロール』/アーサー・コンレイ
1967年作品 日本初CD化
デビュー・アルバムに続き、オーティス・レディングがプロデュースで名を連ねる、若きサザン・ソウル・シンガー、アーサー・コンレイの充実のセカンド・アルバム。オーティスの「愛しすぎて」、サム・クックの「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」と、歴史的名曲を果敢にカヴァーする姿が清い。オーティスとの共作「アイル・テイク・ザ・ブレイム」は、サザン・ソウルの様式美が見事にはまった、感動的なバラードに仕上がっている。
30歳前半で世を去った、忘れられないディープ・ソウル・シンガーがアトコに残した唯一のアルバム
『ダレル・バンク・イズ・ヒア!』/ダレル・バンクス
1967年作品
男臭く荒々しいシャウトを武器に、1960年代のデトロイト・ソウル最良のバンドをバックにして吹込まれた、ディープ・ソウル名盤。R&Bチャート2位の大ヒットとなった「オープン・ザ・ドア・トゥ・ユア・ハート」は、イギリスのクラブ・カルチャー"ノーザン・ソウル"でも定番化した、デトロイト産ノーザン・ダンサーの永遠の名曲だ。同種のダンス曲「サムバディ(サムウェア)ニーズ・ユー」もスマッシュ・ヒットしている。
自信に溢れた歌声でR&Bチャート5位となった「ファンキー・ストリート」を収録したアトコでの3作目
『ソウル・ディレクションズ』/アーサー・コンレイ
1968年作品
力強さと深みを増した歌声で、サザン・ソウルの王道を行く楽曲に真正面から取り組んだ3作目。録音は名門フェイム・スタジオだ。大ヒットした、文字通り熱くファンキーな「ファンキー・ストリート」、ダン・ペン&スプーナー・オールダム作のスケール大きなバラード「ディス・ラヴ・オブ・マイン」、そして涙なくしては聴けない、師オーティス・レディングへの追悼歌「オーティス・スリープ・オン」。アーサーの充実が伝わる傑作。
喉の手術を経て、新たなソウル表現を獲得したオーティスの姿を、丁寧な編集で浮き上がらせた9作目
『イモータル・オーティス・レディング』/オーティス・レディング
1968年作品
飛行機事故により急逝したオーティスの死後に発表されながら、統一感のある選曲で定評のあるアルバム。多くのカヴァーを生んだファンキー・ダンス曲「ハード・トゥ・ハンドル」、思わず口ずさんでしまう「ハッピー・ソング」や「エイメン」、そして妻ゼルマとの共作で涙を誘うバラード「アイヴ・ガット・ドリームズ・トゥ・リメンバー」など、喉の手術による自らの変化を恐れることなく、新たな時代へ歩を進めるオーティスがいる。
3歳から教会で歌い、11歳でスカウトされた、クイーン・オブ・マイアミ・ソウルのデビュー・アルバム
『マイ・ファースト・タイム・アラウンド』/ベティ・ライト
1968年作品 日本初CD化
デビュー時にはわずか14歳だった、マイアミの生んだソウル女王、ベティ・ライトの記念すべきファースト・アルバム。初ヒットとなったR&Bチャート15位の「ガールズ・キャント・ドゥ・ホワット・ザ・ガイズ・ドゥ」ですでにソウル・プリーチャーとして大人顔負けの説得力をみせる。後のマイアミ・ソウルとは異なる、シンプルなサザン・ソウル・サウンドをバックに、アップからスローまで思う存分歌い上げるベティがいる。
サックスがソウルフルに吹き荒れ、ベースがファンキーに動き回り、スライド・ギターが空高く舞うインスト人気盤
『インスタント・グルーヴ』/キング・カーティス
1969年作品 日本初CD化
キング・カーティスが数多く残したインスト・アルバムの中で、レア・グルーヴ・ファンもロック・ギター・ファンも満足させる1枚となれば、本作しかない。スマッシュ・ヒットしたタイトル曲ではジェリー・ジェモットのベースがファンキーに暴れ回り、ザ・バンドの「ザ・ウェイト」など4曲でデュエイン・オールマンのスライド・ギターが空高く舞う。もちろん主役のキング・カーティスのサックス・ブロウも野太く吹き荒れるのだ。
俺たちオリジナル・ブルース・ブラザーズ!シカゴ・ブルースの若大将2人が挑んだブルースの新境地
『プレイ・ザ・ブルース』/バディ・ガイ&ジュニア・ウェルズ
1972年作品
シカゴを拠点に1950年代から第一線で活躍する2人のブルースマン、ジュニア・ウェルズとバディ・ガイが、エリック・クラプトン、トム・ダウドらの助力を得て生み出したモダン・シカゴ・ブルースの秀作。ハーモニカと歌で濃縮したブルース・フィーリングを絞り出すジュニアに対し、ときに爆発的なギター・フレーズを繰り出しながら歌うバディ。シカゴの名コンビが、新しい舞台で見せたブルースの真髄にしびれる。
全米R&Bチャート1位を記録した、とろけるバラード「サイドショウ」を収録したデビュー・アルバム
『ブルー・マジック』/ブルー・マジック
1974年作品
ファルセットが効果的に響くドリーミーなバラードや、心地よいミディアム・テンポ曲でヒットを飛ばした、フィラデルフィア出身の5人組、ブルー・マジックのデビュー作。名門シグマ・スタジオの職人ミュージシャンたちが全面バックアップし、当時大躍進中のフィラデルフィア・サウンドを象徴する作品に仕上がった。「サイドショウ」の他、「スペル」「ルック・ミー・アップ」「ストップ・トゥ・スタート」もスマッシュ・ヒット。
COTTILION
1968年にアトランティック傘下のレーベルとして設立。翌69年からLPが制作され、第一弾は都会派黒人シンガー、ブルック・べントンだった。レーベル名の"コティリオン"は踊りや舞踏会を意味するが、ダンス・ミュージックに限られているわけではなく、フレディ・キングやオーティス・ラッシュといった、ロック・マーケットにアピールするモダン・ブルースマンや、ゴスペルのシリーズ、さらにはヴェルヴェット・アンダーグラウンド、エマーソン・レイク&パーマーなどの先鋭的なロックまで、幅広いジャンルの音楽を発表している。シングル盤は300枚近く発売され、ソウル・ファンにはオーティス・クレイのものが人気が高い。1985年にレーベルは幕を閉じている。
汗とガッツと絞り出すブルース・ギターで、新時代のファンキー・モダン・ブルースの顔となったフレディの快作
『フレディ・キング・イズ・ア・ブルース・マスター』/フレディ・キング
1969年作品/p>
ファンキー・ブルースの夜明けに輝いたモダン・ブルースの一等星。キング・カーティスのプロデュースのもと、ギターのビリー・バトラー、ベースのジェリー・ジェモットら名うてのミュージシャンとともに作り上げた、ブルース新時代を宣言する快作だ。堂々たるブルース・マスターぶりを見せる入魂のスロー・ブルースで始まり、代表曲にしてブルース・ギターの古典的インスト「ハイダウェイ」も黒々としたファンキーに生まれ変わらせた。
ソウル名曲の独自のカヴァーが楽しめる、名門フェイム・スタジオ制作の忘れられたサザン・ソウル名盤
『スウィート・サザン・ソウル』/ルー・ジョンソン
1969年作品 日本初CD化
名門フェイム・スタジオで制作されながらも、なかば忘れられた存在となっていたサザン・ソウルの秀作。バート・バカラックとも縁深いシンガー、ルー・ジョンソンのデビュー・アルバムである本作は、B.B.キングのブルース「ロック・ミー・ベイビー」をサザン・ソウル流儀で推進力抜群のアップ・テンポに仕上げるなど、独自のカヴァーが楽しめる。スロー・バラードでは、ルーの豊かなバリトン・ヴォイスがさらに輝きをみせる。
デトロイト出身のヴォーカル・グループがメンフィスで制作した、躍動感溢れるヤング・ソウル名盤
『ファースト・ランディング』/ダイナミックス
1969年作品 日本初CD化
ヴォーカル・グループ・ファンには1973年のアルバム『ホワット・ア・シェイム』でよく知られるダイナミックスの、躍動感溢れるメンフィス産デビュー・アルバム。録音はアメリカン・スタジオで行なわれ、アメリカ南部らしい余計な装飾を付けないサウンドをバックに、若さを爆発させた熱い歌声を思う存分ぶつけている。ミディアム・テンポの「アイス・クリーム・ソング」はR&Bチャート17位のスマッシュ・ヒットとなった
不遇の時を経て、ブルースの闇を切り裂くようにフェイム・スタジオで制作された、モダン・ブルース巨人の意欲作
『モーニング・イン・ザ・モーニング』/オーティス・ラッシュ
1969年作品
プロデュースにマイク・ブルームフィールドが名を連ね、デュエイン・オールマンもギターで参加したチャンレジ精神あふれる意欲作。誰よりも深いブルース・フィーリングを歌とギターに落とし込むことができる、不世出のモダン・ブルース巨人が、ブルース・ロックの風を受けながら、自らのスタイルを時代に適応させた。名演を多く残したラッシュの、最高傑作のひとつとされるスロー・ブルース「ギャンブラーズ・ブルース」収録。
ニューヨークの最先端ソウル&ファンク・サウンドでブルース・スタンダードを燃え上がらせたモダン・ブルース傑作
『マイ・フィーリング・フォー・ザ・ブルース』/フレディ・キング
1970年作品
前作『フレディ・キング・イズ・ア・ブルース・マスター』と同じく、キング・カーティスがプロデュース、さらに新進気鋭のダニー・ハサウェイがアレンジに加わり、サイド・ギターには名手コーネル・デュプリーと、モダン・ブルース史上最強布陣で制作された傑作。当時最先端のニューヨーク・ソウル&ファンク・サウンドをバックに、焼けるようなギターと絞り出すヴォーカルで、ブルースの古典と自身の代表作に新たな命を吹込む。
英国で人気のダンス・ナンバーを収録したニューオーリンズ出身のシンガーのデビュー・アルバム
『ラヴ・イズ・ヒア』/タミ・リン
1972年作品 日本初CD化
ローリング・ストーンズのアルバムにバックコーラスで参加した経験もある、ニューオーリンズ出身の女性シンガー、タミ・リンがコティリオンに残したデビュー・アルバム。モノローグから歌へと入る凝った演出でスロー・ナンバーを多く聴かせる前半に対し、後半は、英国のクラブ文化"ノーザン・ソウル"で人気の「アイム・ゴナ・ラン・アウェイ・フロム・ユー」など、アップ・テンポの曲が多く登場し、異なる魅力を楽しめる。
テンダーな歌声が魅力のスピナーズのリード・シンガーが、グループを脱退し発表した初ソロ・アルバム
『スターティング・オール・オーヴァー』/フィリップ・ウィン『
1977年作品 世界初CD化
スピナーズの黄金時代となる1971〜77年にリード・シンガーを務めたフィリップ・ウィンの初ソロ・アルバム。ニューヨークとフィラデルフィアで制作された本作は、R&Bチャート17位のヒットとなった「ハッツ・オフ・トゥ・ママ」、テンダーな歌声が見事にはまったスローの「テイク・ミー・アズ・アイ・アム」など、フィリップの持ち味がしっかりと生かされ、ソロ・シンガーとしての力強い一歩を踏み出した秀作に仕上がった。
STAX
ソウル・ミュージックの一様式を生み出した、アメリカ黒人音楽史における最重要レーベル。1958年に銀行員のジム・スチュアートが起こしたサテライト・レコードを前身とし、ジムの姉エステル・アクストンが経営に加わった後、1961年に二人の名前、「Stewart」と「Axton」から頭の2文字ずつを取って「STAX」を名乗るようになる。ブッカー・T.&MG'sを中心とした、レーベルのハウス・バンドによるサウンドは「メンフィス・サウンド」と呼ばれ、オーティス・レディング、サム&デイヴらの作品を通して、1960年代後半のソウル・ミュージックの普及と発展に大きく寄与した。アトランティックとは1960年から取引があり、1965年に正式に配給契約を結び、68年までその関係は続いた。この期間をスタックスの第一期と呼ぶことがある。その後も、ソウル/ファンクの最重要レーベルとして活動を続けたが、1976年には財政難により、その役割をひとまず終えている。
全米R&Bチャート1位のタイトル曲に象徴されるブルージーで骨太なサウンドに包まれた記念すべきデビュー作
『グリーン・オニオン』/ブッカー・T.&MG's
1962年作品
モータウンと並んで1960年代のソウル・ミュージックのヒット工場であったスタックス・レコード。その土臭く芯の太いサウンドの骨格となったブッカー・T.&MG'sの記念すべきデビュー・アルバムだ。オルガン、ギター、ベース、ドラムスのシンプルな編成で、全曲インストながら歌心満点の演奏を聴かせる。オルガンのリフが印象的なタイトル曲はポップ・チャートでも3位となり、全米に彼らの名とサウンドを轟かせることになった。。
ブッカー・T.のグルーヴィなオルガンと切れ味鋭いスティーヴ・クロッパーのブルージーなギターが冴え渡る初期名演集
『ソウル・ドレッシング』/ブッカー・T.&MG's
1965年作品 日本初CD化
メンフィス・ソウル・サウンドの象徴となったブッカーT.&MG'sのセカンド・アルバムは、1963-65年にかけて発表したシングル作品を集めたもの。ブルース・フィーリングが滴るオリジナル作品が数多く収録され、新しいサウンドを生み出そうとする血気盛んなメンフィスの若者たちの息吹が克明に刻まれている。大ヒットこそ生まなかったが、ファンキーなビートの「ティク・タク・トウ」はスマッシュ・ヒットを記録した。
メンフィス産の重厚なブルースが黒光りする、名シンガー、ジョニー・テイラーのスタックス・デビュー・アルバム
『ウォンテッド・ワン・ソウル・シンガー』/ジョニー・テイラー
1967年作品 日本初CD化
ゴスペル・シンガーとして出発したジョニー・テイラーが、持ち前の密度の濃いブルース・フィーリングを注ぎ込んで生み出したソウル・ブルース・アルバムの大傑作。ずっしりと重いスロー・ブルース「アイ・ガット・トゥ・ラヴ・サムバディズ・ベイビー」「アイ・ハッド・ア・ドリーム」はR&Bチャート上位に食い込んだ。ブッカー・T.&MG'sのメンバーらによる、純正メンフィス・サウンドとの相性もばっちりである。
レア・グルーヴ、ヒップホップ世代からも絶大な支持を得る、クールなヒット曲「ヒップ・ハグ・ハー」を収録した5作目
『ヒップ・ハグ・ハー』/ブッカー・T.&MG's
1967年作品 日本初CD化
「グリーン・オニオン」に次ぐ好成績(R&Bチャート6位)を記録した「ヒップ・ハグ・ハー」は、ヒップホップ・アーティストたちにサンプリングされていることでも有名な、彼らの代表作。オルガン、ギター、ベース、ドラムスという編成は変えず、またブルージーで骨太な魅力は失わずに、より洗練度を増したメンフィス・ソウル・サウンドを聴かせる傑作だ。ラスカルズの「グルーヴィン」のカヴァーも全米R&Bチャート10位を記録。
代表作となった大ヒット「B-A-B-Y」で"メンフィスのソウル・クイーン"の称号を確固たるものにした人気盤
『カーラ』/カーラ・トーマス
1966年作品
「ビー、エー、ビー、ワイ、ベイビィ?」とキャッチーなサビでR&Bチャート3位にまで上った「B-A-B-Y」は、懇願するような歌声がぴったりとはまったカーラの代表作。切ない恋心を描いた歌を得意としながら、ブッカー・T.&MG'sを従えての重量級ブルースも見事に歌い切る。ダスティ・スプリングフィールドのヒット曲「この胸のときめきを」も自分色に染めてみせた。"メンフィスのソウル・クイーン"の称号にふさわしい人気盤。
メンフィス・ソウルのキングとクイーンが出会って生まれた、ソウル男女デュエットの第一級娯楽アルバム
『キング&クイーン』/オーティス・レディング&カーラ・トーマス
1967年作品 日本初CD化
男女の軽妙な掛け合いをコミカルに聞かせ、R&Bチャート2位となったファンキーな人気曲「トランプ」を筆頭に、オーティス・レディングとカーラ・トーマス、2人のメンフィス・ソウル体現者が自ら楽しんで作り上げたことが伝わる娯楽盤。実力者2人が力を合わせれば、ソウル名曲に新たな命が吹込まれる。レーベル・メイトであるエディ・フロイドの代表作「ノック・オン・ウッド」のカヴァーはR&Bチャート8位のヒットとなった。
ALSTON
マイアミの音楽シーンの重要人物、ヘンリー・ストーンとスティーヴ・アレイモによって1968年に設立。レーベル名はふたりの名前「Alaimo」と「Stone」から取られている。同年にアトランティックと配給契約を結び、その関係は74年まで続いた。レーベルの顔となった女性ソウル・シンガー、ベティ・ライトのファースト・アルバムとクラレンス・リードの作品は、"アルストン・レコード・シリーズ"と名付けられアトコ・レーベルから発売された。アトランティックが配給したアルストンのLPは、先のベティ・ライト、クラレンス・リード、そしてビギニング・オブ・ジ・エンドを加えた、4枚と少ないが、いずれもソウル史に輝く人気作だ。アトランティックとの契約が切れた後もマイアミ・ソウルの重要作を発表し続け、1981年頃に活動を停止した。
デトロイト出身のヴォーカル・グループがメンフィスで制作した、躍動感溢れるヤング・ソウル名盤
『ファンキー・ナッソウ』/ビギニング・オブ・ジ・エンド
1971年作品
R&Bチャート7位を記録した「ファンキー・ナッソウ」だけでなく、ギター・カッティングが曲を先導する「カム・ダウン」など、ジェイムズ・ブラウンのファンクにも通じる、汗臭いファンキー・ダンス・ナンバーが次から次へと繰り出される本盤は、レア・グルーヴの人気盤でもある。バハマから登場した彼らの音楽は、同地のカーニバルの名前から"ジャンカヌー・サウンド"と呼ばれた。カリブの音楽とアメリカのファンクの融合だ。
ギター・カッティングが映えるグルーヴィ・ソウルの大傑作 「クリーン・アップ・ウーマン」収録の人気盤
『アイ・ラヴ・ザ・ウェイ・ユー・ラヴ』/ベティ・ライト
1972年作品 日本初CD化
わずか14歳でエンタテインメント界の第一線へと飛び出した"天才シンガー"ベティ・ライトのセカンド・アルバムは、レア・グルーヴでも人気の、マイアミ・ソウルの代表作。軽快なギター・カッティングが心を躍らせる、R&Bチャート2位を記録した「クリーン・アップ・ウーマン」を筆頭に、スマッシュ・ヒットしたタイトル曲など、10代とは思えないブルージーな陰を帯びた歌声が、ファンキー・ナンバーやスロー・バラードを彩る。
19歳にしてこの貫禄! こくのある歌声でヒットを飛ばし続ける、若きマイアミ・ソウル女王の3作目
『ハード・トゥ・ストップ』/ベティ・ライト
1973年作品 日本初CD化
"私は女よ"と歌われる「アイ・アム・ウーマン」が象徴するように、早くも大人の女の色気を醸しだした3作目。前作同様、マイアミ・ソウルの中核を担うミュージシャン、ソングライターたちと作り上げた傑作だ。芯の通ったファンキーなサウンドと、録音時19歳とは思えないベティの、貫禄さえ感じさせるこくのある歌声が見事に融合している。ひねりの利いた歌詞が冴える「ザ・ベイビーシッター」はR&Bチャート6位のヒットとなった。
ギター・カッティングの心地よさ! レア・グルーヴ人気も高いメロウかつファンキーなマイアミ・ソウル名盤
『ランニング・ウォーター』/クラレンス・リード
1973年作品
奇才クラレンス・リードがアルストンから放った通算3作目は、マイアミ・ソウルの中核を担った、同地の最重要人物スティーヴ・アレイモ&ウィリー・クラークがプロデュースを担当した、極上グルーヴ満載の人気盤。ギターとアレンジにはブルージーなプレイも得意とするリトル・ビーヴァーが名を連ね、どこを切っても心地よいギターの響きが流れ出てくる。ソングライターとしても定評のあるリードが、共作を含め全曲を手掛けているのも注目だ。
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