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<インタビュー>沖縄発のZ世代シンガーGrace Aimiが語る、ポジティブな楽曲を通じて同世代に伝えたいこと
アメリカ人の父と日本人の母を持つ、沖縄発の20歳のシンガーGrace Aimi。2006年から弟のGabeとYouTubeにカヴァーを投稿し始め、日本語、英語を問わず自由自在に歌い上げるその表現力豊かなヴォーカルで着実にファンを増やしてきた彼女が、昨年8月にChaki Zuluプロデュースのどこかレトロでモダンなポップ・ナンバー「Eternal Sunshine」で満を辞してソロ・デビューした。今年に入ってからもオープンでいることの大切さを歌った「Open」、「My Eyes」など次々とアップリフティングな楽曲を生み出しており、来月には初のEPがリリース予定となっている。「どれだけ落ち込んでても、聞いたらちょっとだけニヤってできるような曲を書くことが自分の一番の理想形」と話す彼女が悩みがちな同世代に楽曲を通じて伝えたいメッセージとは?
何か感情がたまったりしてる時に、歌詞を書くのが一番落ち着く
ーーまずGraceさんの音楽との出会いについて教えてください。
Grace Aimi:家族が大の音楽好きで、家の中やどこに行っても音楽が流れている環境で育ちました。両親も、祖父母も様々なジャンルを聞いていましたし、静かな時間がなかったとも言えますね(笑)。昔から本当に音楽が好きでした。兄と弟も楽器を弾きますし、母も演奏します。なので、小さい頃から“音楽をやる”という感覚はなくて、自然と音楽の道を進みたいと気づきました。それが普通だったんです。
ーー幼い頃に聞いていた音楽で、特に思い出深いものは?
Grace Aimi:コールドプレイのアルバム『パラシューツ』やジョシュ・グローバンの「You Raise Me Up」を聞いていたのを覚えています。あとバンド系もよく聞いていました。特に印象に残っているのは、コールドプレイやマルーン5の曲。でも小さい頃、一番大好きだったのは「虹の彼方に」です。いつも従兄弟たちが遊びに来た時に、タレント・ショーを催して、家族の前でパフォーマンスをしていたのですが、私は毎回絶対「虹の彼方に」を歌っていました。祖父がオールディーズ好きだったので、その影響で私もそういった音楽が好きでしたね。
ーー当時日本語の曲は聞いていましたか?
Grace Aimi:日本の学校に行くようになってから、日本の曲を聴くようになりました。湘南乃風とか HY とか、普段友達が聞いてる音楽を聞き始めました。あとゴールデンボンバーとか。中でも「女々しくて」は一番のカラオケ・ソングです(笑)。
ーー2016年頃からは、弟のGabeさんと一緒にYouTubeチャンネルでカヴァーを公開しています。
Grace Aimi:友達から平井大さんの音楽を教えてもらって、ウクレレで弾きやすい曲がいっぱいあったので、いきなり弟と「YouTubeやる?」「2人でカヴァー撮っちゃおうか?」という軽いノリで始めました。最初に公開したのは平井大さんの「Slow & Easy」のカヴァーだったんですが、気づいたら結構見てくれている人が増えていて。だんだんと「この曲をやってください」ってリクエストもたくさん来るようになりました。これって本当に続けられるものなんだな、見たい人も結構いるし、という感じでしたね。自分たちもやってて楽しかったですし。YouTubeを何年か続けましたが、ちゃんとやったことがないというか…3か月に一回とか、のんびりとしたYouTubeチャンネルなんです。
▲ [COVER]「Slow and Easy」平井大
ーー基本車の中で歌唱&演奏するスタイルですが、これはリラックスして歌える場所だからですか?
Grace Aimi:お家がうるさいのと、学校から帰る途中の車の中でいいんじゃないって(笑)。車で撮影する時は、ダッシュボードの上に乗せた足で携帯をサポートしながら撮っていたんです。2年目ぐらいで、足でやるのを止めて、靴をおいてそれに立てかけて撮影するようになりました。
ーー撮影の裏側まで教えてもらっちゃいましたが(笑)。これまでに日本、海外を問わず様々なカヴァーを公開していますが、ポスト・マローンのカヴァーの時は、必ず完成度の高いコスプレを披露していますね。
Grace Aimi:あれは1時間ぐらいかかりましたね。みんなでお家で遊んでる時に、映画を見たのかな?ギャングスターの格好をしたんです。タトゥーをつけて、シャツの上のボタンだけして、チョロ(メキシコ系のギャング)みたいな感じで。冗談半分でやったのですが、「ポスト・マローンにちょっと似てるんじゃない?」ってなって、1時間ぐらいかけてポスト・マローン風にちゃんとメイクをしたんです。バスルームから出て来た私の姿を見て、「本物みたいじゃん」ってみんなすごく驚いていましたね。そのあと、ずっとポスト・マローンの音楽を聴きながら踊っていて、「これ、カヴァーをやってもいいんじゃない?」って話になったんです。その際にユニバーサルさんから連絡が来て、ポスト・マローンの話とかをちょっとして。かつらも買って、ちゃんとポスト・マローンみたいにスタイリングして。YouTubeで公開した時は反響がありましたね。
ーー海外の視聴者からも反響が大きかったのでは?
Grace Aimi:面白いって言われましたし、今まで見たコスプレの中で一番似ているっていうコメントもありました。リタ・オラの(ポスト・マローンの)コスプレも見て似てると思いましたが、自分のも結構似てるんじゃないかな。
▲ [COVER]「Circles」ポスト・マローン
ーーKiroroやBEGINなど、沖縄のアーティストのカヴァーも披露していますね。
Grace Aimi:KiroroとBEGINは、小さい時によく聞いていたんです。Kiroroは、昔お姉ちゃんのガラケーに入ってた唯一の曲で、私が日本語を習いたての時に、Kiroroの「Best Friend」を歌うのを、運転するおばあちゃんに聞いてもらっていました。BEGINの曲は、沖縄だったらどこに行っても流れているんです。あのカヴァーは、お姉ちゃんがアメリカから帰って来たお盆の最後の日に、3人で汗をかきながら撮影しました。30回以上撮ったんですが、最後までいくと、いきなりちょっと間違ったりして。沖縄の真夏なので、車の中は暑いけど、音が入るのでクーラーもつけれなくて。あと小2から小6まで、ずっとエイサーをやっていたので、その時にBEGINの曲に合わせて、よく踊っていました。文化の一つだから逆に知らない人がいないって言うか。そういう音楽が、個人的に好きじゃない人でも曲は知ってる。地元でカラオケに行けば、絶対どこかの部屋でBEGINを歌っているんです。東京に遊びに来て、カラオケに行ってBEGINを歌うと、ドア開けて「沖縄の人ですか?」とたまに聞かれることもあります。沖縄の人が一緒に盛り上がれる曲は、やはりBEGINなんですよね。
▲ [COVER]「島人ぬ宝」BEGIN
▲ [COVER]「Best Friend」Kiroro
ーーそんな中、自分で曲を作ることの楽しさを発見したのは?
Grace Aimi:高一の時に、お家でインストゥルメンタルの曲を聞きながら、日記を書いていたんですが、その時頭の中に勝手にメロディーが浮かんできたんです。「これを歌詞にして、歌にできるかな?」と思って、日記の中の言葉を並び替えたり、韻を踏めるように変えたりして。初めて自分で歌った時に「普通の歌みたい」と思いました。「歌を書いたから、聞いてほしい」とお母さんたちにも聞いてもらったら、結構いい反応を見せてくれて。「これ、続けてもいいんじゃない?」って思えたんです。最近リリースした「My Eyes」という曲も、高校の時に書いた曲なんです。何か感情がたまったりしてる時に、歌詞を書くのが一番落ち着く。ドライブしてる時にも勝手にメロディーが出てきたり。なので、高1の時から逆に曲を作らないと、なんか落ち着かなくて。
今の携帯にもボイスメモがたくさん入ってるんですけど、前の携帯のビデオのアルバムを開いたら、ほぼ顎の下を撮影した10秒だけメロディーがある動画ばかりです(笑)。初めて高校の時に、これが自分が待ってた夢だったっていうか、それが現れてくれたと感じました。
ーーその頃、家族以外の前で作った曲を披露する機会などは?
Grace Aimi:なかったですね。Awichが家族の友達なんですが、彼女が遊びに来てる時に、ちょうど歌詞やメロディーを作ったりしていて、その時に初めて歌手になってもいいんじゃない、音楽活動をやってみたら、と勧められて。「自分はそんなレベルじゃないし、自分のために書いてるだけだ」と最初は思っていたんですが、「Chaki (Zulu)さんに送った方がいいよ」とずっとAwichに言われていて。その後AwichがChakiさんに私の曲を送ってくれて、Chakiさんから「一緒にやろう」と連絡が来たんです。お母さんや家族と話していたんですが、音楽を始めた頃から、「これスゴくない、何で気づいたらこんなところにいるんだろう」って具合に、スゴくいい感じできていますね。
ーー曲作りをする際に、楽器を使うことはありますか?
Grace Aimi:たまにウクレレで簡単なコードを弾くことはありますが、基本歌だけですね。いつもメロディを先に考えて、歌詞を作って、Chakiさんにスタジオで聞いてもらって、それに合うビートを作ったり、スタジオに入った時にChakiさんがビートを作って、それを聞いて曲を書いてます。インスピレーションが欲しい時は、YouTubeのタイプ・ビートを探して、だんだん書き進めて、どういう曲にするかまとめたりしています。
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