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「ぎゅっと。」で大ブレイク!女性目線で描くSSW “もさを。”とは?



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なぜ今「ぎゅっと。」がZ世代の心を掴むのか。
コロナ禍に多くの共感を呼んだ
女性目線のシンガーソングライター
もさを。が『Mステ』出演に至るまで。

 女性目線のラブソングを歌うシンガーソングライター、もさを。。詳しいプロフィールは不詳で顔も未公開、謎多き彼にいま熱視線が注がれている。巷では“コロナ禍に突如現れた才能”なんてイメージが強いかもしれないが、見つかるべくして見つかったということを強く断言しておきたい。もさを。は、ふいに現れた彗星なんかじゃない。地球が自転する中で、他の惑星に被って見えていなかった一等星なのだ。

 もともとは野球部に所属し、プロ野球選手を目指していた時期もあったという彼。ケガをきっかけに野球から手を引くことになった少年を奮い立たせたのは、テレビで歌っていた清水翔太だった。中学1年生のころからずっと憧れの背中を追いかけてきた。その影響は、現在のもさを。の趣向にも強く反映されている。好きな音楽を尋ねられ、R&Bやソウルミュージックを掲げるのは清水翔太への敬愛から来ていると彼は話しているのだから。

 高校時代は、自ら設立した軽音楽部でギターボーカルとして活動。RADWIMPSやONE OK ROCKを好み、コピーバンドとしてカバーをすることでキラーチューンの要素を吸収していった。

 もさを。の人生が徐々に動き始めたのは2017年のことだ。カバーを中心にYouTubeへ弾き語りの動画を投稿し始めたのである。さらには、Twitterにも動画を掲載し、生演奏カラオケ・歌ってみた投稿アプリnanaではユーザーとコラボレーション。時にはt-Aceやちゃんみなといったアーティストに見つかり、彼らのSNSで直接紹介されることも。もともとの声の良さと親しみやすい人柄によって、もさを。の音楽は少しずつだが確実にネット上で広がっていった。

 そして、2020年3月、TikTokに投稿した「ぎゅっと。」のワンフレーズが決定打となる。好きな人と一緒にいたい気持ちをストレートに歌ったナンバーは、思うように会いたい人に会えないコロナ禍にピタリと合致。TikTok上ではカップル系やペット系動画のBGMとして多用され、弾き語りや歌ってみたによるカバーも続出し、同曲を使用した動画は3万件を超え、再生数は3億回を突破するメガヒット・ソングとなった。


 ここまで爆発的な広がりを見せたのは、もさを。の巻きこみ力も大きな要因のひとつといえるだろう。自身がカバーやコラボにより音楽を楽しんできた背景があるからなのか、彼はカバーを全面的に肯定・後押ししている。懇切丁寧にオリジナル曲のコード・歌詞を公開していることはもちろん、Instrumental ver.の音源も積極的に配信。耳コピができなければ厳しい弾き語り、誰かがインストゥルメンタル音源を作らねば手を出せない歌ってみたを、たくさんの人にとって手の届くものにしたのだ。

 また、それが公開された際には、自ら積極的に反応を示す。Twitterのリプライや引用RT、YouTubeのコメント欄など、可能な限りオリジナル曲の行方を追いかける。そんなサイクルができあがっているからこそ、「自分も聴いてもらいたい」と前のめりでファンがカバーに参加する。もさを。以外の声を通して、もさを。の曲はより一層広がっていくのだ。


 巻きこみ力でいうならば、徹底した告知と最善を尽くすレスポンスも彼を語るうえで欠かせない要素だ。多くのアーティストは動画が公開されるタイミングだけ告知を打ち、その後は放置してしまうことも少なくないが、もさを。はその点の徹底具合が尋常じゃない。ミュージックビデオの再生回数が大台を更新するごと、プレイリストにピックアップされるごと、ストリーミングのサービスにランクインするごと、Instagramのおすすめ音楽に取り上げられるごとなど、逐一で報告している。なんなら「あと少しでランキングの○○位以内に入る!」というタイミングで宣伝をし、ブーストだってかけていく。


 そして、彼の活動に反応を示しているファンには、しっかりと愛を返していく。時折行われるリプ返や、当たり前のごとく押されている「いいね」は、その表れだ。SNS上でたくさんの人と関わりあい、知名度をあげてきた彼だからこそ、一人ひとりが大切なオーディエンスであることを知っている。一つひとつの反応が、活動の後押しになることを知っている。有名になる前からしていたことを、『ミュージックステーション』に出演するまでになった今だって続けている。楽曲の良さだけでなく心ある対応をしてきたことが、もさを。を躍進させたことはいうまでもないだろう。

 さて、ここからは彼の楽曲を紐解いていきたい。大きな特徴のひとつは、なんといっても覚えやすくキャッチーなメロディーだ。本人は「ありがちなメロディーしか作れない……」と悩んだ日もあったようだが、裏を返せば違和感なく日常にスッと馴染む旋律を生み出せるということ。歌詞を決めて音程を決めて……と繰り返していく制作スタイルにより、伝えたい言葉もしっかりと飛んでくる。また、本人は無意識かもしれないが、各楽曲のテンポも絶妙なのだ。「きらきら」以降にリリースされた5曲は、BPMが76~108とアンダンテ(歩くような速さで)に収まるテンポになっており、人が聴きやすいとされるBPMの60~90に隣接または内包されている。もさを。のもとに「通勤・通学時に聴いています」といった声が届くのも、楽曲がこの“歩くような速さ”で進んでいることも一役買っているのではないだろうか。ちなみに「ぎゅっと。」のBPMは120。どきどき感を匂わせる、恋のテンポだ。



 いよいよ、歌詞に触れていく。もさを。の代名詞といえば、女性目線で綴られる恋のリリック。男性が理想とする女の子を描くのが秋元康、女性のリアルな心情を描くのがつんく♂だとするならば、もさを。が描いているのは“女の子にとって理想的な恋愛”な気がしてならない。彼が描く恋愛は、あまりにも綺麗なのだ。

 好きな人が自分じゃない相手に焦がれていたら、「なんであの子なの?」と嫉妬してもおかしくないだろう。誰かを好きになるのはとてつもなくピュアなことなのに、学歴やビジュアル、将来性などを考え、打算的になってしまうこともあるだろう。恋人がそっと離れていったら静かに悲しむばかりでなく、「言いたいことがあるなら言ってよ!」と怒鳴り散らしたくもなるだろう。しかし、もさを。の紡ぐリリックには、そういった描写が一切出てこない。「じゃあ、リアルじゃないのか?」と訊かれたら、そういうわけではない。

 現実はどうあれ、誰しも「恋愛の前ではこうありたい」という理想の自分を持っているもの。素直で真っ直ぐでかわいらしい、少女マンガのヒロインのような女の子。ちょっとした瞬間にときめきたいし、叶わない恋に直面しても「いい恋だった」と糧にしたい。もさを。の紡ぐリリックは、まさしく恋愛の前でこうありたいという自分の姿を描いている。だからこそ、若い女性を中心に人気を博しているのだ。

 培ってきた巻きこみ力と女性目線のキャッチーな楽曲が功を奏し、ようやく世間に見つかったもさを。。これからも彼は、思わず自分を重ねたくなる胸キュンな作品を届けてくれることだろう。『ミュージックステーション』の出演を経て、注目度が急上昇すること間違いなし。目標とする日本武道館に向かって躍進する彼が楽しみだ。

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