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オリヴィア・ロドリゴ、17歳の才媛によるデビュー曲「drivers license」の世界的ヒットを紐解く

Text:本家 一成

キャリアの賜物と上昇志向が色濃く出た「意義あるデビュー曲」

 いつの時代も女性アーティストによるトップスターがシーンを牽引してきたが、2020年代はオリヴィア・ロドリゴがその一人として活躍の幅を広げていくかもしれない。

 米カリフォルニア州テメキュラ出身、2003年2月20日生まれの17歳。長く纏ったネオソバージュヘアに、個性を主張し過ぎずも自分らしさをフィーチャーしたファッション、フィリピン系の父親とドイツとアイルランドの血を引く母親の遺伝子を受け継いだ、エキゾチックで端正な顔立ち。ビジュアル面においても十分なスター性を兼ね備えているが、何といっても世界中のリスナーが聴き入った歌声には「歌手を目指すべく生まれた」と言わざるを得ない説得力がある。10代の女の子では解釈が難しいであろう、陶酔感や叙情性といった表現も難無くこなすボーカルは、どの世代にも通用する魅力に溢れている。

 オリヴィアのような「歌姫」タイプは、優秀なスタッフ、プレーンたちによる戦略と、最初のインパクトが重要。彼女のデビュー・シングル「drivers license」には、マライア・キャリーの「ヴィジョン・オブ・ラヴ」(1990年)や、ブリトニー・スピアーズの「ベイビー・ワン・モア・タイム」(1998年)にも匹敵する衝撃と勢いが感じられる。“センセーショナルなデビュー”というキャッチコピーが、これほどハマるのも珍しいほどだ。

 「デビュー曲がいきなり……」と報じられがちなだけに、あたかも短期間でトップに登りつめたかに見えるが、ブレイクに至るまでは長い期間を要して下積みを重ねている。「drivers license」は、彼女のキャリアの賜物と上昇志向が色濃く出た「意義あるデビュー曲」だと、あらためて強調しておこう。



▲ 「drivers license」MV


 オリヴィア・ロドリゴは、わずか6歳の頃から演技や歌のレッスンをスタートさせ、12歳で曲作りをはじめたという。同年には映画『アメリカン・ガール』(2015年)で主演・グレース役を、翌2016年にはディズニー・チャンネル・オリジナルの『やりすぎ配信!ビザードバーク』(2016年)にそれぞれ出演し、知名度を高めていった。

 彼女の名前が世界中に知れ渡った作品が、2019年にディズニープラスで配信された『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』。同番組のニニ役で主演を務め、若者を中心に人気を拡大させた。キュートなルックスはもちろん、番組中に起用された楽曲「All I Want」でシンガーとしての実力もアプローチし、本デビューに繋げた…といっても過言ではない。「All I Want」は、弦とピアノをバックに従えたパワー・バラードで、ピンクのドレスで弾き語るミュージック・ビデオでは、女優魂をみせつけた感情の起伏も見事表現している。MVの再生数はこれまでに4,500万再生を突破し、米レコード協会(RIAA)からゴールド認定(50万ユニット)を獲得した。



▲ 「All I Want」MV


 「All I Want」を経てリリースされた「drivers license」での華々しいスタートも、曲作りや女優業のしっかりとした基盤があったからこそで、同ディズニー・シリーズから輩出されたブリトニー・スピアーズやクリスティーナ・アギレラ、マイリー・サイラス、セレーナ・ゴメスといったスターに続く後釜的ポジションも、それに相応しい要素を兼ね備えているからこそ、スタッフやファンが支持したのだろう。




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