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EP『文化的特異点』リリース~神はサイコロを振らない 柳田周作インタビュー

インタビュー

 2019年に発表した楽曲「夜永唄」が、今年に入ってからTikTokなどSNSを通じて話題となり、同曲のオフィシャル・リリックビデオのYouTube再生回数は1,600万回を突破(11月24日現在)。今や10代のリスナーを中心に高い支持を獲得する存在へと急成長したバンド、神はサイコロを振らないが今年7月のメジャーデビュー後初となるEP『文化的特異点』を11月27日に配信リリースする。今回のインタビューでは、全作詞作曲を手掛けるリーダー・柳田周作に新作について話を聞いたほか、その個性的なバックボーンについて改めて語ってもらった。

柳田周作の音楽のルーツ、バンドで表現したいもの

ーーこれまでいろいろなところで話してきたと思いますが、Billboard JAPAN初登場ということで、最新EP『文化的特異点』の話題に加え、改めて柳田さんの音楽ルーツについても聞かせていただけたらと思います。まず、音楽に対して意識的になったのって、いつ頃だったか覚えていますか?

柳田周作:たぶん5歳のとき、親戚のおじさんと一緒に初めて曲を作ったんですね。そのおじさんは親父の兄貴なんですけど、写譜の仕事をしていまして。もともと親父の家系はおばあちゃんは音楽の先生で、じいちゃんが音大の先生、母側のおばあちゃんも演歌歌手をやっていたりと、みんな何かしら音楽に関係することをしていたんです。だから、物心ついたときには身の回りにピアノやギターがあったし、中学の入学祝いにはおばあちゃんがアコースティックギターを買い与えてくれたりして。でも、そこからですかね、音楽を本格的に始めたのは。

ーー中学に入ってから?

柳田:はい。それこそ「パーフェクト・ルーキーズ」という曲でも歌っているんですけど、当時の親友の家に夏休み、ほぼ毎日遊びに行っていたんです。そうしたら、白いビンテージのストラトキャスターが置いてあって。親友のお父さんの私物だったんですけど、それをこっそり持って、肩に背負ったときにビリビリ!って電撃が走ったんですよ。それまでアコギしか触ったことがなかったので、エレキギターのあの重みにびっくりしちゃって。そこからお年玉をかき集めて、中2のときにエレキギターを自分で買って、親友たちとみんなでコピーバンドを組んだんです。でも、高校に入るとみんなバラバラの学校に行ってしまったので、建築士だったドラムの奴のお父さんが僕たちのために空き家をプライベートスタジオにしてくれて。それからは放課後いつもそこに集まって、部活にも行かずに溜まっていることが高校3年間の青春って感じでした。

ーーなるほど。高校卒業後もバンドは続けたんですか?

柳田:いえ。結局大学でもまたバラバラになってしまって、会う機会も減って、みんなも音楽をやめて、僕だけ大学入学後に弾き語りを始めるんです。それまでバンドではリズムギターだったので、歌ったことはなかったんですけど、大学1年のときに秦 基博さんにめっちゃハマってしまって。そこから弾き語りを始めて、ひとりで路上ライブをするようになって、大阪とか東京を路上ライブでまわったり、配信アプリで夜の8時から翌朝6時ぐらいまでずっと配信をし続けるようになって、それをきっかけに弾き語り仲間も増えていきました。そうこうしているうちに、今のドラムの黒川亮介と「ちょっと一緒にバンドやろうか」という話になって、そこから神はサイコロを振らないが始まったんです。だから今思い返すと、子供の頃からずっと音楽には触れていたんですよね。

ーー言ってしまえば、生まれたときから日常の中に当たり前のものとしてあったわけですものね。そんな中でも、エレキギターに初めて触れたことが意識的になる大きなきっかけだったと。

柳田:あれが一番大きかったのかな。最近のライブでは歌に集中したいので弾く機会は減っていますけど、いまだにレコーディングでもエレキギターを弾くのは好きですし、僕があえて弾くパートもありますから。実は中学の頃も周りに楽器をやっている奴がいなくて、僕がエレキギターを買ったのを筆頭にみんな始めて、バンドを組んだんですよ。だから、当時はギターが4人いるみたいな感じで(笑)。いい青春時代でしたね。

ーー大学時代に弾き語りを始めてからは少しバンドから離れていましたが、なぜ再びバンドをやろうという意識になったんでしょう?

柳田:たぶん中高とバンドをやっていたのが大きかったのかな。弾き語りで歌うのも新鮮で面白かったんですけど、やっぱり寂しいというか物足りなくなっちゃう自分がいるんですよね。ドラムがいてベースがいてギターがいて、っていう土台の上で歌うことに慣れてしまっていたし、僕の音楽ルーツはもともとロックで、SIAM SHADEやFACTのコピーバンドをやっていたので、そこが染み付いていたのかな。実際、生楽器ではない音を取り込んだりするのもカッコいいし、僕らも実験的にやってみてはいるんですけど、やっぱり心のどこかで青春時代をまだ続けたいと思ってしまう自分もいて。今もずっと制作を続けているんですけど、ロックな曲も依然作り続けているし、ロックバンドに対する憧れはいまだに強くありますね。

ーー「パーフェクト・ルーキーズ」を聴かせてもらうと、いまだにそういうマインドなんだろうなということが伝わります。では、神はサイコロを振らないというバンドで活動していくことになったとき、そこで表現したい音楽、歌で伝えたいものについて当初どう考えていましたか?

柳田:当初はフワッとしていたかもしれません。それこそドラムの黒川と神サイを始めたとき、僕はボーカルじゃなくて学生時代から引き続きリズムギターを担当していて。ボーカルを探していたんですけど、なかなかいい人が見つからず、弾き語りをしていたのもあったので「試しに仮歌のまま歌ってみようか?」とギターボーカルを始めてみたんです。それに、今のメンバーになるときも「俺ら、これで食っていこうぜ!」みたいな感じでもまったくなくて、気がついたら本格的にツアーを回ったりしていて、気がついたら周りに協力してくれる人がいてくれて、気がついたらお客さんがある程度入るようになって、みたいな。神サイが始まってからずっとそうなんですけど、自分たちの気持ちに追いついていないことが多いんですよ。そうやってフワッと続けてきたけど、最近はメジャーデビューしたこともあって、ようやく責任感が芽生え始めていて。それこそ自分の歌や詞で誰かを救えるということがちょっとずつわかりだしてからは、音楽を作ることに対する意味とか意義を見いだしつつあります。

ーー昔はそのときやりたい音楽、歌いたい言葉をみんなで作っていたと。

柳田:そうです。もう破茶滅茶でしたよ。初めて作ったミニ・アルバムとか意味がわからないですから(笑)。各々やりたいことをやっているだけで、それを今聴くと面白かったりもするんですけど、今は本当にみんなが同じ方向を向いて、歌と歌詞に重きを置いてくれているので、それに寄り添いつつ、支えつつ、みんなが面白いアプローチをしてくれているみたいな感じですね。



▲神はサイコロを振らない「パーフェクト・ルーキーズ」

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