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<インタビュー>HONNEが新作『ノー・ソング・ウィズアウト・ユー』で切り取った時代のムード



インタビュー

 英ロンドン発のデュオ、HONNE(ホンネ)が新作ミックステープ『ノー・ソング・ウィズアウト・ユー』をリリース。日本でも10月28日に国内盤が発売された。前作『ラヴ・ミー/ラヴ・ミー・ノット』から約2年ぶりのスタジオ作品となる本作は、まだコロナ禍が始まる前、今年1月に米LAのスタジオで制作がスタート。過去作の系譜に連なるチルなエレクトロ・ポップの中に、今作はどこかレトロスペクティブな志向性も滲む。Billboard JAPANでは、アンディとジェイムスの二人にオンライン・インタビューを行い、新作の制作過程、新たなチャレンジ、ステイホーム期間の気づきなど、話を訊いた。

ビートルズにインスパイアされたサウンド

――最新ミックステープ『ノー・ソング・ウィズアウト・ユー』の制作はどのようにスタートしたのですか? 前作『ラヴ・ミー/ラヴ・ミー・ノット』から約2年ぶりのスタジオ作品となりますよね。

アンディ:『ラヴ・ミー/ラヴ・ミー・ノット』のリリース後、約2年ほど精力的にツアーを行って、そろそろ新作を発表するタイミングじゃないかなと思ったんだ。そのあいだに曲は書き続けていたけど、最終的にほとんどボツにした。というのも、これまで作ってきた音楽からあまり変化が感じられなかったから。遠い昔のように感じるけど……ロックダウンが実施される前、今年1月にジェイムスとともにLAに飛んで曲作りを始めて、「no song without you」を含む何曲かを書き上げて、アルバムのサウンドを構築し始めた。そこからこのミックステープの命が始まったんだ。

――お二人が同じ場所でスタジオ作業をしたのは今回のLAが初めてだったそうですが、これまでと比べてどうでしたか?

ジェイムス:そう、僕らは長いこと別々に曲作りを行ってきた。そうするとすぐに反応が得られない。でも、一緒だと一気にアイディアを発展させていくことができる。プロセスが格段と早くなって、お互いのエネルギーからインスパイアされて相乗効果が生まれる。それが特に感じられたから、LAから戻ってきて初めて一緒にスタジオを持つことにしたんだ。イースト・ロンドンにね。可能な時はそこで作業しているけど、ロックダウンの影響でしばらく空けてしまうという状況が続いていたね。

――冒頭でも名前が挙がりましたが、「no song without you」がこの作品の核となった理由は?

アンディ:大体の場合、最も楽で自然にできあがった曲を中心に制作していくんだ。例えば、ルーベン・ジェームズと一緒に書いた「Day 1」は、エネルギーを使うことなく、ごく自然にできあがった曲で、それが『ラヴ・ミー/ラヴ・ミー・ノット』の青写真になった。その前の『ウォーム・オン・ア・コールド・ナイト』のタイトル・トラックに関しても、スムーズに作業が進んだからアルバムの青写真になった。「no song without you」にも同じことが言える。難なく伸び伸びと取り組めて、すごくいい日だったのを覚えているよ。

ジェイムス:サウンド面においても、アルバムの基盤になるようなものを選んでいるんだ。この曲は、これまで僕たちが書いてきたものとはやや異なっていて、昔ながらのソング・ライティングやハーモニーが感じられる。アコースティック・ギターもレトロな感じだよね。ユニークなヴァイブを持っていて、世界観を作り上げることができる要素があると感じたんだ。



HONNE - no song without you


――そういったアコースティックなサウンドに取り組みたいと、かねてから思っていたのですか?

アンディ:少し前から、ビートルズにインスパイアされたサウンドを試したいとは思っていたんだ。そこまでサイケデリックではないけど、リバーブやディレイからサイケっぽい効果が感じられるもの。今回このミックステープを通じて、そういったサウンドを徐々に取り込むことができたという手応えはあったね。『ラヴ・ミー/ラヴ・ミー・ノット』は、『ウォーム・オン・ア・コールド・ナイト』に比べるとエネルギッシュな作品だったけど、このミックステープはその中間で、もう少しチルだよね。リリースしたのがステイホーム時期だったから、そういったムードも反映されているんだ。

――今作でも恋愛関係や人間関係を主に取り上げていますが、これらのトピックに惹かれる理由を聞かせてください。

アンディ:自分たちが置かれている状況が大きいかな。僕は恋人と長らく交際して、現在は妻となったけど……今、ちょうど上で仕事をしているから、聞こえているかな(笑)? 積み重ねてきた経験がたくさんあって、トピックとして引き出しが多いと思う。だから、曲の大半が恋愛や人間関係のポジティブな部分に焦点を当てたものなんだ。HONNEの音楽は、昔からポジティブさを大切にしていて、それが根源にあるんだ。

――それを軸としつつも、「s o c i a l d i s t a n c i n g」や「iloveyoumorethanicansay」など、今回はコロナ禍ならではのひねりの効いてリリックも聴きどころですね。

アンディ:そう「by my side」のリリックも「僕が希望を必要としていた時、君はどこにいたんだ?」となっていて、何かがおかしい、悪い方へ向かっているのではと思わせるけど、最後は「君は僕のそばにいてくれた」で締めくくられていて、ひねりが効いている。ストレートな詞ではなく、紆余曲折を加えることで、リスナーを考えさせているんだ。

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ホンネ「ノー・ソング・ウィズアウト・ユー」

ノー・ソング・ウィズアウト・ユー

2020/10/28 RELEASE
WPCR-18356 ¥ 2,178(税込)

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Disc01
  1. 01.ディア・P
  2. 02.ノー・ソング・ウィズアウト・ユー
  3. 03.フリー・ラブ
  4. 04.アイラブユーモアザンアイキャンセイ
  5. 05.バイ・マイ・サイド
  6. 06.ラ・ラ・ラ・ザッツ・ハウ・イット・ゴーズ
  7. 07.ワン・ウェイ・トゥ・トーキョー
  8. 08.キャント・ベアー・トゥ・ビー・ウィズアウト・ユー
  9. 09.ラビング・ユー・イズ・ソー・イージー
  10. 10.ソ ー シ ャ ル デ ィ ス タ ン シ ン グ
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