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<コラム>マカロニえんぴつがメジャーデビュー、これまでのチャート変遷&新作EPの魅力に迫る
“全年齢対象ポップスロックバンド”マカロニえんぴつが、11月4日リリースのEP『愛を知らずに魔法は使えない』でトイズファクトリーよりメジャーデビューした。しかし、2012年春に神奈川県で結成されたマカロニえんぴつが、これまでも様々な話題曲をリリースしてきたことをご存知の方は多いだろう。そこで本コラムでは、『愛を知らずに魔法は使えない』の魅力に迫る前に、まずこれまでのマカロニえんぴつの楽曲からいくつか選び、それらのBillboardのチャートでの変遷を見ていくことで、メジャーデビュー前の彼らの話題性を見ていくことにしよう。
マカロニえんぴつのこれまでをチャートで振り返る
ここで、Billboardのチャートについて少し説明しておこう。Billboardは「JAPAN HOT 100」という総合ソング・チャートを毎週水曜日に発表している。この総合ソング・チャートは、CDセールス・ダウンロード・ストリーミング・ラジオエアプレイ・ルックアップ(PCへのCD読み取り数)・Twitterでの投稿数・動画再生・カラオケの8つの指標のポイントを合算して生成されているものだ。CDセールスやダウンロードといった楽曲の購入(所有)に関する指標だけでなく、ストリーミングやラジオ、動画再生などといった楽曲への接触に関する指標も取り入れることで、今の日本で何が売れているのかではなく、何がヒットしているのかが分かるチャートとなっている。
それでは、マカロニえんぴつのこれまでの楽曲の中から2曲を、総合ソング・チャートを見ていくことにしよう。ただし今回は、8指標すべてのポイントと合算した総合ポイントすべてをグラフ化すると煩雑になるため、最もポイントを獲得しているストリーミング指標のポイントをグラフ化したものを見ていくことにする。また、ポイント数は公表していないため、数値は伏せている。
まずは1曲目として、「ブルーベリー・ナイツ」を見てみよう。
▲マカロニえんぴつ「ブルーベリー・ナイツ」
2019年2月13日にリリースしたミニアルバム『LiKE』に収録されている表題曲「ブルーベリー・ナイツ」は、サビの「冷めないで 消えないで そう願ったって遅いのに」がライブでも感傷的に響く人気楽曲だ。そのストリーミング指標のポイント変遷をグラフ1で示してみた。
グラフ1:「ブルーベリー・ナイツ」のストリーミング・ポイント変遷
グラフ1を見ると、リリースした直後はポイントを獲得していないことが分かるが(日本でのBillboardのチャートは各指標上位300位まででポイントを足切りしている)、リリースからおよそ1年たった2020年の1月20日付チャート(集計期間:1月6日~1月12日)からポイントを獲得。この期間中の出来事としては、全国ツアー【マカロックツアーvol.8 ~オールシーズン年中無休でステイ・ウィズ・ユー篇~】のファイナル公演を1月12日にマイナビ赤坂BLITZで行ったことが挙げられる。
その後も、アルバム『hope』をリリースした2020年4月1日に大きなピークを作った後、少しポイントを落としたものの、6月ごろから再度ポイントを伸ばし続け、その傾向は今でも続いていることが分かる。このことから、新規ファンをどんどん獲得していることが見受けられるだろう。
では、2曲目として、「ブルーベリー・ナイツ」よりもポイントを獲得している「恋人ごっこ」に話題を移そう。
▲マカロニえんぴつ「恋人ごっこ」
「恋人ごっこ」は前述のアルバム『hope』に収録されている楽曲で、2020年2月7日に先行配信された。先ほどの【マカロックツアーvol.8 ~オールシーズン年中無休でステイ・ウィズ・ユー篇~】ファイナル公演のアンコールでも披露され、リリース前から話題となっていた楽曲である。そんな「恋人ごっこ」のストリーミング指標のポイント変遷はグラフ2のようになった。
グラフ2:「恋人ごっこ」のストリーミング・ポイント変遷
グラフ2を見ると、リリース直後はポイントを伸ばしたが、その後はポイントを3月ごろまで落としている。しかし、アルバム『hope』をリリースした後は着実にポイントを伸ばしているという、「ブルーベリー・ナイツ」と似たような変遷をたどっていることが分かるだろう。
順位データで見ても、4月27日付から現在まで、ストリーミング・ソング・チャートでは100位圏内にチャートイン。直近4週だと、70位前後を推移している。ここで補足しておきたいのは、70位と聞くと順位が低く感じられるかもしれないが、毎週数多くの新曲がリリースされ、日本に楽曲があまた存在する中で、ストリーミング・ソング・チャートで100位圏内をキープし続けることは簡単なことではないということだ。先ほど「ブルーベリー・ナイツ」のところでは、新規ファンの獲得について述べたが、毎週マカロニえんぴつの楽曲を日常のように聴いているコアファンの存在も、安定したチャート変遷をたどるには重要なことであり、マカロニえんぴつは実際にそうなっていることが見受けられるだろう。
ここまで、マカロニえんぴつの楽曲の中でも特に人気のある2曲「ブルーベリー・ナイツ」と「恋人ごっこ」のストリーミング・チャート変遷を見てきた。一過性の人気ではなく、徐々にヒットしていっていることが分かるチャート変遷だったと言えるだろう。そして、このタイミングでトイズファクトリーからメジャーデビュー。メジャー1st EP『愛を知らずに魔法は使えない』を11月4日にリリースした。次項からいよいよその魅力を、音楽コンシェルジュとして活動するふくりゅう氏に深堀してもらうことにする。
リリース情報
アルバム『愛を知らずに魔法は使えない』
- 2020/3/4 RELEASE
- <初回限定盤(CD+DVD)>
- TFCC-86727 2,727円(tax out)
- <通常盤(CD)>
- TFCC-86728 1,636円(tax out)
- [DVD]
- 【マカロックONLINEワンマン~豊洲から愛を込めて~】
- 特別LIVE映像を2曲追加収録
- メンバーによる副音声付き
関連リンク
Text(第1頁):太田明宏(ビルボード)
Text(第2頁):ふくりゅう
マカロニえんぴつの表現する“生きる本質”
4人組バンド、マカロニえんぴつが11月4日、メジャー1st E.P.『愛を知らずに魔法は使えない』をリリースした。マカロニえんぴつとは、インディーズ時代に人気となった軽やかなるピアノポップ「レモンパイ」や、前ページでストリーミング・チャートのポイントを振り返った、極上のメロディーが染み渡る「ブルーベリー・ナイツ」、胸キュンなメロディーが郷愁を誘う「恋人ごっこ」など、一度聴いたら耳から離れない甘いフレーズが魅力的でメロディアスな楽曲のヒットによって、ネクストブレイク筆頭としてJ-POPシーン最前線での活躍が期待される逸材だ。
▲マカロニえんぴつ「レモンパイ」
メジャーデビュー作となる最新E.P.『愛を知らずに魔法は使えない』で注目したいのが、疾走するビートが感情を刺激するキラーチューン「生きるをする」の存在。今シーズンのヒットアニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』書き下ろしオープニング主題歌に起用され話題のナンバーだ。本作は、90年代にも放送されたことのある人気アニメのリプロダクションであるがゆえに、親子二世代の入り口を得た事に注目をしたい。さらに先日、音楽テレビ番組『ミュージックステーション』で披露された、同アニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』エンディング主題歌「mother」もE.P.ラスト6曲目に収録されている。
▲マカロニえんぴつ「生きるをする」
「生きるをする」は、イントロから歌始まりのエモーショナルなロックチューンであり、疾走するビートに絡み合うシンセサウンドやギターなど、遊び心溢れるバンドアンサンブル、一聴して耳に残る強烈なインパクトを誇るサビフレーズによって一気に2020年を代表するナンバーへと躍りでた。本作で注目したいのが2分24秒からまったく違う曲へと切り替わったかのように錯覚させる楽曲構成だ。キャッチーかつ歌えるメロディーを大切にしながらも、ここぞとばかりに時間芸術である音楽の楽しさを追求する姿勢が味わえる一節だ。
とはいえ、マカロニえんぴつらしさを濃厚に味わえる楽曲といえば「mother」の方かもしれない。イントロから没入感高いギターフレーズによって、ライブハウス出身バンドである出自への誇りを強く感じた。コーラスワークの多用からUKロックの影響を感じられ、途中、ビートチューンへギアをチェンジする展開が新鮮だ。冒頭の歌詞の一節“優しさは優しい人が使える魔法 じゃあ僕はただの人でいるしかないの?”がグッとくる。
▲マカロニえんぴつ「mother」
最新E.P.『愛を知らずに魔法は使えない』には、リードチューンといえる2曲以外にもユニークなナンバーが収録されている。2曲目「ノンシュガー」には、一夏の恋を“シュガー”にたとえながらも、一筋縄ではいかない胸アツなディスコビートで駆け巡る。3曲目「溶けない」は、セブンティーンアイスWeb CMタイアップソングに起用。柔らかいアコースティックなイントロダクションから、エモーショナルなギターロックへとシフトする哲学的な歌詞が心に響くせつなポップだ。4曲目「カーペット夜想曲」ではマカロニえんぴつならではの変態性の真骨頂が楽しめる。サウンドの質感、言葉遊びを多用するサイケデリックなぶっ飛び具合。しかしながらメロディアスなサビパートで感情の行き所をきっちり回収する見事なポップ展開。何度も、その世界観に触れたくなる中毒性高いナンバーだ。5曲目「ルート16」では、インパクトあるピアノに導かれていく軽やかに刻まれるビート。すっとメロディーへ絡み合う伸びやかなヴォーカリゼーションが気持ちいい。
▲マカロニえんぴつ「溶けない」
J-POPの既成概念を超えていくサウンド展開。それもそのはず、バンドの中心人物でボーカルとギターを担当する“はっとり”の名前の由来が、奥田民生率いるロックバンド、UNICORNの変態的傑作アルバム『服部』の影響下にあることに着目したい。さらに、音楽大学内でバンドが結成されたこともあり、その確かな演奏力は同世代バンドと比較しても、ずば抜けた音楽性の高さに定評を持つのだ。
マカロニえんぴつの名刺となるメジャー1st E.P.『愛を知らずに魔法は使えない』は、バンドの“らしさ”がこれでもかと詰まった1枚だ。アニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』のヒットと呼応するように、オープニング主題歌「生きるをする」人気は日々勢いが増している。2020年は、アニメ『鬼滅の刃』のヒットもありアニメ主題歌へ注目がより高まってきているなか、世界的なストリーミングサービスの浸透によって、日本が誇るポップミュージックへ海外からのアクセス像にも着目したい。
ニューウェーブセンスとパンキッシュかつエモーショナルな日本ならではのパワーポップを生み出した「生きるをする」。コロナ禍によって2020年は思いもよらないカオスな1年となったが、忘れたくない“生きる本質”を歌としてまっすぐに表現するマカロニえんぴつの新境地。「生きるをする」は、1年を振り返る年末へ向けてより注目度が高まっていきそうだ。
リリース情報
アルバム『愛を知らずに魔法は使えない』
- 2020/3/4 RELEASE
- <初回限定盤(CD+DVD)>
- TFCC-86727 2,727円(tax out)
- <通常盤(CD)>
- TFCC-86728 1,636円(tax out)
- [DVD]
- 【マカロックONLINEワンマン~豊洲から愛を込めて~】
- 特別LIVE映像を2曲追加収録
- メンバーによる副音声付き
関連リンク
Text(第1頁):太田明宏(ビルボード)
Text(第2頁):ふくりゅう
愛を知らずに魔法は使えない
2020/11/04 RELEASE
TFCC-86728 ¥ 1,800(税込)
Disc01
- 01.生きるをする
- 02.ノンシュガー
- 03.溶けない
- 04.カーペット夜想曲
- 05.ルート16
- 06.mother
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