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ソロ名義でメジャーデビューの平山カンタロウ アーティストとしての過去・現在・未来

インタビュー

 平山カンタロウが、9年間に渡る“図鑑”としての活動を終え、ソロ名義でメジャーデビュー。デビュー作となる『キミと歯のうた』(8月5日にデジタル配信/12日にCDリリース)のタイトル曲「キミと歯のうた」は、「NHK みんなのうた」で8月~9月にオンエアされて話題となっている。「NHK みんなのうた」のために書き下ろされたという同曲は、温かくほっこりとしたやさしいメロディでありながら、どこか耳に引っかかるサウンドのこだわりも感じさせる楽曲だ。また、カップリングの「ドント・ウォーリー・ビー・ハッピー」ではエッヂの聴いたバンドサウンドに乗せて賑やかな歌声を聴かせる等、幅広い可能性を感じさせている。福岡を拠点に活動している平山に、リモート取材でアーティストとしての過去・現在・未来を語ってもらった。

図鑑って入力して検索してもなかなか出てこなくて(笑)

ーー『キミと歯のうた』でメジャーデビュー、おめでとうございます!

平山カンタロウ:ありがとうございます!

ーー“図鑑”の9年間に及ぶ活動を経た上で、平山カンタロウ名義でメジャーデビューということですが、どんな経緯があったんですか。

平山:図鑑はもともと1人で始めたプロジェクトだったんですけど、途中でサポートメンバーを入れてライブをやるようになって、そのメンバーでバンドになったんです。そこからまた1人に戻ってソロ・プロジェクトとして活動していたんですけど、「みんなのうた」に「キミと歯のうた」を使ってもらうことになって、メジャーデビューというお話をいただいたんです。そこで“図鑑”で出すか“平山カンタロウ”で出すか考えたときに、図鑑ってやっぱりこのネット社会では見つけづらいというか(笑)。

ーー確かにそうですね(笑)。

平山:図鑑って入力して検索してもなかなか出てこなくて(笑)。そういうのも若干あったのと、カンタロウという名前が結構パンチがあって覚えてもらえていたので、平山カンタロウの方でメジャーデビューすることになりました。

ーーミュージシャンとしては結構キャリアがありますよね。本名で改めて世に出るというのは、どんなお気持ちですか。

平山:なんとなく原点に返った感じもしますし、図鑑というバンドのくくりがイメージとしてあるので、そういうものを取っ払って、すごく自由に動けるし音楽も作れるかなと思っています。

ーーその原点についてお聞きしたいのですが、14歳でアコースティック・ギターを手にして、ストリート・ライブからスタートしているんですね。ギターを持って路上で歌うのって、結構勇気がいりませんか?

平山:そうですね。その頃は、“ネオ・アコースティック世代”みたいな感じで、ゆずさんとか19さんとかが中学校でも流行っていて。みんながアコースティック・ギターを弾き出していたんですよ。家はたまたま、親父がギターを持っていて井上陽水さんとか吉田拓郎さんの曲を歌っていたので、すごく取っつきやすかったこともあって、歌もギターもまあそこそこ上手くなっちゃって、自信を持つようになって(笑)。中学校に、歌ったりギターを弾いたりしていて、「すごいな」って憧れていた子がいたんですけど、その子が一緒にやってくれることになって、2人で路上で歌うようになったんです。その頃は、ゆずさんとか19さんとかをカバーして歌っていました。

ーー『キミと歯のうた』収録の2曲を聴くと、温かいけど尖がったところもあるサウンドとかメロディに、洋楽の影響も感じたんですけど、その頃はそういう影響はなかったですか。







平山:洋楽は、車の中で親父がマイケル・ジャクソンを流していたりして、聴いてましたね。あとはいとこがパソコンにビートルズの『青盤』と『赤盤』を入れていたんですよ。それを聴いて衝撃だったのは覚えています。時代と関係なく、新しいものだと思って聴いていた曲が1960年代の音楽だったという衝撃があったんです。高校生になってからは、親父が「曲を作るならなんでも聴け」って言ってきて(笑)。それで毎週のようにCDを借りてきて、レディオヘッドとかを聴いたりしていました。あとは、青春パンク、メロコアが流行っていて僕も聴いていたので、高校の文化祭バンドでGOING STEADYとかHi-STANDARDのコピバンをやっていました。

ーーベースになっている音楽体験は、わりとお父さんからの影響も大きいみたいですね。

平山:結構、協力的だったんですよ。うちのひいおじいちゃんが、琴の先生をやっていて、そういうのもずっと見ていたらしくて。音楽に対して抵抗がなかったというか。MTRとか、多重録音の機材を母親に黙って買ってくれたりしていたので。そういう意味では、親父の手助けはすごくあったと思います。

ーーそのお父さんのすすめで、オーディションを受けたそうですね。最初のファンがお父さんだった感じでしょうか。

平山:ああ~そうかもしれないです(笑)。オリジナル曲は誰にも聴かせずに自分の世界の中だけでやっていたんですけど、親父が勝手に聴いて良いと思ってくれたらしくて、オーディションに出してくれたんです。高校の制服を着させられて、「これで写真を撮れ」って言われて。制服でオーディションに写真を送りました(笑)。

ーーご自分でも、ミュージシャンになりたいという気持ちが芽生えていたんですか。

平山:オーディションで良い結果が出たりして、「俺には人に認めてもらえるものがあるんだ」っていう感じで気持ち良かったですし、それでミュージシャンになりたいって思い始めたんだと思います。

ーーそこから図鑑に至るまでは、どういう流れだったんですか。

平山:大学の軽音サークルに入って、図鑑の前のバンドで初めてライブハウスに出たりして、そこでもオーディションに応募したりして業界の人に目をかけてもらったりして。でも、やっぱり途中でバンドが嫌になってきちゃって(笑)。ちょうどその頃、ネット配信で音楽を人に聴いてもらえる時代になってきたので、「じゃあ1人で音楽をやろう」って始めたプロジェクトが図鑑だったんです。その後、バンドになってまた1人に戻って、今に至ります。

ーーこうしてお話していても、すごく優しそうな感じですけど、図鑑の数年前のニュースとかを見ると、結構尖っていて怖そうなビジュアルをしている時期もありますよね(笑)。

平山:ははははは(笑)。尖がってないと、自分を守れなかったというか(笑)。とくに20代の頃は、心が強いタイプではなかったと思うので。だからなんとなくそんなビジュアルだったんだと思います。

ーー音楽性で言うと、ご自分1人だけでやるのとバンドでやるのとでは全然違いますか。

平山:基本的には、バンドでやってたときも、自分の好きな音楽をやっていたんですけど、どうしてもバンドだとドラムを叩く人、ギターを弾く人、ベースを弾く人って、思い浮かんじゃうので。単純ですけど、誰か1人が手持ち無沙汰になるのが嫌なんですよね(笑)。やっぱりみんなで音を出してナンボだと思うので。そういう意味では、ドラムを打ち込みにするとか、ギターを入れないとかっていう曲作りをする上では制約があったかなという気がします。1人だと、ギター1本でもいいし、自分のコーラスだけで作ってもいいし、打ち込みでもいいし。音楽的な自由度が違うというのはありますね。

ーーそういう意味で言うと、『キミと歯のうた』にはアコースティックな「キミと歯のうた」とバンドサウンドの「ドント・ウォーリー・ビー・ハッピー」という、2つのタイプの平山さんが両方入っていますよね。

平山:そうですね、はい。

ーーそれは、メジャーデビューに際して意識的にそうしたんですか?

平山:「キミと歯のうた」は、「NHK みんなのうた」にチャレンジするぞっていうことで、僕の中のやりたいこととかよりも、僕の中の「NHK みんなのうた」のイメージに合わせて作った曲なので、こういう優しいアコースティックな曲になっています。「ドント・ウォーリー・ビー・ハッピー」に関しては、カップリングをどういう曲にするかっていうことはちょっと考えたんですけど、今すごく不安な世の中なので、心からハッピーになれる曲を作ろうと思った結果、やっぱり思い切りテンションが上がるような派手な音にした方がいいかなと思って、バンドサウンドになったんです。でも、今までやってこなかったホーンセクションとか、ライブハウスでバンドで演奏する域を越えて、新しい平山カンタロウとしての音になるかなとは思ってやりました。あんまり意識して2曲を全然違うものにしようとかっていうことは、そこまでは考えてなかったですね。

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