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ビッケブランカ『ミラージュ』リリース記念インタビュー 進化し続ける理由とは

インタビュー

 ハイトーン・ヴォイスとポップでヒネリの効いたメロディが、クイーンやエルトン・ジョン、ベン・フォールズ・ファイヴなどを彷彿とさせる日本の若きシンガー・ソングライター、ビッケブランカ。今年3月に通算3枚目のアルバム『Devil』をリリースした彼から、早くもニュー・シングル『ミラージュ』が届けられた。

 本作は、玉木宏主演、高橋一生が出演するサスペンス・ドラマ『竜の道 二つの顔の復讐者』のオープニング・テーマとして書き下ろされたもの。シンセサイザーの幻想的なサウンドをフィーチャーしつつ、反復するフレーズや抜けるようなファルセットなど、随所に「ビッケブランカ節」が散りばめられたスリリングな楽曲だ。とはいえ、デビュー当時からトレードマークだったケレン味たっぷりのアレンジは鳴りを潜め、ヴォーカルのニュアンスをじっくり聴かせるようなアレンジへとシフトするなど新境地も切り開いており、進化し続ける彼の「今」を切り取ったような内容に仕上がっている。

 「タイアップは楽しくて仕方ない」と、屈託のない笑顔で答えてくれたビッケブランカ。その理由はどこにあるのだろうか。また、新型コロナウイルスによる拡大感染が世界を覆う中、彼は何を考えながら日々過ごしていたのか。ざっくばらんに話してもらった。

共感ポイントを見つけ、そこに向かって落とし込んでいく

ーー新曲「ミラージュ」は、ドラマ『竜の道 二つの顔の復讐者』のオープニング・テーマとして書き下ろされたそうですが、ドラマ制作側からは何かリクエストはありました?

ビッケブランカ:「ドラマのオープニングなので、パンチのある曲が欲しい」と。「常に他と交わらない音楽を作っているビッケさんにこそお願いしたい」みたいな、カッコいいオファーをいただきました。それでまずは頂いた台本を読んで、キャラクターに感情移入しつつドラマの世界に入り込んで。割と苦労もなくポポポーンと書き上げましたね。



▲ 「ミラージュ」


ーードラマの印象は?

ビッケブランカ:いわゆる「復讐劇」なんですけど、一筋縄ではいかない。観ているうちに、復讐する側とされる側、どちらが正しくてどちらが間違っているのかが分からなくなってしまう瞬間が時々あるんですよ。主人公の双子の兄弟がものすごく辛い境遇にあるのは間違いないんですけど、特に玉木宏さん演じる矢端竜一が、ちょっと考え方がおかしいというか。復讐するために顔まで変えてしまうなど、一線を超えちゃっている感じがあるんですよね。そういうエクストリームな部分がこのドラマの見どころの一つだし、僕の方もやり過ぎなくらいグイグイいく曲にしなければなと。オープニングの数十秒で「このドラマはただの復讐劇じゃないよ?」ということが伝えられるような、破壊力のある曲にしようと思いましたね。

ーーこれまでにもビッケさんはタイアップ曲を作ってきたと思いますが、作品の世界観とご自身の作家性のバランスみたいなところでの「こだわり」はありますか?

ビッケブランカ:タイアップの時は、タイアップのことだけを考えます。作品のテーマやメッセージを理解して、「なるほどね」と思える共感ポイントを見つけ、そこに向かって落とし込んでいくだけ。「自分らしさとは?」みたいな気持ちにはならないですね。自分のフィルターを通した時点で、勝手に(自分らしさは)乗っかるんですよ。例えば今回だったら「復讐」というテーマに対して、僕なりに思うところはある。

ーー意識しなくても「自分らしさ」は乗っかるし、にじみ出るものでもあると。

ビッケブランカ:それが楽しくて仕方ないんですよね。歌詞が出来上がったときに「ああ、そうか俺は『復讐』に対してこういう思いがあるのか」と気づく。4分の曲の中で、希望の光が見えてくるのは3分ごろからなんだ、それまではずっと闇の中にいるんだなあ、とか(笑)。

ーー外部からテーマが与えられた方が、もともとビッケさんが内包していながら気づかなかった部分を引き出されることもあるのでしょうね。

ビッケブランカ:そうなんです。

ーーちなみに今作での「共感ポイント」はどこでしたか?

ビッケブランカ:最初に話したように、竜一の一線を超えてしまう感じは、自分にも似た部分がある気がしますね。中庸が嫌いで、やるならやり切りたいし、多少過激な方が自分もワクワクする。境界線が普通の人よりもぼやけているのか、そもそもないのか、あるいは境界線の場所がズレているのか、そこはちょっと分からないんですけど。一般的な感覚とのズレという部分で、竜一に対する共感はありました。

ーーそれがこの「ミラージュ」という曲に、どう落とし込まれていったのでしょうか。

ビッケブランカ:例えばサビの反復フレーズ。「うわ、もうこれ以上繰り返さないで」って思われるギリギリまでリフレインするところとか。人が不快に思うスレスレのことを「へへ、楽しい!」と思ってやっちゃう感覚(笑)。「もっとみんなが心地よく、幸せに聴ける曲を作ろうよ」みたいな次元の先に、自分の満足点がある気がします。言葉遊びにしても、やり過ぎなくらい遊んでしまうんですよね。「もうちょいいけるでしょ!」って思っちゃう。そのスタンスが竜一と一緒。タイトルや歌詞も含め、4分通して全てが竜一の生き写しというか。

ーー確かにビッケさんの楽曲は、不快スレスレを責めているものが多いですよね(笑)。その匙加減ってどうしているんですか?

ビッケブランカ:匙加減とかあまり考えてないですね、以前は僕も、「こうやって歌えばみんな覚えてくれるんだろ?」とか、「こういう歌詞と、こういうメロディ展開が好きなんだよね?」みたいな、作り手の邪念みたいなものもありました。でも、それって本当に見苦しいなと最近は思っていて。「人に印象付けるために、このフレーズを繰り返そう」「聞きやすいからこの言葉を選ぼう」みたいな気持ちを一旦全て取っ払って、「どうやったら自分が満足できるのか?」ということだけにフォーカスしながら作っています。

ーーまずは自分自身の快感原則に忠実であろう、と。

ビッケブランカ:もちろん、そうやって世に出た楽曲が、誰かに何かしらの影響を与えるものになってきた経験があるからこそ出来るんですけどね。「自分さえ満足すればそれでいい」という意味では決してなくて、最終的にはみんなにとって、満足いくものになっていたらいいなとは思っています。

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