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AK-69『LIVE : live』インタビュー
アンダーグラウンドから「地方馬がダービーを制す」と殴り込んできたAK-69。思えば、彼はいつでも逆境の中で戦い、あらゆる局面で命懸けの選択をし、その生き様が反映された音楽に心打たれる者たちを増やし続け、ストリートから音楽シーンのメインストリームに君臨するに至った。ゆえに日本のヒップホップ界では異例となる東京ドームを新たな目標に掲げ、新型コロナに誰もが活動制限されている状況下だからこそ『LIVE : live』を生み出し、前人未到の領域へと今踏み出す。
一語一句見逃さずにご覧頂きたい。
東京ドーム「「自分には無理だ」と思ってきた自分を許せなくなった」
--前作『THE ANTHEM』発売タイミングのインタビュー以来1年半ぶりになりますが、あのアルバムから始まったデビュー15周年は自身にとってどんな1年になりましたか?
AK-69 / The Anthem at 日本武道館(THE ANTHEM in BUDOKAN 2019.03.30)
--なぜ東京ドームを目標として掲げようと思ったのでしょう?
AK-69:さすがに東京ドームは無理かなと思っていたんですよ。だからそれまで目標として掲げていなかったというか、口に出すことはなかったんです。ストリートからのし上がって来たラッパーで、これまで東京ドームに立った奴はいないので。でも、ファンのみんなが「ドームツアーはいつやるんですか?」とかめっちゃ気軽に言ってきて、そのたびに「ちょっと待てよ! 俺、LDHのアーティストじゃねぇしさ! あんなフレキシブルにドームツアーやれねぇよ!」と思っていたんですけど(笑)。--ファンは簡単に言いますからね(笑)。
AK-69 - 「Forever Young feat. UVERworld」 from『DAWN in BUDOKAN』(Official Video)
--なるほど。
AK-69:それで「やる」って言っちゃいました(笑)。--日本はロックが根強い人気を誇っていますけど、欧米ではヒップホップが随分前に立場逆転してメインストリームになっているじゃないですか。
AK-69:そうなんですよね。いちばんポップな存在になっている。日本をそういう時代に持っていく為にも……もちろん自分自身のプロジェクトではあるんですけど、でもソレが実現できるようになったときは、日本のヒップホップも主流になった証拠になるんで。第一にヒップホップシーンのことを考えて動いている訳ではないですけど、自分が現役で活動しているうちに風穴を開けていくことが、ひいてはヒップホップシーンの為になると思うんで、そういう意味でも成功させたい。いろんな要素を持ってドームに到達したいなと思っています。--そこへ向けたストーリーにも注目していきたいのですが、大きな目標を掲げた矢先に新型コロナによって音楽シーン全体が活動を制限されてしまいました。コロナ禍が続いている約半年間、どんなことを感じながら過ごしてきましたか?
AK-69:音楽シーン自体の損失も900億円以上と言われているので、これは相当な打撃だし、この業界は再開のメドが一向に立たないというか、配慮されるランクがいちばん低いというか……- コロナ禍「「無理に決まっている」と言うことに対して向かっていく」
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Interviewer:平賀哲雄
コロナ禍「「無理に決まっている」と言うことに対して向かっていく」
--自粛要請を喰らったのも最初でしたし。
AK-69 - 「Bussin’ feat. \ellow Bucks」 (Official Video)
--得るモノもたくさんあったわけですね。
AK-69:エンタテインメントってあたりまえのようにみんなの周りにあって、あたりまえのようにみんなに力を与えたりしていたんだなって。それで、エンターテイナーとしての在るべき姿に改めて気付かされたから、だからこそ今回の新アルバム『LIVE : live』も作り上げることが出来たし、このアルバムの発売後に配信される名古屋城でのライブも物凄い内容にすることが出来る。だから「俺はこういう音楽を続けてきて良かったんだな」とすごく思ったし、「こういう時代だからこそ自分の音楽がみんなに必要なんじゃないかな」とも思えた。まさに『LIVE : live』。人生。生きる。そこに自分を定めさせてくれた期間になったと思います。だから今はあんまり悲観的になっていないですね。--そのムードから抜け出すことも出来たと。
AK-69:もちろんヤバい状況ではあるんですよ? 会社の失う利益とかもマジでけぇもんで、それを考えると下っ腹ふわふわするんですけど、でも何かするなら「今だ!」みたいな感覚も不思議とあるんですよね。--AK-69はストリートからメインストリームに這い上がって来たアーティストですし、どんなときも逆境を栄養素にして進化し続けている人じゃないですか。ゆえに今回の未曽有の事態も大きな力に昇華することが出来たんでしょうね。
AK-69:そう思います。そういう自分の生き様から紡いだ歌しか作ってきていないので、自分が滾っていなければ滾っていない内容になるし、滾っていたら滾っている内容になる。なので、今回は自分でもすごく納得がいくアルバムが出来たんですけど、まわりの評判的にも「『THE RED MAGIC』のときのAK-69が戻ってきた!」みたいな。別にソレを狙って作っていた訳ではないんですけど、今の世界情勢に対してもそうだし、さっき話した自分が気付いたことだったり、悔しい想いをしてきたことだったり、だからこそドームを目標に掲げたことだったり、みんなが「無理に決まっている」と言うことに対して向かっていく。その決心をしたときのアティチュードみたいなモノがそんな風に感じさせるんだろうなって。--無理だと思うからこそ立ち向かうマインド。
AK-69:若いときも、注目はされ始めたものの「おまえじゃ無理だろ」と言われることがたくさんあって、それでも「見とけよ!コラ!」と思っていた時期に作ったアルバムと感じが似ていると言われるのは、必然かなと思いますね。--今作収録の「If I Die feat. ZORN」を初めて聴いたときに、今日のインタビューで語ってくれた想いを全部詰め込んだような楽曲だと思いました。AK-69の生き様があったからこそ、2020年がこういう状況下だからこそ生まれたもの。
AK-69:そうですね。ラッパーとしては以前からずっと歌いたいテーマではあったんですけど、ソレを歌うにはまだ足りていない部分がいっぱいあるなと思っていて。あと、このテーマを扱うと本当に死んじゃう、そういうレジェンドたちもたくさん見てきていますし、だから簡単に扱える内容ではなかったので、ずっと先送りにしていたんです。でも、俺も昨日今日売れ始めたアーティストじゃないんで、その中で葛藤もあるし、停滞感を感じることだってありましたし、それでも何とか奮い立たせてここまで活動してきた訳ですけど、今こうしてコロナ禍になって「いつ死ぬか分かんねぇな」と思って。あと、ニューヨークの友達のラッパーが亡くなったこともあって、音楽を生業にしている人間として、そいつのアティチュードや魂を継承したいなという想いもあって書いたんです。リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄
名古屋城ライブ「「あぁ……、これは勝てない」と思うんじゃないかな」
--実際に死と対峙した中で生まれた楽曲だったんですね。
AK-69 / The Anthem at 日本武道館(THE ANTHEM in BUDOKAN 2019.03.31)
--このアルバム『LIVE : live』にも参加しているZORN、R-指定、SWAY、IO、MC TYSON、\ellow BucksとDJ RYOW。彼らとの名古屋城でのライブ【LIVE : live from Nagoya】が8月28日に配信されます。これはそもそもアルバム制作段階からセットで構想していたモノだったんですか?
AK-69:そうですね。コロナ禍になっていろんなことを考えて、アルバムのテーマやタイトルを考えているときには、この構想はありましたね。とにかく自分と言えばライブだということ。それはただ「ライブが得意」とか「好き」とかそういうことじゃなくて、武道館2daysも、過去のアリーナクラスのライブも全部そうですけど、本当に捨て身。多分、みんなが決断できない内容でやっているんですよね。それも綺麗事じゃなくて、予算面でも「バカでしょ? 頭おかしいでしょ?」って制作会社のトップに言われるような内容でやってきている。武道館2daysも「やっとチケッティングだけで儲かるラインになった」と。1dayじゃ儲からないので。でも、2日間違う内容のライブをやって、演出代が大体1.6倍ぐらい(笑)。--儲けを考えたら「せっかく2daysにしたのに!」ってなりますよね。
AK-69:要するに命懸けなんですよ。「これでスベったら会社畳むからな」と全社員に確認して、みんなで覚悟を決めて「じゃあ、やりましょう!」と形にしてきた。本当に玉砕覚悟。これって言葉では簡単に言えるんですけど、みんな出来ないと思うんですよ。そこまでの勇気は持てない。そもそもビジネスだし。僕は社長でもあるからちゃんとビジネスもしなきゃいけないんだけど、勝負のときはAK-69のエンタテインメントの力を存分に見せるときだと思っていて。結果というのは後からついてくるモノであって、俺たちはみんなに感動を与えた暁に結果を戴いているのであって、最初から結果を取りに行くもんじゃない。そういう信条が俺の中にある。--ゆえに綺麗事抜きで命懸けでライブをやってきたと。
AK-69:だから『LIVE : live』というタイトルにしたし、このアルバムは音源だけじゃ終わらず、これとセットになるライブも実現しようと。じゃあ、この状況下でどこでやるか考えたときに「俺は愛知県出身なんで、名古屋城を背負ってやりたい」と。で、生配信じゃなくて収録。もちろん生配信のほうが簡単だし、収益を上げたいならそれで良かったんですけど、アルバムとセットとしてこのライブは持ってきているので、作品じゃなきゃいけない。で、名古屋城を背負って、そこにとんでもない演出をかけて、映像作品としても衝撃を受ける内容にすることに徹しましたね。多分、誰もがビックリすると思います。同業者もみんな「あぁ……、これは勝てない」と思うんじゃないかな。だからこれも命懸けですね。ツアー飛んで収益が消えて稼がなきゃいけないタイミングでの配信ライブなのに、それはもう無茶苦茶な予算でやってますから(笑)。でも、だからこそ、俺はまだこうして最前線に立っているんだと思うんですよ。--日本のヒップホップ史に残る配信ライブになりそうですね。
AK-69:日本の城史上最も格好良く城が使われたライブにもなると思います。--城の歴史も変えてしまう!
AK-69:もう収録は終わっているんですけど、あんなに格好良い城の背負い方をしたのは俺が初めてだと思います。言い切れますね。プロジェクションマッピングとかでも絶対に勝てない。とりあえず観てください。目に飛び込んでくる絵面だけで「うぉぉ! これはすげぇ!」ってなると思いますんで。AK-69 - 「If I Die feat. ZORN」(Official Video)
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