Special
KAMIJO 三部作最終章『Persona Grata』リリース記念インタビュー
三部作シングルとして、昨年11月に『TEMPLE-Blood sucking for praying-』を、今年2月に『Symbol of The Dragon』をリリースしてきたKAMIJOが、いよいよ完結編となる『Persona Grata』を4月29日にリリースした。歴史や時代、国を超える物語を描きながら、「人間の醜さ」について問うてきた彼が今作に込めたものは何なのか。現在、新型コロナウイルスの感染拡大が及ぼす世界中の混乱に対してもリンクしたという彼の想いとは。夏に控えたアルバム・リリースとメモリアルコンサートへの展望とあわせて、KAMIJOに訊いた。
聴いてくれた人を驚かせたい
期待を裏切るのではなく、期待通りの形に
――3部作シングルの完結編『Persona Grata』がリリースとなります。今作に一番込めたかったところはどんなところでしたか?。
KAMIJO:1作目、2作目、そして昨年のツアーと、ここに至る過程は全部この作品、そしてこの先に続くアルバムへのあくまで伏線でしかなかったので、全てとは言わずとも、僕のこの1年近くの活動の1つの答えと言いますか、これからの道しるべが出せる作品にしたいなと思って制作しました。具体的にはシナリオの「Episode Ⅺ」以降に関しては、それこそ新型コロナウイルスと戦いながら作っていった感じはありますね。それがあって変更せざるを得ない部分もあったので。
――ツアーの延期なども制作に影響したということですか?
KAMIJO:いろいろな影響もあったんですけども、表題曲となった「Persona Grata」は昨年の夏のツアーからやっている曲で、この曲ありきで進んでいたので、自分としては早く届けたい想いがやっぱりずっとありました。
――その夏のツアーでは「新曲」として披露され、観ている側としては、ストーリーも急展開だし、新曲だし……という、驚くところばかりでした(笑)。
KAMIJO:初めて聴いてもらう、観てもらう、体感してもらう瞬間に居合わせたかったんですよね、僕自身が。ここ数年はストーリーの中で、“このシーンでこの曲”と決め込んで作っているので、出来れば“そのシーン”で披露したい。それを前提にセットリストを組んでいったので、お客さんがついてこられないことは必須だったかと思います(笑)。本当に根底としては、聴いてくれた人を驚かせたい。ただ僕の楽曲というものは、昔から大切にしていることなんですけど、期待を裏切るのではなく、期待通りの形に……ということなんですね。
――究極の期待通り、ですね(笑)。
KAMIJO:皆さんが足を運んでくださった場で初めて体感していただくということは大切にしたかった部分です。
――では『Persona Grata』の物語の核となる部分はどんなところでした?
KAMIJO:『Persona Grata』とは、直訳すると“望まれるべき外交官”という意味があって、諸外国に対して“外から来た人たち”を“望まれるべき人物”として見なす、という意味合いがあるんですけれども、今回すごく大きな意味で、人間にとって“望まれるべき言葉を与えてくれる人物”という意味も持っています。言葉としても人物としても、物語の中ではサンジェルマン伯爵もそこに当てはまるので、メインイラストとしてジャケットにサンジェルマン伯爵を小島(文美)先生に描いていただいたんです。『Persona Grata』という作品は、すごく大きな言い方をしてしまうと、人間の欲深さなどといったものを僕は描きたいなと思いましたね。そしてそれを乗り越えるためにどうするべきかとか、疑問も投げかけたいなと思っていました。
――KAMIJOさんの中では、その疑問に対する答えが見えていたのですか?
KAMIJO:常に自分自身の中には点と点が並んでいるだけで、それを結んでいくだけなんですよね。ですから、その中で何が今後生まれるかというのは自分でもまだ分からないので、“答え”というのはこれから描いていく中でさらに変わっていくこともあるとは思います。この楽曲が出来た時に僕が何を描きたかったか、そして今の僕がどういった気持ちでこの曲を伝えたいかというのは、同じ曲であっても時期によっても変わってまして。実は、「Persona Grata」は3月末に歌い直したんですよ。2020年3月末というのは、みんないろんな気持ちになっていて、それは僕も例外ではなくて、僕なりにこの曲を世に出すからには、少しでも世の中のためになればいいなという気持ちを込めて、もう1回歌い直したいなと思ったんです。
――現状ゆえに、楽曲を作った時の気持ち以上のものが込められたということですか?
KAMIJO:僕の物語の中で、いわゆる“敵と味方”というのは明確にいて、僕の捉え方としてなんですけれども、結局正義も悪も人それぞれの立場があって……1対1だとそれはそれぞれの立場にとっての“正義”だと思うんですが、1対他であれば他は“悪”になりえるんですよね。今、僕たちは新型コロナウイルスという見えないものに対して戦っていますけど、その“見えないもの”、人々の混沌としたところというのは、人間の集合体の中にもあるんじゃないか。そういった気持ちを込めて歌い直しましたね。
――表題曲「Persona Grata」は壮大なバラードになっていますね。
KAMIJO:コード進行を一切無視して作っていったら、冒頭からキーが明確ではないテーマが来たんです。コード進行とかメロディとか、そういった次元ではないような音楽と言いますか。自分なりに解明しきれてないと言いますか、感覚で作っていったので、何とか形になったという発明に近いんですよ(笑)。
――KAMIJOさんのそういう曲の作り方、本当に珍しいですね。
KAMIJO:そうですね。それこそベーシックな転調とかで楽曲を展開させていって、ドラマティックさを演出するというのが僕のやり方だったんです。でも、自分の中で分析しきれない感覚のまま表現できたので、これからこういった手法も採り入れていけるなっていう自分自身に可能性を感じることが出来た楽曲でもあります。
――歌詞でも<未来も文明も失っていくのか?>だとか、物語の核心を突くようなフレーズが出て来ます。
KAMIJO:歴史上の人物が実際にもしいるんだとしたら、その人の助言があるとしたら、僕ら人間はその言葉を聞けるのか……という疑問でもあるんですけども、この情報過多の時代に、一番何をしなければならないのか、判断が必要なシーンがいろいろあると思うんですが、そういう物事の選択についてすごく大げさに歌った曲でもありますし、今の時代に逆に勇気を与えられたらいいなと思っています。
リリース情報
『Persona Grata』
- 2020/4/29 RELEASE
- <初回限定盤(CD+BOOK)>
- SASCD-106 3,500円(tax out.)
- ハードカバーブックタイプ豪華ジャケット(約10,000文字のシナリオを掲載)
- ミニポスター&ポストカード付属
- <通常盤>
- SASCD-107 1,500円(tax out.)
『PERSONA』
- 2020/7/15 RELEASE ※新型コロナウイルス緊急事態宣言を受け、リリース延期。詳細は後日発表。
ライブ情報
【Memorial Concert 2020 -PERSONA-】
- 2020年7月16日(木)開場18:15/開演19:00
- 会場:マイナビBLITZ赤坂
- チケット:指定席7,700円(税込)、学割チケット3,300円(税込)
- ※入場時ドリンク代別途必要
- ※3歳以上チケット必要
関連リンク
KAMIJO 公式サイト
『TEMPLE -Blood sucking for praying-』インタビュー
『Symbol of The Dragon』インタビュー
Photographed by 逸見隆明
こういう時こそ、僕たちの音楽が皆さんの力になれるように
――2曲目「Bloodway」は、“Broadway”を想起させる言葉であり、歌っている内容も、“踊りましょう” “騒ぎましょう”というものです。
KAMIJO:ライブありきで作った楽曲で、物語の中に出て来るブロードウェイのシーンをイメージして作りました。スウィングというハネるリズムを英語にすることで、気持ちいいノリに繋げることが出来たので、よりライブが楽しみなんですよね。英語だと言葉自体に抑揚がつくので、すごく楽しいんですよ。歌もそうですけど、楽曲を彩る言葉のいろんな捉え方が出来ますし。
――日本語で言い切るよりも、英語だと意味合いを広げられることもありますしね。
KAMIJO:そうですね。長く活動をさせていただいているので、1つ1つの単語に意味を持たせすぎたというか。例えば僕が「青い鳥」という言葉を使ったら、お客さんも意味をとても大切に感じ取ってくれているので、リンクさせちゃったりするんですよ。単語イコール固有名詞になってきてるんですよね、僕の中で。
――“KAMIJOさんがここでこの単語を使うのであれば、こういう意味が含まれているかも?”となる、と。
KAMIJO:言語が広がった分、選択肢が増えたことも、歌詞を書く上でありがたいですね。そんな訳でソロをスタートしてからは、どんな深読みをされても、深読みの深読みの深読みぐらいまでしていただく楽しみをご用意しています(笑)。
――でもそれ、制作者としては大変なことではないんですか?
KAMIJO:最高に楽しいですよ(笑)! “だいたいこうやって捉えるだろうな”っていう、その裏をかくのが楽しいんです。駆け引きですよ(笑)。でも、一方通行じゃないことは本当にありがたいことですよね。
――3曲目は「Mystery」のオーケストラアレンジです。
KAMIJO:(2018年のアルバム)『Sang』に収録されている曲ですけども、あのアルバムを作った時から、“この曲はオーケストラと歌だけでやってみたいな”と思っていたので、僕としては今回やっとイメージの形どおりになりましたね。こういった広がる感じと、ダイナミックレンジがあるアレンジ、これはすごく歌っていて楽しいです。
――ところでKAMIJOさんは、LAREINE時代から時を超えた物語を描いてきましたよね。その中で、なぜ今、“人間はどうあるべきか”といったような問題提起をするに至ったのか……というところがすごく気になります。
KAMIJO:いつからか、ファンタジーじゃなくなったというか……自分自身が生きている、そしてファンの皆さんが生きているこの時代の中に、自分の音楽がちゃんと存在したいという願望があって、物語自体がそういったものじゃないと存在できないなと思ったんですよね。自分が伝えたいものって、そもそもは“永遠に歌っていたい”とか永遠を求めたりしているものですけれども、そういったメッセージはすごく大きなテーマでもあるので、伝わりづらくなってしまう。いかにリアリティをもって表現するかというのを試行錯誤した結果、この現代社会の中に過去のものが登場した時に見えるリアリティとは……そういう描き方をしています。
――7月にリリースされるアルバム『PERSONA』は、方向性としてはどんな作品になりそうですか?
KAMIJO:『Persona Grata』の続編でもありながら、それを含んだ大きなものになりますね。人間1人1人の意識とか、そういったものが集まった時に、1対1、1対他、他対他……それによって捉え方が全く変わってくる。それを裏テーマにして自分でも描いている最中です。今回の『Persona Grata』の(ストーリーの)ラスト……ここの疑問にファンの方々と一緒に立ち向かうようなアルバムになればいいなと思いますね。
――アルバムのリリース後にはマイナビBLITZ赤坂にて【Memorial Concert 2020 -PERSONA-】が行われます。
KAMIJO:まずはアルバムの世界を最初に提示できる。あとは僕、昨年の10月からライブをやってないんですよ。ファンの皆さんの前で歌うのが本当に楽しみなので、ファンの皆さんもそうだと思うんですけど、早くライブで生きていることを実感したいなって思いますね。そもそもアルバム自体、敢えて“メモリアルアルバム”という風に思いたいなと僕は思っていて、25年やってきたからこそ作れるアルバム、というものを作り上げたいなと思ってます。
――今のKAMIJOさんの話を聞いてアルバムを聴いたら、ファンの皆さんは物凄く深読みすると思いますよ(笑)。
KAMIJO:大丈夫です(笑)。作り手として25年間作ってきた、“新曲”としての集大成は、この作品で出せると思うんですよね。そして25周年ということで、過去を振り返ることも必要かなと思っているので、そういったことも今年はたくさん用意しています。そして最後に一言言わせてください。世の中として皆さんも身動きが取れない中で、僕たち音楽を作る人間は、いつも皆さんに支えられてきたんですけれども、こういう時こそ、僕たちの音楽が皆さんの力になれるようにと思っています。また笑顔でライブ会場で会えることを楽しみにしています。そして、亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、体調を崩されてしまった方々が1日も早く回復されて、そしていつも以上の生活になれるように、音楽で少しでも支えられればと思っています。
KAMIJO直筆サイン入りポスターをプレゼント!
今回のインタビューを記念して、KAMIJO直筆サイン入りポスターを1名様にプレゼント。ポスターに本人直筆でご希望の名前を入れてお送りします。
応募方法:2020年5月10日(日)23:59までに、Billboard JAPANの公式Twitterアカウント(@Billboard_JAPAN)をフォロー&ハッシュタグ#KAMIJO3_BBJをつけてツイートしてください。下記の注意事項をご確認の上ふるってご応募ください!
・当選者の方には、@Billboard_JAPANよりダイレクトメッセージ(DM)をお送りさせていただきます。当選時に@Billboard_JAPANをフォローされていない場合、当選は無効となります。
リリース情報
『Persona Grata』
- 2020/4/29 RELEASE
- <初回限定盤(CD+BOOK)>
- SASCD-106 3,500円(tax out.)
- ハードカバーブックタイプ豪華ジャケット(約10,000文字のシナリオを掲載)
- ミニポスター&ポストカード付属
- <通常盤>
- SASCD-107 1,500円(tax out.)
『PERSONA』
- 2020/7/15 RELEASE ※新型コロナウイルス緊急事態宣言を受け、リリース延期。詳細は後日発表。
ライブ情報
【Memorial Concert 2020 -PERSONA-】
- 2020年7月16日(木)開場18:15/開演19:00
- 会場:マイナビBLITZ赤坂
- チケット:指定席7,700円(税込)、学割チケット3,300円(税込)
- ※入場時ドリンク代別途必要
- ※3歳以上チケット必要
関連リンク
KAMIJO 公式サイト
『TEMPLE -Blood sucking for praying-』インタビュー
『Symbol of The Dragon』インタビュー
Photographed by 逸見隆明
関連商品