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稲垣潤一×荻野目洋子 対談

稲垣潤一×荻野目洋子 対談 インタビュー

 アメリカやフランスのスタンダードミュージックをJ-POPに昇華した画期的なカバーアルバム『ある恋の物語 My Standard Collection』を完成させた稲垣潤一と、今作において相性抜群のデュエットを披露した荻野目洋子の対談が実現。かつてはあり得なかった夢の共演を受け、2人に今と昔の音楽シーン(旧知の仲 秋元康についても)等について語ってもらった。

アイドル全盛の30年前~「夜のヒットスタジオ」裏話

--稲垣潤一さんと荻野目洋子さんは、今作『ある恋の物語 My Standard Collection』以前に『男と女3 -TWO HEARTS TWO VOICES-』収録の『異邦人』でもデュエットを披露されていましたが、元々親しくはあったんですか?

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稲垣潤一:親しくは……なかったんですけど(笑)。

荻野目洋子:稲垣さんは大先輩ですから!

稲垣潤一:いやいや。でも現場では会っていましたね。レコード会社が一緒だとか、そういうこともなかったものですから、例えば「夜のヒットスタジオ」とか歌番組でご挨拶したり。

--今、荻野目さんは稲垣さんのことを「大先輩」と仰いましたが、稲垣さんのレコードデビュー(1982年)と荻野目さんのソロデビュー(1983年/ソロレコードデビューは1984年)は、実は1年差ぐらいなんですよね。

稲垣潤一:あんまり変わんないじゃないですか(笑)。

荻野目洋子:そうなんですね。でも稲垣さんのイメージって、皆さんもそうだと思うんですけど、大先輩じゃないですか。

稲垣潤一:まだ30周年ですから。

荻野目洋子:意外とそんなには変わらないんですね。その前はどんな活動をされていたんですか?

稲垣潤一:セミプロ活動が長くて、高校卒業してから10年ぐらいいろんなところで歌ってましたね。だからデビューが遅いんですよ。28だから。

荻野目洋子:たしかにあの時代では珍しいかもしれないですね。最近だとスガ シカオさんとか、デビューの遅い方はいらっしゃいますけど。

--荻野目さんは当時の稲垣さんにどんな印象を持たれていました?

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▲荻野目洋子

荻野目洋子:本人の目の前で恐れ多いんですけど、すでに貫禄がありましたし、最初から鮮烈な印象。大人のアーティストというイメージでしたね。私はアイドル全盛期みたいな感じの中でデビューしてしまっていたので、やっぱりまた別の世界というか。当時は演歌があり、ニューミュージックがあったんですけど、そちらの世界と私のいる世界は違う感覚で。

稲垣潤一:1982年頃はアイドルが多かったんですよね。だから僕とかが異質な感じですよ。浮いてる感じ(笑)。

荻野目洋子:でも「夜のヒットスタジオ」はいろんなジャンルの方が一同に会すので、不思議な緊張感があって。

稲垣潤一:あれはすっごい緊張感があったね。メドレーのコーナーがあって、他の出演者の曲をその人の目前で歌わなくちゃいけないから大変なんですよ。演歌とか。軽くリハーサルはやるんですけど、ほとんどぶっつけ本番ですから、どこのキーで歌っていいんだか、イントロの長さがどれぐらいなのか、全然分かんなくて。

荻野目洋子:それで生放送だから、大御所の方でも戸惑うぐらい。それが視聴者の方からしたら面白かったんだと思うんですけど。

稲垣潤一:出演者は皆さんピリピリしていて凄かったですよね。

荻野目洋子:怖かったです。気合いがヒシヒシと伝わってきて。しかもそれぞれの事務所の方々、ギャラリーがすごく多いので、「あの方とお話したいなぁ」といつも思うんですけど、話し掛けることもできず萎縮していました。

--稲垣さんは『ダンシング・ヒーロー(Eat You Up)』などを歌う当時の荻野目さんにどんな印象を持たれていたんでしょう?

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▲稲垣潤一

稲垣潤一:やっぱり「歌唱力があるな」って思いましたね。いろんな方がデビューしてくる中で、非常に歯切れの良い歌い方をする人だなと。荻野目さんは同期って誰になるんですか?

荻野目洋子:吉川晃司さんとか菊池桃子ちゃんとか岡田有希子ちゃんとか。

稲垣潤一:僕は中森明菜さんとかキョンキョン(小泉今日子)と一緒なんですよ。だから浮いてる感じなんです(笑)。

--これは個人的な印象なんですが、当時の荻野目さんは人気アイドル、稲垣さんはザッツ・ミュージシャンという見方をしていまして、そうした2人が一緒に歌うというのは今でこそ実現しているものの、当時からしたら奇跡的なことだったんじゃないですか?

稲垣潤一:ですね。だから実は昔からデュエットはしたいと思っていたんですけど、なかなか出来なかったんですよね。いろいろとハードルが高かったんです。それに比べたら今の時代はデュエットし易くなってる。

荻野目洋子:最近はいろんなコラボレーションがあるので、稲垣さんからデュエットのお話を頂いたときも違和感なく、純粋に声を掛けて頂いたことが嬉しかったですね。ただ、たしかに今の時代は誰とでもデュエットし易くなってると思うんですけど、先輩の方から声を掛けて頂かないと実現しないじゃないですか。アメリカとかでもそうだと思うんですけど、後輩からは頼みづらいんですよね。

--では、お2人のデュエットも収録された『ある恋の物語 My Standard Collection』について触れていきたいんですが、以前インタビューさせて頂いた際、稲垣さんは「ジャズやスタンダードナンバーをAOR的に、ある種ポップに日本語で歌うことが出来たら、まだ誰も形にしていない世界になるかな」と仰っていたのですが、今作はそのヴィジョンを具現化したものですか?

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稲垣潤一:正しくそうです。何年か前から温めていたテーマ。ただ、当時は「やりたい」と言っても説得する材料が何もなかったし、ただ言葉で伝えても「うーん……よく分かんないな」とか言われそうなので、まずライブでシミュレーションしようかなって思ったんですよ。で、昨年、ジャズピアニスト山中千尋さんのトリオとコラボライブする機会があって、今作にも収録している『夜のストレンジャー』や『オルフェの唄』をトライしてみて。そこでのリアクションなどが説得材料にもなったし、自分も「良いものが出来そうだな」と実感できたので、昨年末からレコーディングに取り掛かったんです。

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