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和楽器バンド 新章『REACT』インタビュー~東京から世界へ~



和楽器バンドインタビュー

 詩吟、和楽器の“和”とロックの“洋”を融合させた和楽器バンドが、ワールドワイドな展開を目指して、2019年夏にユニバーサルミュージックとのグローバル契約を発表した。彼らの新章の幕開けとなった4曲入りのコンセプトEP『REACT』には、“Challenge”、“New Beginning”、“Farewell to the past”、“Special Thanks”の4つのテーマに沿って書かれた楽曲が収録され、綿密に計算されたバンドサウンドに乗って、彼らの決意やこれまで応援してきてくれた人々への感謝が感じられる。今回、楽曲を手掛けた鈴華ゆう子(Vo.)、黒流(和太鼓)、町屋(Guitar & Vo.)に楽曲に込められた真意や今後のバンドの野望を語ってもらった。

左から:町屋、鈴華ゆう子、黒流

――【-新章-】と銘打った約1年半ぶりのツアーを終えたばかりですが、ツアーを振り返ってみて、何か感じたことはありますか?

鈴華ゆう子:移籍してすぐに決まったツアーだったので、本当にツアーができるのか不安でした。というのも、スタッフの総入れ替えがありまして、ライブは照明や音響スタッフさんなど色んな方が集まらないとできないものなので不安だったんです。でも、その不安は何だったんだと思うくらい、プロフェッショナルな方達がサポートしてくださって、今回16公演ありましたが、回数を重ねるごとによくなっていきました。ライブでファンの皆さんを目にした時、一時期、表舞台から消えていた私達をずっと待っていてくれたのが分かって、すごくホッとしましたし、ここから第二章の始まりだという気持ちになりました。

町屋:俺はあと84回やってもいいんだけど。年間100本くらい。

鈴華ゆう子:1人でやってください(笑)。

町屋:いろんなところを細かく地道に回るライブも、いつかやりたいね。

黒流:まずは都内23区から(笑)

――(笑)。気持ちの変化など、ツアー中に感じたことはありましたか?

鈴華ゆう子:ある意味、メンバー全員、気持ちが激変したところがなくてよかったです。バンドリハーサルが始まる前に、ローディーさんと会って、(津軽三味線担当の蜷川)べにが三味線の調弦を話し合ったり、(箏担当のいぶくろ)聖志が箏の柱の立て方や、しまい方を説明したりしてました。もっと手こずるかと思っていましたが、本当に問題なく進んで、逆に心境に変化がないままライブに挑めましたね。

町屋:あまりにも自然に出来ちゃうので、僕は後半すごく焦っちゃって、ここで何かいいものを見せるには自分たちがやるしかないって思い、ツアーの後半はパフォーマンスがよくなったのを感じました。

鈴華ゆう子:ストレスフリーで臨めたからこそ、パフォーマンスのことを考えられる余裕ができたんだよね。


和楽器バンド

――普通だとそこまで行くのに時間がかかるところ、今回はストレスフリーで、苦戦することがなかったわけですね。

鈴華ゆう子:そうなんです、簡単なようで難しいところで……。

黒流:とりわけ特殊なバンドですし……。今までドラムセットを組んでた方が急に120キロの大太鼓を持ち上げないといけなくなるなんて、大変ですよね。

鈴華ゆう子:ツアーが終わるたびに気づくことが何かしらあるんですけど、今回、歌が上手くなったなって思えたんです。鼻歌を歌っていた時に、前までキツかった部分が歌えていて、これはライブで身についたんだと思うんです。今まではパフォーマンスや気持ちの面で気づくことはあったんですけど、歌に関して何か思ったのは初めてでした。

――ボーカリストとしてご自身と向き合うこともできたツアーだったんですね。さて、最新コンセプトEPについてお聞きしたいのですが、タイトルでもある“REACT”というテーマの発想はどこから来たのでしょうか?

鈴華ゆう子:ユニバーサルミュージックから大きなテーマとして“RE”を提案されたんです。そのワードをもとにメンバーから色々候補を集めて1番いいなと思ったのが“REACT”でした。第二章の始まりとなる作品なので、新しいチームで生まれ変わったアクトをしていきたいという気持ちが込められています。

――コンセプトEPにした特別な理由はございますか?

町屋:レーベル側からコンセプトEPを提案されたことも一因ではあるのですが、僕達はこれまでに『オトノエ』というコンセプト作品をリリースしていますし、コンセプト性の強い作品を聞いて育った世代でもあって、単曲買いに慣れてないところがあるんです。本を読むような感覚で、一曲聞くよりも一枚まるごと聞いたほうが、より深く理解できますよね。

鈴華ゆう子:移籍に伴って今まで凝り固まっていたもの解き放つために、私たちはわりと受け身の状態で、こちらの要望を押し出すだけでなく、新しい意見を柔軟に取り入れています。4つのテーマについても色々と話し合って、テーマに基づいた曲を好きなように集めました。

町屋:テーマにハマるデモのストックやテーマに合わせて新しく作った曲もあって、その中で1番や2番にハマる楽曲をレーベルに選んでもらいました。

――“Challenge”、“New Beginning”、“Farewell to the past”、“Special Thanks”の4つのテーマがそのまま曲順に当てはまっているのでしょうか?

町屋:そうです。

鈴華ゆう子:“Challenge”は世界標準への挑戦、“New Beginning”は新たな出会い、“Farewell to the past”は過去との別れ、“Special Thanks”はファンへの感謝です。


――1曲目の「Break Out」はデモがあったのでしょうか?

黒流:もともとあったデモを“Challenge”というテーマに合うように書き直しました。和楽器バンドってロックと和が融合した前例のないバンドで、日本人のほうがわりと和楽器に対して固定概念があって、逆に海外の方は和楽器を有効的にカッコよく使われているんです。世界に行くのであれば、新しいものを作っていくという気持ちがないと、これまでの繰り返しになってしまうだけだと思いまして、前例がないからこそ、まず自分たちの壁を壊そうとスタートした曲なんです。また、音楽から元気をもらったことがいっぱいあったので、この曲を聞いた人に元気を与えられればと、わかりやすい歌詞にしました。

町屋:今までチャレンジし続けてきた和楽器バンドらしい一曲で、ある意味、一番チャレンジしていない曲なんですよね。「和楽器バンドとは?」を世界に表明する曲に仕上がっています。

黒流:出だしからインパクトが欲しくて、ゆう子ちゃんの和楽器に負けない声が僕らの武器でもあるので、8人全員の音が合わさった楽曲になっています。これまで和楽器を全面に出した静かめのインストはあったのですが、ロックに馴染めるのは本当に難しくて……。バランスやプロデュースはまっちー(町屋)に任せているんですけど、これまで自分たちが模索してきた足し引きや知識があるからこそ、ロックの中に和楽器そしてボーカルが活きる、そして和楽器と洋楽器のバランスが同等になっている曲が作れるんだと思っています。


和楽器バンド

――和と洋のロックのバランスを取るのに苦戦したんじゃないでしょうか?

町屋:流石に6年やっていると、だいたいのイメージが見えるんです(笑)。

黒流:まっちーの中に設計図があるよね。

町屋:頭の中でイメージを固めることに一番時間を費やしていて、固まった後はそれを音楽的な言葉でメンバーと会話してレコーディングしています。

鈴華ゆう子:よく絵画や料理の盛り付けみたいだなって思うことがあって、黒流さんがミックスを聞いた時に「おせちの重箱みたいだね」って言ってたんです。

黒流:重箱って全ての具材が見えるじゃないですか。重なっていなくて、それで見た目もすごく美しくて。

町屋:ファーストとセカンドの頃は模索していた時期なので、今にはない荒削りな部分もあったのですが、経験を積んでいく中で、自分の中である程度の方程式やセオリーができました。人数が多いので、バランスは基本的に引き算ですね。


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