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石若駿 新プロジェクト“Answer to Remember”インタビュー ~日本から世界へ~



ATRインタビュー

 ジャズはもとより、現在の日本のポピュラー・ミュージックを牽引するプレイヤーとなった、新世代を代表するジャズ・ドラマー、石若駿。ポップスのフィールドでも活躍する彼が、満を持してスタートした新プロジェクトが“Answer to Remember”だ。自身がフロントマン及びプロデューサーを務めて、信頼を寄せるメンバー、ゲストを交えて作り上げたのは、実験的で刺激的な音楽のプラットフォーム。音楽シーンに新たなムーヴメントを生み出した「仲間」たちと、今度は日本からワールドワイドに発信する音楽を生み出そうとしている。石若にermhoi、KID FRESINO、黒田卓也それぞれをフィーチャーした3つのシングルからスタートしたこのプロジェクトに掛ける思いとその背景にあることについて詳しく語ってもらった。

――Answer to Rememberは、いままでのソロとは違うプロジェクトだと思いますが、そもそもなぜいまこれをスタートさせたのでしょうか?

石若駿:いろんなタイミングが重なってなんですが、昔からの話をすると、まず僕が上京してきたのが2008年で、運よく日野皓正さんと交流があって、上京した時からジャズのライブをやらせてもらって、日本のレジェンドのミュージシャンやいろんな人のバンドで演奏するという、そういう高校生活を送っていたんです。大学生になると、世代の近いミュージシャンが全国各地から出てきて、彼らとも一緒にやる機会が増えてきて、大学卒業するまでに面白いミュージシャンの仲間がそれぞれのバンドでうまくいってて、卒業後は更にそれが深まっていったんです。で、2018年から2019年になる時に、同世代の仲間たちがそれぞれ面白いことをやっているムーヴメントが一段落したんじゃないかなっていう勝手な僕の感覚がありました。みんなすごく頑張って、行けるとこまで行ったなと。そんな中、2018年の年末に、今回参加してくれてるMELRAWとか、参加はしてないですけど大事な仲間であるKing Gnuの常田(大希)くん、WONKの江﨑(文武)くんと、ちょっとリユニオン的にみんなで集まって面白い音楽を作りたいねと話をしたんです。その時に、ちょうどソニーから話もあったので、今度は僕の基地にみんなを集めて新しい音楽を作ろうって思ってできたプロジェクトですね。



――では、Answer to Rememberのベースにあるのは、仲間やムーヴメントなんですね。

石若駿:何か大事な縁を感じた人たちをもう一回集めたかったんです。作品を一緒に作ったことがなくても、飲み仲間であったり、セッション仲間であったりという人も多かったです。

――ミュージシャンによるムーヴメントと聞くと、2000年代にニューヨークでロバート・グラスパーたちが出てきた時のことも思い浮かべます。

石若駿:そうですね。もちろんグラスパーたちより僕らはもっと若いですけど、グラスパーたちがやってきたことも見ながら活動してたので、自然に移行するタイミングになったんだなっていうのを感じたのが2018年の下半期ですね。今回、僕が頭となってこれをやっているんですけど、みんなそれぞれこういうことが起きたらいいなと思ってます。

――まずはシングルを配信するというのは、やはり今の時代の流れを考えてですか?

石若駿:はい、アルバムを発売する前に、シングルをまず3つ切ろうという計画から始まりました。

――では、その先行の3つのシングル曲の話から伺います。まず、ファースト・シングルの「TOKYO feat. Ermhoi」。

石若駿:元々のメロディーとハーモニーはこのプロジェクトをやる前からあって、すごくゆっくりな曲で書いてたんですけど、早いテンポで展開させたら面白いんじゃないかって、最初にLogicでシンセを組んで、自分でドラムを打ち込んで枠組みを作って、ドラムを録るときに出来上がったテンポの半分以下ぐらいのゆっくりなテンポで録って、最後にPro Tools上で早くするっていう手法をやったら、すごい予想が付かないようなドラムのプレイになったんです。

――ちょっとルイス・コールっぽいというか、あの予想も付かないドラムの展開に近い感じもしました。

石若駿:いまの感じになったようには思います。東京塩麹というバンドがあって、僕も初期のメンバーで、ermhoiはそこでよくゲストで歌ってたんです。これに歌詞を載せて彼女に歌ってもらおうというアイデアが出てきて、そのレコーディングの時も同じようにキーを下げたりして、アナログのテープでテンポを落として、ゆっくりで低い声で歌ってもらったものを最後にPro Toolsで元のテンポに持っていくという作業もしました。いろいろ実験した結果、面白いことになればいいと思って作ったのがこの曲ですね。


――実験的な背景を聴いた限りでは感じさせないのもいいですね。では、セカンド・シングル「RUN feat. KID FRESINO」について教えてください。

石若駿:これは、最初は2ホーンでメロディーがある曲だったんですけど、制作を進めている内に(KID)FRESINOくんに歌ってもらいたいと思ってメロディーを一回全部録って、リズムだけのトラックを彼に送ったら、すごいラップが乗って返ってきたんです。これも実験的な曲なんですけど、7拍子で最初始まって、途中で4拍子、5拍子になって、また7拍子に戻ってくる。これをFRESINOくんに投げたらどういう風に返ってくるかなっていう楽しみもありながら作った曲で、5拍子のところはすごい割り方でラップが乗ってて、とても音楽的で、すげえなって思いましたね。


――彼との出会いは?

石若駿:FRESINOくんのアルバムの制作に呼ばれて行ったんです。その制作にあたって、FRESINOくんがドラマーを探している時期があって、昼のPIT INNのジャズのライブに、1回観に来てくれたらしいんです。それで制作に参加することになり、バンドで何回かやって距離が近くなって、今度は僕のプロジェクトでお願いすることになったわけです。

――自分で打ち込みをするのは以前からやっていたことですか?

石若駿:そうですね。学生の頃からGarageBandを使っていろいろやってたんですが、2年くらい前にLogicをゲットして、曲を作るときは積極的にデモを作ることから始めました。いままでは譜面とピアノの世界だったんですけどね。そのデモに生楽器を足していくっていうやり方をしたのが「TOKYO」だったんです。

――かつてはビートメイカー、トラックメイカーが使いこなしていたソフトウェアを、いまはミュージシャンが積極的に使うようになったと感じます。

石若駿:それは感じますね。だけど、僕と同世代のジャズ・ミュージシャンでも、日本だとまだまだ少ないのかもしれないです。でも、今回参加している中で、MELRAWはそういうのがすごく得意ですよね。マーティ(・ホロベック)もそう。

――デモ作りはどこまできっちりやるんですか?

石若駿:基本的にはメロディーとハーモニーとドラムのフィールは自分で考えて、あとはミュージシャンに任せますね。

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