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藤倉大 インタビュー 「子供のときから、たくさん曲を書いていました。もちろん、五線譜で」
1977年に大阪で生まれ、15歳で渡英。ヴェネツィア・ビエンナーレ音楽部門銀獅子賞他、数々の作曲賞を受賞し、数多くの作曲を委嘱されるなど、世界で最も演奏されている作曲家の1人である藤倉大。現在、ロンドンを拠点に活動している藤倉が、2017年からプロデュースしているのが、新しい形の音楽フェスティバル【ボンクリ・フェス】=【”Born Creative”Festival】だ。「人間はみんな、生まれつきクリエイティヴ」という意味が込められている本フェスティバルは、2019年は9月28日に東京芸術劇場で開催が予定されている。本フェスティバル開催に向けて、成り立ちからプログラムの組み立て方まで、藤倉大に話を聞いた。
僕の生活は8歳か9歳くらいから変わっていないんです。全然変わっていない
−−作曲家・藤倉大がそう言うと、妙な説得力がある。やりたいことをやり続け、そのまま大人になってしまったような。
藤倉大: 子供のときから、たくさん曲を書いていました。もちろん、五線譜で。
というのも、僕はピアノを習っていたんですね。だけど、ベートーヴェンとかモーツァルトでも、いつも曲を変えて弾いてしまうんです。違う音符にしたり、カットしたり。それで先生に怒られるんですが、僕も頑固なんで絶対にやめないわけです(笑)。さらに怒られてしまう。
そこで思ったのは、楽譜に書いてある音と弾いている音が違うから怒られるのだなと。じゃあ、自分が弾きたい音楽を楽譜に書けばいい。それで作曲が始まったんです。それがピアノを弾くよりずっと面白くて。楽譜に書くということは重要だったわけだったかもしれない。ここに書けば全部オッケーになるんだから。
高校、大学のときも友達に曲を書きまくっていましたね。
ピアノやヴァイオリンを学んでいた友達も、とくに現代音楽をしたいと思っている人はそんなに多くない。でも、学校のルールでリサイタルにそういう音楽を入れなきゃいけない。リゲティやシュトックハウゼンなど、すばらしい作曲家はたくさんいるけれど、彼らにとっては訳がわからないし、あまりやりたいとは思えないんです。それをやるために学校に入ったわけではないし。だったら、いつも学校で顔を合わせている友達の曲だったらやってもいいな、ということでわっと依頼が来るんです。30人とか(笑)。
フルートの試験だったかな。終わってから試験官が立ち上がって、「全員違う曲を弾いているのだけれど、すべてのプログラムに入っている藤倉大って誰よ」とか言うわけ。あ、怒られちゃうのかなと思ったら、「僕にも曲を書いてよ」と(笑)。
そういう生活が今でもあまり変わらないんですね。友達に曲を書いて生活しているということが。
有名な演奏家から委嘱があると、すごいね、おめでとう、なんて賞賛していただくこともあるんですが、僕としては、自分の好きな友達と遊んでいたいだけなんですよ。
たとえば、ヴィクトリア・ムローヴァさんに書いた曲があるんですが、ムローヴァといえばとても有名なヴァイオリン奏者じゃないですか。最初は彼女の旦那さんであるチェロ奏者のマシュー・バーリーに曲を書いたんです。友達だからね。
彼の家でリハーサルしていたら、ちょうどムローヴァさんも家にいた。帰りがけに「私にも曲を書いてよ」ということになって、《line by line》を作曲したんです。
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◎公演情報
ボンクリ・フェス2019【”Born Creative”Festival2019】
2019年9月28日(土)11:00~21:00 東京芸術劇場
10:50-東野珠美によるファンファーレ
スペシャル・コンサート
※コンサートホールでおこなう、出演者勢揃いのスペシャル・コンサート
14:00開演(13:00ロビー開場)
会場:コンサートホール
曲目:
1.モートン・フェルドマン:サムシング・ワイルド・イン・ザ・シティ―マリー・アンのテーマ
(ホルン、チェレスタ、弦楽四重奏のための)
"Morton Feldman Collection, Paul Sacher Foundation, Basel”
2.挾間美帆:颯(はやて)
3.八木美知依:通り過ぎた道
4.「通り過ぎた道」PUNKTライブ・リミックス
5.テリー・ライリー: In C
6.坂本龍一: honj I~III(日本初演)
7.大友良英: 新作(世界初演)
8.藤倉大: 春と修羅(映画『蜜蜂と遠雷』より)
9.藤倉大: ホルン協奏曲第2番(アンサンブル全編版世界初演)
デイタイム・プログラム
※赤ちゃんからシニアまで楽しめるアトリウム・コンサートやワークショップ・コンサートを館内各所で開催
11:00-19:00
会場:館内各所
◎無料プログラム
アトリウム・コンサート 出演:佐藤紀雄(g)、東野珠実(笙)、本條秀慈郎(三味線)
電子音楽の部屋(入退場自由・11:00-19:00) 監修:檜垣智也
◎スペシャル・コンサートのチケットで楽しめるプログラム
デヴィッド・シルヴィアンの部屋
電子楽器工作の部屋 講師:ジルベール・ノウノ (ポンピドゥー・センター〈イルカム〉研究員)
ノマドの部屋 演奏:アンサンブル・ノマド
トーンマイスター石丸の部屋 講師:トーンマイスター石丸、関根愛
箏の部屋 演奏:八木美知依、磯貝真紀、高橋弘子、小山ひとみ
プンクトの部屋 演奏:ヤン・バング、エリック・オノレ、アイヴィン・オールセット、ニルス=ペッター・モルヴェル
大人ボンクリ
19:00開演(18:00ロビー開場)
会場:コンサートホール
◎リリース情報
関連リンク
Text:鈴木淳史 / Photo:進藤綾音
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