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『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2018/19』よりロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』公開記念 主演マシュー・ボールにインタビュー
2017/2018シーズンに英国ロイヤル・バレエのプリンシパルに昇進したマシュー・ボール。まだ26歳という若さで、ロイヤル・バレエスクール仕込みの優雅さとダイナミックなテクニックを持ち合わせ、さらに『うたかたの恋』のルドルフ皇太子というダークで複雑な役でも高く評価されるなど、演技力にも定評がある。今年の来日公演では『ドン・キホーテ』に主演して大きな喝さいを浴びたほか、同じく夏に来日公演を行ったマシュー・ボーンの大人気作品『白鳥の湖』でザ・スワン/ザ・ストレンジャー役も演じ、その美しくセクシーな演技とパワフルな踊りで人気が急上昇した。
来日公演でのファンの興奮も冷めやらぬ間に、マシューと大画面で会えるまたとないチャンスがやってくる。2019年8月23日より劇場公開される、「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2018/19」の『ロミオとジュリエット』のロミオ役で主演するのだ。まだ彼がソリストの時にロミオ役に抜擢されたことがブレイクのきっかけになっただけあり、まさにはまり役。若くロマンティックな雰囲気を持つマシューはロミオそのもの。来日したマシューに、この作品について語ってもらった。
踊るときには一作品、一作品ベストな状態でお届けしたい
(C)2019 ROH. Photograph by Helen Maybanks
――マクミラン振付の『ロミオとジュリエット』の魅力について教えてください。
マシュー・ボール:僕にとって一番特別なのは、この作品は物語を素晴らしい形で綴っていること、ただのダンスを超えた物語を綴ることができることです。特に素晴らしいパフォーマンスをすることができると、ドラマや演技、物語がステップから伝わっていきます。だから、『ロミオとジュリエット』は世界中の観ていただいた方々からこれだけ支持され賛辞を得ているのだと思います。
――『ロミオとジュリエット』でロミオ役を演じるにあたって心掛けていることは?
マシュー・ボール:1幕までのロミオは、友達と戯れるような、遊び心あふれる若々しい青年です。キャピュレット家とは喧嘩になってしまいます。でも、ロミオ役で重要なことは、その部分を通してから、ジュリエットに会って、一目で恋してしまい、その恋に落ちてからとの違いをきちんと差別化すること。彼女と出会った瞬間に彼の人生はすべて変わってしまう。ロマンティックな一目ぼれをしてしまったことをその場で表現しなければなりません。そこから彼の気持ちはどんどん大きくなっていきます。本当にジュリエットと目が合った瞬間から、すぐにバルコニーのシーンに移っていくわけだけど、そこで待っているのは愛の表現。一連の動きを通してキャラクターを前に前に進めてくれる感じなのです。
――今回ジュリエットを演じるヤスミン・ナグディとは、前回も『ロミオとジュリエット』で共演しましたね。
マシュー・ボール:ヤスミンとは4年前に初めてこの演目を演じることができました。僕たちにとっても、ロイヤル・バレエでは十八番だと言われている『ロミオとジュリエット』を体験できたことはとても特別な瞬間でした。その時からお互いのケミストリーがあったし、だからこそとても自由に、流麗に、またある意味踊り手としての選択も勇敢にできる、そんな形で踊ることができたのだと思います。特にこの作品は自然でなければならないと思っているので、このような関係があること、これが真実であると見せることができる関係であることは大切なことだと感じています。
――今回、あなたの主演した舞台が初めて映画館中継されます。映画館中継の公演で主演するというのはどのような気持ちですか?
マシュー・ボール:バレエをスクリーンで観るというのは、観客にとっても違う体験なのですよね。観た方からの話を伺っても、劇場だと見たことがないようなところが目に留まった、ということを聞きました。劇場では観客が自由に自分の観たいところを決められます。やはり映像ならではのアップがあり、映画版だと演出が入っているので、監督が見るべきところを決めているのでまた違うということもあります。踊り手としては今撮影している、というようなことはあまり考えないようにしています。リハーサルを撮影する時には映像はチェックして、変なことをしていないかは見たりはしていますが。
どうしてロイヤル・オペラ・ハウスが映画館中継をしているかというと、バレエを見たことがない方も本物が観たいとか、住んでいるところへのツアー公演がなかったりオペラ・ハウスへ行きにくかったりする人、他の国の方にも観てもらえるきっかけを作りたいということがあります。出演者としては、いつもと同じように臨んでいます。いろいろと考えすぎてしまうとプレッシャーを感じてしまいますから!
――ロイヤル・バレエの来日公演では、日本を楽しむことはできましたか? Instagramのストーリーに、マシュー・ボーンの『白鳥の湖』のポスターの前でポーズをとっている写真を掲載されていましたね。
マシュー・ボール:前回のロイヤル・バレエの来日公演の時は、まだプリンシパルではなく、僕の役どころはそんなに大きくなかったので、もっと自由時間がありました。今回はより集中していなければならないし、いつ寝てどのくらい休息をとって、いつ食べるかを配慮して体調を整え、そして時差ボケを解消するなど自分をケアしなければならないので、それほど自由時間はありません。でもその中でも少しは自由時間があったので、チームラボの展示を見に行ったり、お台場に行ったり、昨晩は六本木の森美術館の塩田千春展を観に行ったりして、いろいろわくわくできることはしましたよ。
――日本のファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
マシュー・ボール:『ドン・キホーテ』もマシュー・ボーンの『白鳥の湖』も踊るのを夢に見ていたので、それを、特に熱心な日本の観客の前で踊ることが実現したのは大変光栄なことだし、日本の観客の皆さんには感謝し、応援してくれてありがとうと伝えたい。いつも熱意を持って応援してくださってとても嬉しいです。踊るときには一作品、一作品ベストな状態でお届けしたいし、これからもそうしていきたいと思います。そして日本にもなるべく早く戻ってきたいと思っています!
舞台上のクールな演技と、お茶目なキャラクターのギャップにファン急増
先月7月の来日時には日本の漫画『ONE PIECE』の名台詞「海賊王に!!!俺はなるッ!!!!」を流暢な日本語でTwitterに披露し話題に。早くもSNSでは“海賊王”の異名をとるなど、舞台上で見せる表情とは違った姿に心を奪われたファンも多いようだが、この夏はロイヤル・バレエが誇る名作『ロミオとジュリエット』で、情熱的なロミオを演じるマシュー・ボールをスクリーンで観て、ジュリエットのように彼との熱い恋に落ちてほしい。
公開情報
英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2018/19
『ロミオとジュリエット』
2019年8月23日(金)より、全国公開(一週間限定公開)
振付:ケネス・マクミラン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
指揮:パーヴェル・ソローキン
出演:ヤスミン・ナグディ、マシュー・ボール、ヴァレンティノ・ズケッティ、ギャリー・エイヴィス、ベンジャミン・エラ、ニコル・エドモンズ、クリストファー・サウンダーズ、クリスティナ・アレスティス、クリステン・マクナリー、ベアトリス・スティクス=ブルネル、ミカ・ブラッドベリ、ロマニー・パジャック、マルセリーノ・サンベ、ジョナサン・ハウエルズ、金子扶生
配給:東宝東和
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Interviewer:森菜穂美